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 幼児の肛門の病気

 新生児期や幼児期に見られる肛門や肛門周囲の病気である、肛門周囲膿瘍切れ痔直腸脱に関して、実際の症例の写真を提示して、解説する。

 1.肛門周囲膿瘍
 肛門周囲膿瘍は、肛門内の肛門小窩から肛門周囲の組織に細菌が侵入して膿瘍が形成される。
 肛門周囲膿瘍では、最初、肛門周囲(3時か9時の方向に多い)の皮膚に発赤と腫脹が見られ、皮下に膿瘍形成による腫瘤が触知される。腫瘤を坐骨(座骨)の方に圧迫すると肛門から膿が出て来ることもある。膿瘍は、自発痛や圧痛を伴い、児は、まっすぐに坐る(座る)ことを嫌がることがある。
 膿瘍は、大きくなると、自潰し皮膚から膿が排出されることがある。膿瘍化して波動を触れるようになるまでは、切開を行ってはならない
 
 肛門周囲膿瘍の治療では、膿瘍の直上の皮膚を、報賞状に、米粒大の大きさに、メス(眼科用彎剪刀)で切開し、排膿させる。その際、皮膚のみでなく、皮下組織も楔状に切除し、膿瘍腔を開窓すると良いと言う。膿瘍の切開は、明らかに膿瘍化して、波動が触れる時期になったら行う。

 切開創には、ガーゼを貼付しないで、創部を排便の都度などに、清拭・消毒し、抗生剤入りの軟膏(ゲンタシン軟膏、テラマイシン軟膏)を塗布し(軟膏をガーゼや布に塗って創部に貼付しても良い)、オムツを当てる。坐浴や入浴を頻回に行い、局所(肛門周囲の御尻)を清潔に維持する。
 肛門周囲膿瘍を皮膚の表面から、中(肛門内)に向かって押し付けるように優しく圧迫(マッサージ)し、膿瘍腔内の膿を肛門側(肛門管内)に排出させるのも有効(切開創が癒合し閉鎖した場合など)。

 肛門周囲膿瘍には、抗生剤の投与が有効であるという根拠がない。抗生剤投与により下痢になると、むしろ、症状が悪化する。
 昔、教科書の記載に従い、抗生剤の坐薬を用いたことがあったが、却って、悪化し、膿瘍が大きくなったことがあった。
 肛門周囲膿瘍には、漢方薬の十全大補湯が有効とする報告もある。十全大補湯は、0.1〜0.3g/kg/日を内服させる(0.3〜0.5g/kg/日まで増量可)。十全大補湯は、0.2〜0.5g/kg/日を分2〜3で授乳前に飲ませると良いと言う(少量の湯に溶かして飲ませても良い)。

 私の体験では、肛門周囲膿瘍は、整腸剤(ミヤBM、ラックBなど)を内服させ、切開は行わない(自潰を待つ)で、膿瘍部分を優しくマッサージして膿瘍腔内の膿を肛門側に排出させるように心掛け、排便後に坐浴(座浴)させて肛門内や肛門周囲を清潔に保つようにする方が、改善が良好に思われる。

 肛門周囲膿瘍は、生後2カ月以降(母親からの移行抗体が減少する時期)に発症することが多い。
 肛門周囲膿瘍は、再発を繰り返すことが多いが、1歳(生後6カ月以降、自己の抗体産生能が増加し、血清IgG値が上昇する時期)までに、自然治癒することが多い。

 肛門周囲膿瘍は、切開を行った場合、切痕が残ることが多い。痔瘻が完成したりした難治性の肛門周囲膿瘍は、手術の対象になってしまう。

 肛門周囲膿瘍(perianal abscesses)からは、好気性菌の大腸菌(Escherichia coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)や、嫌気性菌(Bacteroides spp、Clostridium, VeillonellaClostridium, Veillonella)が検出される。10〜15%の症例は、大腸菌か、黄色ブドウ球菌か、バクテロイデス・ フラギリス菌(Bacteroides fragilis)が、純粋に(単一に)検出される(yield pure growth)。
 肛門周囲膿瘍は、2歳以下の小児、特に、男児に圧倒的に多い。
 乳児の基礎疾患が無い肛門周囲膿瘍は、自然治癒する(self-limited)ので、通常は、治療を要しない。肛門周囲膿瘍は、2歳前には自然治癒(disappears spontaneously)することが多いので、痔瘻を形成した肛門周囲膿瘍ですら、経過観察(observation)で良い。(Shawn等)

 2.切れ痔
 切れ痔も、排便後に座浴させて石鹸を用いて洗浄し、肛門内や肛門周囲を清潔に保つようにする方が、治癒が良好。
 痔用の軟膏でも、ステロイド含有軟膏の塗布は、却って、治癒を遷延することがある。
 切れ痔は女児に多く、肛門周囲膿瘍は男児に多い傾向がある。
 切れ痔は、便秘でも、下痢でも、悪化する。
 スキンタグ(見張り疣)は、切れ痔で、肛門の皮膚に出来た傷が、再発している間に、傷の皮膚が盛り上がって出来る。

 3.直腸脱
 小児でも、稀に、直腸肛が見られる。
 直腸脱では、直腸全層が、同心円状、全周性に脱出し、粘膜は肥厚して浮腫状態となる。
 直腸脱は、肛門から直腸が全周性に肛門外に脱出する。脱肛は、内痔核が基点となって、肛門や直腸の下の方の粘膜が部分的に肛門外に脱出する。

 参考文献
 ・平野敬八郎:肛門周囲膿瘍と痔瘻、裂肛、小児科医にもここまでできる境界領域、小児科、Vol.38 No.6、臨時増刊号、745-749頁(1997年).
 ・高松英夫:肛囲膿瘍、今日の小児治療指針 第14版、348-349頁、医学書院(2006年5月).
 ・藤沢知雄:肛門周囲膿瘍、痔瘻、裂肛、小児・思春期診療 最新マニュアル、生涯教育シリーズ−82、日本医師会雑誌 第141巻・特別号(1)、S157-S158、平成24年6月15日発行.
 ・Alberto Pena: Chapter 290 Surgical Conditions of the Anus, Rectum, and Colon, 290.2 Perianal Abscess and Fistula, Nelson Textbook of Pediatrics (15th edition), 1112-1113, 1996.
 ・Michael D. Klein, Robert P. Thomas: Chapter 341 Surgical Conditions of the Anus, Rectum, and Colon, 341.2 Anal Fissure, Nelson Textbook of Pediatrics (18th Edition), 1639, 2007.
Shawn J. Stafford, Michael D. Klein: 336.3 Perianal Abscess and Fistula, Nelson Textbook of Pediatrics (19th Edition), 1359-1360, 2011.

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