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 尿路結石

 尿路結石を予防するには、食餌(食事)で、脂肪(脂肪酸やコレステロール)の摂取を控えることが、大切
 肉類などで動物性蛋白質と脂肪を摂取し過ぎると、尿中カルシウムが増加し、また、尿中クエン酸が減少し、尿路結石が形成され易くなる。

 尿路結石の80%以上は、シュウ酸カルシウム結石(CaC2O4注1)。
 カルシウム(Ca)より、シュウ酸(蓚酸:HOOC-COOH)が、結石の原因として、重要。

 尿路結石は、近年、生活習慣病(メタボリックシンドローム)と認識されるようになった。
 上部尿路結石の罹患率(発症率)は、食生活の欧米化と共に、増加傾向にある。
 疫学的調査結果から、上部尿路結石の発症は、動物性蛋白質や脂質の摂取量の増加と関連があることが判明している。

 尿路結石は、90%以上の無機物質(無機成分)と、数%の有機物質(マトリックス)とから構成されている。
 尿路結石は、尿中で、結石の無機成分(シュウ酸カルシウム、りん酸カルシウム、尿酸、リン酸マグネシウムアンモニウム、シスチンど)が過飽和になり、形成されると言われて来たが、近年は、有機成分(マトリックス)が、腎組織内で増加し、形成されることが、判明した。有機成分(結石マトリックス成分)として、オステオポンチン(OPN)が、同定されている。
 有機成分(マトリックス)は、主に、コレステロールの過剰摂取などにより、増加する。
 シュウ酸(蓚酸イオン)は、腸管内で、カルシウムと結合する。コレステロールを過剰摂取すると、腸管内で、脂肪酸がカルシウムと結合し、シュウ酸がカルシウムと結合出来ず、シュウ酸の腸管からの吸収が増加する。
 尿路結石患者は、腹部CTで検査すると、腹部大動脈の石灰化率が高い:30歳代の尿路結石患者は、約30%の人に、大動脈の石灰化が見られる(対照者の約10倍の頻度)。
 尿路結石患者は、血清コレステロール値が、有意に高い。
 欧米型の食生活を改善すると、尿路結石の5年再発率が、約40%から10%に低下する。不飽和脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)は、尿路結石の発症を抑制する。n-3系多価不飽和脂肪酸を多く摂取すると、アラキドン酸産生が減少し、尿中カルシウム排泄が、減少し、尿路結石の発症が、抑制される。

 尿路結石の再発に関連する因子としては、従来は、尿中カルシウムが注目されていたが、最近は、尿中シュウ酸の方が、重要と考えられている。
 正常男性での研究結果では、尿中シュウ酸排泄量は、尿路結石の生涯罹患率と相関する。
 シュウ酸は、腸内のカルシウム量が少ないと、腸管からの吸収が、増加する。脂肪は、カルシウムと結合し、シュウ酸と結合するカルシウムを減少させ、カルシウムと結合出来なかったシュウ酸の吸収を、増加させてしまう。

 高脂肪食は、尿路結石を増加させる:高脂肪食は、シュウ酸の腸からの吸収を増加させる。脂肪を多く摂る、高脂肪食だと、脂肪酸と、カルシウムとが、腸内で結合して、カルシウムが、便から排泄されてしまい、シュウ酸の腸からの吸収が増加するので、尿路結石が形成される危険性が、高まる。

 結石を予防するために、従来は、「結石の成分となる、カルシウムを食べるな」と言われたが、最近は、逆に、結石を予防するために、「カルシウムを多く摂る」ことが勧められている。
 その理由は、カルシウムを多く摂取すると、腸内で、尿路結石の原因となるシュウ酸と結合して、シュウ酸を便から排泄させるので、尿路結石の形成が、予防される(注2)。

