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 糖新生の経路

 【ポイント】
 肝臓は、絶食時等に、糖新生により、アミノ酸等から、ブドウ糖を作り出して、血液中に供給する。絶食時には、アミノ酸(アラニン、アスパラギン酸等)、乳酸、グリセロールが、糖新生の炭素源になる。
 糖新生(細胞質内)するのに必要なエネルギー(NADH2+等)は、脂肪酸をβ-酸化ミトコンドリア内)すること等によって、生成(供給)される。脂肪酸は、体内では、糖に変換出来ないが、脂肪酸のエネルギーは、糖新生に利用される。
 脂肪酸のβ-酸化に異常があると(FAOD等)、糖新生も障害され、絶食時等に、低ケトン性低血糖を来たす。
 肝臓では、絶食時等糖新生が行われる際には、リンゴ酸輸送系(リンゴ酸-α-ケトグルタル酸輸送体)により、糖新生に必要なNADH2+を、ミトコンドリ内(マトリックス)から、ミトコンドリア外(細胞質ゾル)に、輸送する。
 糖新生の経路が肝臓に存在することにより、肝臓で、脂肪酸をβ-酸化して得られたエネルギーを、グルコースとして蓄積し、他の組織で、利用することが出来る。


 絶食時等には、脳に必要な血糖を維持するために、肝臓で、ブドウ糖グルコース)が、アミノ酸(糖原性アミノ酸注1)の炭素骨格、ピルビン酸、乳酸(注2)、TCA回路の中間体、中性脂肪の加水分解で生成されるグリセロール(グリセリン)等から、糖新生(gluconeogenesis)されます。
 アミノ酸(糖原性アミノ酸)の炭素骨格、ピルビン酸、乳酸、TCA回路の中間体は、オキサロ酢酸を経由して、糖新生に利用されます。

 空腹時には、血糖値(血中のグルコース濃度)は、グリコーゲン分解(glycogenolysis)と、糖新生(gluconeogenesis)とによって維持されます。
 糖新生は、主に肝臓で行われます。糖新生は、一部、腎臓でも行われます。飢餓状態が進行すると、腎臓での糖新生が、重要になります。
 糖新生の90%は、アミノ酸(糖原性アミノ酸)の炭素骨格が、利用されます。糖新生の10%は、グリセロール(脂肪組織でトリグリセリドが分解され生成される)、乳酸、ピルビン酸(筋肉でアラニンに変換され肝臓に輸送される)の炭素骨格が利用されます。

 脂肪酸は、β-酸化により、アセチル-CoAに分解されます。
 動物の体には、アセチル-CoAを、オキサロ酢酸に変換する代謝経路(酵素)は、ありません。
 従って、脂肪は、ブドウ糖グルコース)に変換されません。
 このような糖新生(gluconeogenesis)は、主に肝臓で行われます。
 インスリンは、肝臓での糖新生を、抑制します。

 肝臓は、空腹時や夜間や絶食時等には、糖新生により肝静脈から血中にブドウ糖を供給し、食事を摂取して門脈を経てブドウ糖が流入すると、門脈血からブドウ糖を取り込み、肝静脈へのブドウ糖供給を停止します。
 糖新生の経路は、解糖の逆経路ではありません。
 ピルビン酸をグルコースまで糖新生(gluconeogenesis)する際に、非可逆的な段階を触媒するのは、下記の4つの酵素です。

 1.ピルビン酸カルボキシラーゼ(pyruvate carboxylase)
 ピルビン酸カルボキシラーゼは、ミトコンドリア内で、ピルビン酸を、オキサロ酢酸に変換する酵素。
 脂肪酸がβ-酸化されて生じるアセチル-CoAは、グルコースに変換されませんが、アセチル-CoAにより、ピルビン酸カルボキシラーゼが、活性化されます(ピルビン酸キナーゼの迂回路)。


 2.MDH(リンゴ酸脱水素酵素:malate dehydrogenase)
 ミトコンドリア内の オキサロ酢酸は、ミトコンドリア内膜を通過出来ないので、一旦、MDHにより、リンゴ酸になって、リンゴ酸-アスパラギン酸シャトルにより、ミトコンドリア内膜を通過して、ミトコンドリア外(細胞質ゾル)に移行し、再びMDHにより、オキサロ酢酸に戻ります (ピルビン酸キナーゼの迂回路)。

