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 cAMP

 cAMP(cyclic AMP)は、細胞膜に局在するアデニル酸シクラーゼ(AC)により、ATP(adenosine triphosphate)から合成される。

 PGE2は、EP4受容体を介して、cAMPを増加させ、肥満細胞からのヒスタミン遊離の抑制、血小板凝集の抑制が、起こる。
 PGE2は、EP3受容体を介しては、cAMPを減少させる。

 アデニル酸シクラーゼ(AC)は、リガンドが、細胞膜の受容体に結合した際、GTP結合蛋白G蛋白連結型受容体:注1)を介して、活性化される。
 cAMPは、Aキナーゼ(protein kinase A:PKA)を活性化させる.
 cAMPは、ホスホジエステラーゼ(phosphodiesterase:PDE)で不活化され、AMP(adenosine monophosphate)に、変換(転換)される。

 1.インスリン
 1).インスリンは、cAMPを減少させ、ホルモン感受性リパーゼによるlipolysisを抑制する
 脂肪組織や肝臓のホルモン感受性リパーゼ(HSL)は、cAMP濃度が上昇すると活性化され、中性脂肪やコレステロールエステルを分解し、脂肪酸を遊離させる。
 インスリンは、ホスホジエステラーゼ(PDE)を活性化させ、cAMPを5'AMPに異化させ、cAMP濃度を減少させ、ホルモン感受性リパーゼによる、中性脂肪などの分解(lipolysis)を抑制する
 なお、インスリンは、脂肪組織のリポ蛋白リパーゼ(LPL)の活性をは、上昇させる。
 PGE2は、脂肪組織では、EP3受容体を介して、アデニル酸シクラーゼ(AC)を抑制し、cAMPの産生を抑制し、ホルモン感受性リパーゼ(HSL)による、中性脂肪の分解を、抑制する。

 2).細胞内cAMPが増加すると、インスリン分泌は促進される
 膵臓の細胞では、細胞内cAMPが増加すると、結果的に、電位依存性カルシウムチャネル(VDCC)が開いて、Ca2+が細胞内に流入して、インスリンの分泌が起こる。
 グルカゴン、アドレナリン、テオフィリンなどは、cAMPを増加させる。cAMPは、炎症性細胞からの化学伝達物質の遊離を抑制する。テオフィリンは、PDEを抑制し、cAMPを増加させ、用量依存的に気管支拡張作用を示したり、ステロイド剤には無い抗炎症作用(好中球性炎症)を示す。テオフィリンは、cAMPを分解するフォスフォジエステラーゼ(PDE)を阻害して、cAMP濃度を上昇させると考えられて来たが、アデノシンを抑制して、カテコールアミンによるアデニル酸シクラーゼの活性化を促進させ、cAMP濃度を上昇させるとも言われる。
 グルカゴンは、肝臓のcAMP濃度を著明に増加させるが、筋肉でのcAMP濃度の増加作用は、非常に弱い。

 なお、cAMPは、phosphrylaseによるグリコーゲン分解(glycogenolysis)を促進し、glycogen synthaseによるグリコーゲン合成(glycogenesis)を抑制する。
 glycogen synthaseは、インスリンにより、活性型の比率が増加するが、酵素蛋白量は変化しない。
 インスリンは、肝臓や脂肪組織では、cAMP濃度を減少させ、synthase I Kinaseの活性化を抑制し、glycogen synthaseの活性型が、非活性型に変化するのを抑制し、glycogen synthaseの活性型を増加させる。筋(骨格筋)では、cAMP濃度が減少しないで、glycogen synthaseの活性型が増加する。

 2.プロスタグランジン
 プロスタグランジン(PGE2PGI2など)は、EP4受容体を介して、アデニル酸シクラーゼ(AC)を活性化させ、cAMP濃度を増加(上昇)させ、細胞内Ca2+濃度を低下させる。
 その結果、プロスタグランジン(PGE2PGI2など)は、肥満細胞からのヒスタミン遊離の抑制、血小板凝集の抑制を、起こす。
 cAMPの増加は、COX-2の誘導を高める(a positive feedback loop)。

 PGE2は、脂肪組織では、EP3受容体を介して、アデニル酸シクラーゼ(ACを抑制し、cAMP濃度を減少させ、ホルモン感受性リパーゼ(HSL)による、中性脂肪の分解を、抑制する。

