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 チクロピジン

 cAMP濃度が上昇すると、血小板内の遊離Ca2+濃度が減少し、血小板の二次凝集は抑制される。

 1.ADPは、アデニル酸シクラーゼ活性を抑制し、cAMPの濃度を低下させ、TXA2生成を促進させる
 血小板は、von Willebrand因子(vWF)と結合し、刺激されて、ADPアデノシン2リン酸)を放出する。
 放出されたADPは、血小板を活性化させ、一次凝集二次凝集を起こす。

 アデニル酸シクラーゼ(ACは、ATPからcAMP(cyclic AMP)を生成する。
 cAMPは、血小板内の遊離Ca2+濃度を減少させ、actomyosinの収縮を抑制し、血小板凝集を抑制する。
 さらに、cAMPは、血管平滑筋を弛緩させ、血管を拡張させる。
  
 ADPは、アデニル酸シクラーゼの活性を抑制する抑制性G蛋白(Gαi2)の活性を亢進させ、アデニル酸シクラーゼの活性を抑制し、cAMPの濃度を低下させ、血小板凝集作用のあるTXA2の生成を促進させる。
 
 2.血小板のADP受容体
 血小板のADP受容体には、P2Y1と、P2Y12の、二つのサブタイプがある。
 P2Y1は、血小板の形状変化(一次凝集)に係わる。
 P2Y12は、血小板のADP放出や、血小板の凝集維持(二次凝集)に強く関連する。

 3.チクロピジンは、ADPの作用を抑制し、cAMP濃度を高め、血小板内のCa2+濃度を減少させ、血小板の二次凝集を抑制する。
 チクロピジンは、ADP依存性の血小板凝集(一次凝集と二次凝集)を阻害する

 チクロピジン(Ticlopidine)は、ADPがP2Y1へに結合するのを阻害することにより、ADPによるアデニル酸シクラーゼ活性の抑制を阻害し、cAMP濃度を高め、血小板内のCa2+濃度を減少させ、血小板の二次凝集を抑制する。また、cAMP濃度が上昇することで、TXA2の生成も抑制させ血小板凝集を抑制する。また、血小板膜蛋白GPIIb/IIIa受容体の活性化も抑制されるので、チクロピジンは、血小板膜蛋白GPIIb/IIIaのフィブリノゲンやvWFとの結合をも阻害する。

 チクロピジンには、ADP受容体のP2Y12を特異的に阻害する作用がある。
 チクロピジンは、ADPによる血小板凝集を抑制するが、アラキドン酸やコラーゲンによる血小板凝集を抑制しない

 ADPによる血小板凝集は、ずり応力惹起血小板凝集(SIPA)に関与する。
 SIPAは、急性期の心筋梗塞患者では、健常者や安定期の心筋梗塞患者に比べ、亢進している。

 チクロピジンは、高ずり応力惹起血小板凝集(SIPA)を、抑制する
 運動は、SIPAとvWF活性を亢進させる。
 運動によるSIPAの亢進は、アスピリンとチクロピジンの併用使用で抑制されるが、アスピリン単独では、抑制されない。

 レーザー散乱粒子測定法では、粒径25μm以下の大きさの、血小板の小凝集塊が、測定できる。
 不安定労作狭心症患者や、糖尿病や高脂血症を合併する患者では、血小板の小凝集塊の形成が、亢進している。
 安定期の心筋梗塞患者での研究結果では、アスピリンは小凝集塊の形成を有意に抑制しないが、チクロピジンは小凝集塊の形成を有意に抑制した

 なお、アスピリンは、血小板でのCOX-1によるTXA2の産生を抑制する。

 チクロピジンの効果は、投与後、24〜48時間して発現するが、十分な効果が得られるには、4〜5日間、要する。
 チクロピジンの効果は、アスピリン同様に不可逆的で、投与中止後も、血小板の寿命がある7〜10日間は、作用が持続する。

