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 酸塩基平衡

 体内では、栄養素の代謝に伴ない酸が生成(産生)されるが、体細胞の生命活動が正常に営まれる為には、細胞外液のpHが一定に保たれる必要がある。このように、酸塩基平衡を維持して、pHを一定に保つため、血液や体液の緩衝作用(緩衝機構)、呼吸による調節作用、腎臓による調節機構が、存在する。

 体内の酸(H+)は、ほとんど全て、栄養素の代謝の結果、生じる。
 細胞の生命活動で、三大栄養素(糖質、脂質、蛋白質)が代謝され、多量の酸(二酸化炭素)とが、生成(産生)されが、生成される。
 また、例えば、1〜2g/kg体重の蛋白質を摂取すると、体内で、40〜60mEqの硫酸やリン酸など、不揮発性の酸が、生成される。

 栄養素の代謝で産生(生成)される酸の大部分は、二酸化炭素(CO2)と、(H20)とから生成される、揮発性の炭酸で、肺から呼吸により、排出される。二酸化炭素は、血液の炭酸緩衝系酸で、処理される:二酸化炭素の約90%は、赤血球内で、残りは、血漿中で、緩衝され、血液中を肺に運ばれる。
 他方、代謝で生じる不揮発性の酸は、肺からでなく、腎から排泄される。
 これらの不揮発性の酸には、3種類ある:
 1.糖質の代謝からは、有機酸(ピルビン酸、乳酸など)が、生成される。
 2.蛋白質の代謝からは、リン酸、硫酸が、生じる。
 3.脂質の代謝からは、ケトン体(アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸)が生成される。リン脂質の代謝からは、リン酸も、生成される。

 栄養素の代謝で、二酸化炭素が、20,000mEq/日生成され、大部分(16,000mEq/日)は、呼吸(肺)から排泄され、一部(4,200mEq/日)は、炭酸を経て、水素イオン(H+)として、尿(腎臓)から排泄される。さらに、栄養素の代謝で、不揮発性酸(有機酸、ケトン体、硫酸、リン酸)が、50〜70mEq/日生成され、尿(腎臓)から排泄される。
 正常人では、腎臓で、二酸化炭素から電離した水素イオン(H+)が、尿中に排泄され、交換に、尿中のNa+と、HCO3-が、血液中に再吸収される。正常人では、HCO3-再吸収量は、約4,500mEq/日で、不揮発性酸排泄量は、約70mEq/日なので、腎臓の尿細管の総H+分泌量は、4,570mEq/日とされる。

 1.代謝で生成される酸
 a.呼吸性処理:二酸化炭素と水素イオン(揮発性の酸)
 三大栄養素(糖質、脂質、蛋白質)が、体内の細胞で異化され、ミトコンドリアで代謝(完全燃焼)されると、二酸化炭素(CO2)と、(H20)とが、生成(産生)される。
 組織で生成された二酸化炭素の内、約90%は、赤血球に取り込まれ、約10%は、血漿中に取り込まれ、肺で、排出される。二酸化炭素は、赤血球内で、炭酸脱水酵素(CA:carbonic anhydrase)により水和され、炭酸(H2CO3)となる。炭酸は、酸である水素イオン(H+)と重炭酸イオン(HCO3-)とに電離する。
 体内の代謝で生成される二酸化炭素の量は、1日に、20,000mEqと言われる。その内、大部分の二酸化炭素(16,000mEq程度)は、呼吸により、肺から体外(空気中)に排泄される。
 また、体内の代謝で生成される二酸化炭素の内、一部の二酸化炭素(4,200mEq程度)は、腎臓の尿細管から尿中に排泄される:尿細管細胞中で、炭酸脱水酵素(CA)により、二酸化炭素と水から、炭酸が生成され、水素イオン(H+)と重炭酸イオン(HCO3-)とに解離する。

