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 鼻過敏症状発現のメカニズム

 【ポイント】
 ヒスタミン(肥満細胞から遊離される)は、神経くしゃみ、鼻汁分泌を起こす(鼻粘膜上皮に分布する知覚神経終末を刺激する)。
 アセチルコリン(ヒスタミン遊離により、三叉神経知覚中枢が興奮し、その反射により、副交感神経終末から放出される)は、鼻腺からの水様性鼻汁の分泌を起こす。
 ロイコトリエン(LT)、プロスタグランジンD2PGD2)、血小板活性化因子(PAF)、ヒスタミンは、血管拡張作用(血管容積が拡張する)、血管透過性亢進作用(血漿蛋白が漏出する)により、鼻粘膜腫脹により、鼻閉を起こす。
 治療は、くしゃみや鼻汁が多い型には、抗ヒスタミン剤を、鼻閉が強い型には、抗LT剤や、抗TXA2剤を使用するのが良い


 アレルギー性鼻炎は、即時相の反応の後、と遅発相の反応が起こる。
 即時相の反応(即時型反応)では、くしゃみ、鼻汁、鼻閉の症状が見られるが、遅発相の反応では、鼻粘膜腫脹による鼻閉のみが、見られる。つまり、くしゃみ、鼻汁は、即時相の反応でのみ、見られる。
 アレルギー性鼻炎では、鼻粘膜過敏性が生じ、鼻過敏症状が発現する。
 
 1.即時相
 抗原と、肥満細胞表面のIgE抗体が結合し、架橋されると、肥満細胞が活性化され、ヒスタミンなどが、遊離される。
 アレルゲン(花粉など)が、鼻粘膜の肥満細胞表面のIgE抗体に結合し、肥満細胞が刺激されると、ヒスタミンが遊離される。ヒスタミンは、鼻粘膜に存在する三叉神経終末を刺激し、刺激が中枢神経へ伝達され、上位脊髄を経て、くしゃみ反射が起こる。三叉神経からの中枢神経への求心性刺激は、中枢神経で副交感神経に伝達され、遠心性刺激が鼻粘膜に伝達され、副交感神経の神経末端からアセチルコリンが遊離され、鼻腺が刺激され、鼻汁(鼻水)の分泌が、亢進する。

 1).くしゃみ:ヒスタミン
 鼻粘膜の上皮細胞間隙や上皮下には、SP陽性神経、CGRP陽性神経の知覚神経終末が、豊富に分布している。
 肥満細胞から放出されるヒスタミンが、知覚神経終末(SP陽性神経、CGRP陽性神経終末)を刺激し、刺激が中枢神経に伝達され、くしゃみ発作を起こす。

 2).水様性鼻汁:ヒスタミン→アセチルコリン
 鼻粘膜の鼻腺細胞は、主に副交感神経支配を、血管は主に交感神経支配を受けている。
 肥満細胞からヒスタミン遊離→知覚神経終末を刺激→三叉神経知覚中枢ー上唾液核を介する副交感神経反射→神経終末からのアセチルコリン(Ach)の放出→鼻腺から水様性鼻汁が分泌される(注1)。
 なお、ヒスタミン以外にも、ロイコトリエン(LT)、プロスタグランジンD2PGD2)、血小板活性化因子(PAF)、ブラジキニン(BK)などの化学伝達物質も、鼻粘膜血管に直接作用し、血管透過性が亢進(注2)し、血漿が漏出し、鼻汁成分の一部(4〜15%)となる。

 3).鼻粘膜腫脹による鼻閉:ロイコトリエン
 鼻粘膜容積血管(海綿静脈洞)の拡張、血漿漏出による間質浮腫炎症性の浮腫)が起こる。
 鼻粘膜腫脹(粘膜浮腫)は、主に、LT(ロイコトリエン)が、鼻粘膜血管系に直接作用して起こる。鼻粘膜腫脹は、LTの他、PGD2PAF、トロンボキサンA2TXA2)、ヒスタミンなどの化学伝達物質が、鼻粘膜血管系に直接作用して起こる。
 ロイコトリエン(LT)、プロスタグランジンD2PGD2)、血小板活性化因子(PAF)、ヒスタミンは、血管拡張作用(血管容積が拡張する)、血管透過性亢進作用(血漿蛋白が漏出する)により、鼻粘膜腫脹により、鼻閉を起こす。

 2.遅発相
  炎症組織に、血管から、好酸球などの炎症細胞が浸潤し、LT(ロイコトリエン)やPAF(血小板活性化因子)が遊離され、血管透過性が亢進したり、炎症性に粘膜が腫脹するため、鼻閉が起こる。

