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 柑橘類の栽培

 ポンカンの種を発芽させ、用土や鉢による発育の違いを調べて見たりなどした。
 
 スリット鉢だと、根は、鉢底に放射状に伸びる(ハッサクの実生苗、カインズの培養土)。
 素焼き鉢だと、根は、鉢底にループして伸びる(グレープフルーツの実生苗、ハイポネックスの培養土、鉢底石有り)。
 1.用土や鉢による発育の違い
 ポンカンの種を発芽させ、いろいろな用土を用いて、成長を比較して見た。また、スリット鉢と素焼き鉢とで、根の発達などを比較して見た。
 結論的には、 カインズの培養土(用土A)≧ハイポネックスの培養土(用土D)>みかんの土(用土G)>果樹・柑橘の土(用土B)>土一番(用土E)>混合用土A(用土C)>有機入り発育肥料 培養土(用土F)の順に、生育が良いようだった。ただし、今回、成長を比較した苗は、多胚から発生した同一の成長能力を有するクローン苗ではなく、苗自体の成長能力が異なったので、違う苗を各用土に植え付ければ、違う結果になった可能性がある。みかんの土(用土G)に移植した苗は、成長が良かったが、ロング型でない4号スリット鉢に移植した為に、却って、根の成長が促進された可能性がある。苗は、最初は、小さ目の鉢に移植した方が成長が良く、苗の大きさより、大きな鉢に移植すると、却って、根が張らず、成長が悪くなることがある。
 スリット鉢は、太い根が鉢底に向かって伸び、素焼き鉢は、細根が多数伸びる素焼き鉢の方が、根が万遍無く伸びる。今回、素焼き鉢をスリット鉢と比較して見たが、素焼き鉢の方が、根の発達が良い傾向が見られたが、素焼き鉢は、側面がカビなどで汚れる、用土が早く乾燥する、落とすと容易に割れてしまう、重い、などの短所がある。
スリット鉢:2B 素焼き鉢:2D
スリット鉢:3B 素焼き鉢:2D
 水遣りした際の水が用土に浸透して行く速さは、混合用土A(用土C)>カインズの培養土(用土A)>果樹・柑橘の土(用土B)>ハイポネックスの培養土(用土D)の順。

 用土は、以下のような物を用いた。
 用土A.カインズの培養土:カインズ(CAINZ)で売っている、「生産者用 花と野菜 培養土 緩効性肥料グリーンマップ配合」(SKアグリ:CAINZ販売)。組成は、バーミュキュライト(バーミキュライト:土壌改良土)、焼土(しょうど:赤玉土を焼いた物)、鹿沼土、軽石(群馬県産)、ココピート(椰子の実の繊維:ピートモスに代わり土壌改良剤として)、バーク堆肥、くん痰とのこと。pHは、6.0〜6.5。ECは、0.8〜1.2。Nは260mg/dL、Pは1,240mg/dL、Kは140mg/dL。グリーンマップは、根酸によって溶かされる緩効性肥料とのこと。柑橘類の栽培にも、問題ない。1年くらいで、培養土を交換した方が良い。
 用土B.果樹・柑橘の土:花ごころの「果樹・柑橘の土 12L」は、組成は、バーク堆肥(木炭)、ココナッツファイバー、バーミキュライト、赤玉土(小粒:7割)、鹿沼土(ミックス)、日向土は含まず、NPK含有。最大で2年で植替え。
 用土C.混合用土A:赤玉土小粒(硬質でない)+鹿沼土+日向土(小粒)+バーク堆肥):カインズの培養土の方が発育が良いようだった。葉色が薄い。根の発達は良い可能性があるが、根付くまで日数がかかるようだ。
 用土Dハイポネックスの培養土:ハイポネックス 培養土 鉢・プランター用、ハイポネックスのそのまま使えるカンタン培養土!肥料入り。成分は、ピートモス/鹿沼土/日向土/軽石/パーライト/バーミキューライト(バーミキュライト)など(兵庫県産の培養土)。元肥として緩効性肥料マグァンプKが配合されている。pH 6.2〜6.8、EC(mS/cm) 0.7以下。緩効性肥料マグァンプK N6-P40-K6-Mg15。
 用土E.土一番:紀州小みかんは生育が良かったが「トラ葉」が生じた。内容量:5リットル、重量:約2.5kg(水分の量で重量は変動します)
・包材サイズ:約25×16×5cm・原材料:埴壌土、腐葉土、ピートモス、くん炭、もみがら堆肥
 用土F.有機入り発育肥料 培養土:【根張りが良く、通気性・保水性・排水性が抜群!】有機入り発育肥料 培養土(20%プラス) 12L、特徴 : 殺菌済みの、カブト虫の有機(糞)入り。製造国:日本(九州産)
 ○用土G.みかんの土:花ひろばオンライン発売、木質堆肥、真砂土、バーミキュライト、ゼオライト、活性炭入り