 b.腎臓性処理:有機酸、ケトン体、硫酸、リン酸(不揮発性酸
 二酸化炭素以外に、糖質や脂質の代謝(不完全燃焼)で、有機酸(乳酸、ピルビン酸)、ケトン体(アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸)が生成され、また、蛋白質の代謝で、アミノ酸に含まれる硫黄(S)やリン(P)から、硫酸やリン酸が生成される。リン酸は、リン脂質の代謝でも、生成される。
 これら三大栄養素の代謝で生成される不揮発性酸(有機酸、ケトン体、硫酸、リン酸)の量は、1日に、50〜70mEqと言われ、腎臓の尿細管から尿中に排泄される。
 なお、窒素(N)は、蛋白質分子の約16%を占めているが、窒素は、塩基性のアンモニアを介して、尿素回路で、中性の尿素に変換されるので、酸塩基平衡に、関与しない。しかし、極少量の窒素は、腎臓で、アンモニアとして排泄される。アンモニアは、H+を中和して、尿をアルカリ化させ、アンモニウムイオン(NH4+)として、尿から排泄される。

 2.血液の緩衝機構
 これら、細胞内の代謝で生成された酸(水素イオン:H+)は、血液中に拡散する。
 これら代謝で生成された酸によって、体内のpHが、大きく変動しない調節機構として、緩衝機構が存在し、酸と塩基の平衡(酸塩基平衡)が維持され、血液のpHは、7.4±0.05に維持されている(H+濃度として1/107〜1/108mEq/L)。
 なお、pH=-log[H+]なので、pHの値が1異なると、[H+](水素イオン濃度)は、10倍異なる:pHの値が1低いと、[H+](水素イオン濃度)は、10倍高い。

 血液の緩衝機構(緩衝系)としては、重炭酸系、ヘモグロビン系、血漿蛋白系、リン酸系とが存在する。全緩衝作用の内、約65%を重炭酸系(重炭酸緩衝系)が、約30%をヘモグロビン系が、約5%を血漿蛋白系が、約5%をリン酸系が、担っている。リン酸系は、pKが6.8だが、血漿濃度が0.3mMと低いので、緩衝作用は、弱い。

 a.緩衝価
 水溶液に、強酸、ないし、強塩基を加えた際に、pHの変動が大きい場合は、緩衝能は小、また、pHの変動が小さい場合は、緩衝能は大と評価する。
 被検液1Lに、強酸、ないし、強塩基をαB当量加え、pHが、αpH変化した場合、緩衝価(β)は、以下の式で現わされる。
 緩衝価(β)=αB÷αpH
 血管外に取り出された血液では、緩衝価は、重炭酸系が2.4、ヘモグロビン系が21.3、血漿蛋白系が4.2、リン酸系が0.4であり、リン酸系が、緩衝価が高い。
 しかし、生体内では、重炭酸系(重炭酸緩衝系)が、最も重要な働きを担っている。

 b.重炭酸緩衝系(bicarbonate buffer sysytem)
 重炭酸系(重炭酸緩衝系)は、炭酸(H2CO3)と、重炭酸(HCO3-)との混合系で、血液中では、以下の平衡が保たれている。
 CO2+H2O⇔H2CO3⇔H++HCO3-
 二酸化炭素(CO2)と水(H2O)から、炭酸を生成する(CO2を水和する)反応は、著しく遅い。
 赤血球内には、CA
(carbonic anhydrase:炭酸脱水酵素)が存在し、この反応を促進させ、水と二酸化炭素から、炭酸を生成する。ついで、炭酸は、一部、水素イオン(H+)と、重炭酸イオン(HCO3-)とに、瞬間的に電離する。

 Hendersonの式:[H+]=K×[H2CO3]/[HCO3-]
 逆対数で表すと、
 Henderson-Hasselbalchの式(注1):pH=pK+log[HCO3-]/[H2CO3]
 pK≒6.1なので、pH=6.1+log[HCO3-]/[H2CO3]
 従って、血液のpHは、[HCO3-]/[H2CO3]比(血漿中の重炭酸イオンと炭酸の濃度の比率)で決まる。
 正常の血液のpH7.4では、[HCO3-]/[H2CO3]比は、20/1。 