 3.鼻粘膜過敏性
 アレルギー性鼻炎では、鼻粘膜過敏性が生じ、鼻過敏症状が発現する。
 
 ヒスタミンは、肥満細胞から遊離され、鼻粘膜上皮に分布する知覚神経終末を刺激し、くしゃみや、鼻汁分泌など、即時相の反応を引き起こす。

 肥満細胞は、ヒスタミン以外に、LT、PGD2、PAFを遊離(産生)する。
 好酸球も、LT、PGD2、PAFを遊離する。
 肥満細胞や好酸球から遊離されたLT、PGD2、PAFは、血管拡張作用、血管透過性亢進作用、直接作用により、鼻粘膜腫脹と言う、即時相と遅発相の反応を引き起こす。

 好酸球は、LT、PAF、MBPを遊離し、上皮透過性亢進作用、神経終末露出作用により、鼻粘膜過敏性が生じ、鼻過敏症状を発現させ、難治化させる。

 4.抗アレルギー剤

 アレルギー性鼻炎の治療には、抗ヒスタミン剤、抗LT剤、抗TXA2剤、抗コリン剤、ステロイド剤などが、用いられる。
 アレルギー性鼻炎の治療で、軽症例のくしゃみや鼻汁(鼻漏)の症状改善には、抗ヒスタミン剤を用いる。また、鼻閉には、ケミカルメディエーター遊離抑制剤(DSCG、リザベン等)を用いる。

 中等度の症状のアレルギー性鼻炎では、くしゃみや鼻汁(鼻漏)が多い型には、第2世代抗ヒスタミン剤、局所ステロイド剤を使用するのが良い。鼻閉が強い型には、抗LT剤(LT拮抗剤)、抗TXA2剤(TXA2拮抗剤)、局所ステロイド剤が良い。
 重症の症状のアレルギー性鼻炎では、くしゃみや鼻汁(鼻漏)が多い型には、局所ステロイド剤+第2世代抗ヒスタミン剤を使用するのが良い。鼻閉が強い型には、局所ステロイド剤+抗LT剤か、局所ステロイド剤+抗TXA2剤が良い。
 鼻粘膜過敏性が生じ、鼻過敏症状が発現し、難治化したアレルギー性鼻炎では、抗ヒスタミン剤、抗LT剤、抗TXA2剤、局所ステロイド剤を併用(組み合わせ)して、治療するのが良い。
 表1 各種抗アレルギー剤の特徴(文献の寺田氏等の論文の表1を改変し引用した:◎=著効、○=有効、△=やや有効、×=無効)
 効果のある症状・副作用  抗ヒスタミン剤  抗アレルギー剤   抗LT剤   抗TXA2  抗コリン剤  ステロイド剤  手術療法
 抗ヒスタミン作用なし 抗ヒスタミン作用あり
 即効性  ◎  △  ◎  △  △  ◎  △  ◎
 くしゃみ  ◎  △  ○  ○  ○  ×  ◎  ◎
 鼻汁(鼻漏)  ◎  △  ○  ○  ○  ◎  ◎  ◎
 鼻閉  △  ○  ○  ◎  ◎  ×  ◎  ◎
 眠気  ±〜++  −  ±〜++  −  −  −  −  −
 第2世代抗ヒスタミン剤としては、ザジテン、セルテクト、アセプチン、ゼスラン、アレジオン、ジルテック、アレグラ、クラリチンなどがある。
 抗LT剤(LT拮抗剤)としては、オノン(プランルカスト水和剤)がある。
 抗TXA2剤(TXA2拮抗剤)としては、バイナス(ラマトロバン)がある。
 局所ステロイド剤としては、べコナーゼ、アルデシン(プロピオン酸ベクロメタゾン)や、フルナーゼ(プロピオン酸フルチカゾン)がある。
 なお、Th2細胞が産生するTh2サイトカイン阻害剤として、アイピーディ(トシル酸スプラタスト)がある。

 5.ヒスタミン遊離試験
 食物アレルギーのある患者に、IgE抗体が陽性のアレルギー原因食品(卵、牛乳、小麦、米)を食べさせる(経口食物負荷試験)と、皮膚症状(掻痒、紅斑、膨隆、皮疹の悪化等)、消化器症状(腹痛、嘔吐、下痢等)、呼吸器症状(咳嗽、喘鳴等)の症状が、0〜24時間後に、現れる。
 アレルギー原因食品を食べて症状が現れた(経口食物負荷試験陽性)患者は、血漿ヒスタミン濃度が、食べた120分後と、240分後(負荷120分後と240分後)に、上昇する。
 ヒスタミンは、肥満細胞や好塩基球で、ヒスチジンから脱炭酸酵素により生成され、アレルギー反応に際して、放出される(脱顆粒される)。

 血漿中のヒスタミンは、flushing、頭痛、拡張期血圧低下、心拍数増加等の症状を来たす。
 血漿中のヒスタミンは、速やかに代謝されるので、半減期は、数分以内と、短い。
 