 3.PEPCK(phosphoenolpyruvate carboxykinase)
 PEPCK(ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ)は、細胞質ゾルで、オキサロ酢酸を、ホスホエノールピルビン酸PEP)に変換する酵素(ピルビン酸キナーゼの迂回路)。
 なお、ヒトでは、PEPCKは、ミトコンドリア内にも存在し、生成されたPEPは、ミトコンドリア膜を通過して、細胞質ゾルに輸送されます(注3)。

 4.フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ(fructose-1,6-bisphosphatase)
 フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ(別名、fructose-1,6-diphosphatase)は、細胞質ゾルで、フルクトース-1,6-ビスリン酸を、フルクトース-6-リン酸に変換する酵素(ホスホフルクトキナーゼの迂回路)。
 なお、フルクトース-2,6-ビスリン酸は、AMP同様に、フルクトース-1,6-ビスホスファターゼの活性を抑制し、糖新生を抑制します。フルクトース 2,6-ビスリン酸は、また、ホスホフルクトキナーゼ(PFK)の活性を賦活化させ、肝臓での解糖を促進させます。
 このように、フルクトース 2,6-ビスリン酸の量が多いと、解糖系に進み、フルクトース 2,6-ビスリン酸の量が少ないと、糖新生系に進みます。
 フルクトース-1,6-ビスホスファターゼが欠損すると、糖新生が行われず、長時間の絶食や、果糖やグリセロールの投与により、著明な低血糖や、代謝性アシドーシスを来たします。

 5.グルコース-6-ホスファターゼ(glucose-6-phosphatase)
 グルコース-6-(リン酸)ホスファターゼは、肝臓と腎臓のミクロソームにのみ存在し、グルコース-6-リン酸を、グルコースに変換する酵素(ヘキソキナーゼの迂回路)。
 糖新生は、グルコース-6-ホスファターゼを有する、肝臓と腎皮質でのみ、行われ得ます


 糖新生には、細胞質ゾル(サイトゾル)に、NADH2+が存在することが、必要です注4)。
 ミトコンドリア内から、細胞質ゾルへ、NADH2+の還元当量(reducing equivalents)を輸送する役割は、リンゴ酸輸送系リンゴ酸-α-ケトグルタル酸輸送体)により行われます:ミトコンドリア内で生成されたNADH2+は、オキサロ酢酸を、リンゴ酸に還元します。リンゴ酸は、ミトコンドリア内膜のリンゴ酸輸送系を通過して、細胞質ゾル(ミトコンドリア外)に輸送され、再び、オキサロ酢酸に戻ります。その際、NAD+が、NADH2+に還元されるので、結果的に、ミトコンドリア外(細胞質ゾル)に、NADH2+が輸送されます。
 なお、乳酸から糖新生する際には、細胞質ゾルで、ピルビン酸が生成される際に、NADH2+が生成されます。
 また、果糖から糖新生する際には、ATP(ミトコンドリアで生成されます)は必要ですが、NADH2+は必要でありません。

 糖新生に必要なNADH2+は、脂肪酸がミトコンドリア内でβ-酸化される際(FADH2も生成される)や、β-酸化で生成されるアセチル-CoAがTCA回路で代謝される際に、生成され、供給されます(注5)。

 糖新生では、グルコースブドウ糖)は、乳酸やピルビン酸(一部は、アラニンから誘導される)から、合成されます。
 脂肪酸は、ミトコンドリア内で、β-酸化により、アセチル-CoAに分解され、その際、NADH2+FADH2が生成されます。アセチル-CoAはTCA回路で代謝され完全に分解され(肝臓ではケトン体に変換される)、NADH2+はミトコンドリア外に還元当量が輸送され糖新生に利用されます


 動物の体には、アセチル-CoAを、オキサロ酢酸に変換する代謝経路は、ありません。
 従って、脂肪酸からは、糖新生で、ブドウ糖が生成されることはありません。

 脂肪酸は、それ自体は、グルコースに、変換されません。
 しかし、脂肪酸のβ-酸化により、細胞内のアセチル-CoA濃度と、NADH/NAD+が、増加すると、糖新生が、促進されます。
 従って、脂肪酸は、それ自体は、グルコースに変換されませんが、糖新生に必要なNADH2+を、β-酸化や、TCA回路での代謝で供給し、また、糖新生に必要なATPを、TCA回路での代謝で供給し、糖新生を促進させ、グルコースを供給します