 重炭酸系では、酸が加わると、HCO3-と作用し、CO2が生じ、呼吸中枢が刺激され、血中のCO2が、呼吸により肺から迅速に除去され、緩衝作用が発揮される。
 例えば、血液中に、酸(pHを6.0程度にまで低下させる酸)が増加すると、血中に25mEq/L程度存在したHCO3-が、10mEq/L程度にまで、減少する。そうすると、血液中の重炭酸系(重炭酸緩衝系)が作用し、2mEq/L程度しか存在しなかった[H2CO3](H2CO3濃度と溶解CO2濃度)が、15mEq/L程度にまで増加し、20程度だった[HCO3-]/[H2CO3]比が、0.9にまで、低下する。H2CO3は、CO2とH2Oになり、CO2は、速やかに肺から、排泄される
 CO2+H2O←H2CO3←H++HCO3-
 その結果、[H2CO3]は、元のレベル(2mEq/L程度)にまで減少し、pHは、7.1程度にまで、低下するに過ぎない。

 体内では、代謝で生成される二酸化炭素と水から、炭酸を経て、酸である水素イオン(H+)と、重炭酸イオン(HCO3-)を生成する。そして、酸(H+は、腎臓の尿細管で排泄し、重炭酸イオン(HCO3-)は、糸球体で濾過した後、主に、近位尿細管で再吸収している。代謝性アルカローシスで、血漿中の重炭酸イオン(HCO3-)が上昇すると、重炭酸イオン(HCO3-)は、尿細管での再吸収量が減少し、尿中に排泄される。 
 
 [H2CO3](H2CO3濃度)に関しては、H2CO3濃度(炭酸濃度)と溶解CO2濃度は、PCO2に比例する。
 血漿の[HCO3-]=血漿の{[全CO2]−[溶解CO2]−[H2CO3]−[カルバミノCO2]}
 pH=6.1+log{[全CO2]−aPCO2}/aPCO2
 ここで、[全CO2]は、血漿の全CO2(mM/L)、aは、定数(0.0314)、PCO2は、動脈血CO2分圧(mmHg)。動脈血CO2分圧(PaCO2)の正常値は、40mmHg。

 3.尿の緩衝機構
 a.重炭酸(NaHCO3):近位尿細管
 Na+は、近位尿細管でも、early proximal tubuleでは、尿細管腔側Na+/H+交換輸送体(NHE-3)により、細胞内に再吸収され、血管側のNa+/K+-ATPaseか、又は、Na+-HCO3-共輸送系(NBC-1)により、細胞外に汲み出される。
 水素イオン(H+)は、近位尿細管上皮細胞のNa+/H+交換輸送体(NHE)により、原尿中のNa+の再吸収と交換に、原尿中に排泄される。近位尿細管では、1ケのH+を原尿中へ排泄するのと交換に、1ケのNa+と、1ケのHCO3-が、尿細管細胞内に、取り込まれる(結果的に、NaHCO3が、血液中に再吸収される)。このように、結局、酸(H+)を排泄し、陽イオン(Na+)と、バッファー(HCO3-)を、体内に、保留する。
 糸球体濾液中のHCO3-濃度は、正常では、約24mEq/Lだが、リン酸度は、1.5mEq/Lしか、存在しない。従って、近位尿細管細胞から分泌されたH+は、ほとんど全てが、HCO3-と反応して、炭酸(H2CO3)となるので、糸球体濾液中(原尿)のpHは、変化しない。炭酸(H2CO3)は、近位尿細管細胞の尿細管腔側の刷子縁に沿って存在する炭酸脱水酵素(CA)の管内作用によって、二酸化炭素と水に分解される(遠位尿細管では、CAの管内作用がない)。二酸化炭素は、全ての細胞膜(生体膜)を容易に拡散出来るので、尿細管細胞に入って、炭酸(H2CO3)生成に使用される。

