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 活性酸素と酸化ストレス

 酸化ストレス(酸化的ストレス)とは、「生体の酸化反応と、抗酸化反応のバランスが崩れ、前者に傾き、生体にとって好ましくない状態」のことです。
 呼吸(ミトコンドリア呼吸鎖)で発生する活性酸素喫煙などは、酸化ストレスを増加させると考えられます。
 酸化ストレスは、細胞のDNA、細胞膜上のリン酸脂質、蛋白、糖質を傷害し、血管傷害を進行させます(注1)。
 なお、酸化LDL、酸化RLPNADPH酸化酵素は、血管内(血管内皮細胞)の酸化ストレスを、増加させることが、知られています。、

 1.活性酸素は、体内の酸化ストレスを増加させる
 活性酸素は、体内で、脂質、蛋白質、糖、核酸などを酸化変性させ、細胞機能を障害します。
 活性酸素が過剰に生成されると、体内の酸化ストレスが増加して、動脈硬化、心筋梗塞、糖尿病、癌など、さまざまな病気が発症すると考えられています。

 活性酸素の生成は、生命の寿命に影響します。

 活性酸素による脂質の酸化に関しては、特に、ヒドロキシルラジカルにより、細胞膜の脂質が酸化されると、過酸化脂質が生じ、細胞機能が障害されます。
 また、活性酸素により、血液中のリン脂質コレステロールエステルが酸化されると、酸化LDLが増加し、動脈硬化や心筋梗塞を来たすものと、思われます。

 活性酸素は、体内では、呼吸で取り入れた酸素をミトコンドリア電子伝達系で使用して水(H2O)が出来る際や、感染時に白血球が炎症反応を起こす際や、アラキドン酸の代謝の際などに、産生されます。
 
 また、活性酸素は、体外では、タバコの煙、紫外線、自動車の排気ガス、除草剤、などにより、産生されます。

 糖尿病では、血液中に糖が多いと、体に必要な蛋白質が変性(細胞内の非酵素的糖化反応)し、活性酸素が産生されます。また、糖化により、スーパーオキシドを除去するSODという酵素も変性してしまいます。
 糖尿病では、糖と蛋白質の非酵素的な反応により、AGEs(終末糖化産物)が形成されます(注2)。AGEsの内、グルコースに由来する画分は、血管内皮細胞障害を引き起こします。AGEsは、糖尿病で、網膜の周皮細胞数を減少させ、血管内皮細胞数を増加させる原因と考えられています。

 なお、糖尿病では、蛋白質以外に、不飽和脂肪酸も酸化され、リゾホスファチジルコリン(LPC)が増加しています。

 不飽和脂肪酸の内、体内では、リノール酸が最も酸化され易いと言われています。

  酸化ストレスにより、細胞膜のリン脂質の不飽和脂肪酸が酸化されると、脂質ヒドロペルオキシドを経て、アルデヒド類が生成され、蛋白質、核酸、リン脂質が変性し、老化の促進、発癌が起こります。

 カルシウム拮抗薬(アムロジピンなど)には、電子供与性の芳香環を有し、細胞膜でスカベンジャーとして活性酸素(ラジカル)を捕捉し、抗酸化作用を示すと言われます:アムロジピンの荷電したアミノ基が、細胞膜のリン脂質の陰性荷電した部分(不飽和脂肪酸)の近傍に位置することが判明しています。

 2.食品中に含まれる過酸化脂質は、酸化ストレスを増加させない
 食品に含まれる油脂中の不飽和脂肪酸(リノール酸、アラキドン酸、EPADHAなど)は、空気中の酸素で酸化され(自動酸化)、過酸化脂質が生成されます。
 コレステロールも酸化され、酸化コレステロールになります。
 過酸化脂質には、強い酸化力がありますが、食餌中に含まれる過酸化脂質は、小腸で吸収される際には、99.5%が安全な形に変えられると言われおり、体内に取り込まれて、体内の酸化ストレスを増加させないと、思われます。