 カインズで売っている「生産者用 花と野菜 培養土 緩効性肥料グリーンマップ配合」(用土A)は、生育が良いし、土の乾燥状況が良くわかる。
 果樹・柑橘の土(用土B)は、昨年、柚子苗の栽培に使って見たが、葉色が良く成長した。ただ、今年の結果では、ハイポネックスジャパンの培養土(用土D)の方が生育が良かった。果樹・柑橘の土は、バーク堆肥が入っている為か、臭いが良い(自然の土の臭いがする)。果樹・柑橘の土を用いると、葉の緑色が濃くなるようだ。近くの店では売っていない。果樹・柑橘の土の土は茶色で、ハイポネックスジャパンの培養土は黄褐色。
 混合用土A(用土C)は、水はけが良く、根の成長に良いとのことで勧められたが、柑橘類の根の成長の為には、赤玉土などが十分でなく、肥料持ちも悪いようで、葉色は薄い。
 ハイポネックスジャパンの培養土(用土D)も発育が良かった。ただ、最初は、水が浸透し難く、繊維状物が浮いてしまう。葉色も濃く成長する。緩効性肥料マグァンプKの効果で、肥料が長く効いていて、成長が良いのかも知れない。
 土一番(用土E)は、紀州小みかんの発育に用いたことがあったが、何故か、マンガン欠乏によるトラ葉が生じた。
 有機入り発育肥料 培養土(用土F)に移植したポンカン苗は、太い根は多いが短く、細根は殆ど生えていなかった。素焼きの鉢に入れて用いたが、鉢の内側に、黒褐色の斑点状に、土の成分が付着していた。
 みかんの土(用土G)は、土一番より生育が良かった。湿っていることが多い。細根は、地表近くに張らない。みかんの土で育てた苗の方が、カインズの培養土で育てた苗より、葉色が濃く、葉が大きくなった。なお、みかんの好きな肥料は、鉢植えの用土に混ぜると、魚粕などにより、臭いが悪くなる。

 カインズの培養土(生産者用 花と野菜 培養土 緩効性肥料グリーンマップ配合)に含まれる茶褐色の粒状物は、鹿沼土の塊。臭いは殆どない。植え替えて初めての水遣りの際も、水が浸透して行く。赤玉土(焼土)の量が他の培養土より多く、根の張りが良いようだ。ただ、初期の生育は良好だが、次第に肥料が切れて来て、緩効性肥料(花ごころ グリーンそだちEX IBのチカラ)を施していても、特に、葉が黄色化(窒素が不足)するようだ。「グリーンマップ配合ですので追肥の必要はありませんが作物の生育状況で実施して下さい。」と袋に書いてあるが、グリーンマップ(=根酸によって溶かされる緩効性肥料)の方が、ハイポネックスジャパンの培養土に含まれるマグァンプKより、効いている期間が短いようだ。
 果樹・柑橘の土に含まれる白い粒状物は、バーミキュライトのようだ。水遣りの際に、白い粒状物が浮いてしまうことがある。果樹・柑橘の土が一番臭うが、良い臭いなので、気にならない。植え替えて初めての水遣りの際も、水が浸透して行く。土が乾燥しても、茶褐色で、乾燥したか解り難い。柑橘類の根が伸びるには、細かい赤玉土が必要なようで、果樹・柑橘の土に含まれる赤玉土では量が足らず、ココナッツファイバーは根の成長には良くないようだ。
 ハイポネックスジャパンの培養土に含まれる繊維状物は、ピートモス(臭う)。植え替えて初めの水遣りの際に、水が繊維状物に浸透せず、浮いた感じになる。鹿沼土は、大きな塊で含まれている。細かなパーライトが含まれていて、地表に浮かんで目立つようになる。バーミキューライト(バーミキュライト)は、キラキラするが、浮いて来ない。マグァンプKは、2〜3ケ月効果がある。関西方面用と関東方面用で組成が異なり、鹿沼土は関西方面用と関東方面用にも含まれている。しかし、赤玉土は、関東方面用の製品にのみ、含まれている(20〜25%)。3袋購入したが、袋の裏面の「主な配合原料名」の欄には、「ピートモス、鹿沼土、赤玉土、軽石、パーライト、バーミキュライトほか」と記載されている。関西方面用の製品には、赤玉土は含まれていないので、柑橘類の栽培には適さない可能性がある。袋の裏面の「適用植物名」には、「草花、球根、野菜、ハーブ類、花木、コニファー類、観葉植物など」と記載されている。ハイポネックスの培養土は、ピートモスの含量が多く、軽いようだ。
 果樹・柑橘の土の土は茶色で、ハイポネックスジャパンの培養土は黄褐色。