 糸球体で濾過された重炭酸イオン(HCO3-)の80〜85%は、近位尿細管で再吸収され、15%程度は、Henle係蹄で再吸収され、1〜2%は、遠位尿細管で再吸収される。その結果、尿のpHは、最大4.3程度まで、低下する。ただし、新生児や乳児は、近位尿細管では、糸球体で濾過された重炭酸イオン(HCO3-)の約65%しか、再吸収出来ない。

 b.二塩基性リン酸(H2PO4-):遠位尿細管、集合管
 遠位尿細管と集合管では、糸球体で濾過されたリン酸2ナトリウム(Na2HPO4)が、H+と反応し(H+を緩衝する)、リン酸1ナトリウム(NaH2PO4)に変わる際に放出されるNa+が、再吸収される(注2)。
 Na2HPO4+H+⇔NaH2PO4-+Na+
 近位尿細管で再吸収を免れたリン酸は、遠位尿細管や集合管に達する頃には、水が再吸収された結果、濃度が、非常に高くなっている。
 二塩基性リン酸(H2PO4-:pK=6.8)は、滴定酸として、重要。
 血漿中では、「H2PO4-」:[HPO42-]=1:4だが(注3)、pH4.5の尿中では、「H2PO4-」:[HPO42-]=200:1となる。

 c.アンモニア(NH3):近位尿細管、遠位尿細管、集合管
 アミノ酸(グルタミンなど)が、脱アミノ化(グルタミナーゼGDHによる)により生成されるアンモニア(NH3)は、脂溶性なので、脂質を含む細胞膜を容易に通過し、原尿中に分泌される。
 アンモニアは、原尿中に排泄されたH+と反応して、アンモニウムイオン(NH4-)となり(尿がアルカリ化する)、交換に、Na+Cl-のNa+が再吸収される。アンモニウムイオンは、アンモニアと異なり、比較的に脂質不溶性であり、また、陽性荷電の為、逆拡散しないので、尿細管腔に留まって、尿中に排泄される。慢性の代謝性アシドーシスでは、動脈血中のグルタミン濃度は、正常の70%に低下する。腎臓では、グルタミナーゼGDHPEPCKNHENa+-HCO3-共輸送系の遺伝子の発現が、増加する。3〜5日間以上の慢性アシドーシスでは、グルタミナーゼの活性が増大し、アンモニア生成量が、徐々に増加する。慢性アシドーシスでは、酸を中和し緩衝する為に、腎臓に大きな負担が掛かる。


 4.尿のpH

 健康人では、尿のpHは、6.0程度の酸性に傾いている。
 睡眠中は、呼吸による肺換気が低下して、体内にCO2が蓄積し、尿のpHは、強く酸性になる。
 不揮発性酸排泄量は、滴定酸度(非解離型排泄量+解離型排泄量)とアンモニウム塩量とを合計した量になる。
 不揮発性酸排泄量=滴定酸度(非解離型排泄量+解離型排泄量)+アンモニウム塩量
 通常、1日当たり、不揮発性酸排泄量=50〜70mEq、滴定酸度(非解離型排泄量+解離型排泄量)=20〜30mEq、アンモニウム塩量=30〜40mEq。

 a.尿中に排泄される酸
 尿のpHは、4.5〜7.8まで、変動し得る。
 尿のpH=-log[H+]が、最低の4.5([H+]=31.62277660μg/L)の場合、尿の水素イオン濃度([H+])は、血液(血漿)の水素イオン濃度([H+]=0.03981072μg/L)の800倍にまで、上昇している。
 これは、解離型の酸の濃度の増加によるが、この最低のpHの尿でも、1日の尿量を1.5Lとすると、
 0.000032(Eq/L)×1.5(L/日)=0.000048(Eq/日)=0.048(mEq/日)
 つまり、1日の不揮発性酸排泄量(50〜70mEq)の1,000分の1以下の酸しか、排泄出来ない。
 従って、代謝で生成される不揮発性酸の大部分は、解離型の酸としてでなく、非解離型の酸や、中性塩(アンモニウム塩:HA+NH3→NH4A)の形で排泄される