 食物アレルギーでは、まず、経口摂取したアレルギー原因食品により、口腔、咽頭、消化管(initial contact organの肥満細胞等)からヒスタミンが遊離されるが、消化管内に遊離(注入)されたヒスタミンは、大部分、門脈循環(肝臓)や、腎循環(腎臓)により、代謝される(血漿ヒスタミン濃度は、上昇しない)。
 次いで、消化吸収されて血液中に移行したアレルギー原因食品(ペプチド抗原)により、皮膚、肺、血管(secondary contact organの肥満細胞等)からヒスタミンが遊離される(血漿ヒスタミン濃度が、上昇する)。

 6.アレルギー性鼻炎
 アレルギー性鼻炎は、男女比が、10歳以下の小児では1.8:1と男性(男児)の方が多いが、成人を含めた全患者では1:1.6と女性の方が多い。

 7.その他
 ・感冒でも、薄い鼻水(水様性鼻汁)、くしゃみ、水っぽい痰が出る場合には、「小青竜湯(小青龍湯)」を処方する。
 感冒でも、わき腹が張り(胸脇苦満=きょうきょうくまん)、熱感と寒気が交互に感じる場合には、「小柴胡湯」を処方する。 

 注1:アセチルコリン(Ach)は、鼻腺細胞の細胞内Ca2+濃度を上昇させ、細胞膜のK+、Cl-電流を活性化させ、鼻汁を分泌させる。
 漢方薬の小青竜湯は、アセチルコリン(Ach)による、細胞内Ca2+濃度の上昇を抑制し、鼻汁分泌を抑制するという。

 漢方薬の柴朴湯(サイボクトウ)は、気道粘膜上皮細胞の繊毛運動を亢進させ、また、気道分泌液量を減少させる。柴朴湯には、大棗含まれていて、細胞内のcAMP濃度を上昇させ、気道粘膜上皮細胞の繊毛運動を亢進させる言われる。柴朴湯は、気道上皮細胞表面(管腔側)のNaチャネルの機能を高め、Na(ナトリウム)の細胞内への再吸収を促進させ、気道分泌液の水分の再吸収を促進させ、気道分泌液量を減少させる。
 清肺湯は、気道上皮細胞表面のClチャネルの機能を高め、Cl(クロライド)の管腔側への分泌を促進させ、水分の分泌を促進させ、気道内の水分量を増加させるので、気道分泌物(喀痰)が柔らかくなる。

 注2:ヒスタミンは、血管透過性を亢進させる。
 血管内皮細胞に、ヒスタミンが作用すると、血管内皮細胞のH1レセプターを介して、血管内皮細胞のアクチンが収縮して、血管内皮細胞間に隙間(gap)が形成され、隙間を通って、血漿成分(免疫グロブリン、補体など)が、組織中に濾出するため、血管透過性が亢進する。その際、血管内皮細胞の胞体が、血管腔に突出して、核の表面の凹凸が著しくなる。
 血管透過性が亢進すると、粘膜浮腫など、炎症の腫脹が、起こる。
 活性化された好酸球が、上皮細胞間隙を通過すると、(E-カドヘリンが変化して、)上皮透過性亢進が起こる。

 気管支喘息などの気道炎症に際しては、ヒスタミン、血小板活性化因子(PAF)、ロイコトリエン(LT)、サブスタンスP(SP)、ニューロキニンAなどが放出され、血管透過性が亢進する。その結果、血管内の血漿成分が、気道組織内(間質内)に漏出(滲出)し、気道に浮腫が生じ、気管支平滑筋などの収縮も加わり、気道内径は、狭くなる。また、血管透過性の亢進により、気道分泌物が増加し、気道上皮腺毛細胞の機能(mucocilliary clearance)が低下し、漏出(滲出)した血漿成分が、補体系やキニン系(KK系)を活性化する。

 参考文献

 ・寺田修久、今野昭義:アレルギー性鼻炎・花粉症の病態と対応 日本醫事新報 No.4161(2004年1月24)、1-7頁.
 ・玉置淳:気管支喘息の漢方療法−気道分泌亢進と喀痰喀出困難を伴なう喘息治療を中心に− Clinic magazine 1994年9月号、57-60頁.
 ・向山徳子:抗アレルギー薬の使い方 MEDICO Vol.19 No.11 1988別冊、小児のアレルギー、22-25頁.
 ・徳山研一:小児の喘息は気道の慢性炎症性疾患か? 小児科 Vol.38 No.7、883-890、1997年.
 ・大塚武:食物アレルギー児における食物抗原負荷試験前後の血漿ヒスタミン濃度の変動について、アレルギー 41(3): 394-401、1992年.
 ・吉田隆実:抗アレルギー薬 小児科 Vol.38 No.1、29-36、1997年.
 ・下田哲也:平凡社新書194 漢方の診察室、株式会社平凡社、2003年初版第1刷発行.

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