 混合用土A(用土C)を、4号スリット鉢と素焼き鉢とに入れて、ポンカン苗の成長を比較した。
 すると、スリット鉢より、素焼き鉢の方が、根の成長が良いようだった。
 スリット鉢だと、根は放射状に伸びるが、素焼き鉢だと、根は横方向に伸びるようだ
 スリット鉢と、素焼き鉢とでは、スリット鉢の方が根が地下深く伸びるが地表近くには細根が増えない傾向があった。素焼き鉢は、地表近くにも根が横方向に伸びるようだった。
 スリット鉢は、サークリング現象が起こらず、根詰まりを起こし難いと言われる。スリット鉢の方が、素焼き鉢より軽量で、室内に置いても、素焼き鉢の様に、鉢の周囲にカビが生えて来ない。
 素焼き鉢は、側面からも空気が入るので、根は横方向に伸びるのかも知れない。素焼き鉢は、側面からも水分が蒸発し、夏場は、スリット鉢より、地温の上場が抑えられるようだ。素焼き鉢は、重く、落とすと割れてしまうことがある。

 上記の混合用土A(用土C)を入れた4号スリット鉢で育てた苗を、ハイポネックスジャパンの培養土(用土D)を入れた4号スリット鉢に移植し、また、混合用土A(用土C)を入れた素焼きの鉢で育てた苗(根の成長がより良い)を、果樹・柑橘の土(用土B)を入れた4号スリット鉢に移植し、20日程経った後に、再度、成長を比較して見た。
 意外だったが、地上部の発育は、ハイポネックスジャパンの培養土(用土D)に移植した苗の方が、果樹・柑橘の土(用土B)に移植した苗より、良かった。なお、地表に見える大きな白い粒子は、施した、花ごころ グリーンそだちEX IBのチカラの粒。
 さらに、根の発達も、ハイポネックスジャパンの培養土(用土D)に移植した苗の方が、果樹・柑橘の土(用土B)に移植した苗(混合用土Aで育てていた時に根の成長がより良かった)より、良かった。
 ハイポネックスジャパンの培養土(用土D)に移植した苗の方が、果樹・柑橘の土(用土B)に移植した苗(混合用土Aで育てていた時に根の成長がより良かった)より、根が長く伸びていて、根も太かった。
 両苗共に、地表近くに細根は少なかった。
 スリット鉢は、通常の型(スクエア型)よりも、縦長のロング型スリット鉢の方が、根が長く伸びる。縦長のロング型スリット鉢に移植しても、根は鉢底まで伸びて、屈曲していた。
 ロング型スリット鉢の方が用土が多く入る。
 ただ、ロング型スリット鉢は、店頭で売っている店が少ない。
 4号ロング型スリット鉢で育てた苗は、放射状に伸びることが多いようだが、地表近くに横方向に伸びたり、培養土中の日向土や鹿沼土と癒着して伸びていることもある。