 PGE2は、Na+,K+-ATPaseを抑制して、尿細管でのNa再吸収を抑制する:PGE2は、尿細管では、抑制性G蛋白(Gαi)を介して、cAMPの産生を抑制し、PKA(Aキナーゼ)によりNa+,K+-ATPaseが刺激されることを抑制し、Na再吸収を抑制する。なお、腎臓の糸球体では、高濃度のPGE2は、輸入細動脈を拡張させ、レニン分泌を増加させ、Na再吸収を促進させると考えられる。PGE2は、腎不全では、産生が増加し、腎糸球体の細動脈を拡張させ、糸球体血流量を維持している。

 3.アデニル酸シクラーゼとホスホジエステラーゼ
 アデニル酸シクラーゼ(adenylate cyclase:AC)は、ATPからcAMP(cyclic AMP)を生成する。
 cAMPは、ホスホジエステラーゼ(phosphodiesterase:PDE)により、5' AMPに、分解される。

 アデニル酸シクラーゼは、エピネフリン、ACTH、TSH、グルカゴン、成長ホルモンにより促進される。
 アデニル酸シクラーゼは、インスリン、プロスタグランジン(PGE1)、ニコチン酸により、抑制される。

 ホスホジエステラーゼは、インスリン、甲状腺ホルモン、メチルキサンチンにより、抑制される。 

 ホスホジエステラーゼ(phosphodiesterase:PDE)には、複数のアイソフォームが存在する。
 PDEIは、脳、平滑筋、心臓に、PDEIIは、脳、副腎に、PDEIIIは、心臓、平滑筋(血管平滑筋など)、脂肪細胞、血小板に、PDEIVは、免疫細胞、脳、その他全身(血管内皮細胞など)に、PDEVは、平滑筋、血小板、小脳に、PDEVIIは、骨格菌、免疫細胞、脳に、PDEVIIIは、免疫細胞、肝臓、腎臓、精巣、甲状腺に、PDEIXは、脳、腎臓に、PDEXは、脳線条体、精巣に、PDEXIは、骨格筋、精巣、前立腺、下垂体に、それぞれ存在する。
 血小板内では、PDEIII、PDEIVにより、cAMPやcGMPが分解され、細胞内のCa2+濃度が上昇し、血小板が活性化される。
 血管内皮細胞では、PDEIVにより、NO産生やPGI2作用が低下し、血小板凝集が促進(血小板活性化機能が減弱)し、血管内皮細胞表面に接着分子が発現する。
 血管平滑筋では、PDEIIIにより、細胞内のcAMP濃度やcGMP濃度が低下し、平滑筋細胞が収縮し、血管が収縮し、血流が低下する。
 PDEを阻害する薬剤(イブジラストなど)は、細胞内のcAMP濃度やcGMP濃度を上昇させ、血管拡張、気管支拡張(気管支平滑筋弛緩)、抗炎症、抗血小板(血小板凝集抑制)、細胞保護、接着分子抑制などの作用を示す。イブジラストは、血管平滑筋細胞のPDEIIIを阻害し、血管平滑筋細胞を弛緩させ、血管拡張作用を示す(脳血流量が増加する)。イブジラストは、血小板のPDEIIIを阻害し、血小板の活性化を抑制(血小板凝集を抑制)し、抗血栓作用を示す:血小板放出因子(α顆粒から放出される)であるβ-TG(β-thromboglobulin)やPF-4(platelet factor 4)の血中濃度が低下する。イブジラストは、血管内皮細胞のPDEIVを阻害し、障害された血管内皮細胞に接着分子が発現するのを抑制し、抗炎症作用(血管内皮保護作用)を示す。

 4.その他
 ・cAMPは、PKA(Aキナーゼ)を介して、Na+,K+-ATPase、Na+チャネル(ENaC)、K+チャネル、Cl-チャネル、Na+-K+-2Cl-共輸送体K+-Cl-共輸送体を活性化させる。
 cAMPは、PKAを介して、Na+-HCO3-共輸送系Na+/H+交換輸送体(NHE3)を抑制する。
 cAMP濃度が増加→PKAが活性化→Na+,K+-ATPaseの発現が増加→尿細管からのNa+再吸収が増加
 なお、cAMP以外にも、アルドステロンは、細胞膜表面のNa+,K+-ATPase発現を増加させる。
 PKC(Cキナーゼ)は、Na+/H+交換輸送体と、Na+-HCO3-共輸送系とを、活性化する

 ・解糖では、フルクトース 6-リン酸が、6-ホスホフルクトキナーゼ(PFK)により、不可逆的に、フルクトース 1,6-ビスリン酸(フルクトース 1,6-ニリン酸)に、変換される(律速段階)。
 PFKは、cAMP、ADPにより活性化され、クエン酸、ATP、H+、長鎖脂肪酸により活性を抑制される。