 腸内で、シュウ酸は、カルシウムと結合して、便から排泄される。
 食餌で、カルシウムを摂取すると、シュウ酸が便から排泄され、尿中シュウ酸が減少する。

 脂肪摂取や炭水化物摂取は、尿中シュウ酸を増加させる。
 脂肪を過剰に摂取しすると、腸管内で吸収されない脂肪から分解で生じる脂肪酸と、カルシウムとが結合するため、カルシウムが排泄されてしまう。そして、シュウ酸と結合すべきカルシウムが減少し、シュウ酸の腸からの吸収を増加させる。吸収されたシュウ酸は、尿中でカルシウムと結合し、結石になると考えられている。
 このように、動物性脂肪の過剰摂取は、尿路結石を増加させる。

 シュウ酸は、あらゆる食材に含まれているので、摂取を控えることは、困難。
 シュウ酸を多く含む食品を摂取する際には、カルシウムも、同時に摂取し、腸管内でシュウ酸とカルシウムの結合体を作り、シュウ酸を便として体外に排泄することが、尿路結石の予防の為、大切。

 ヒト血中のシュウ酸(蓚酸:HOOC-COOH)は、食物由来のシュウ酸(食物中に存在し腸管から受動輸送により吸収されたシュウ酸)と、ビタミンCの酸化により生成されたシュウ酸と、肝臓由来のシュウ酸(肝臓でシュウ酸前駆物質から生成されたシュウ酸)とから構成される。
 ヒトの尿中へのシュウ酸排泄量は、1日当り、0.25〜0.35nmol。その半分は、食物由来のシュウ酸に由来する。食物中のシュウ酸は、正常では、10〜20%が腸管から吸収される。しかし、腸管内に脂肪酸が多いと、シュウ酸と結合するカルシウムが脂肪酸と結合し(石鹸を形成する)、その結果、遊離のシュウ酸が増加し、腸管からのシュウ酸吸収が、増加する。
 シュウ酸の腸管からの吸収には、腸管内のシュウ酸分解菌(Oxalobacter formigenes)が関係する。

 コレステロールは、シュウ酸の腸からの吸収を増加させると考えられている。
 ラットの実験では、コレステロール過剰食を長期に投与すると、コレステロール単独では、尿路結石は形成されなかった。カルシウムを同時に投与すると、尿路結石が形成された。カルシウムの摂取は、コレステロール摂取が多いと、尿路結石を増加させる。尿路結石の予防にカルシウムを多く摂るのは、シュウ酸の吸収を抑制するのが目的だが、コレステロール摂取が多く、シュウ酸の腸からの吸収が増加している時に、カルシウムを多く摂ると、尿路結石のリスクが、高まると考えられる。
 コレステロールの摂取を制限することや、1日1食は野菜や緑茶などで抗酸化物質を摂取することは、尿路結石の予防に有用。尿路結石は、生活習慣病でもある。
 また、シュウ酸の多い食品は、カルシウムと一緒に摂取し、腸管内で、シュウ酸とカルシウムを結合され、シュウ酸を腸管から排泄させることも、結石予防の為、大切:カルシウム摂取により、シュウ酸の苦味も消える。

 結石の予防のためには、水分を多目に取ることが勧められている(尿量が、1日当り2リットル以上になるようにする)。
 飲用する水分としては、水道水、ミネラルウォーター、シュウ酸含量が少ない麦茶やほうじ茶が、良い。清涼飲料水や甘味飲料水は、含まれている砂糖や燐酸により、尿中クエン酸が減少したり、尿中カルシウムが増加するので、好ましくない。砂糖を摂取すると、尿中カルシウムが増加する:砂糖(refined carbohydrate)を過剰に摂取すると、過剰な酸を腎臓から排泄する為に、尿中カルシウム排泄量が、増加する。紅茶や緑茶(お茶)には、シュウ酸が多く含まれている。
 少し前までは、「ビールを飲むと良い」と言われていたが、最近は、「ビールは、飲み過ぎると、却って危険」とされている。ビールは、尿路結石の発作の際、尿量を増加し、結石を排出させるには、有効だが、ビールを飲み過ぎると、尿酸結石などを、増加させる恐れがある。 