 庭に移植し路地植えしてあったポンカン苗の方が、成長が悪かった。
 根は、路地植えでも、放射状に伸びるが、4号ロング型スリット鉢の苗に比して、根の量も少なかった。

 地上部の長さは、根の長さや量とは、必ずしも相関しないようだ。地上部が伸びる時期と、根が伸びる時期とは、異なるようだ。
 春先は、半日しか日光に当たらない室内の窓際に置いた苗の方が、庭に出して1日中日光に当てた苗より、葉の緑色が濃く、地上部の成長が良かった。植物の成長は、日照時間の長さより、気温が適切であることの方が大切なようだ。
 しかし、夏場は、室内の窓際に置いた苗の方が、樹高が伸びたが、庭に出した鉢の苗の方が、葉の緑色が濃く、葉の数が多く、葉が幅広く、幹が太く、側枝の分岐が多かった

 7月2日に、庭に路地植えしてあったポンカン苗4本を掘り出し、長い方の根から、カインズの培養土、果樹・柑橘の土、混合用土A、ハイポネックスジャパンを入れた4号スリット鉢(ロング型でない通常の型)に、移植した。
 移植した時点では、根の長さは、カインズの培養土>果樹・柑橘の土>混合用土A>ハイポネックスジャパンだった。
 7月20日に、地上部は、果樹・柑橘の土>カインズの培養土>ハイポネックスジャパン>混合用土Aの順に、成長が良かった。根の成長を調べて見ると、カインズの培養土>ハイポネックスジャパン>果樹・柑橘の土>混合用土Aの順に、根の量が多かった。混合用土Aの苗も根が長く伸び、先端は白かったが、根の量は少なかった。
 通常の型(スクエア型)の4号スリット鉢だと、根は成長すると、鉢底に当たって、曲がって伸びるようになるようだった。




 
 混合用土Aだと、根は長く伸びるが、細根が増えず(多分、赤玉土の含量が少ない為)、根の量は少ない。
 素焼きの鉢は、鉢の深さが、通常の型(スクエア型)のスリット鉢と同様に浅いので、根が鉢底に達すると、根詰まりに近い状況になり、途中の根が酸素や栄養を求めて、地表方向に細根を伸ばすようだ。


 7月17日に、根の発達を比較する為に、ハイポネックスジャパンの用土を素焼き鉢と4号スクエア型スリット鉢に入れ、庭に移植してあったポンカン苗2本を採取し、細根が少ない方の苗(樹高は高い)を素焼き鉢に移植した。8日後の7月25日に根をチェックしてみた。すると、素焼きの鉢の苗の方が、白い細根が多数、増えていて、地表近くに横方向に1本、根が伸びていた。スリット鉢に移植した苗は、白く長く太い根が1本のみ伸びていた。素焼き鉢の方が、細根が多数伸び、スリット鉢は、太い根が鉢底に向かって伸びるようだ。両苗を再び根を伸ばして、植え直した。
 素焼きの鉢は、庭に置くと、鉢周囲にカビが生えることはないが、地温は、スリット鉢と同様に高くなる。
 スリット鉢は、鉢の周囲にアルミホイールを巻くと、地温の上昇が少なくなる。

 7月17日に、根の発達を比較する為に、4号ロング型スリット鉢(カインズの培養土)に移植してあったポンカン苗(3A)を、素焼きの鉢(カインズの培養土)に移植した。9日後の7月26日に、根の状態をチェックした。鉢底の根の先端部分に白い新しい太い根が、多数、伸びていた。根の中間部分にも、白い新しい太い根が伸びていた。細根も増えていたが、地表に近い部分には少なかった。


 7月29日、庭に出してあった素焼き鉢の苗(ポンカン2D:ハイポネックスの培養土)の根株をチェックして見た。根(細根)が側面にも円周状に張っていて、根株があまり崩れないで、鉢の周囲の土が付いたまま、鉢から抜けて来た。地表近くにも、地下から地表に向かって細根が伸びていた。素焼きの鉢の方が、根が万遍無く張る。