 チクロピジンは、PAFによる血小板凝集も、抑制する。

 チクロピジンは、100〜200mg/dayの投与量で、ADP(2μM)刺激による血小板凝集を、有意に抑制するが、アラキドン酸(0.4mM)刺激による血小板凝集を、抑制しない。チクロピジンは、200mg/dayの投与量で、PAF(0.2μM)刺激による血小板凝集を、有意に抑制するが、100mg/dayの投与量では、抑制は、有意でない。
 アスピリンは、40〜300mg/dayの投与量で、ADP(2μM)刺激や、アラキドン酸(0.4mM)刺激による血小板凝集を、有意に抑制する。しかし、アスピリンは、PAF(0.2μM)刺激による血小板凝集を、抑制しない。

 チクロピジンは、PGI2の産生や、TXA2の産生に、影響しない。
 アスピリンの投与量が少ないと、PGI2の産生を抑制せず、TXA2の産生のみ、抑制する。
 アスピリンは、PGI2(血漿6-keto-PGF)の産生を、300mg/dayの投与量で減少させるが、81mg/dayの投与量では、減少させ難く、40mg/dayの投与量では、有意に減少させない。
 アスピリンは、TXA2(血漿TXB2)の産生を、40mg/dayの投与量では、減少させない。


 アスピリン(40〜300mg/day)や、チクロピジン(100〜200mg/day)は、出血時間(Ivy法、Simplate I)を延長させる。
 アスピリン(40〜300mg/day)は、βTG(β-thromboglobulin)や、PF4(platelet factor 4)の産生を、抑制しない。
 チクロピジンは、100mg/dayでは、βTGやPF4の産生を、抑制しないが、200mg/dayでは、βTGやPF4の産生を、抑制する。

 4.附記
 ・厚生労働省は、2002年7月23日、製薬企業に対して、塩酸チクロピジン製剤(医薬品名:パナルジン)について、緊急安全性情報(ドクターレター)の配布を指示した。
 塩酸チクロピジンについては、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、無顆粒球症(好中球減少症)、及び重篤な肝障害という重大な副作用が発現することが知られている。血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)では、血小板数の減少,破砕赤血球の出現を認める溶血性貧血、動揺する精神・神経症状、発熱、腎機能障害が現れる。
 厚労省の発表によると、企業から厚労省に報告されたこうした副作用報告数は、2001年7月から2002年6月までに血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)が13例(うち死亡5例)、顆粒球減少(無顆粒球症を含む)が35例(うち死亡6例)、重篤な肝障害が97例(うち死亡6例)にのぼった。

 ・塩酸チクロピジン(パナルジン)は、血小板のアデニル酸シクラーゼ(AC活性を増強して、血小板内cAMP産生(cAMP濃度)を高め、血小板凝集能・放出能を抑制する。
 塩酸チクロピジン(パナルジン)は、血小板機能が亢進している患者に内服させると、ADP、コラーゲン、エピネフリンにより誘導される血小板凝集能や、血小板粘着能を抑制する。
 塩酸チクロピジン(パナルジン)による血小板凝集能の低下は、投与24時間後には発現し、塩酸チクロピジン(パナルジン)を継続投与することにより、減弱することなく維持される。塩酸チクロピジン(パナルジン)を内服中止後は、リバウンド(凝集亢進現象)を示さず、投与前の状態まで漸次回復する。
 塩酸チクロピジン(パナルジン)は、ラットの実験では、各種の凝集誘導薬(ADP、コラーゲン、エピネフリン、トロンボキサンA2、アラキドン酸、トロンビン)による血小板凝集能や血小板粘着能を、持続的に、強力に抑制する。
 塩酸チクロピジンは、抗血栓的に作用する、血管壁のプロスタグランジンI2(プロスタサイクリン)の生成には、影響を与えない。塩酸チクロピジンは、トロンボキサンA2の産生や放出を抑制し、また、β-トロンボグロブリン放出を抑制する。
 塩酸チクロピジンの抗血小板作用は、非可逆的であり、塩酸チクロピジンの内服を中止した後、抗血小板作用が消失するには、8〜10日間(血小板の寿命)を要すると言われる。