 カルシウムは、成人は、1日約1,000mg摂取し、その内、約400mgを腸管から吸収し、約200mgを腎から排泄し、約200mgを腸管から排泄する(注3)。
 リンは、成人は、1日約1,000mg摂取し、その内、約800mgを腸管から吸収し、約650mgを腎から排泄し、約150mgを腸管から排泄する。
 カルシウムの腸からの吸収(注4)に関しては、高蛋白食は、カルシウムの吸収を促進させる。(食事の)P/Ca比が高いと、カルシウムの吸収は、悪くなる。腸内容が、アルカリ側だと、イオン化したカルシウムが減少し、カルシウムの吸収は、悪くなる(蛋白、H+は、カルシウムの吸収を促進し、脂肪酸は、カルシウムの吸収を低下させる)。
 動物性タンパク質は、カルシウム、シュウ酸、尿酸の尿中排泄を増加させるので、取り過ぎは良くない(注5)。

 リンの吸収に関しては、食事のカルシウム含量が増加すると、リンの吸収も増加する
 なお、血中のカルシウム濃度には、[Ca2+]×[PO4]=Kの関係にある。
 血漿pHが0.1増加すると、イオン化カルシウム濃度は、0.16mg/dL低下する。

 骨は、ミネラルの貯蔵庫であり、成人では、生体の99%のカルシウム(Ca)、80%のリン(P)、65%のマグネシウム(Mg)、50%のナトリウム(Na)が、骨に含まれている。他の臓器で、ミネラルが不足した際には、骨を、破骨細胞が貪食し、骨からミネラルを、血液中に、供給する。カルシウム以外のミネラルが不足した場合、骨の破壊に伴ない、カルシウムも、骨から遊離される。

 過食や、ストレスは、尿中に、同じモル数のカルシウムと、マグネシウムを、排泄させる(Mg利尿)。

 尿路結石は、結晶成分と、有機物質成分とが、混合している。
 有機物質成分は、マトリックスと呼ばれ、結石の乾燥重量の2〜5%を占めている。マトリックスは、高分子物質である、アルブミン、α1-ミクログロブリン、オステオポンチン、タムホルスフォール蛋白、プロトロンビンのフラグメント1(F1)などが含まれている。これらの高分子物質は、結晶表面に付着し、結石の形成を抑制したり(尿路結石形成抑制因子)、結晶の上皮への付着を抑制している。クエン酸は、これらの高分子物質の尿路結石形成抑制作用に、影響を与える。グリサミノグリカン(コンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸ヒアルロン酸など)は、結晶の上皮への付着を抑制する。

 尿路結石の形成は、結晶の核形成→成長→凝集→結石化の、4段階を経る。
 4段階の内、前の3段階は、尿中(尿沈査)で起こり、4段階目の結石化は、生体内(尿細管内)で起こる。
 前の3段階は、無機物質のシュウ酸とカルシウムとが結合して「結晶」が形成される。4段階目の「結石」化には、マトリックスとなる有機物質が存在して、無機物質を固める必要がある。
 尿中で結石の核(nidus)が形成されるのでなく、腎臓(尿細管)で、形成される。

 オステオポンチンは、結石化に必須の物質(糖蛋白の一種)。
 オステオポンチンは、動脈硬化などの石灰化に関与する。オステオポンチンは、カルシウムと結合し易い。オステオポンチンは、特に、生理的、乃至、病的に石灰化を来たす臓器に、存在している。
 オステオポンチンは、正常時にも、腎臓の遠位尿細管に散在しているが、オステオポンチンは、尿路結石が形成される際には、多く存在する。
 オステオポンチンを作らないマウス(ノックアウトマウス)は、「結晶」の塊りを形成するが、「結石」は、形成しない。
 オステオポンチンやカルプロテクチンは、マクロファージから産生され、酸性アミノ酸(アスパラギン酸グルタミン酸)を50%以上含むので、カルシウムと結合し易い。
 腎臓で、シュウ酸カルシウム結晶や、細菌が増加すると、マクロファージが貪食して、オステオポンチンが、放出される。
 また、シュウ酸カルシウム結晶が多いと、尿細管細胞は、オステオポンチンを産生し、(尿細管)細胞が結石の核(nidus)となり、尿細管内に、結石化が起こる(結石が形成される)。
 腎臓で、マクロファージが、シュウ酸や細菌を貪食し、炎症性サイトカインなどが産生され、オステオポンチンが(尿細管細胞に)発現し、結石が形成される。 
 ビスホスフォネート(骨粗しょう症の治療薬)は、腎臓のオステオポンチン遺伝子の発現を抑制する。女性ホルモンを投与すると、オステオポンチン遺伝子の発現や蛋白量は、減少する。高シュウ酸尿症(過蓚酸尿症)や水腎症などは、腎遠位尿細管細胞でのオステオポンチン遺伝子の発現や蛋白量を、増加させる。
 ベット上で安静に過ごす(betd rest)と、45日目には、高頻度に尿路結石が形成されるが、ビスホスフォネートを投与された人には、結石は形成されなかった。