 トマトの種から発芽させた苗を、カインズの培養土かハイポネックスの培養土を入れたポットに移植し、成長を比較して見た。
 地上部の成長は、差がないようだったが、カインズの培養土(用土A)で育てた苗の方が、ハイポネックスの培養土(用土D)で育てた苗より、根鉢の周囲に細根が多数発達していた。
ハイポネックスの培養土
カインズの培養土
 2.スリット鉢も、鉢底石を敷いた方が、根が太く長く伸び、細根も増える 
 今回、スリット鉢の鉢底には、鉢底石として日向土(小粒)を敷いた。
 鉢底石を敷く目的は、水はけを良くする為と言われるが、鉢底石を敷くと、鉢に入れることが出来る用土の量は少なくなる。
 メーカー(兼弥産業)の説明では、スリット鉢は、鉢底石を敷く必要はないが、敷いても良いとのことだった。
 スリット鉢は、鉢底石は敷かない方が良いか、鉢底石を敷く方が良いか、スリット鉢に果樹・柑橘の土を入れ、グレープフルーツの実生苗を移植し、鉢底石を敷かない場合と、鉢底石を敷いた場合とで、根の成長などを比較実験して見た。

 2014年9月22日、2つの古い4号スリット鉢を用いて、スリット鉢は、鉢底石を敷いた方が良いか、検証実験を開始して見た。
 庭に移植してあったグレープフルーツの2つの種由来の実生苗(1つの種からは、二つの実生苗が生えていたが、長い方を用いた)を、用いた(イ苗とロ苗)。2つ種の実生苗は、別の種から発芽したが、ほぼ同等の長さだった:根が長く細目で茎が成長したが双葉は黄色のイ苗を、鉢底石を敷かない鉢に移植した。根が短く茎は成長していないが双葉は緑色のロ苗を、鉢底石を敷いた鉢に移植した。
 用土は、両鉢共に、新しい果樹・柑橘の土を用いた。

 鉢底石を敷かない鉢に根が長い方の苗(イ苗)を移植し、鉢底石を敷いた鉢に根が短く苗(ロ苗)を移植したが、鉢底石を敷いた方が成長に良いなら、鉢底石を敷いた鉢に移植した根が短いロ苗は、鉢底石を敷かない鉢に移植した根が長いイ苗と同程度に伸びるはず。
 鉢底石を敷かない方が成長が良いなら、鉢底石を敷かない鉢に移植した根が長いイ苗の方が、鉢底石を敷いた鉢に移植した根が短いロ苗より、更に、長く伸びるはず。

 しかし、鉢底石を敷かない鉢に根が短い苗を移植し、鉢底石を敷いた鉢に根が長い苗を移植し、成長を比較する必要もある。鉢底石を敷かない鉢に移植した根が短い苗の方が、鉢底石を敷いた鉢に移植した根が長い苗より、成長が良いなら、鉢底石は、不要と言うことになる。
 そこで、9月24日、庭に移植してあったグレープフルーツ苗の中から、2つの種から発芽した同程度の根の長さの2つの苗を採取した。茎が長い方の苗(ニ苗)は、先端に二つの葉が生じていた。ニ苗は、茎は短かった(先端の成長点が傷んでいた可能性がある)。旧い4号スリット鉢に、果樹・柑橘の土を入れ、鉢底石を敷かない鉢に根が短い苗(ハ苗)を移植し、鉢底石を敷いた鉢に幹や根が長い苗(ニ苗)を移植して見た。
 実験には、以下の4苗を用いた。
 イ苗:9月22日移植 鉢底石無し 茎も根も長い
 ロ苗:9月22日移植 鉢底石有り 茎も根も短い
 ハ苗:9月24日移植 鉢底石無し 茎は短いが根の長さはニ苗と同等
 ニ苗:9月24日移植 鉢底石有り 茎は長いが長の長さはロ苗と同等

 10月13日(約20日後)に、根の成長などを調べて見た。
 鉢底石を敷いた、ロ苗とニ苗の方が、地上部の成長が良く、茎が長く、葉も大きくなっていた
 9月22日に移植したイ苗とロ苗(移植時の根の長さはイ苗の方が長かった)とでは、ロ苗の方がイ苗よりも、地上部も根も成長が良かった。根は長さ的には、鉢底まで到達していた。

 9月24日に移植したハ苗とニ苗(移植時の根の長さや太さは同じ)とでは、ハ苗(先端が萎れてしまっていた)も、ニ苗も根の長さはほぼ同等だったが、鉢底石として日向土を敷いたニ苗の方が、鉢底(日向土が敷いてあった)に伸びた根の先端が太くなっていた。ニ苗は、根が伸びて、スリット鉢の鉢底に当たったようで、横方向に曲がって伸び始めていた。

