Oisix(おいしっくす) DHCオンラインショップ【個人サイト様向け】 HP Directplus オンラインストア 富士通パソコンFMVの直販サイト富士通 WEB MART

 NKT細胞

 NKT細胞は、NK細胞とT細胞の両方の性質を合わせ持つ、新たに分画されたリンパ球。
 NKT細胞は、NK細胞受容体(CD161)と、抗原受容体(TCR類似)の両方を、発現している。

 NKT細胞は、CD3陽性で、抗原受容体(Vα14/Vβ8受容体)、NK細胞受容体(CD161)、抑制受容体(MHCクラスI分子受容体)の、3種類の受容体を保有している。
 ・抗原受容体(Vα14/Vβ8受容体):NKT細胞は、抗原提示細胞のMHC様分子(CD1d分子:注1)に結合した、糖脂質(α-GalCer)を抗原として認識して活性化され、IL-4IFN-γを産生。NKT細胞の抗原受容体は、T細胞の抗原受容体(TCR)と同様、αβ鎖から構成されているが、T細胞の抗原受容体(TCR)と異なり、α鎖は、多様性のない1種類のVα14受容体である。NKT細胞の抗原受容体のβ鎖は、T細胞の抗原受容体(TCR)と同様のVβ8.2鎖だが、組織によって異なる2〜3の均一な配列が主要で、多様性は少ない。
 ・NK細胞受容体(CD161):NKT細胞は、標的細胞の糖鎖注2)を認識して結合し、標的細胞を傷害する。
 ・NKT細胞は、NK細胞と同様に、抑制受容体(MHCクラスI分子受容体)を有しており、MHCクラスI分子を発現した正常細胞をは、障害しない。

 NKT細胞は、強力な免疫作用があり、インターフェロン-γ(IFN-γ)を産生し、自然免疫系と獲得免疫系の両方の細胞を活性化させる。
 NKT細胞を欠損したマウスは、ウイルス、細菌、寄生虫、カビ(真菌)などの病原体を排除出来ない。

 1.NKT細胞とは

 NKT細胞は、形態学的には、NK細胞に似た顆粒リンパ球。
 NKT細胞は、T細胞と同様に、胸腺内でも分化する。NKT細胞は、胸腺以外に、骨髄、肝臓、消化管でも、分化する。
 NKT細胞は、肝臓、骨髄に多いが、末梢血、リンパ節、脾臓、胸腺には少ない。NKT細胞は、胸腺リンパ球の0.4%、肝臓・骨髄のリンパ球の約25%、脾臓リンパ球の1〜2%を占める(マウス)。

 NKT細胞は、IFN-γ、IL-4を産生し、NK細胞やB1-B細胞など、自然免疫細胞を活性化させる(注3)。IFN-γ、IL-4は、相反する作用を持つ:IFN-γは、Th1細胞を活性化させ、IL-4は、Th2細胞を活性化させる。
 NKT細胞は、抗原提示細胞(樹状細胞)のCD1d分子(MHCクラスIb分子)に結合した、スフィンゴ糖脂質(α-ガラクトシルセラミドα-GalCer)を、抗原受容体(Vα14/Vβ8受容体)により特異的に認識して活性化し、IL-4とIFN-γを産生する:
 ・抗原受容体を介した刺激は、NKT細胞に、IL-4を産生させる。
 ・NKT細胞は、スフィンゴ糖脂質の誘導体(OCHという合成糖脂質)により、活性化されると、IL-4のみを産生するという。OCHは、多発性硬化症(MS、注4)の治療への応用も、試みられた。
 ・NKT細胞は、α1,3-オリゴ糖により、CD161が刺激され、活性化されると、IFN-γのみが産生される。
 ・スフィンゴ糖脂質(α-ガラクトシルセラミド)は、樹状細胞(抗原提示細胞)に、IL-12を産生させる。
 ・抗原提示細胞から産生されるIL-12は、NKT細胞に作用し、IFN-γを産生させたり、Fasリガンドを介して、細胞障害活性を示させる。 
 ・抗原提示細胞から産生されるIL-18は、NKT細胞に作用し、抗原受容体の刺激なしに、IL-12の作用(IFN-γ産生作用と細胞障害活性)を増強する。
 なお、スフィンゴ糖脂質(α-ガラクトシルセラミド:α-GalCer)は、ガラクトース(Gal)とセラミド(Cer)の結合体(シイタケ、サツマイモなどに含まれている)。NKT細胞は、(樹状細胞などのCD1d分子に結合した)内因性糖脂質のGPI(glycosyl phosphatidyl inositol:グリコシルホスファチジルイノシトール)を、(抗原受容体のVα14/Vβ8受容体により)特異的に認識する。