 尿路結石は、尿中のシュウ酸排泄量だけが、危険因子でなく、シュウ酸や、カルシウムは、尿路結石形成の必要条件であっても、十分条件ではない。
 腸管からのシュウ酸の吸収を減らし、尿中のシュウ酸排泄量を減らすために、脂質(脂肪酸、コレステロール)の摂取を控えることが大切。
 また、尿の酸性化によりシュウ酸カルシウムの結晶が形成されることを防ぐ為、肉類などを食べる際(肉食の際)には、尿アルカリ化食品である、野菜を摂ることが、勧められる

 クエン酸を多く含む食品を摂ると、形成される尿路結石の数が、少なくなる。
 クエン酸は、尿をアルカリ化させ、尿中のカルシウムと結合し、尿路結石の形成を予防する。
 クエン酸は、尿中で、カルシウムとキレート結合し、可溶性錯塩を形成し、尿中イオン化カルシウム濃度を低下させる。
 クエン酸の摂取は、1日、3g程度を目標とする:食品に含まれるクエン酸の量は、グレープフルーツジュース(コップ1杯)=2.6g、オレンジジュース(コップ1杯)=2.0g、ミカン(1個)=1.0g、スポーツドリンク(500ml)=0.2〜1.5g。
 動物性蛋白と脂肪の摂取(肉類などの摂取)は、尿中カルシウムを増加させ、尿中クエン酸(尿中クエン酸排泄量)を低下させる。

 尿路結石の予防には、水分を十分に飲む:尿量は、1日、1.5〜2Lが、目標。

 尿路結石の予防には、カルシウム(シュウ酸と結合する)摂取を多くし、脂肪(脂肪酸:カルシウムと結合する)摂取を控える。

 動物性蛋白質(肉、魚など)の摂取を控える:動物性蛋白質を多く摂取すると、尿中のリン酸塩、硫酸塩が増加し、尿が酸性化し、クエン酸が減少し、尿路結石が、増加する。
 動物性蛋白質には、メチオニンやシステインなどの含硫アミノ酸が多く含まれている。その為、動物性蛋白質を多食すると、腎臓の尿細管で、カルシウム再吸収が抑制され、尿中カルシウムが増加し、尿路結石のリスクが高まる。また、動物性蛋白質を多食すると、代謝性アシドーシスに傾き、尿中クエン酸排泄量が減少する。

 シュウ酸は、ほうれんそう(ホウレンソウ)、チョコレート、ピーナッツ、お茶、紅茶などの食品(食物)に多く含まれている。

 ナトリウムを過剰に摂取すると、尿中ナトリウム排泄に加え、尿中カルシウム排泄が増加し、尿路結石のリスクが高まる。

 プリン体(核酸の代謝で生成される)を多く含む、レバー(肝臓)、魚の内臓、ビールは、尿酸結石の原因となるので、摂取を控える。

 尿酸結石やシスチン結石は、尿をアルカリ化(pH7〜7.5)すると、結石を溶解出来る。
 リン酸マグネシウムアンモニウム結石は、尿を酸性化(ph4.5〜5)すると、結石を溶解出来る。