 今回のグレープフルーツの実生苗を用いた実験結果では、スリット鉢は、鉢底石を敷いた方が、地上部の成長が良く、根も長く、先端が太く伸びる。鉢底石を敷いた方が、細根も生えるようだ。

 2015年に、紅甘夏の実生苗を用いて、4号スリット鉢に鉢底石を敷かない場合と、鉢底石を敷いた場合とで、成長を比較して、追試して見た。
 5月20日に、写真の上側に写っている、根や幹が長い苗を鉢底石を敷かないスリット鉢に移植し、真ん中に写っている、より根や幹が短い苗を鉢底石(日向土小粒)を敷いたスリット鉢に移植して見た(用土はハイポネックスの培養土)。
 19日後に、スリット鉢から根を抜いて見。写真のように、上側の鉢底石を敷かないスリット鉢に移植した苗より、下側の鉢底石を敷いたスリット鉢に移植した苗(移植時に根や幹が短かかった方の苗)の方が、根や幹が長く伸びていた。
 やはり、スリット鉢で柑橘類の実生苗を栽培する際には、鉢底石を敷いた方が、根や幹の成長が良いようだ。ただ、鉢底石を敷くと、用土を再利用し難くなる。
 他の「柑橘類の種と実生苗」に関しては、別ページに写真を掲載した。
 3.紀州小みかんと、桜島小みかん 
 温州みかんだと、鉢植えでは、成らせる実が少ない。
 小みかんだと、25個以上、実を成らせることが可能(隔年結実になってしまうことがある)。
 小みかん苗としては、紀州小みかん苗や、桜島小みかん苗が、販売されている。
 紀州小みかん
 紀州小みかんは、江戸時代に紀州から紀国屋文佐衛門が船で江戸に送ったみかんで、現在、スーパーなどで売られている温州みかんより、実が小さい。
 紀州小みかんと、桜島小みかんは、原種は同じと言われるが、紀州小みかんの方が、桜島小みかんより、実の大きさが大きいようだ。
 表 桜島小みかんの実の生育
 月 日  6月24日  7月1日  9月4日  9月13日  9月28日  10月4日  12月13日  3月28日  3月29日
 直径   5  11  26  30  32  32  38  45  46.63
 高さ   −   −  21  25  27  27  32  33  35・12
 表 紀州小みかんの実の生育:実は26個、樹高は、鉢も含めて60cm、地表から49cm
 月 日  10月7日  10月20日  10月30日  11月18日  11月19日  11月30日  12月3日  12月9日  12月16日  12月28日  1月9日  3月29日
 直径  38  39  42.1  43.2  41.7  45.7  46.5  47.7  49.1  49.6  50.1  51.53
 高さ  33  32  32.0  32.2  31.1  33.3  33.5  34.8  41.2  35.0  34.3  40・06
 小みかんのみかんは、苗に付けたままにすると、年を越えても、大きくなっているが、果皮が果実から浮く(浮皮)。2012年3月29日に、最後まで苗に1個残したみかんを比較すると、桜島小みかん(種有り)より、紀州小みかん(種有り)の方が大きく、果皮の色は濃く、果実や果皮は甘い。種は、細くなっていた。
 
 紀州小みかんの方が、桜島小みかんより、早生で、果皮が黄色に熟する時期が早いようだ(紀州小みかん=10月下旬、桜島小みかん=11月中旬、温州みかん=11月中旬)。
 紀州小みかんには、種無しの品種(無核紀州)があるが、樹高が高く、地表近くに側枝がない樹形に接ぎ木した苗が多いようだ。

 2013年4月に、T社から購入した無核紀州の苗は、実が形成されていたが、古葉が少なく、新梢が伸びて来たら、実は全て生理落果してしまった。
 
 葉が黄色で、台木に穂木が真っ直ぐに接ぎ木されていなかった。
 
 そこで、2013年7月に、別の御店を探し、タカハシグリーンショップ様から、実付きの無核紀州小みかんの苗を購入。実が24個程付いていて、葉の数も多く、葉の緑色が濃く、根も良く伸びて、綺麗に台木に接ぎ木された苗だった。
 