 ・塩酸チクロピジン(パナルジン)は、手術の場合には、出血を増強するおそれがあるので、手術の10〜14日前に、投与を中止する。

 ・塩酸チクロピジン(パナルジン)は、一過性脳虚血発作(TIA)や脳梗塞など虚血性脳血管障害に伴う血栓・塞栓の治療、クモ膜下出血術後の脳血管攣縮に伴う血流障害の改善、慢性動脈閉塞症に伴う潰瘍や疼痛・冷感などの阻血性諸症状の改善、血管手術および血液体外循環に伴う血栓・塞栓の治療ならびに血流障害の改善に、保険適用が認められている。
 塩酸チクロピジン(パナルジン)は、虚血性心疾患(冠動脈疾患の心筋梗塞や狭心症)の治療や予防には、保険適用がない。

 ・シロスタゾール(医薬品名:エクバール錠50、プレタール錠50など多数)は、cAMP phosphodiesterase(ホスホジエステラーゼIII:cGMP-inhibited PDE)の活性を阻害し、血小板のcAMP濃度を上昇させ、Ca2+濃度を減少させたり、TXA2の生成を抑制し、血小板凝集を抑制する。
 シロスタゾールは、ADP、コラーゲン、アラキドン酸、エピネフリン等による血小板凝集を抑制する。
 シロスタゾールの作用は、可逆的で、投与中止して48時間以内に、血小板凝集抑制作用が消失する。
 シロスタゾールは、RLPによるずり応力惹起血小板凝集増強を、アスピリンに比して、有意に強く抑制する(アスピリンは、RLPによるずり応力惹起血小板凝集増強を、RLPを添加しない時のレベルまで、抑制する)。
 シロスタゾールは、肝ミクロゾーム中のチトクロームP450のアイソザイムのうち、主としてCYP3A4、次いでCYP2D6、CYP2C19により代謝されると言われる。
 シロスタゾールの投与を中止しても、2日間(48時間)程度は、血小板凝集能が抑制されるおそれがある:シロスタゾールは、投与中止すると、抑制された血小板凝集能は、血漿中濃度の減衰とともに48時間後には投与前値に復し、リバウンド現象(凝集亢進)は認められないと言われる。
 ・イブジラスト(商品名:ケタスカプセル、杏林製薬株式会社)は、PDE(ホスホジエステラーゼ)の活性を阻害し、生体内のcAMP濃度やcGMP濃度を高めることにより、脳血流改善、抗血栓作用(血栓形成抑制作用、血小板凝集抑制作用)を現す。イブジラストは、脳梗塞後遺症に伴う慢性脳循環障害によるめまいの改善に保険適応が承認されている。 イブジラストは、好酸球や気道平滑筋のPDE阻害作用(ホスホジエステラーゼ阻害作用)もあり、気管支喘息の治療にも、保険適応が承認されている。
 イブジラスト(ケタスカプセル)は、PDEIII、PDEIV、PDEX、PDEXIの酵素活性を阻害する。
 ・塩酸サルポグレラート(医薬品名:アンプラーグ錠)は、セロトニンの受容体である、5-HT2受容体(5-HT2A受容体)の拮抗剤。
 塩酸サルポグレラートは、血小板や血管平滑筋の5-HT2受容体に拮抗し、血小板凝集を抑制したり、血管収縮を抑制して微小循環を改善する効果がある。セロトニンは、5-HT2受容体を介して、細胞内の遊離Ca2+濃度を増加させ、血小板凝集を起こさせる。塩酸サルポグレラートは、5-HT2受容体へのセロトニンの作用を遮断する。塩酸サルポグレラートは、セロトニンが、ADPやコラーゲンによる血小板凝集を増強することを抑制するが、直接、ADPやコラーゲンによる血小板凝集をは、抑制しないと言う。