 b.滴定酸度
 尿を、規定アルカリ液(例えば、0.1NのNaOH)で、pH7.4まで、滴定すると、要した規定アルカリ液(アルカリ量)は、弱酸の総排泄量(非解離型排泄量+解離型排泄量)を示す。
 この時のアルカリ量(mEq)を、滴定酸度(titarable acidity)と言う。通常、滴定酸度は、1日当たり、20〜30mEq。
 解離型の酸量は、上述のように、0.048mEq/日程度なので、尿中の酸のほとんどは、非解離型で、特に、正常尿pHの範囲で非解離型として存在する、二塩基性リン酸(H2PO4-:pK=6.8)が、滴定酸として、重要。リン酸塩(リン酸2ナトリウム:Na2HPO4)の他、硫酸塩、クレアチニンなども緩衝液として働き(H+を緩衝する)、リン酸1ナトリウム(NaH2PO4)などが、滴定酸として、尿中に排泄される。
 なお、糸球体濾液中では、pK=6.1の重炭酸も主要緩衝物質。

 c.アンモニウム塩
 酸(HA)は、尿細管から分泌されるアンモニア(NH3)と結合し、中性のアンモニウム塩(NH4A)として、排泄される。
 HA+NH3→NH4A
 アンモニウム塩(NH4A)は、中性なので、滴定酸度には含まれない。
 不揮発性酸排泄量=滴定酸度(非解離型排泄量+解離型排泄量)+アンモニウム塩量
 (不揮発性酸排泄量は、1〜2mEq/kg/day、新生児や乳児では2〜3mEq/kg/day)

 正常人では、尿から、アンモニウム塩として排泄される量は、1日当たり、30〜40mEqであり、滴定酸の量より多い(滴定酸度は、1日当たり、20〜30mEq)。
 代謝性アシドーシスの際には、アンモニア分泌量が増加し、アンモニウム塩として排泄される量は、正常時の10倍以上になる。慢性アシドーシスでは、酸を中和し緩衝する為に、腎臓に大きな負担が掛かる。

 d.尿細管からの二酸化炭素の排泄
 代謝で生成された二酸化炭素の一部は、腎臓の尿細管から尿中に排泄される。

 近位尿細管で、Na+/H+交換輸送体(NHE)により、Na+の再吸収と交換に、原尿中に排泄されたH+は、大部分、原尿中のHCO3-(重炭酸イオン)と反応し、H2CO3(炭酸)となる。
 H2CO3
(炭酸)は、尿細管腔の細胞膜のCA(炭酸脱水酵素)の管内作用により、CO2(二酸化炭素)とH2O(水)とに、分解される。
 CO2(二酸化炭素)は、全ての細胞膜(生体膜)を容易に拡散出来るので、尿細管細胞に入って、H2CO3生成に使用される。
 H2CO3(炭酸)は、一部、水素イオンと、HCO3-(重炭酸イオン)に、瞬間的に電離する。
 HCO3-(重炭酸イオン)は、血管側のNa+-HCO3-共輸送系により、Na+と共に、細胞外(血管内)に、輸送される。
 このように、Na+/H+交換輸送体(NHE)により、原尿中にH+が排泄されても、近位尿細管細胞から分泌されたH+は、ほとんど全てが、HCO3-と反応して、H2CO3となるので、原尿中(糸球体濾液中)のpHは
、殆んど低下しない。
 なお、遠位尿細管では、CA(炭酸脱水酵素)の管内作用がないので、原尿中のH2CO3濃度は、変化しにくい為、常時、pHが低い。従って、遠位尿細管では、非解離型滴定酸量も多くなり、また、アンモニアの拡散も、促進される。その為、主に、滴定酸、アンモニウム塩は、遠位尿細管で、形成される