 
 タカハシグリーンショップ様から購入した無核紀州小みかん
良く管理された苗だった
 http://item.rakuten.co.jp/takahashigreenshop/kisyuu-002/
 ただ、T社から購入した無核紀州の苗と同様に、タカハシグリーンショップ様から購入した実付きの無核紀州小みかんの苗は、幹の下の方に側枝が生えておらず、接ぎ木部位から最初の側枝が生えている部位までの幹が長かった。無核紀州の苗だと、接ぎ木部位から最初の側枝が生えている部位まで20cm程あり、地表から最初の側枝が生えている部位まで32cmもあった。無核紀州の苗は、何故、幹の下の方に側枝を剪定して切って、接ぎ木部位から最初の側枝が生えている部位までの幹を長くするのか、理解に苦しむ。幹の下の方に側枝が生えていた方が、夏場に地表に日蔭が出来て地温の上昇が抑制される。また、紀州小みかんや桜島小みかんの苗の様に、接ぎ木部位から最初の側枝が生えている部位までの幹が短い方が、樹高を低く出来、室内で鉢植え栽培するには、有利なのだが。

 種無しの無核紀州でも、ゴマ粒大の種様物が、実の中に存在することがある。蒔いて見たが、発芽はしなかった。種無の温州みかんも、夏みかんと受粉すると、種が出来ると言う。この無核紀州小みかんの苗は、ハウスで他の柑橘類と一緒に栽培されていて、受粉して種が生じたのかも知れない。
 
 葉が長い方が、実が大きくなる傾向があるようだ。
 小みかんの葉色は、気温が寒くなると、緑色が薄く黄色気味になる。室内で、気温が下がらないと、直射日光は弱くても、葉色が濃くなって来る。

 血圧を下げる降圧剤(カルシウム拮抗剤)などは、グレープフルーツジュースを飲むと、含まれるフラノクマリン類により、薬剤を分解する酵素(小腸上皮細胞のCYP3A4)の活性を阻害し、分解されないで吸収される薬剤の量を増加させ、血中濃度を上昇させてしまうおそれがある。
 フラノクマリン誘導体は、他の柑橘類にも含まれる:グレープフルーツ(ジュース)だけでなく、スウィーティー、ザボン(ブンタン、バンペイユなど)、ダイダイ(橙)などもフラノクマリン類を含んでいる。しかし、温州みかん、バレンシアオレンジ、レモン、カボス、スイートオレンジジュースは、フラノクマリン類を含んでいない(CYP3A4活性阻害作用は、殆ど無い)。
 紀州みかん(紀州小みかん)や桜島みかん(桜島小みかん)は、温州みかんやポンカンと同様に、ミカン属(カンキツ属)のミカン類に分類されている。
 食べると影響が出る物:グレープフルーツ(白・赤)、スウィーティ、晩白柚、ざぼん、文旦(ボンタン、ポメロなど)、だいだい(サワーオレンジ、ビターオレンジ)、夏みかん、甘夏、ライム、きんかん、ざくろ、ブラックマルベリー(桑の実)、山ぶどう、ブラックラズベリー<BR>
 食べても影響が出ない物:温州ミカン、いよかん、デコポン、ポンカン、オレンジ、ネーブル、レモン、カボス、ゆず(柚子)、せとか、スイートスプリング、日向夏

 4.BA剤(ベンジルアミノプリン)のビーエー液剤
 無核紀州小みかん苗を鉢植えで栽培しているが、幹の下の方に側枝が生えておらず、接ぎ木部位から最初の側枝が生えている部位までの幹が長く20cm程ある(地表から最初の側枝が生えている部位まで32cmもある)。
 無核紀州小みかんは、幹の下の方の側枝が切除されていて、接ぎ木部位から最初の側枝が生えている部位までが長い苗が多いが、何故、このような樹形にするのか理解出来ない。
 この側枝が生えていない部分の側枝を切断した数か所の痕には、1〜2mm大の芽が残っていて、緑色の芽(腋芽)もあった。
 幹の芽から新梢が生え、幹の下の方にも側枝が生えているようになれば、樹高を短く出来、室内で栽培し易くなる。
 幹の上の方の側枝に新梢が伸びて来ているので、苗の先端近くの側枝の新梢は切除して、頂芽優勢にならないようして見たが、幹の下の方の腋芽は、発芽しなかった。