 脂肪酸のβ-酸化に異常がある脂肪酸酸化異常症(FAOD)では、糖新生も障害され、飢餓等の絶食時に、低ケトン性低血糖を来たします。これは、絶食時に、脂肪酸のβ-酸化が障害されていると、脂肪酸からアセチル-CoAが生成されないので、TCA回路で、NADH2+が生成されず、糖新生が、行えないためと、考えられます。従って、脂肪酸のβ-酸化で生成されるアセチル-CoAは、運動時に、筋肉のミトコンドリアで、NADH2+からATPを生成する原料となるだけでなく、肝臓では、NADH2+を細胞質に供給して、糖新生のエネルギー源となります(ケトン体は、脳のエネルギー源になります)。
 なお、糖新生には、NADH2+以外に、ATP(ミトコンドリアで生成される)、GTPが、エネルギー源として、必要です。
 2ピルビン酸+4ATP+2GTP+2NADH2++6H2O→グルコース+4ADP+2GDP+6リン酸(Pi)+2NAD++2H+

 飢餓等の絶食時には、筋肉の蛋白質が分解され、糖原性アミノ酸から、ピルビン酸やオキサロ酢酸が生成され、糖新生によって、グルコース(ブドウ糖)が、合成されます。

 インスリンは、肝臓で、グリコーゲン分解を抑制し、アミノ酸、乳酸、グリセロール(グリセリン)等からの糖新生を抑制し、グルコースの放出を抑制します。その結果、肝臓に、グリコーゲンが、貯蔵されます
 インスリンは、解糖系の律速酵素(調節酵素)である、グルコキナーゼホスホフルクトキナーゼピルビン酸キナーゼピルビン酸デヒドロキナーゼを誘導、あるいは、活性化させます。また、PEPCKグルコース-6-ホスファターゼ(glucose-6-phosphatase )の転写を抑制し、糖新生を抑制します。
 インスリンは、肝臓でのグリコーゲン分解を抑制し、糖新生をも抑制するので、追加インスリン分泌が低下する糖尿病では、肝臓でのグリコーゲン分解や糖新生が亢進し、空腹時に高血糖を惹起します。

 夜間も、脳、赤血球、心筋等では、活発な糖代謝が行われています。
 これは、肝臓には、グリコーゲンが貯蔵されていて、肝臓が、グリコーゲンを分解したり、糖新生をして、グルコース(ブドウ糖)を血中に供給するから、可能です:供給されるグルコース(ブドウ糖)の、約75%はグリコーゲン分解により、約25%は糖新生により、産生されます。糖新生は、骨格筋で蛋白質が分解されて生成されるアミノ酸(アラニン等)や、脂肪組織で中性脂肪が分解されて生成されるグリセロールや、諸臓器で解糖により生成される乳酸やピルビン酸が、材料に用いられます。
 なお、筋肉にも、グリコーゲンが貯蔵されていますが、筋肉のグリコーゲンが分解され生成されるグルコースは、主に筋線維の活動に利用され、血糖維持には寄与しません。

 脳は、1時間当たり約4g(安静時には約3g)グルコースを消費し、赤血球は、1時間当たり約2gのグルコースを消費すると言われます。
 健康人では、糖新生により、絶対的に必要な6g/時間のグルコースを生成します。

 動物では、アセチル-CoAを、オキサロ酢酸に変換する酵素が、存在しません。従って、β-酸化でアセチル-CoAに分解される脂肪酸は、グルコース前駆体として、糖新生に使用されません。しかし、脂肪酸がβ-酸化される際に生成されるNADH2+や、脂肪酸のβ-酸化により生成されるアセチル-CoAがTCA回路で代謝されて生成されるNADH2+や、NADH2+等から呼吸鎖で生成されるATPは、糖新生にエネルギー源として、利用されます。そう言う意味で、脂肪酸のエネルギーは、肝臓での糖新生に必要です。


 おまけ
 その1:アスピリンと低血糖

 アスピリンの代謝産物のサリチル酸は、乳酸、ピルビン酸からの糖新生を、減少させます。
 その機序は、ライ症候群の発症機序とも関連すると思われますが、ミトコンドリアには、PTPと呼ばれる穴構造がありますが、サリチル酸には、PTPを開口させる作用があることが、知られています。サリチル酸により、PTPが開くと、ミトコンドリア内(マトリックス)のプロトン等が、細胞質ゾルに通過してしまい、膜電位が低下して、ミトコンドリア内のNADH2+が減少してしまうので、細胞質ゾルでの糖新生が、減少し、低血糖を来たすと、考えられます。