 NKT細胞は、NK細胞と同様に、抑制受容体を有しており、MHC分子を失った標的細胞だけを傷害する。NKT細胞は、細胞表面に、自己MHC分子を認識する受容体が存在し、自己MHCを有する細胞と結合した場合(出合った場合)は、抑制シグナルが入り、障害(攻撃)しない。

 NKT細胞は、NK細胞と同様に、Fasリガンドを発現したり、パーフォリン/グランザイムを産生し、標的細胞(癌細胞など)を障害する。
 NKT細胞の細胞障害活性は、キラーT細胞と異なり、放射線(注5)、抗癌剤、ステロイド剤で抑制されない。

 T細胞と同様に、NKT細胞と樹状細胞には、CD28/B7共刺激回路が、樹状細胞とNKT細胞には、CD40/CD154(CD40L)共刺激回路が、存在する。NKT細胞は、抗原受容体(Vα14/Vβ8受容体)からのシグナルに加え、これら補助受容体からのシグナルを得て、活性化される。
 活性化されたNKT細胞は、サイトカイン(IL-4、IFN-γ)を産生したり、Fasリガンドパーフォリン/グランザイムにより細胞障害活性を示す。
 a).マウスVα14NKT細胞
 マウスVα14NKT細胞は、T細胞、B細胞、NK細胞とも異なる。
 Vα14NKT細胞の抗原受容体(Vα14TCR)は、Vα14Jα281遺伝子によってコードされる、α鎖からなる。
 Vα14NKT細胞は、NK1.1+T細胞として分類されて来た細胞と同一。
 この抗原受容体(Vα14TCR)は、抗原提示細胞表面の、マウスCD1d分子(非典型的MHCクラスIb分子)を抗原提示分子として、「抗原」(リガンド)を提示される。

 Vα14NKT細胞の抗原受容体に、「抗原」(リガンド)として提示されるのは、特殊な糖脂質(α-ガラクトシルセラミド:α-GalCer)であり、ペプチド抗原ではない。なお、ヘルパーT細胞の抗原受容体(TCR・CD3複合体)は、抗原提示(呈示)分子のMHCクラスII分子に結合したペプチド抗原を、「抗原」として、提示される。

 α-ガラクトシルセラミド(α-GalCer:KRN7000)は、糖鎖(ガラクトース)が、セラミド(アシル化脂肪とスフィンゴシンから構成される)と、α結合している。α-ガラクトシルセラミドのセラミド部分(疎水性)が、NKT細胞のCD1d分子(抗原受容体)の疎水性ポケットに結合する。
 NKT細胞の抗原受容体のリガンドである、α-ガラクトシルセラミド(α-GalCer)を、極少量、担癌動物に投与(注射)すると、NKT細胞が選択的に活性化され、肝臓や肺への癌転移が、完全に抑制される。

 マウスVα14NKT細胞は、マウスCD1d分子に結合した、リガンドとしてのスフィンゴ糖脂質を、抗原受容体(Vα14TCR)で認識する。
 これは、ヒトヘルパーT細胞が、MHCクラスII分子に結合した、抗原としてのペプチド抗原を、TCR・CD3複合体で認識するのと、対照的。
 このようにして活性化されたVα14NKT細胞は、IFN-γやIL-4を産生すると同時に、強力な抗腫瘍活性を、生体内(in vivo)で示す。

 b).ヒトVα24NKT細胞
 マウスVα14NKT細胞に相当する細胞として、ヒトでは、Vα24NKT細胞が知られている。
 ヒトVα24NKT細胞の抗原受容体は、Vα24Vβ11遺伝子によってコードされるという。
 ヒトVα24NKT細胞は、抗原受容体であるVα24Vβ11と、NK細胞のマーカーであるCD161NKR-P1、マウスではNK1.1)分子を併せ持っている。 
 ヒトVα24NKT細胞も、スフィンゴ糖脂質(α-GalCer)をリガンドにする。
 ヒトVα24NKT細胞は、ヒト悪性腫瘍細胞株に対して、試験管内(in vitro)で、NK細胞様の標的細胞傷害活性を示す。
 ヒトVα24NKT細胞の抗腫瘍活性の発現には、抗原受容体よりも、NK細胞受容体(NKR-P1、CD3×CD161)が、関与すると考えられる。

