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 酸化LDL

 酸化LDLが、血管壁(血管内皮細胞)を障害し、動脈硬化や血栓形成を引き起こす。
 酸化された不飽和脂肪酸を含む酸化LDLは、血管内皮細胞を障害して、動脈硬化を促進させたり、血栓を作りやすい体質にする。

 ・酸化LDLでは、LDLを構成する、コレステロール、リン脂質、脂肪酸、アポ蛋白(アポB-100)などが、酸化的変性を受けるが、その中でも、コレステロール酸化物(オキシステロール)が、問題とされる。
 コレステロール酸化物(オキシステロールは、平滑筋細胞に障害的に作用し、細胞死、マクロファージからのMMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)の分泌を促進させる。

 ・リポ蛋白では、LDLが、最も多く過酸化脂質を含んでいる(LDLに含まれる、リン脂質や中性脂肪やコレステロールエステルの不飽和脂肪酸が、酸化して、過酸化脂質になっている)。

 ・酸化LDLでは、過酸化脂質(ヒドロペルオキシド:LOOH)が増加している。過酸化脂質からは、2価鉄の作用で、活性酸素ヒドロキシルラジカル(OH・)が生成される。3価鉄とアドレナリンのキレートの作用でも、ヒドロキシルラジカルが生成される。なお、糖尿病など増加する、糖化蛋白は、鉄とキレートすると、脂質を酸化させる。

 ・酸化LDLでは、生成された過酸化脂質が、アポB-100 のリジン残基と反応し、陰性荷電が増大している。
 また、リゾホスファチジルコリン(リゾフォスファチジルコリン)などのリゾリン脂質も増加している。リゾリン脂質は、界面活性剤として、細胞膜を壊し、細胞を溶かす

 ・マクロファージは、LDLを取り込む能力は低いが、LDLが酸化されて陰性荷電が増加すると、スカベンジャー受容体により、効率良く取り込む。

 ・LDLは、血液中では、ビタミンCビタミンEなどの抗酸化物質に守られて酸化されにくいが、血管壁に沈着すると、酸化変性を受け易いという。

 ・LDLの表層の脂質が活性酸素で酸化されると、中心部の脂質(コレステロ−ルエステルなど)も連鎖的に酸化され、アポBなども変性し、LDL受容体と結合出来なくなった酸化LDLは、スカベンジャー受容体により取り込まれる。
 
 ・酸化LDLは、マクロファージに際限なく取り込まれ、泡沫細胞化させる。
 酸化LDLは、動脈硬化の病変部位で検出される。
 アテローム性動脈硬化病巣から抽出されたLDLは、陰性荷電が増大している
 
 ・酸化LDLでは、酸化されているのが、脂質部分なのか、アポ蛋白部分なのか、議論がある。
 酸化LDLでは、構成するリン脂質がリゾ化されていることが、同定されている。 
 コレステロールエステルに結合している不飽和脂肪酸も、酸化され、過酸化脂質になる。コレステロ−ルエステルに含まれる不飽和脂肪酸の方が、リン脂質のレシチンに含まれる不飽和脂肪酸より、酸化され、過酸化脂質(脂質ヒドロペルオキシド)になり易い

 ・LDL表面のリン脂質が、初期に酸化される。この酸化リン脂質は、動脈壁では、炎症性物質として作用する。
 酸化リン脂質を分解する生体内の酵素には、パラオキソナーゼ(PON)や、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ(PAF-AH)があり、HDLに存在するという。


 ・LDLが酸化変性を受ける際には、リン脂質分画のホスファチジルコリン(PC:Lecithin)がリゾホスファチジルコリン(LPC)に分解される。
 このLPCは、マクロファージやリンパ球の走化因子であり、かつ、細胞接着因子のVCAM-1(vascular cell adhesion molecule-1)、及び、ICAM-1(intercellular adhesion molecule-1)の発現を血管内皮細胞に誘導する。

 ・LPCは、酸化LDLの主要構成成分であり、血管平滑筋細胞を増殖させる作用がある。

 ・LDL中のLPCは、泡沫細胞(foam cell)の形成に重要な役割を果たしている。LPCは、PKC(プロテインキナーゼC)を活性化させて、細胞膜を構成するリン脂質を活性させ、GM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)の産生を誘導して、マクロファージを増殖させる。