 なお、PGE2IL-1βは、グルコース(ブドウ糖)によるインスリン分泌を、抑制します。COX-2により産生されたPGE2は、EP3受容体を介して、アデニル酸シクラーゼ(AC)を抑制するので、cAMPが減少し、インスリン分泌が、抑制されます。IL-1βは、NF-Bの発現を介して、COX-2を発現させたり(PGE2の産生が増加する)、EP3受容体のmRNAを発現させるので、インスリン分泌が、抑制されます。
 サリチル酸は、IL-1βによる、NF-Bの発現を抑制し、COX-2や、EP3受容体(EP3受容体)のmRNAの発現を妨げて、PGE2によるインスリン分泌抑制作用を抑制するので、インスリン分泌が、増加し、低血糖になることがあります。
 なお、アスピリンは、IL-1βによる、NF-Bの発現を抑制しないので、インスリン分泌に影響するのは、アスピリンでなく、サリチル酸と考えられます。
 このように、サリチル酸は、NADH2+を減少させて糖新生を抑制したり、PGE2の産生を減少させてインスリン分泌を促進させるので、アスピリンを服用すると、低血糖を来たすこともあります。
 なお、アスピリン以外のNSAIDsアセトアミノフェン等)も、PGE2の産生を減少させてインスリン分泌を促進させることによって、低血糖を来たすおそれがあります。 

 その2:反芻動物での乳酸やプロピオン酸からの糖新生
 反芻動物(ウシ、ヒツジ、キリン、シカ、ラクダ等)では、ルーメン(第一胃)内で、微生物により、乳酸やプロピオン酸(短鎖脂肪酸)が産生されます。
 乳酸は、ピルビン酸に変換され、糖新生に利用されます。
 また、プロピオン酸は、プロピオニル-CoAに変換され、さらに、TCA回路のスクシニル-CoAに変換され、最終的に、オキサロ酢酸に変換され、糖新生に利用されます。
 このように、反芻動物では、ルーメン(第一胃)内で、微生物により産生された乳酸やプロピオン酸は、殆ど全てが、糖新生により、グルコース(ブドウ糖)に変換されます。


 注1:骨格筋で、運動時に、BCAAから生成されるグルタミン酸は、ALTGPT)により、ピルビン酸に、アミノ基を転移し、糖原性アミノ酸である、アラニンが生成されます。アラニンは、血液中を肝臓に輸送され、ALTGPT)により、ピルビン酸に戻り、グルコースに糖新生されます。糖新生されたグルコースは、肝臓から放出され、血液中を骨格筋に輸送され、利用されます(グルコース・アラニンサイクル)。BCAAのロイシン(Leu)は、ケト原性アミノ酸ですが、骨格筋では、BCATにより、α-ケトグルタル酸にアミノ基を転移して、グルタミン酸が生成され、糖新生に関与すると思われます。
 このように、BCAAは、運動時等に、骨格筋で異化され、生成されるグルタミン酸から、アラニンが生成され、肝臓での糖新生を、促進させると考えられます。


 成長等に際して、生体は、脳の発達を、筋肉や、骨等の発達より、優先しています(臓器により、栄養の優先順位が異なる)。筋肉は、グリコーゲンや、糖新生の原料になる糖原性アミノ酸や、ミネラル等、栄養素の貯蔵庫としての役割も、担っています。

 アラニンに関しては、末梢組織(骨格筋等)で、代謝(解糖)により生成されるピルビン酸と、グルタミン酸のようなα-アミノ酸とが、ALTGPT)によるアミノ基転移反応を受けて、アラニンが生成されます。この末梢組織のアラニンは、さらに、血液中を、肝臓に輸送され、肝臓で、α-ケトグルタル酸と、ALT(GPT)によるアミノ基転移反応を受けて、ピルビン酸に変換され、糖新生に利用されます。
 アスパラギン酸に関しては、アスパラギン酸は、尿素回路に於いて、フマル酸やリンゴ酸を経てオキサロ酢酸に変換され、糖新生に利用されます。