 NKT細胞は、自己抗原反応性T細胞の活性を抑制する。
 ヒトVα24NKT細胞は、自己免疫疾患である、多発性硬化症の末梢血中で、著しく減少している。

 3.NKT細胞の生理的機能
 生体内での腫瘍の転移は、初期にはNKT細胞が抑制し、後期には、NK細胞が抑制すると考えられる。
 IL-12は、低濃度でも、NKT細胞の腫瘍転移抑制効果を増強し、NKT細胞からIFN-γを産生させる。
 NKT細胞は、免疫抑制作用があり、マウスの自己免疫疾患(SLE)の発症に先立って減少する。
 人間でも、SLE患者は、NKT細胞が減少している。
 Fas抗原を発現した、自己抗原反応性リンパ球を、NKT細胞が、アポトーシスで除去出来ないことが、自己免疫疾患の発症の原因とも考えられる。

 EAE (experimental autoimmune encephalomyelitis)は、多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)のマウスのモデルで、ミエリン塩基性蛋白 (MBP) に反応する、CD4Th1型のヘルパーT細胞クローンによって誘発される。
 抗NK1.1抗体をマウスに投与すると、EAEが劇症化することから、NKT細胞やNK細胞は、自己免疫疾患の悪化を抑制していると考えられる。

 心臓移植の際に、共刺激(副刺激)阻害治療をすると、移殖片は拒絶されないが、NKT細胞が欠損したマウスでは、移殖片は拒絶されるので、NKT細胞は、免疫寛容とも関連している。

 クリプトコッカスに感染すると、肺胞マクロファージなどからMCP-1が産生され、体循環からNK細胞及びNKT細胞が、感染局所に集積する。NKT細胞は、樹状細胞と共に所属リンパ節に移動し、(NKT細胞からのIFN-γの産生や、樹状細胞からのIL-12の産生を介して、)Th1細胞の分化を促進させる。

 1).移植免疫寛容の維持
 NKT細胞は、移植免疫寛容の維持に必要:マウスの肝臓に、ラットのβ細胞を移植し、少量の抗CD4抗体を投与すると、免疫寛容が導入され、ラットのβ細胞は、拒絶されずに、マウスの肝臓に、生着する。NKT細胞を欠損したマウスの肝臓に、ラットのβ細胞を移植すると、移植したラットのβ細胞は、破壊され、細胞が浸潤する。しかし、NKT細胞を欠損したマウスに、NKT細胞を移入すると、正常マウス同様に、ラットのβ細胞は、マウスの肝臓に、200日以上、生着する。

 2).結核性肉芽腫形成
 マウスに、結核菌Mycobacterium tuberculosis)の脂質・糖脂質成分を注射すると、肉芽腫が形成される。
 この結核性肉芽腫には、NKT細胞が、集積している。
 NKT細胞が欠損したマウスは、結核性肉芽腫の形成が、極端に低下する(正常マウスの肉芽腫に比して、直径は4分の1、体積は64分の1しかない)。

 結核菌は、細胞内寄生菌で、細胞内に侵入すると、サルモネラ菌、レジオネラ菌、百日咳菌と同様に、細胞のファゴゾームとリソゾームの融合を阻止し、ファゴゾーム内で生存し、増殖する。

 3).発癌の抑制
 化学的発癌剤(メチルコラントレン)をマウスに注射すると、3カ月程後に、肉腫が形成される。
 NKT細胞が欠損したマウスは、肉腫が形成が早く(約1カ月早い)、発癌頻度も3〜5倍、高い。従って、NKT細胞は、NK細胞同様に、発癌を抑制していると、推測されている。

 4).自己免疫疾患発症の制御
 自己免疫疾患発症マウスや、ヒトの自己免疫疾患(SLE、強皮症など)では、自己免疫疾患の発症に先立って、NKT細胞が、減少する。
 1型糖尿病NODマウス(nonobase diabetic mouse:非肥満型糖尿病マウス)が、糖尿病を発症する直前に、NKT細胞を移入すると、糖尿病の発症が、抑制される。なお、1型糖尿病NODマウスは、NKT細胞によるIL-4産生(Th2細胞も産生)や、IFN-γ産生(Th1細胞も産生)が、低下している(注3)。1型糖尿病NODマウスに、NKT細胞の抗原受容体のリガンドである、α-ガラクトシルセラミド(α-GalCer)を頻回に投与すると、糖尿病の発症が、抑制される。