 e.尿細管からの総H+分泌量
 従って、尿細管から分泌されるH+の総量(総H+分泌量)は、HCO3-再吸収量と、滴定酸排泄量と、アンモニウム塩排泄量の合計量に相当する。
 尿細管総H+分泌量=HCO3-再吸収量+不揮発性酸排泄量(滴定酸度+アンモニウム塩量)

 正常人では、HCO3-再吸収量は、約4,500mEq/日、滴定酸排泄量と、アンモニウム塩排泄量(不揮発性酸排泄量)は、約70mEq/日なので、腎臓の尿細管の総H+分泌量は、4,570mEq/日とされる。このH+分泌量は、胃腺のH+分泌量の約10倍に相当する。

 5.電解質と酸塩基平衡
 a.Na+と酸塩基平衡
 
代謝性アシドーシスでは、細胞に於いて、H+が、血液中から、細胞内に入り、交換に、K+とNa+が、細胞内から、細胞外(血液中)に出て、血清K濃度が上昇する。pHが0.1低下すると、血清K濃度は約0.6mEq/L上昇する。しかし、血清Na濃度は、元々、血清K濃度の30倍程度高いので、通常、有意に上昇しない。
 腎臓では、重炭酸イオン(HCO3-)の再吸収(主に近位尿細管)、滴定酸の排泄、アンモニアの排泄により、H+が尿中へ排泄され、交換に、Na+が再吸収される。また、遠位尿細管や集合管で、H+とK+が排泄され、交換に、Na+が再吸収される。
 腎臓では、重炭酸イオン(HCO3-)の再吸収(主に近位尿細管)、滴定酸の排泄、アンモニアの排泄により、H+が尿中へ排泄され、交換に、Na+が再吸収される。また、遠位尿細管や集合管で、H+とK+が排泄され、交換に、Na+が再吸収される。
 糸球体で濾過されたNa+の2/3は、近位尿細管でNaClとして再吸収され、1/4は、Henle係蹄上行脚(thick ascending limbs of Henle's loop)で、Na+-K+-2Cl-共輸送体により、Cl-と共に、能動輸送される。
 その為、Na+の出納により、酸塩基平衡が影響されることは、少ないとされる。 