 1日、最低50gのグルコースを投与すると、糖新生のために、蛋白が分解(異化)されることが、抑制されると言われています(体蛋白異化抑制効果:protein sparing effect)。点滴などでグルコース(ブドウ糖)を補給すると、絶食していても、体重減少が少なくなります。

 注2:乳酸は、ピルビン酸からLDHの作用により、生成されます。
 乳酸は、主に、骨格筋や赤血球で、生成されています。
 骨格筋で、嫌気的解糖で生成された乳酸は、血液中を肝臓に輸送され、LDHにより、ピルビン酸に変換され、グルコースに糖新生されます。糖新生されたグルコースは、肝臓から放出され、血液中を骨格筋に輸送され、利用されます(Coriのサイクル:コリ回路)。骨格筋以外に、赤血球などで生成される乳酸も、肝臓で、グルコースに糖新生されます。
 肝臓や腎臓での糖新生が障害されると、ピルビン酸や乳酸が、血液中に増加します。
 糖新生に際して、(ミトコンドリア内の)ピルビン酸は、オキサロ酢酸を経て、リンゴ酸となって、ミトコンドリア外に輸送されますが、(ミトコンドリア内の)乳酸は、リンゴ酸としてではなく、アスパラギン酸となって、ミトコンドリア外に輸送されます。

 注3:ヒトでは、PEPCKは、ミトコンドリア内にも、細胞質ゾル(サイトゾル)にも、存在する。PEPCKは、生物種によっては、ミトコンドリア内にのみ存在したり、細胞質ゾルにのみ存在したりする。

 注4:アミノ酸(糖原性アミノ酸)の炭素骨格、ピルビン酸、乳酸、TCA回路の中間体から、オキサロ酢酸を経由して、糖新生する際には、1,3-ビスホスホグリセリン酸(1,3-bisphosphoglycerate:1,3-BPG)が、グリセルアルデヒド-3-リン酸(glyceraldehyde-3-phosphate:GAP)に変換される為に、NADH2+が必要です。果糖やグリセロールから、糖新生する際には、1,3-BPGを介さないで、ジヒドロキシアセトンリン酸(DHAP)に変換されるので、NADH2+やGTPは、必要でありませんが、ATPは、必要です。


 注5:脂肪酸の分解(β-酸化)は、酸素を必要とします。
 脂肪酸の熱効率は、他の栄養素より高く、例えば、パルミチン酸が、β-酸化されると、135分子のATPが生成されます:パルミチン酸(C16:0)が、β-酸化で1回分解され、1個のアセチル-CoAが生成される際に、1個のFADH2と1個のNADH2+とが生じます。ミトコンドリアの呼吸鎖で、FADH2やNADH2+から、それぞれ、2個、及び、3個のATPが生成されます(計5個のATPが生成されます)。パルミチン酸は、アセチル-CoAに分解されるβ-酸化を7回繰り返すので、計35個のATPが生成されます(7回のサイクル数のβ-酸化により、8個のアセチル-CoAが生成されます)。アセチル-CoAが、TCA回路で代謝されると、11個のATPと1個のGTPが生成されます。従って、β-酸化とTCA回路で、計35+(12×8)=131個のATPが生成されます。しかし、パルミチン酸(C16:0)が、β-酸化される初期の段階で、Thiokinase(ACS)により、アシル-CoA(C15-CO-CoA)に変化させるのに、1個のATPが消費されAMPになる(実質、2ATP消費される)ので、差し引き、129個のATPが生成されます(ただし、肝臓では、パルミチン酸は、β-酸化された後、TCA回路に入らず、ケトン体のアセト酢酸になるので、35−2=33個のATPしか、生成されません)。
 従って、グルコース1分子(1mol)当り38個のATP(グルコース100g当り21個のATP)が生成され、パルミチン酸1分子(1mol)当り129個のATP(パルミチン酸100g当り50個のATP)が生成されます(脂肪酸の方が、ブドウ糖より、エネルギー力価が高い)。


 参考文献
 ・鈴木紘一、他:ホートン生化学 第3版(東京化学同人、2005年、第3刷).
 ・ヴォート生化学(東京化学同人、2003年、第4刷).
 ・ハーパー・生化学(丸善株式会社発行、1975年).
 ・菊池方利:肝における糖調節機構について 日本醫事新報 No.4184(2004年7月3日)、21-30頁.
 ・田川邦夫:からだの働きからみる代謝の栄養学 タカラバイオ株式会社(2003年).

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