 注1:CD1d分子は、MHCクラスIb分子。
 ヒトCD1分子には、グループ1(CD1a、CD1b、CD1c)と、グループ2(CD1d)が存在する。マウスやラットでは、グループ2CD1(CD1d)のみが存在する。グループ2CD1(CD1d)分子は、糖脂質やリン脂質と結合する。
 ヒトCD1遺伝子群は、第1染色体上に位置する(MHC分子は、第6染色体上に位置する)。

 注2グルコースブドウ糖)、ガラクトース(Gal)、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、フコース、キシロース、シアル酸などの糖は、複雑に連なって、糖鎖を形成する。

 細胞表面の糖鎖は、他の細胞(白血球、癌細胞など)、細菌、ウイルス、毒素などが、細胞に接着する際の結合部位(リガンド)となる。
 細菌は、表面のレクチンにより、宿主の糖鎖と結合する。

 糖鎖は、蛋白や脂質と結合して、糖蛋白質や、糖脂質となり、結合した蛋白質や脂質を安定化させたり、蛋白質のタグ(荷札)として細胞間での情報伝達に、重要な役割を果たしたり、プロテオグリカンとして水分を結合させ組織を保護する。

 糖鎖は、蛋白質に結合して、蛋白質のタグ(荷札)の役割を担う。また、糖鎖は、結合した蛋白質や脂質を安定化させる。シアル酸の付いた糖鎖が結合すると、陰性荷電により、血管内皮細胞と反撥し、肝臓などで、分解されにくくなる。

 蛋白質や脂質に糖鎖が結合したものは、複合糖質と呼ばれる。複合糖質には、糖蛋白質、糖脂質、プロテオグリカンに分類される。
 糖蛋白は、1本の蛋白質に、短い糖鎖(単糖が20個まで)が、1〜数百本の糖鎖が結合している。
 糖脂質は、1本の脂質分子に、1本の糖鎖が結合している。
 プロテオグリカンは、1本の蛋白質(コア蛋白)に、長い糖鎖(単糖が100〜1万個:グリコサミノグリカン)が結合している。
 糖鎖の単糖成分
 ヘキソース  ガラクトース(Gal)、マンノース(Man)、グルコース(Glc
 デオキシヘキソース  L-フコース
 へキソサミン  N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc
 シアル酸  N-アセチルノイラミン酸(NeuAc)、N-グリコリルノイラミン酸(NeuGc
 ペントース  キシロース、L-アラビノース

 注3:NKT細胞は、IFN-γも、IL-4も産生する。
 ヘルパーT細胞(CD4陽性細胞)は、Th1細胞(IFN-γ、IL-2、TNF-αを産生し、細胞性免疫に関与)と、Th2細胞(IL-4、IL-5、IL-6、IL-10などを産生し、液性免疫に関与)とに、分化している。
 NKT細胞は、NK細胞と比して、抗原受容体の構造が、T細胞に近い点で、進化しているが、ヘルパーT細胞と比して、サイトカイン産生能が分化しておらず、原始的(未進化)と言えよう。

 注4多発性硬化症(MS:multiple sclerosis)は、中枢神経性の脱髄疾患で、自己免疫で発症すると考えられている。
 多発性硬化症は、特定のMHCクラスII抗原を有する人が、罹患し易い。
 多発性硬化症は、脳神経組織のミエリン蛋白が、自己抗原となり、MHCクラスII抗原により提示され、ヘルパーT細胞(CD4陽性T細胞)が活性化され、免疫応答が起こると言われる。
 多発性硬化症(MS)に似た病像は、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)として、マウス、ラット、モルモットなどに形成することが出来る。動物に、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を発症させる為には、自己抗原となるミエリン蛋白として、ミエリン塩基性蛋白(MBP)、プロテオリピッド蛋白(PLP)、ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白(MOG)が用いられる。
 実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)は、実験的アレルギー性脳脊髄炎(Experimental Allergic Encephalomyelitis)とも呼ばれた。実験的アレルギー性脳脊髄炎は、モルモットやウサギやラットやニワトリに、脳や脊髄(ミエリン蛋白)のホモジネート(異種、同種、自己)を、Feundの完全アジュバントに混合して、皮下注射する。そうすると、2〜3週間後に、脱髄、グリア増殖、細小静脈周辺の円形細胞浸潤が、脊髄、脳幹、大脳、小脳に起こり、知覚障害、運動麻痺が現れる。髄液中のγ-グログりん(免疫グロブリン)が著明に増加する。実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)では、主に、細胞性免疫や、ADCCによって、細胞障害が起こる。