 ・ワルファリンカリウム(医薬品名:ワーファリン錠:Warfarin)は、ビタミンKに拮抗する。血液凝固因子の、第II因子、第VII因子、第IX因子、第X因子が、肝臓で生成されるには、ビタミンKが必要。ワルファリンカリウムは、ビタミンKに拮抗し、血液凝固因子の生成を抑制し、血液凝固を抑制する。ワルファリンカリウムは、血小板には、作用しない。
 納豆は、納豆そのものにビタミンKを含み、納豆菌が腸内でビタミンKを産生するので、ワルファリンカリウム服用中は、摂取しない方が良いとされる。ビタミンKには、ビタミンK1(フィロキノン)と、ビタミンK2(メナキノン)の二種類が存在する。納豆に含まれるのは、ビタミンK2(メナキノン)。納豆は、ナットウキナーゼ(subtilisin NAT)を産生し、フィブリンを切断して、血液粘稠度を低下させることが期待される(EBM無し)。納豆は、レシチンを含んでおり、レシチンが、血中コレステロールを低下させ、血液粘稠度を低下させることも期待される(レシチンの血中コレステロール低下作用を疑問視する意見もある)。納豆は、ポリアミンを含み、血管の老化を予防すると言う。ポリアミンは、納豆に含まれる納豆菌が産生する(ヒトの腸内でも、納豆菌は、ポリアミンを産生可能)。納豆は、ホモシステインを低下させる葉酸も、含んでいる。納豆は、ジピコリン酸を含み、血栓が出来難くする(脳梗塞や、動脈硬化が予防される)。納豆50g/日を、20歳代の男女に、2週間、摂取させると、腸内の善玉菌(ビフィズス菌)が、平均で、摂取前15%から、摂取後36%に、増加する。食事で摂取した納豆に含まれる納豆菌は、ヒトの腸内でも3日間程度は生存する。
 また、緑黄色野菜の、パセリ、キャベツ、ホウレン草などは、ビタミンKを多く含むので、大量摂取は避ける。
なお、サプリメントのクロレラ製剤 にも、1日摂取量 約10g につき、ビタミンKが約 0.1mg含まれている。

 ・硫酸クロピドグレル(商品名:プラビックス錠)は、内服後、肝臓で代謝を受けて活性代謝物となり、不可逆的に血小板のADP受容体サブタイプP2Y12に作用し、ADPの結合を阻害し、血小板の活性化による血小板凝集を抑制する。
 硫酸クロピドグレル(の活性代謝物)は、コラーゲン刺激や低濃度トロンビン刺激によって血小板から放出されたADPによる血小板凝集を抑制する(コラーゲン刺激や低濃度トロンビン刺激による血小板凝集を抑制する:ラットでの実験データ)。
 プラビックス錠は、虚血性脳血管障害(心原性脳塞栓症を除く)後の再発抑制に、保険適応が承認されている。
 プラビックス錠(75mg錠と25mg錠とが販売されている)は、通常、成人には、プラビックス錠75mg(クロピドグレルとして75mg)を1日1回経口投与するが、年齢、体重、症状によりプラビックス錠25mg(クロピドグレルとして50mg)を1日1回経口投与する。

 ・チクロピリジン(医薬品名:パナルジン錠など)は、チエノピリジン誘導体。
 チエノピリジン誘導体は、日本では、チクロピジンの他、クロピドグレル(医薬品名:プラビックス錠)が販売されている。

 参考文献
 ・近藤一直:納豆の成分の血液に対する作用 日本醫事新報 No.4242(2005年8月13日)、99-100頁.
 ・内山真一郎:脳梗塞の一次・二次予防 CLINICIAN Vol.37 No.390、97-109、1990年.
 ・神谷達司、片山泰朗:抗血小板療法の開始時期と投与期間、脳血管障害の臨床、日本医師会雑誌、特別号、Vol.125 No.12、S172-S174、2001年(平成13年).
 ・桂研一郎、片山泰朗:一過性脳虚血発作(TIA)/RIND、日本医師会雑誌、特別号、Vol.125 No.12、S196-S202、2001年(平成13年).

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