 油脂の酸化は、食品の保存状態で異なります。
 食品の酸化を遅らせるためには、酸素の排除(真空パックなど)、低温保存、遮光などが有効です。
 食品に、酸化防止のために、ビタミンCビタミンE、β-カロテンなどの添加が行われています。
 銅(Cu)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)などの金属は、油脂の保存性を悪化させます。
 食品中の過酸化脂質は、多くは腸から吸収されませんが、腸内で生成される過酸化脂質と同様に、大腸癌のリスクを高めるものと考えられます。

 なお、食品を加熱調理することで生成される、ヘテロサイクリックアミン、ヒドロキシフラノン誘導体などは、生体のDNA鎖を切断し、変異原性を示したり、組織障害を引き起こします。 
 
 3.抗酸化物質による、酸化ストレスの除去
 こうした体内の酸化ストレスは、体を、言わば錆びつかせる訳です。
 酸化ストレスから体を防御して、体を錆びつかないために、抗酸化作用のある、抗酸化物質を食品から摂り入れる必要があります。

 ビタミンEは、生体にとって重要な抗酸化物質です。
 ビタミンEは、LDLと同時に運ばれていて、LDLが酸化されるのを防いでいると、考えられています。
 実際に、ビタミンE製剤の内服は、心筋梗塞発症の予防に有効とされています。

 また、血液中で、酸化ストレスにより、過酸化脂質が生成されるのを防いでいるのは、ビタミンCユビキノール(還元型ユビキノン、別名、ビタミンQ)などの抗酸化作用のある物質だと、考えられています。

 抗酸化物質は、糖尿病の血管合併症や、神経障害の予防に、有効と考えられます。

 野菜には、ビタミンEだけでなく、ビタミンCユビキノールなどの抗酸化物質が含まれています。(詳しくは、ミニ医学知識の「抗酸化物質」の項を御覧下さい。)

 ただし、酸化ストレスから体を防御する能力は、食生活だけで決まるのでなく、遺伝的な要因(活性酸素の除去能力など)に左右されることが多いと言われています。
 抗酸化物質を摂取することで、酸化ストレスから体を十分に防御することは、不可能であり、酸化ストレスを減らすために、不飽和脂肪酸の摂取を控えることも重要と思われます。

 なお、食べ過ぎや、運動のし過ぎは、活性酸素の発生量を多くして、寿命を短くすると、考えられています。このことに関しては、ミニ医学知識の「活性酸素と寿命」の項を御覧下さい。

 また、活性酸素の詳細に関しては、ミニ医学知識の「活性酸素」の項を御覧下さい。

 注1:活性酸素による酸化ストレスにより、細胞膜の不飽和脂肪酸が酸化され、脂質ヒドロペルオキシドや、アルデヒドが生成され、DNA、ミトコンドリア、リソゾームなどの酸化障害が引き起こされます。

 注2AGEs(advanced glycation end products:終末糖化合物)とは、グルコースブドウ糖)などの還元糖が、蛋白質のアミノ基と非酵素的に反応して生成される物質です。AGEsは、特有の蛍光を持つ、黄褐色の物質です。
 糖尿病などで、慢性的に高血糖が続くと、循環血液中や、組織で、AGEsの生成が、促進され、血管合併症(糖尿病性血管障害)が発症します。糖尿病性血管障害では、毛細血管障害が起こり、動脈側の毛細血管の基底膜が肥厚することが、特徴とされます。
 AGEsは、RAGE(AGEsの受容体)に結合して、NADPHオキシダーゼ(NADPH酸化酵素)の発現を亢進させ、ROS(reactive oxygen species:活性酸素種)の産生を亢進させ、酸化ストレスを産生させます。ROSは、さらに、Rasの活性化を介して、MAPKを活性化させ、NF-BやAP-1を活性化させ、VEGF(vascular endothelial growth factor:血管内皮増殖因子)、MCP-1PAI-1を発現させます。VEGFは、血管内皮細胞を増殖させ、血管新生を促進させます。AGEsは、血管内皮細胞からのPGI2産生を低下させ、線溶を阻止するPAI-1発現を、増加させ、血栓が溶解されにくくなります。
 なお、ニフェジピンは、RAGEの発現を抑制して、ROSの産生を抑制し、糖尿病患者でのAGEsによる血管合併症の発症を、予防すると考えられています。

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