 多発性硬化症(の発症)は、複数の疫学的研究から、動物性脂肪の大量摂取との関連が、示唆されている。動物性脂肪(肉食、牛乳など)の摂取量を抑制すると、多発性硬化症(MS)の経過に好影響が得られる可能性が指摘されている(旧約時代のユダヤ人たちは、動物の脂肪は、燃やして、神に捧げていたが、このような慣習は、神のためでなく、人間の健康のための慣習だったのかも知れない)。
 肉食や、牛乳、バターなどで、動物性脂肪を取り過ぎると、多発性硬化症(MS)の経過が、悪くなる理由としては、動物性脂肪がエマルジョン(エマルション:emulsion)となり、溶け込んだペプチド抗原(ハプテン抗原)が、自己免疫疾患の発症を促進させのかも知れない。動物性脂肪が、食品添加物の界面活性剤により、エマルジョンを形成すると、ペプチド抗原が溶けた水溶液(水滴)が、動物性脂肪(トリグリセリドや脂肪酸)の中に分散し、油中水滴型アジュバントを形成し、少量のペプチド抗原でも、強い自己免疫反応を、長期間に渡って、引き起こすのかも知れない。油中水型 ( water in oil ) に、抗原が脂肪中(油中)に存在すると、抗原性(免疫原性)が増強される為、自己免疫疾患(多発性硬化症、クローン病など)や、アレルギー性疾患を、引き起こす怖れがある。
 クローン病潰瘍性大腸炎は、牛乳や乳製品の摂取を禁止し、自然の穀物(精製度が少ない穀物)、野菜、果物を摂取させると、改善したり、治癒すると言う。
 牛乳
バター、マーガリン、マヨネーズ、アイスクリームなどは、エマルジョン(乳濁液)なので、多発性硬化症(MS)の人には、良くないのかも知れない。また、動物性脂肪に多く含まれる飽和脂肪酸が、血行を悪くする(於血にする)のかも知れない。
 Swank食事療法では、多発性硬化症(MS)の発症は、動物性脂肪の摂取と関連していることに注目し、不飽和脂肪酸を1日最大15g摂取させ、動物性脂肪に富む加工乳製品は、摂取させない。魚料理を多くし、1日、植物性油15gと肝油5gを摂取させる。多発性硬化症(MS)144例が、このSwank食事療法を、34年間厳密に継続したところ、症状の進行度や、死亡率が低減した。しかし、このSwank食事療法の試みは、非対照試験で行われ、また、Swank食事療法が有効でなかった症例は、途中で脱落しているので、どの程度有効なのか、科学的根拠(エビデンス)に乏しい。
 不飽和脂肪酸は、ω3脂肪酸(n-3系の多価不飽和脂肪酸)は、抗炎症作用が着目されているが、ω6脂肪酸(n-6系の不飽和脂肪酸リノール酸)は、多発性硬化症(MS)の経過に、ある程度の(良い)効果を及ぼす。
 多発性硬化症(MS)では、骨粗鬆症の発症率が高く、ビタミンDとカルシウムを投与して、骨粗鬆症の発症の予防が試みられているが、高カルシウム血症を来たす恐れがある。
 ビタミンB12の欠乏は、多発性硬化症(MS)と類似した症状を来たすことがある。
 抗酸化物質に関しては、ビタミンC、A、Eを多く含む果物や野菜を摂取すると、多発性硬化症(の経過の改善)には、有益である。
 抗酸化物質のセレンは、多発性硬化症(MS)の経過に好影響を示す明確なデータが得られていない(セレンが、血液脳関門を通過可能なのかも、定かでない)。

