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 好中球エラスターゼ
 好中球エラスターゼは、炎症の際に好中球から放出され、微生物、異物を分解し、生体を防御する。しかし、好中球エラスターゼは、自己の組織を障害する恐れがある。
 
 1.好中球エラスターゼ
 好中球エラスターゼ(elastase)は、分子量が約3万の中性プロテアーゼであり、アズール顆粒(ライソゾーム)に存在する。
 好中球エラスターゼは、生理的状態では、好中球内で、貪食した細菌や異物を、消化、分解し、好中球外では、エラスチン、コラーゲン(III型、IV型)、フィブロネクチン、免疫グロブリン、血液凝固第XIII因子などを分解し、組織生合成を調節する。
 好中球エラスターゼは、病的状態では、生体の構成成分、例えば、弾性線維、プロテオグリカン、膠原線維、アンチトロンビンIII、α2-plasmin inhibitorを不活化する。好中球エラスターゼが、アンチトロンビンIIIのへパリン結合部に作用して、アンチトロンビンIIIを不活化させると、DICを引き起こす。
 好中球エラスターゼは、血液中では、protease inhibitor(α1-protease inhibitor、α2-macroglobulin、inter-α-trypsin unhibitor)と結合している。

 好中球から放出された好中球エラスターゼは、血液中では、3msecで、α1-アンチトリプシン(α1-AT)により、不活化される:α1-ATを、エラスターゼが、分解する。しかし、炎症が起きている組織では、α1-ATは、好中球から放出される活性酸素、ミエロペルオキシダーゼ、ラクトフェリンにより酸化される結果、好中球エラスターゼは、不活化されずに、組織を障害するとされる。

 好中球エラスターゼは、基質特異性が少ない。
 そのため、好中球エラスターゼは、過剰に放出されたり、α1-AT(α1-antitrypsin)などのインヒビターが欠乏していると、生体構成成分をも分解し、好中球エラスターゼによる、自己の組織障害を引き起こす恐れがある。

 炎症の際には、好中球が炎症巣に浸潤するが、エラスターゼのように、白血球が産生する物質により、却って、炎症が引き起こされる側面がある。
 細胞(好中球)内の顆粒中の酵素が、細胞外へ遊離するには、陥入した細胞膜と、内部のリソゾーム膜とが融合して、リソゾーム酵素が遊離する場合と、ひずみに対して、リソゾーム膜が大きい分子を通過するように変化する場合とがある。
 ステロイド剤(副腎皮質ホルモン)は、適切な条件下では、リソゾーム膜安定化作用がある。ステロイド剤(副腎皮質ホルモン)の他に、アスピリン、フェニルブタゾン、インドメタシン、フルフェナム酸にも、リソゾーム膜安定化作用がある。

 好中球(顆粒球)は、活性化されると、粘膜障害、組織障害を起こす。
 ストレスにより、交感神経が緊張すると、アドレナリンが副腎髄質から放出され、好中球が活性化される。
 ストレスにより、交感神経を緊張させるアドレナリンが、副腎髄質から放出され、好中球が活性化される。そうすると、白血球同士や、白血球と血管内皮細胞とが、結合し易くなる(ベタベタ血液)。

 H2受容体拮抗剤の塩酸ラニチジン(医薬品名:ザンタック)は、好中球の細胞内のCa2+濃度を低下させ、好中球エラスターゼの放出を、抑制する。

 2.ウリナスタチン
 ウリナスタチン(UTI、医薬品名:ミラクリッド)は、トリプシン(trypsin)など、種々の酵素の阻害作用がある多価酵素阻害剤で、ヒト尿から精製される。
 ウリナスタチンは、活性化された好中球からのエラスターゼ放出を阻害したり、エラスターゼ活性を抑制する(放出されたエラスターゼを不活化させる)。また、ウリナスタチンは、血管内皮細胞表面の接着分子の発現や、活性化された好中球と血管内皮細胞との接着を阻害し、血管内皮細胞障害を抑制する。ウリナスタチンには、酸素ラジカルの除去作用もあると言う。
 
 ウリナスタチンは、ライソゾーム膜の安定化作用により、各種蛋白分解酵素の遊離を抑制する。抑制される酵素には、トリプシン、キモトリプシン、プラスミン、ヒアルロニダーゼ、クレアチンホスホキナーゼ(CPK)、リパーゼ、カルボキシペプチダーゼBなどがある。

 ウリナスタチンの副作用としては、肝機能障害、白血球減少、発疹、下痢、血管痛がある。

 3.その他
 ・エラスターゼは、膵臓に由来する(膵外分泌酵素)。
 エラスターゼは、膵臓の腺房細胞にプロエラスターゼとして存在していて、腸内に分泌されて、トリプシンにより活性化され、エラスターゼになる。
 エラスターゼは、膵臓以外に、動脈壁、白血球、血小板、脾臓などにも存在するが、血中のエラスターゼは膵臓由来のものが殆どと言われる。
 エラスターゼは、血中では、結合組織のエラスチン(弾性繊維)を特異的に分解する。

 ・エラスターゼには、エラスターゼ1(anionic elastase)と、エラスターゼ2(cationic elastase)の2種類が存在する。
 エラスターゼ1は、結合組織分解作用が強く(急性出血性膵炎での血管壁の破壊に関与する)、エラスターゼ2はエラスチン(弾性繊維)分解作用が強い。

 ・エラスターゼES製剤(商品名:エラスチーム錠)は、粥状動脈硬化病変において、動脈壁への脂肪沈着を抑制し、動脈壁のエラスチンの変性やコラーゲンの異常発生を抑制し、動脈硬化の発症を抑制し、動脈硬化の退縮を促進させる。エラスターゼESは、コレステロールの動脈壁への沈着を抑制し、また、コレステロールの動脈壁からの除去を促進する。エラスターゼESは、動脈壁の弾性線維エラスチンの変性を抑制し、エラスチン生成を正常化する。
 動脈硬化症や老年者では、膵エステラーゼ活性が、著しく低下している。
 エラスチーム錠(エーザイ株式会社)は、成分が、ヒト膵臓中から発見されたエラスターゼESと呼ばれる酵素(製剤は、ブタの膵臓からエラスターゼESを精製して製造している)。
 エラスターゼESは、エラスチンを分解し、カゼイン、フィブリン、変性コラーゲンなども分解する。
 エラスターゼESは、リポ蛋白代謝や、脂質成分の移行を調節し、血清脂質異常を改善する。エラスターゼESは、HDL(HDL-コレステロール)、アポA蛋白(アポ蛋白)、燐脂質をは、増加させる。エラスターゼESは、β‐リポ蛋白、過酸化脂質、遊離脂肪酸VLDLLDLを、減少させる。

 参考文献
 ・渡辺言夫:消炎鎮痛剤の作用機序と使い方 小児内科 Vol.19 No.6, 789-794, 1987年.
 ・大槻眞:エラスターゼ1、最新 臨床検査のABC、日本医師会雑誌、第135巻・特別号(2)、生涯教育シリーズ−70、S130-S131頁、平成18年(2006年)10月.

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