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 SIRS(systemic inflammatory response syndorome)
 SIRS(全身性炎症反応症候群)の概念は、米国で新薬の臨床試験の為に、sepsis(ゼプシス)患者の具体的な選択基準を定義する必要から生じたという。
 Sepsis(ゼプシス)は、日本では「敗血症」と訳されるが、感染に対する全身性炎症反応で、必ずしも血中に病原菌が証明される必要はない。
 Sepsisは、感染によるSIRS。
 感染症に伴う敗血症のみならず、重傷外傷、熱傷、重症膵炎、侵襲の強い手術後などでは、心臓、腎臓、肺、肝臓、中枢神経、副腎や消化管など、複数の臓器の機能不全が起こる。
 この多臓器不全(multiple organ failure:MOF)を、近年普及している、SIRSの概念では、全身性の炎症反応により生じると説明している。

 SIRSでは、全身性炎症の結果、臨床症状として、体温の変動(38度以上、または、36度以下)、脈拍数増加(90回/分以上)、呼吸数増加(20回/分以上)が見られ、血液検査所見では、白血球数が増加ないし減少する。

 SIRSでは、血中のTNF-α(tumor necrosis factor-arufa)、IL-1(interleukin-1)、IL-6(interleukin-6)などの炎症性サイトカインは、高値 を示す(サイトカイン・ストリーム)。
 TNF−αは、SIRSで見られる、好中球の活性化や、血液凝固反応の亢進を引き起こしているサイトカインと考えられる。
 SIRSで見られる体温上昇や頻脈には、TNF−αやIL-1などのサイトカインが、白血球増加には、IL-6、G-CSF、GM-CSFなどが関与している。
 SIRSでは、炎症性サイトカインのみならず、PGE2などの抗炎症性サイトカインも出現していると考えられる。
 グラム陰性菌による重症SIRSは、LPSなどのエンドトキシンが放出されている。

 敗血症やショック状態で産生されるTNF−αは、好中球を活性化させる。
 血管内皮細胞が行っている、cytoprotectiveな作用を超えた、好中球の活性化が起こると、好中球エラスターゼやカテプシンGのようなプロテアーゼによって、血管内皮細胞傷害が生じる。その為、微小循環障害や、また、微小血栓形成が起きる。
 活性化された好中球は、炎症を起こした局所のみならず、肺や肝(灌流圧が低く、白血球が粘着しやすい)などの遠隔臓器にも集積する。
 微小循環障害により、血液は泥状化(sludging)し、さらに、微小血栓形成により、血流が停滞(stasis)し、組織は虚血状態に陥り、多臓器不全が引き起こされると考えられる。
 好中球は、血管外に浸潤して、実質臓器を障害する。
 微小血栓形成が続くと、血液凝固因子や血小板が消費される。SIRS状態が3日以上続くと、DIC(播種性血管内凝固症候群)を合併しやすい。

 感染症に伴うSIRSやDICは、生体から炎症反応で産生されるTNF−αなどのサイトカインが、生体に自己破壊的に作用して引き起こされる。
 DICは、どちらかと言うと、従来は、微小血栓形成による凝固異常の症状に注目した概念だったのに対して、SIRSは、微小循環障害による組織や臓器の虚血症状に注目した概念だと思われる。

 ARDS(adult respiratory distress syndrome)では、血小板が肺循環に集まり、肺動脈閉塞を起こす。

 SIRSのモニタリングには、CRP、フェリチン、GPT(ALT)、LDH、CPK(CK)、TG(中性脂肪)などの血液検査値が用いられる。

 参考文献

 ・米川貴博、足立基、坂下龍生:A型インフルエンザ罹患時に重篤な呼吸不全を合併した3歳女児例、日本小児科学会雑誌、111巻3号、486-490頁(2007年3月).

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