 ・酸化LDLに含まれるLPCは、血管内皮細胞障害を引き起こし、動脈硬化の開始に関与している。

 ・酸化LDL中のLPCは、血管内皮細胞内のCaイオン濃度の上昇を抑制して、血管拡張作用や血小板凝集の抑制作用がある、一酸化窒素(NO)の産生を抑制する。

 ・酸化LDL中のLPCは、血管内皮細胞の弛緩反応を抑制し、血管内皮細胞における白血球接着因子や平滑筋増殖因子の発現を誘導し、動脈硬化を促進させる。

 ・酸化LDLに含まれるリノレン酸過酸化物は、TNF(tumor necrosis factor:腫瘍壊死因子)などのサイトカインと共同で作用し、細胞接着因子の発現を血管内皮細胞に増加させる。

 ・酸化LDLは、スカベンジャー受容体を介してマクロファージに取り込まれる。

 ・糖尿病の患者さんでは、酸化LDL、LPC、糖化LDLが増加している。

 ・高齢者は、若年者より、LDLが酸化されやすい。

 ・小粒子高密度LDLは、LDLレセプターとの結合が悪く、血液中に長期間停滞したり、血管壁内に到達しやすい。
 また、小粒子高密度LDLは、酸化されやすく、マクロファージに貪食され、泡沫細胞を形成し、動脈硬化を形成しやすい。

 ・酸化LDLは、コラ−ゲンに親和性を持っており、家族性高コレステロール血症の患者さんに見られる黄色腫は、酸化LDLが沈着することが原因とされる。

 ・脳血管は、脳血管関門(BBB)があり、250オングストローム程度の大きさと言われるLDLは、血管内膜に入りにくく、心臓の冠状動脈とは異なって、動脈硬化を起こしにくい

 ・喫煙者では、LDLは、非喫煙者に比べより酸化されやすい状態にある。
 このような、喫煙者のLDL易酸化性亢進は、喫煙者にビタミンCまたはビタミンEを投与し、血中の抗酸化ビタミン濃度を上昇させると、改善出来る。

 ・皮膚が、紫外線に当たり過ぎると、酸化LDLが増加し、血管が障害を受け(傷められる)、動脈硬化が促進される恐れがある。

 ・LDLは、内皮細胞と接触すると、酸化LDLに変化する:LDLは、血管内皮細胞の培養系に、添加されると、酸化変性LDLに変化する。
 LDLは、銅(1価銅)と接触させると、容易に酸化変性LDLに変化する。
 LDLは、スーパーオキシドと接触すると、酸化変性LDLに変化する。白血球の活動化(好中球による貪食・殺菌など)により、活性酸素が産生されると、酸化変性LDLが生成されるおそれがある。
 LDLは、鉄-アスコルビン酸系によっても、酸化変性LDLに変化する。

 ・Ca拮抗薬(Ca++-antagonist)は、殆んど完全に、動脈硬化(粥状硬化)の発生を抑制する
 ニフェジピン、ニカルジピンなどのCa拮抗薬(カルシウム拮抗薬)は、冠動脈の新しいアテローム性動脈硬化病変の形成や、早期病変の進行を予防し、動脈硬化の進行を予防する。しかし、ニフェジピンは、新しい病変の形成(発症)を予防するが、既に形成されていた病変には、影響しない。

 ・酸化LDLやリゾフォスファチジルコリンを、血管内皮細胞に作用させると、血管平滑筋細胞の増殖因子である、HB-EGF、PDGF-A、B鎖の遺伝子の発現が誘導される(久米等)。

 酸化LDLの血管内皮細胞に対する作用は、「ミニ医学知識」の「血管内皮細胞」の第3項を参照して下さい。

 参考文献
 ・Gotto AM: Calcium channel blockers and the prevention of atherosclerosis. Am J Hypertens 1990; 3: 342S-6S.
 ・Waters D, et al: A controlled clinical trial to assess the effect of a calcium channel blocker on the progression of coronary atherosclerosis. Circulation 1990; 82: 1940-53.
 ・葛谷文男:高脂血症 2.薬物療法 臨床医 8: 108-110, 1982.
 ・斎藤康:臨床医 8: 1390-1391, 1982年.
 ・吉川敏一:特集 生活習慣病と酸化ストレス 酸化ストレスとは 日本医師会雑誌 第124巻・第11号、1549-1533, 2000年.
 ・小出信澄、他:動脈硬化 わかりやすい免疫疾患 日本医師会雑誌 特別号(1) 生涯教育シリーズ−67、S239-S242、2005年
 ・美濃真:フリーラジカル-活性酸素による組織障害 小児科 Vol.35 No.10、1265-1272、1994年.
 ・北徹:メタボリックシンドロームと粥状動脈硬化、日本医師会雑誌、第136巻・特別号(1)、メタボリックシンドローム up to date、S127-S131頁.

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