 腎臓中のアディポネクチン(結石形成マウス)は、結石形成前に減少し、結石が消失すると、再度、上昇する。

 尿路結石の発作
 尿路結石の発作では、症状として、疼痛、血尿、腹膜刺激症状(嘔吐、悪心、腹部膨満)が見られる。

 尿路結石の疼痛は、背部、側腹部から、下腹部に放散する。
 疼痛(疝痛)は、腎臓の腎盂で形成された尿路結石が、移動して起こる。腎疝痛は、尿路結石が、腎盂尿管移行部や尿管の狭小部に嵌頓し、尿が停滞し、腎盂内圧が上昇し、腎盂が拡張し、起こる。腎疝痛発作は、一般的には1〜6時間続く(10分以上、時には24時間持続する)。尿管疝痛は、平滑筋の痙縮よりも、尿管の拡張により起こる。
 疼痛は、疝痛発作から、鈍痛まで、様々の程度。疝痛発作時には、抗コリン剤(ブスコパンなど)や非麻薬性鎮痛剤(pentazocineなど)の筋肉注射、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)の坐薬使用が、有効。

 膀胱刺激症状(頻尿、残尿管)が見られることが多い。肉眼的血尿や顕微鏡的血尿が見られることも多い。

 腹膜刺激症状(嘔吐、悪心、腹部膨満)は、腹腔神経節が、腎臓と胃の両者に関与している為、現れる。
 筋性防御は、腹腔内器官の炎症が、壁側腹膜に波及すると見られる。
 筋性防御は、虫垂炎、胆嚢炎、膵炎などの疾患で見られるが、尿路結石でも、尿管などから尿が漏出した場合(腎盂外自然溢流)には、現れ得る。
 尿路結石で見られる筋性防御は、虫垂炎などの場合に比し軽度で、腎部を叩いた時の痛み(叩打痛)の方が著明に現れる。

 両側性の尿路結石でなくても、乏尿や無尿が起こる。
 片側の尿管に尿路結石が嵌頓すると、自律神経反射により、反対側の腎臓の尿分泌が一時停止して無尿になったり(仮性無尿)、疼痛や腹膜刺激症状(嘔吐など)により脱水を起こして無尿になる。

 尿路結石で疝痛発作を呈する場合は、多くは小結石が原因であり、自然排斥されることが多い。尿路結石の長径が4mm以下の場合には、90%が自然に排石されるが、11mm以上の場合、自然に排石される可能性は少ない。
 尿路結石は、約80%がカルシウムを含む結石(シュウ酸カルシウム結石、リン酸カルシウム結石、複合結石)だが、尿酸結石、リン酸マグネシウムアンモニウム結石、シスチン結石なども存在する。

 尿路結石の発作時には、多量の水分を飲ませることで、尿量を増加させ、(尿管の)蠕動を活発化させ、結石の自然排石を促進させる。
 尿路結石の発作時に、尿量を増加させる為に飲む水分としては、御茶、ジュース、ビールなどを、1日2〜3L、飲用させる。ビールは、利尿作用により、飲んだビールの量以上に尿を出し、体内の水分量が低下するおそれがあるので、他の飲料も、同時に、飲用する。ビールは、プリン体を多く含む上、アルコールが肝臓で分解される際にもプリン体が生成される為、尿酸値を上昇させるおそれがある。
 高尿酸血症は、痛風の原因となる。プリン体は、尿酸の原料となるが、生体内では新陳代謝に伴ない大量のプリン体が産生される。プリン体を多く含む食品(高プリン体食品:大豆など)を摂取しても、高尿酸血症や痛風のリスクは上昇しない。アルコールの代謝時(分解時)には、大量のプリン体が産生され、尿酸値が上昇する。
 高尿酸血症の予防には、プリン体の摂取を控えることより、カロリー摂取やアルコール摂取を控える方が、有効と言われるようになった。
 なお、尿路結石の形成予防の為に飲む水分としては、カルシウム、ナトリウム、シュウ酸の含量が少なく、マグネシウムの含量が多い飲料(水道水、麦茶、ほうじ茶など)が良いと言われる。糖質を多く含むジュース(清涼飲料水、甘味飲料水)、アルコール(ビールなど)、コーヒー、紅茶は、飲み過ぎない方が良い。