 ・ADH(Vasopressin)は、V2receptorを介して、アデニル酸シクラーゼ(AC)を活性化させ、cAMPを増加させる。

 ・血管平滑筋には、アドレナリン(エピネフリン:E)のβ2受容体が、存在する。β2受容体は、アドレナリンが結合すると、刺激性G蛋白(Gαs蛋白)を介して、アデニル酸シクラーゼ(AC)を活性化する。アデニル酸シクラーゼ(AC)により生成されるcAMPは、Aキナーゼ(PKA)を活性化させる。Aキナーゼ(PKA)は、筋小胞体のCaポンプを活性化させ(Ca2+-ATPaseのリン酸化)、細胞内Ca2+濃度を、若干低下させる。また、Aキナーゼ(PKA)は、ミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)を不活性化(リン酸化)させる。このように、cAMPは、Aキナーゼ(PKA)を活性化させ、血管平滑筋を弛緩させる。

 ・cAMPは、細胞内Ca2+濃度を、若干低下させる。
 
血管平滑筋では、アデニル酸シクラーゼ(AC)が活性化され、細胞内cAMP濃度が上昇すると、Aキナーゼ(PKA)が活性化され、Caポンプが活性化され、細胞内Ca2+濃度が、若干低下する。
 cAMP濃度が上昇すると、血小板内の遊離Ca2+濃度が減少し、血小板の二次凝集は抑制される。

 ・アデノシンは、血管のA2受容体を介して、cAMPを増加させ、血管を拡張させる。
 cAMPが増加すると、レニンが分泌される:糸球体血流量が低下し、虚血になると、筋原反応で、アデノシンが産生され、輸入細動脈が拡張し、顆粒細胞からレニンが分泌される。また、原尿中Cl-濃度が低下しても、アデノシンが産生され、輸入細動脈が拡張し、顆粒細胞からレニンが分泌される(注2)。

 ・cAMPは、細胞のグルコース濃度が低下すると、上昇する。
 cAMPは、6-ホスホフルクトキナーゼ(phosphofructokinase:PFK)を活性化させ、解糖を促進させる。
 cAMPは、glycogen synthaseの活性を抑制し、グリコーゲン合成を抑制し、phosphorylaseの活性を促進し、グリコーゲン分解を促進する(グルコース濃度が上昇する)。


 ・ATPが減少すると、cAMP濃度が上昇する。
 ATPの減少→→COX-2の活性化→PGE2の産生→adenyl cyclaseの活性化→cAMP濃度の上昇→細胞内Ca2+濃度の低下→NOの産生→→血管拡張

 注1GTP結合蛋白G蛋白)を介して、ホスホリパーゼC(PLC)が活性化されると、イノシトール代謝を経て、小胞体から細胞質内へCa2+の放出や、Cキナーゼ(PKC)の活性化が、起こる
 ホスホリパーゼC(PLC)は、ホスファチジルイノシトール2リン酸(PIP2)を分解し、イノシトール3リン酸(IP3)と、ジアシルグリセロール(DAG)とが、生成される
 イノシトール3リン酸(IP3)は、小胞体Ca2+チャネル(IP3受容体)に結合して、Ca2+を細胞質ゾルに放出させたり、ミトコンドリアから、Ca2+を細胞質ゾルに放出させ、細胞内Ca2+濃度を上昇させる。細胞膜のCaチャネルからも、Ca2+が細胞内に流入する
 ジアシルグリセロール(DAG)は、Cキナーゼ(PKC)を活性化させる。 

 注2:この機序は、原尿中Cl-濃度が低下→マクラデンサ細胞内Cl-量の減少→マクラデンサ細胞内ATPの減少→アデノシン増加→A2受容体(A2A、A2B)賦活→G蛋白→adenyl cyclase活性化→細胞内cAMP濃度増加→PKA活性化→Ca2+の細胞内流入の抑制→細胞内Ca2+濃度の低下→血管平滑筋弛緩→輸入細動脈拡張→顆粒細胞からのレニン分泌→アンジオテンシンI産生→アンジオテンシンII産生→アルドステロン分泌→腎臓でのNa+再吸収の増加→全身血圧の回復、と思われる。

 参考文献
 ・一色玄:インスリンの作用機序−生化学的過程を中心に− 小児内科 Vol.17 No.12、21-26、1985年.
 ・Eric Feraille, et al (2001) Sodium-Potassium-Adenosinetriphosphatase-Dependent Sodium Transport in the Kidney: Hormonal Control. Physiol. Rev. 81: 345-418.

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