 6.輸液療法
 輸液(補液)には、アルカリ剤として、NaHCO3(炭酸水素ナトリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸ソーダ、重曹)でなく、C3H5NaO3(L-乳酸ナトリウム、乳酸ソーダ)が配合(複合)されることがある(乳酸リンゲル液)。乳酸リンゲル液(乳酸加リンゲル液)は、電解質組成が血漿に近い。乳酸リンゲル液は、生理食塩水で問題となる希釈性アシドーシスなどを起こすことが少ないと言われる)。乳酸リンゲル液は、血糖を維持するために、ブドウ糖(5%)、ソルビトール、マルトースのいずれかの糖を配合した糖加乳酸リンゲル液も販売されている。
 乳酸ナトリウム(乳酸Na)は、体内で代謝されると、最終的に、等モルのHCO3-を生じる。
 乳酸ナトリウムは、炭酸水素ナトリウム(重曹:注4)に比し、pHが高くなく、輸液しても急激に体液のpHを変化させない:HCO3-濃度は、投与後1〜2時間しないと、最初のピークに到達しない。
 乳酸ナトリウム(乳酸ソーダ)は、ブドウ糖(グルコース)と配合しても(複合剤を作製しても)、液を変色させない。また、Ca(カルシウム)を沈殿させない。
 乳酸ナトリウム(乳酸ソーダ)は、あくまでも、生体内で乳酸が代謝されてHCO3-になった時に、酸塩基平衡の緩衝能を現わす。従って、乳酸ナトリウムを含む輸液製剤は、乳酸血症の患者への投与は禁忌である(乳酸血症を増悪するおそれがある)し、重篤な肝障害のある患者には慎重投与が必要とされる(乳酸血症が誘発されるおそれがある)。肝障害や呼吸障害がある患者では、乳酸代謝が障害されているので、アシドーシス補正の為に、乳酸を投与することは、却って、有機酸アシドーシス(代謝性アシドーシス)を招くおそれがある(新生児・未熟児も同様)。
 乳酸ナトリウムの代わりに、酢酸ナトリウムを配合した輸液製剤もある。酢酸ナトリウムは、乳酸ナトリウムと同様に、体内で代謝されると、重炭酸イオン(HCO3-)を生じる。なお、乳酸の血中濃度は、3.3〜14.9mg/dLで、酢酸(アルコール代謝で生じる)の血中濃度は乳酸の約1/10とされる。乳酸は、主に骨格筋や赤血球、脳、皮膚、腸管などに於いて、嫌気的解糖の終末代謝産物として、約1,300mmol/1日産生され、大部分が、肝臓や腎臓で、TCA回路糖新生の基質として利用される。乳酸の最大処理能は、3,400mmol/1日と言われる(Berry)。運動負荷で増加する乳酸は、50%が運動していない筋肉や心臓で(酸化)、30%が肝臓で(糖新生や酸化)、20%が腎臓(糖新生や酸化)や脳(酸化)で、代謝される。酢酸の最大処理能は、7,200mmol/1日(300mmol/時)で、乳酸より約2倍処理が可能(Lindquist)。

 注1:緩衝作用を呈する化学反応の一般的な式は、下記の如く。
 HA⇔H++A-
 ここで、HAは、未解離の酸(緩衝作用を有する緩衝剤)、H+は水素イオン(酸)、A-は、解離したイオンを示す。HAを含む溶液に、HAよりも強い酸が加わると、上式の平衡が、左方に進み、強い酸のH+は、HAに取られるから、溶液中のH+の増加(溶液のpHの低下)は、緩衝される(抑制される)。反対に、HAを含む溶液に、塩基が加わると、塩基からのOH-が、HAからのH+により中和され水(H2O)となり、上式の平衡が、右方に進み、HAからH+が生じるので、溶液中のH+の減少(溶液のpHの上昇)は、緩衝される(抑制される)。
 上式の平衡に関して、酸(緩衝剤)の解離定数をKとすると、
 K=[H+][A-]/[HA]
 [H+]=K[HA]/[A-]
 log[H+]=logK+log[HA]/[A-]
 pH=-log[H+]、pK=-logKとすると、
  pH=pK−log[HA]/[A-]
  pH=pK+log[A-]/[HA](Henderson-Hasselbalchの式)
 このHenderson-Hasselbalchの式から解るように、緩衝液の緩衝作用は、log[A-]/[HA]=0、つまり、[A-]/[HA]=1だと、pHは、pKに等しい。体内では、体液のpHに近いpKを有する物質が、最も有効なバッファー(緩衝液、緩衝剤)になる。
 血液中のpHは、7.40なので、血漿蛋白質(血漿タンパク質)は、有するカルボキシル基(-COOH)や、アミノ基(-NH2)が解離するので、有効なバッファーとなる。
 血液のpHは、代謝産物(二酸化炭素、乳酸など)により、酸性に傾き易いが、pHの変動を抑える緩衝系としては、血漿蛋白質系の他に、重炭酸緩衝系(炭酸-重炭酸系)、リン酸系、ヘモグロビン系が、存在する。