 尿沈渣(無機性)では、尿中結晶性沈渣が見られる。
 酸性尿では、尿酸(黄褐色)、尿酸ナトリウム、無晶性尿酸塩、シュウ酸カルシウム(無色)、ロイシン(黄褐色)、チロシン(無色〜淡黄色)、シスチン(無色)、コレステリン(コレステロール:無色)、脂肪球が見られる。
 アルカリ尿では、リン酸カルシウム(灰白色)、リン酸アンモニウムマグネシウム(無色)、尿酸アンモニウム(黄褐色)、炭酸カルシウム(無色)、無晶性リン酸塩が見られる。

 尿酸は、プリン体の分解産物として、プリン代謝経路で生成され、主に、腎臓から尿中に排泄される。
 健康成人男性の1日の尿酸産生量は、約700mg。
 尿酸は、尿中では、非解離性尿酸と、尿酸塩(主に尿酸ナトリウム)として存在している。非解離性尿酸は、尿酸ナトリウムに比して、約20倍、溶け難い。非解離性尿酸は、過飽和すると、結晶化して、結石を形成する。
 尿酸結石は、酸性尿で生じ易い。尿酸の溶解度は、尿のpH5では約100mg/L、尿のpH7では約600mg/L。
 尿酸結石は、X線では、陰性(陰影欠損として写る)。X線透過性は、水=1とすると、リン酸カルシウム=22.0、シュウ酸カルシウム=10.8、リン酸マグネシウムアンモニウム=4.1、シスチン=3.7、尿酸1.4。
 尿中の尿酸結晶は、黄褐色の板状結晶(砥石状、菱形)。尿は、尿酸結晶を多く含むと、肉眼で、オレンジ色(黄褐色)に見える。
 血清尿酸値が正常範囲でも、尿中への尿酸排泄が多いことがある。
 食事は、尿酸結石を予防する為には、動物性蛋白の摂取制限、プリン体制限、アルコール過剰摂取の制限等が、必要。

 おまけ
 頻尿・過活動膀胱治療薬には、下記のような薬剤がある。
 頻尿・過活動膀胱治療薬
 医薬品名
 (化学名)
 投与量
 (最大投与量)
 
 剤形   薬理作用  適応
 ベシケア
 (コハク酸ソリフェナシン)
 1日1回5mg
 (最大10mg/日)
 2.5mg
 5mg
 ムスカリン受容体サブタイプM3受容体に拮抗(M1、M2、M4及びM5受容体に対する親和性より高い)  過活動膀胱(尿意切迫、頻尿、切迫性尿失禁)
 ウリトス
 (イミダフェナシン)
 0.1mgを朝・夕食後2回
 (最大0.2mg/日)
 0.1mg  ムスカリン受容体サブタイプM1、M3受容体に拮抗  過活動膀胱(尿意切迫、頻尿、切迫性尿失禁)
 バップフォー
 (プロピベリン塩酸塩)
 1日1回20mg食後
 (最大40mg/日」)
 10mg 
 20mg
 膀胱平滑筋直接作用と抗コリン性の膀胱鎮痙作用、CYP3A4で代謝、半減期15時間(20mg内服)  頻尿・尿失禁(神経因性膀胱、神経性頻尿、不安定膀胱、慢性前立腺炎)
 尿閉、閉塞隅角緑内障、幽門・十二指腸・腸管閉塞、麻痺性イレウス、胃・腸アトニー、重症筋無力症、重篤な心疾患、重度肝機能障害には、禁忌。
 膀胱は、アセチルコリンにより収縮が誘発される。
 膀胱収縮は、膀胱平滑筋に存在するムスカリン性アセチルコリン受容体サブタイプM3(M3受容体)を介して行われる。
 膀胱の神経終末からのアセチルコリン遊離は、ムスカリン性アセチルコリン受容体サブタイプM1刺激(M1受容体刺激)により促進される。
 イミダフェナシン(医薬品名:ウリトス)は、ムスカリン性アセチルコリン受容体のM3受容体拮抗作用(膀胱平滑筋収縮抑制作用)と、M1受容体拮抗作用(アセチルコリン遊離抑制作用)を示す。イミダフェナシン(医薬品名:ウリトス)は、唾液腺の分泌抑制作用に比し、膀胱の収縮抑制作用が相対的に強く現れると言われる。
 プロピベリン塩酸塩(医薬品名:バップフォー)は、膀胱のアセチルコリンや塩化カリウムによる収縮を抑制する。プロピベリン塩酸塩は、ムスカリン受容体への親和性があり、アトロピンで抑制されない経壁電気刺激収縮を抑制する作用を示す。プロピベリン塩酸塩は、膀胱平滑筋に作用する。プロピベリン塩酸塩の主代謝物であるM-1は平滑筋直接作用(平滑筋収縮抑制作用)を、M-2は抗コリン作用を有していて、排尿運動を抑制する。
 プロピベリン塩酸塩は、膀胱容量増加作用、排尿運動抑制作用、電気刺激による膀胱収縮抑制作用がある。
 プロピベリン塩酸塩(医薬品名:バップフォー)は、慢性前立腺炎の頻尿・尿失禁にも保険適応があるが、前立腺肥大症等では、排尿困難が更に悪化(尿閉が悪化)又は残尿が増加するおそれがある。