 多発性硬化症(MS)は、日本などアジア諸国では、視神経脊髄型(optic-spinal multiple sclerosis:OSMS)と、大脳・小脳が侵されるclassic multiple sclerosis(CMS:conventional multiple sclerosis)との二大病型に分類される。
 欧米では、視神経・脊髄が限局して侵される炎症性脱髄疾患は、neuromyelitis optica(NMO:recurrent Devic病)と呼ばれる。NMOでは、急性期の脱髄病巣に、IgGや補体が沈着することから、液性免疫が発症に関与すると考えられて来た。
 NMO患者の血清中には、ヒトの大脳・小脳のpia、subpia、Virchow-Robin space、microvessel wallと反応するIgGクラスの抗体(NMO-IgG抗体)が存在することが見出された(Lennon等)。NMO患者の75%は、NMO-IgG抗体が陽性。NMO-IgG抗体は、aquaporin4水チャネル(AQP4)を認識する(NMO-IgG抗体≒抗AQP4抗体)。
 NMO-IgG抗体は、中高年女性で、頚髄〜胸髄にかけて3椎体長異常にわたる病変(long cord lesion:LCL)や、高度の下肢麻痺や、視力喪失を有していている症例で、陽性を示す。NMO-IgG抗体は、LCLを伴なわないOSMS症例やCMS症例では、全例、陰性を示す。

 注5放射線の障害には、確定的影響=被爆量がある一定量を越えないと障害(脱毛、白内障、不妊症など)が生じないと、確率的影響=被爆量が増えると障害(発癌など)が生じる確率が増加するとが、ある。
 発癌の発生(被爆の確率的影響)は、200ミリシーベルト(mSv)を越えない被爆量の場合には、増加しない(広島や長崎の原爆の際の調査結果)。
 大人は、甲状腺にヨウ素(I)が蓄えられているが、成長期の子供は、ヨウ素を甲状腺に取り込み続け、甲状腺ホルモンを作っている。I131(要素131)が体内に大量に入ると、将来、甲状腺癌を発症するリスクが高まる。40歳以下の人が、安定化ヨウ素(I)を飲むと、I131の甲状腺への取り込みが抑制できる(40歳以上の人は、甲状腺癌になるリスクが低い)。嗽薬(イソジンガーグルなど)に含まれるヨウ素は、I131の甲状腺への取り込みを抑制する効果がない。
 服に付着した放射性物質は、極微量なので、問題にする必要はない。
 日本人の日常生活の死亡リスク糖鎖の単糖成分
 要因  死亡リスク(人数/10万人/年)
 自動車事故  10
 鉄道事故   0.36
 航空機事故   0.044
 大気中汚染物質   0.37
 喫煙  28
 自然放射線   2
 被爆量(mSv):単純X線撮影=0.05〜0.5、CT撮影=2.4〜12.9、飛行機(東京〜ニューヨーク往復)=0.2、自然界での年間被爆量=2.4、放射線作業従事者の線量最大限度(年間)=50、リンパ球(末梢血中)が1回の全身被爆で減少する量=500、1回の全身被爆で死に至る量=7,000

 参考文献
 ・谷口克、他:標準免疫学(第2版、医学書院、2004年).
 ・山本一彦、他:カラー図解 靭帯の正常構造と機能 IV 血液・免疫・内分泌 (日本医事新報社、2002年).
 ・MSと栄養・食事療法との関係を評価 弊害は少ないが過度な期待は禁物 Medical Tribune 2005年9月29日号、4頁.
 ・新谷弘実:胃腸は語る−胃相腸相からみた健康・長寿法、弘文堂(平成10年初版、平成12年11刷).
 ・市川元基:多発性硬化症の病因はMyelin oligodendrocyte glycoprotein(MOG)に対する自己免疫反応か?、信州医誌、44(1):45〜46、1996年.
 ・浅野善博:質疑応答 細菌の細胞内感染の機序、日本医事新報、No.4313(2006年12月23日)、93-94頁.
 ・田中惠子:質疑応答 多発性硬化症とNMO-IgG/抗AQP4抗体、日本医事新報、No.4322(2007年2月24日)、120-121頁.
 ・日高徹、湯川宗昭:食品添加物事典、株式会社食品化学新聞社、平成9年発行.
 ・藤井清次、林敏夫、慶田雅洋:食品添加物ハンドブック 第ニ版、光生館、1965年初版第1刷発行、1997年第ニ版第1刷発行.
 ・増尾清:新・食品添加物とつきあう法−なくす日までの自己防衛−、農山漁村文化協会、1993年第1冊発行、1997年第10冊.
 ・鹿間直人:「放射腺被ばく」の現状について、お加減はいかがですか、307号、平成23年4月15日、JA長野厚生連佐久総合病院(発行責任者 伊澤敏).
 ・山口康夫:医免疫学、金原出版株式会社(昭和53年10月20日発行).

 |トップページ脂質と血栓の関係ミニ医学知識生化学の知識医学の話題小児科疾患生命の不思議リンク集