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 酸素と酸化チタン

 1.酸素原子の不対電子
 酸素原子(O)には、電子が、8ケ存在する:酸素原子は、K殻の1S軌道に2ケ、L殻の2s軌道に2ケ、2p軌道に4ケ、電子を有している。

 L殻の6ケの電子の内、4ケの電子は、結合性の2つの軌道(2s軌道と、1つの2p軌道)に、スピンが対(1/2、−1/2)になって存在している。
 しかし、2p軌道に存在する、残りの2ケの電子は、同じスピンの向き(1/2)のため、不対電子になって、反結合性の2つの軌道に入っている。 
 不対電子は、他の分子や原子から、電子を奪って、対になろうとするので、他の分子や原子を、酸化させる(注1)。

 2.一重項酸素、三重項酸素、スーパーオキシド
 原子や分子の全ての電子軌道に存在する、全ての電子のスピン角運動量の合計が、0の場合は「一重項状態」、1の場合は「三重項状態」と呼ばれる。

 酸素分子には、三重項状態(基底状態)と、2つの一重項状態が、存在する。
 三重項酸素(基底状態酸素)、一重項酸素、スーパーオキシドの電子配置と、エネルギー準位を、下図に示す。

 三重項酸素3O2):三重項酸素は、基底状態の酸素(基底状態酸素3Σg-)。三重項酸素では、反結合性の2つの軌道(πχ*πy*)に、同じ方向のスピン(↑:1/2のスピン)の電子が、1ケずつ、入っている(不対電子)。

 一重項酸素一重項酸素には、3Σg+と、1gとの、2つの一重項状態が、存在する。三重項酸素(基底状態の酸素分子)が、光などのエネルギーを吸収し、励起状態になり(電子遷移)、反結合性の軌道(πy*)の不対電子1ケ(1/2のスピン)が、スピンの向きを変える(−1/2のスピンになる:スピン反転)と、3Σg+の一重項酸素になる。
 3Σg+の一重項酸素のは、溶液中の寿命は、極めて短く、直ちに、反結合性の軌道(πy*)の不対電子(−1/2のスピン)が、別の軌道(πχ*)に入る。そして、別の軌道(πχ*)に存在した、異なるスピン(1/2のスピン)の不対電子と、対になって、互いのスピンを打ち消すような状態の、1gの一重項酸素になる。通常の反応に関与するのは、1gの一重項酸素で、三重項酸素(基底状態の酸素分子)より、94.1KJ/mol、エネルギー準位が、高い。一重項酸素は、活性酸素の1種。

 スーパーオキシド(・O2-):三重項酸素(基底状態の酸素分子)は、容易に電子を受け取り、反結合性のπ*2p軌道(πχ*)の片側に、既に存在する電子のスピン(1/2のスピン)と、反対のスピン(−1/2のスピン)を持つ電子が、1ケ入り、対を形成すると、スーパーオキシド(ス−パーオキシドラジカルアニオン)になる。スーパーオキシドも、活性酸素の1種。

 3.酸化チタン
 
酸化チタン(TiO2)は、光が当ると、強い酸化力を示し、周囲の物質から、電子を、引き抜く(標準酸化還元電位は、3.0V)。
 酸化チタン(TiO2)は、電子が、チタン(Ti)から、酸素(O)に移動して、Ti4+(O2-)2と、イオン性の強い構造になる。
 電子配置は、
 TiO2     Ti:3d2 4s2
          O:2p4
 Ti4+(O2-)2 Ti4+:3d0 4s0
          O2-:2p6
 Ti4+(O2-)2は、価電子帯(Oの2p軌道からなる)と、伝導帯(Tiの3d軌道からなる)に別れている。バンドギャップエネルギーに相当する、380nmより、短い光(紫外線)が当ると、価電子帯(O)の電子が、励起して、伝導帯(Ti)に上がる:電子は、エネルギー準位の低い、酸素(O)の軌道にいるが、光のエネルギーを吸収して、励起し、チタン(Ti)の軌道に、移る。殻になった酸素の軌道は、外から、電子を奪おうとするので、周囲の物質(有機物など)は、電子を引き抜かれて、酸化される。

 価電子帯では、水(H2O)が、加水分解され、酸素(O2)が、生成する(酸化反応)。伝導帯では、水素イオン(H+:プロトン)に、電子が移行し、水素(H2)が、生成する(還元反応)。また、価電子帯では、水酸化イオン(HO-)やヒドロキシルラジカルHO・)が、伝導帯では、スーパーオキシド(・O2-)が、生成されるという。
 このような性質から、酸化チタンは、光触媒として、利用されている。
 なお、水(H2O)は、125nm(10eV)の光で、加水分解され得る。
 また、塩素(Cl2)の酸化還元電位は、1.36V。


 注1酸素分子(O2)では、2ケの酸素原子に存在した、計4ケの不対電子の内、酸素原子の共有結合に際して、2ケの不対電子は対をなすが、残りの2ケは不対電子のままである。
 このように、酸素原子は、ビラジカル(・O-O・)だが、活性酸素ほど、反応性(酸化力)は、強くない。
 また、酸素分子の全スピン量子数は、1となる。

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