 注1:シュウ酸カルシウム(CaC2O4)結石は、尿が酸性の状況(酸性尿)で、形成されやすい。
 尿がアルカリ性の状況(アルカリ性尿)では、リン酸アンモニウム・マグネシウム(MgNH4PO4・6H2O)結石(ストラバイト結石:Struvite結石)が、形成されやすい。
 人間は、正常では、酸性尿になりやすいので、シュウ酸カルシウム結石が多い。猫や、モルモットなどの動物は、アルカリ性尿になりやすいので、ストラバイト結石が多い。
 蛋白質の代謝からは、リン酸硫酸が、生じる。また、脂質のリン脂質の代謝からは、リン酸が、生じる。これらの不揮発性酸は、尿pHを酸性させ、シュウ酸カルシウム結石の形成を促進させると、考えられる。
 シュウ酸カルシウムは、尿のpHが酸性になると、クエン酸が減少して、結晶化し易い。

 注2:カルシウム(Ca)は、小腸で、カルシウム結合蛋白質(活性型ビタミンDが増加させる)と結合して、細胞内に取り込まれて、血液中に吸収される経路と、細胞間を拡散して吸収される経路とにより、吸収される。
 細胞間を拡散して吸収される経路では、カルシウムは、イオン化した状態(Ca2+)でないと、吸収されにくい。小腸上部は、胃酸の影響で、pHは、5〜6程度の酸性であり、カルシウムは、イオン化しており、吸収され易い。しかし、小腸下部では、アルカリ性の消化液のため、pHは、7〜8程度のアルカリ性になり、カルシウムは、リン(P)のような陰イオンと結合して、不溶性の塩になり、吸収されないで、排泄されてしまう(従って、リンを多く含む、加工食品やスナック菓子は、シュウ酸と結合するカルシウムを減少させ、シュウ酸の吸収を増加させ、尿路結石を形成するリスクを増加させるおそれが、考えられる)。

 注3:日本人のカルシウム所要量は、成人女子で、600mg/日と言われる。但し、その根拠となるべき出納実験の成績が蓄積されておらず、科学的妥当性に乏しいと言う指摘もある。つまり、カルシウムは、吸収率50%、尿中排泄300mg/日と算出されているが、特殊な条件を除けば、カルシウムが、尿中に300mg/日も排泄されるのは稀であり、通常は、尿中に200mg/日以下排泄されるに過ぎず、カルシウムの吸収率は、個人差が多い。 