 頂芽から供給されるオーキシンにより、腋芽がある部分でのサイトカイニン合成が抑制されていて、腋芽の成長が抑制され、頂芽優勢(ちょうがゆうせい)になっている。
 オーキシンは頂芽にて作られ、幹の篩部(内樹皮)を下降する。オーキシンは、枝の裏側、つまり、横枝なら下側、主幹なら陽光が当たらない樹皮側(北側)を下降すると言う。
 頂芽を切除したり、腋芽より上の部分を切込んで芽傷を作る(芽の5mm程の上の部位に深さ5mm程の切り込みを鋸で入れる)と、幹の中のオーキシンの下降(篩部を下降する)が抑制され、腋芽がある部分でサイトカイニン合成が増加し、腋芽が発芽し新梢が伸びたり開花する。サイトカニンは根にて作られるが、上方よりのオーキシンの下降を抑制した方が、腋芽の発芽効果が有る。
 無核紀州小みかん苗の幹は、径が13mm程しかないので、芽傷を作ると、幹が傷んでしまうおそれがある。
 サイトカニンとオーキシンは相反する作用があるが、発芽の抑制は、オーキシンにより行われる。
 http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13138734443/a345719548?open_reply=1

 ニホンナシ‘幸水’は、6月下旬に新梢を誘引して斜めに傾けると、頂芽からのオーキシンの下降が減少して、側芽(腋芽)中のサイトカイニン含量が増加して、腋芽の花芽数が増加すると言う。
 https://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/fruit/1998/fruit98-12.html

 C-MH剤(オーキシン移行阻害剤のマレイン酸ヒドラジドコリン塩)で処理(噴霧)すると、植物体内のオーキシン含量が低下し、頂芽の生育は抑制され(オーキシン活性の低下に伴い頂部優勢が解除される)、腋芽の生育は促進される(腋芽内のサイトカイニン含量が増やされる)。
 オーキシンは濃度により植物の生育に及ぼす影響が異なるが、C-MH剤により植物体内のオーキシン含量が低下すると、柑橘類の腋芽の発芽は促進するが、ニンニク(頂芽)の発芽は抑制される。
 マレイン酸ヒドラジドコリン塩の入手方法が解らないのと、C-MH剤によりオーキシン含量を低下させると、子房(果実)の成長も抑制される可能性があるので、断念した。
 https://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/fruit/1998/..

 腋芽にサイトカイニンを与えると、頂芽を切除しなくても、腋芽の成長が促進される。
 サイトカイニン様作用がある、BA剤(ベンジルアミノプリン)のビーエー液剤(クミアイ化学工業株式会社)は、柑橘類の発芽(新梢発生)促進作用があると言う。
 https://www.kumiai-chem.co.jp/products/document/ba_lq.html
 そこで、ビーエー液剤(ベンジルアミノプリン液剤)を、日本農業システムより、購入して見た。
 http://store.shopping.yahoo.co.jp/nns/a0207003600002.html
 サイトカイニン様作用がある、BA剤(ベンジルアミノプリン)のビーエー液剤を、100倍に希釈し、霧吹き器で、無核紀州小みかんと、ポンカンの実生苗に散布(噴霧)して見た。
 無核紀州小みかん苗は、ビーエー液剤(ベンジルアミノプリン液剤)を散布して、3日目に、幹の芽は、むしろ、緑色部分が縮んで、小さくなっていた。
 しかし、散布7日目頃から、無核紀州小みかん苗の幹の芽の緑色部分がやや伸びて来た。ポンカンの実生苗の上の方の腋芽は、数カ所、発芽が始まった。
 ビーエー液剤を散布して9日目には、無核紀州小みかん苗の幹の芽は、数カ所、伸びて来た。
 
 ポンカンの実生苗は、BA剤のビーエー液剤を散布して9日目には、主枝の上の方の腋芽が、数カ所、明らかに発芽し、伸びて来ていた。なお、BA剤のビーエー液剤を噴霧しなかったら別のポンカンの実生苗は、腋芽は発芽して来ていなかった
 ビーエー液剤は、柑橘類に噴霧すると、1週間後くらいから発芽効果が現れ、特に、緑色の枝の腋芽を発芽させるには、有効と思われた。
 BA剤のビーエー液剤は、無色透明だが、唯の水ではない。
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