 注2重炭酸イオン(HCO3-)は、糸球体で濾過された後、主に、近位尿細管で再吸収されている。
 図では、遠位尿細管にNa+-HCO3-共輸送系が存在し、Na+が再吸収されるように示した。Na+-HCO3-共輸送系(NBC-1)の近位尿細管以外の場所での役割は、不明とされる。Na+-HCO3-共輸送系(NBC-1)は、文献上、近位尿細管、Henle係蹄上行脚(TALs:Thick Acending Limb of Henle)、集合管(MCD:medullary collecting duct)のIC cells(intercalated cells)において、存在が確認されている。また、文献上、動物(Ambystoma tigrinum:トウブタイガーサラマンダー)の腎臓を用いた実験で、 近位尿細管(proximal tubule)のみならず、遠位尿細管(late distal tubule)にも、Na+-HCO3-共輸送系(NBC-1)が存在することが、確認されている。
 TALs(thick ascending limb cells and)や、MCD(medullary collecting duct)のIC cells(intercalated cells)でも、Na+-HCO3-共輸送系(NBC-1)は、basolateral(=basal and lateral)の細胞膜(plasma membranes)に、存在する(尿細管腔側でなく、血管側に存在する)。従って、これらの細胞でも、Na+-HCO3-共輸送系(NBC-1)は、HCO3-の血管内への取り込み(influx of HCO3-)に関与しているが、MTAL(medullary thick ascending limbs) でのHCO3-の(尿細管腔細胞から血液中への)再吸収(reabsorption)は、主に、basolateral Cl-/HCO3- exchangeが行うと言う。

 注3:血漿中では、無機リン酸は、H2PO4-と、HPO42-の二つの形で存在する。
 血漿中(血中)のH2PO4-濃度(「H2PO4-」)や、HPO42-濃度([HPO42-])は、正確な測定が困難。血漿中の「H2PO4-」は、凡そ0.26mEq/L、また、[HPO42-]は、2.1mEq/Lと言うデータもある。
 細胞外液のpHが酸性に傾くと、「H2PO4-」が比較的に増加し、[HPO42-]は少なくなる。
 通常、正常人血漿中のP(リン)の総量は、平均で、4mg%。

 注4:炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム、重炭酸ソーダ、重曹)の注射用医薬品として、メイロン静注がある。
 メイロン静注7%の場合、アシドーシスの補正には、必要量(mL)=不足塩基量(Base Deficit mEq/L)×1/4×体重(kg)を静脈内注射する。なお、薬物中毒の際の排泄促進、動揺病等に伴う悪心・嘔吐、及び、めまい並びに急性蕁麻疹には、炭酸水素ナトリウムとして、通常成人1回12〜60mEq(1〜5g:本剤14〜72mL)を静脈内注射する。
 メイロン静注8.4%の場合、アシドーシスの補正には、必要量(mL)=不足塩基量(Base Deficit mEq/L)×0.2×体重(kg)を静脈内注射する。

 参考文献
 ・鈴木泰三、他:臨床生理学 上巻(南山堂、1975年).
 ・藤森聞一、他:生理学 (南山堂、1974年).
 ・松田幸次郎、他:医科生理学展望 原書6版(丸善株式会社、1975年).
 ・河合忠:目で見る初期治療の検査計画と結果の読み方 エスアールエル(平成9年).
 ・Arvid B. Maunsbach, et al (2000) Immunoelectron Microscopic Localization of the Electrogenic Na/HCO3 Cotransporter in Rat and Ambystoma Kidney. J Am Soc Nephrol 11: 2179-2189,
 ・Henrik Vorum, et al (2000) Immunolocalization of electroneutral Na-HCO3- cotransporter in rat kidney. Am J Physiol Renal Physiol 279: F901-F909.
 ・地嵜剛史、他:電解質と酸塩基平衡の関係 小児内科 17: 1199-1204, 1985.
 ・五十嵐隆:腎尿細管性アシドーシス 小児科 33: 253-262, 1992.
 ・田川邦夫:からだの働きからみる代謝の栄養学 タカラバイオ株式会社(2003年).

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