 注4:カルシウムの腸からの吸収は、以下の要因で、左右される。
 1).腸内のpH:小腸下部のように、腸内のpHがアルカリだと、カルシウム塩は、溶けにくいので、カルシウムの吸収が悪い。
 2).リン酸塩:リンとカルシウムの比率(P/Ca比)が高い(リン酸塩が多い)と、Ca2(PO4)2が形成され、カルシウムの吸収が低下する。
 3).遊離脂肪酸:脂肪の摂取が多かったり、吸収が悪いと、遊離脂肪酸が、腸内に増加し、遊離のカルシウムと、不溶性のカルシウム鹸化物を作り、カルシウムの吸収が低下する。
 4).ビタミンD:ビタミンDは、小腸からのカルシウムの吸収を、促進させる。
 5).血漿カルシウムイオン濃度:血漿カルシウム濃度が、僅かにも低下すると、PTH(副甲状腺ホルモン)により、カルシウムの吸収が、数倍、増加する。

 注5:細胞内カルシウム濃度(Ca2+濃度)は、細胞外カルシウム濃度より、10,000倍も低い。その為、細胞成分を主体とする肉類(豚肉、鶏肉など)は、細胞外ミネラルであるカルシウム含有量が、少ない。また、肉類(豚肉、鶏肉など)は、リンとカルシウムの比率(P/Ca比)が高い。肉類は、代謝で生成される、リン酸や、硫酸により、尿を酸性化させ、シュウ酸カルシウムの結晶化を促進させ、尿路結石のリスクを高めると考えられる。
 魚類は、カルシウム含量が多い。大豆製品(豆腐、納豆)は、カルシウム含量が多い。御飯(精白米)より、パン(小麦粉)の方が、カルシウム含量が多い。葉物野菜(ほうれんそうなどの葉菜類)は、カルシウム含量が多いが、果実野菜(トマトなど)は、カルシウム含量が少ない。御飯(精白米)も、リンとカルシウムの比率(P/Ca比)が高い。
 食品のカルシウム含有量
 食品  カルシウム
 (Ca)
 リン
 (P)
 ぶた(ロース、脂身つき)     4   130
 若鶏     5   180
 焼きさんま    90   200
 はまぐり(水煮)   120   140
 豆腐(木綿)   120    85
 糸引納豆    90   190
 めし(精白米)     4   130
 食パン(市販)    36    70
 ほうれんそう(ゆで)    60    60
 トマト(果実)     9    18
 参考文献
 ・郡健二郎:尿路結石の病態解明と予防法への応用研究、日本医師会雑誌 133:245-249, 2005年.
 ・林松彦:Ca・P代謝異常の診断と治療 日本医師会雑誌 第133巻・第4号/平成17(2005)年2月15日 456-461.
 ・西牟田守:ミネラル、微量元素の代謝特性 小児内科 22: 17-24, 1990年.
 ・正井基之:尿路結石の成因ならびに食事療法による再発予防 日本醫事新報 No.4146(2003年10月11日)、23-28頁.
 ・井口正典:尿路結石再発予防のための食事指導(質疑応答) 日本醫事新報 No.4187(2004年7月24日)、140-141頁. 
 ・郡健二郎、安井孝周、井口正典:尿路結石の形成機序と再発予防における新時代の到来、日本醫事新報、No.4286(2006年6月17日)、57-61頁.
 ・東原英二:60. 尿路結石(疝痛発作)、内科、60巻2号(1987-8)、489-491頁.
 ・清野誠一、寺山和雄、古田精市、杉田虔一郎:救急医療ハンドブック、南江堂(1982年).
 ・青柳利雄:激しい腹痛 c.胆石・腎石、臨床雑誌 内科、第47巻第6号(1981)、1120-1123頁.
 ・吉利和:新内科診断学、1977年改訂第3版第7刷、金芳堂(1966年第1版第刷発行).
 ・富田文:痛風食餌指導の“新常識” 実は効果乏しい? プリン体制限、Nikkei Medical、2007.2、30-31頁.
 ・水島裕、編集:今日の治療薬 解説と便覧 2008(南江堂、2008年2月15日、第30版発行).
 ・金井泉、金井正光、編著:臨床検査法提要、改訂第28版第2刷、金原出版株式会社、昭和54年5月30日発行.
 ・正井基之:尿酸結石、腎・泌尿器疾患診療マニュアル−小児から成人まで、日本医師会雑誌 第136巻・特別号(2)、生涯教育シリーズ−73、S284-S285頁、平成19年(2007)年10月15日発行.

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