シトリン欠損症
成人発症II型シトルリン血症(CTLN2)では、肝臓の尿素回路(アンモニアを処理する)の律速酵素アルギニノコハク酸合成酵素(argininosuccinate synthase:ASS)の活性が、二次的に低下している。
成人発症II型シトルリン血症(CTLN2)では、シトリン(citrin)を産生する遺伝子SLC25A13に、異常があり、シトリン欠損症の為、argininosuccinate synthase(ASS:下図のB)の活性が、二次的に低下し、高シトルリン血症を呈する。

シトリン(citrin)は、肝臓では、肝細胞のミトコンドリア内膜に存在し、カルシウムで活性化される肝型アスパラギン酸-グルタミン酸輸送体(aspartate glutamate carrier:AGC)として機能する。
アスパラギン酸-グルタミン酸輸送体(AGC)は、リンゴ酸-α-ケトグルタル酸輸送体(oxoglutarate carrier:OGC)と共に、NADHシャトルであるリンゴ酸-アスパラギン酸シャトル(MA shuttle)を構成する。
リンゴ酸-アスパラギン酸シャトル(malate aspartate shuttle:MA shuttle)は、NADHシャトルとして、細胞質ゾルのNADH2+還元当量(呼吸鎖でのATP合成などに必要)を、ミトコンドリア内に輸送する。
シトリン欠損により、アスパラギン酸-グルタミン酸輸送体(AGC)が機能しないと、尿素回路、蛋白・核酸合成、好気的解糖、乳酸からの糖新生、脂質代謝、エネルギー代謝(呼吸鎖でのATP合成)などが、障害される。
シトリン欠損により、肝臓のアルギニノコハク酸合成酵素(ASS)の活性が、二次的に低下し、成人発症II型シトルリン血症(CTLN2)を発症する。
シトリン欠損症は、シトリンを産生する遺伝子SLC25A13の量アリルの変異によって生じる。
成人発症II型シトルリン血症(CTLN2)では、肝臓のアルギニノコハク酸合成酵素(ASS)の活性が低下することが多いが、あまり低下しない症例(残余活性:50〜80% of control)も存在する(シトリンを産生する遺伝子SLC25A13が、変異ホモ接合体の場合)。
シトリン欠損により、肝臓のアスパラギン酸-グルタミン酸輸送体(AGC)が機能しないと(肝性AGC欠損症では)、リンゴ酸-アスパラギン酸シャトル(MA shuttle)により、細胞質のNADH2+還元当量が、ミトコンドリア内に輸送されない為、糖質を摂取しても、好気的解糖により生成されるNADH2+が、細胞質に蓄積することになる(好気的解糖が障害される)。肝臓では、機能しないアスパラギン酸-グルタミン酸輸送体(AGC)に替って、リンゴ酸-クエン酸シャトル(MC shuttle)により、NADH2+還元当量が、ミトコンドリア内に輸送され、その際、クエン酸が細胞質に輸送され、アセチル-CoAが細胞質に増加し、脂肪酸合成が促進し(中性脂肪が合成される)、脂肪肝が形成される。なお、肝臓では、グリセロリン酸シャトルは、殆ど機能しないと言われる。
シトリン(citrin)を産生する遺伝子SLC25A13は、染色体では、Chromosome7q21.3に存在する。
シトリンは、肝臓、腎臓、心臓に存在する。腎臓と心臓には別の遺伝子由来のAGCであるアララーと いうタンパク質が存在する(シトリン欠損による症状が腎臓と心臓には現れない)。
シトリン欠損は、成人発症II型シトルリン血症(adult-onset type II citrullinemia:CTLN2)や、新生児肝内胆汁うっ滞症(neonatal intrahepatic cholestasis caused by citrin deficiency:NICCD)を発症させる。成人発症II型シトルリン血症(CTLN2)でも、シトリンを産生する遺伝子SLC25A13変異ホモ接合体(homozygoteとcompound heterozygoyeの両方)の場合は、肝臓のアルギニノコハク酸合成酵素(ASS)の活性が、あまり低下しない(残余活性:50〜80% of control)。
成人発症II型シトルリン血症(CTLN2)では、高アンモニア血症を伴なう高シトルリン血症を来たし、精神神経症状(意識障害、失見当識、異常行動、痙攣、癲癇様発作)を呈する。
成人発症II型シトルリン血症(CTLN2)では、肝脳疾患(類瘢痕脳型、栄養障害型、若年型、特殊型)として、知られて来た。
シトリン欠損症の症例は、糖新生が障害され、低血糖を呈することがある。
成人発症II型シトルリン血症(CTLN2)の症例は、幼少時より、大豆、ピーナッツ、卵などの食品を、異常に好む。成人発症II型シトルリン血症(CTLN2)の症例は、糖質類(米飯や甘い物など)を嫌い、蛋白質や脂質を多く含む食品(豆腐など豆製品、ピーナッツ、バター、卵、チーズ、牛乳、魚肉類など)を好む嗜好傾向がある。
成人発症II型シトルリン血症(CTLN2)の症例は、肝臓移植後は、嗜好が変わり、甘い物や糖質類が食べられるようになる。
高アンモニア血症に対しては、低蛋白・高カロリー食が、病院食などでは、出されるが、成人発症II型シトルリン血症(CTLN2)の症例は、低蛋白・高カロリー食だと、却って、高アンモニア血症、高シトルリン血症を悪化させるおそれがある。
成人発症II型シトルリン血症(CTLN2)の症例は、高炭水化物食(高濃度の糖質食、低蛋白食、高カロリー輸液、脳浮腫治療薬など)を投与する(摂取させる)と、細胞質のNADH2+が上昇し、症状が悪化し、死に至ることがある。
シトリン(citrin)を産生する遺伝子SLC25A13は、Chromosome7q21.3に存在する。
aralarを産生する遺伝子SLC25A12は、Chromosome2q24に存在する。
citrinとaralarは、アミノ酸配列が、78%相同性(identity)があり、aralarは、アスパラギン酸-グルタミン酸輸送体(AGC)のアイソフォームとされる。
citrinは、主に、肝臓、腎臓、心臓、小腸に発現(存在)する。aralarは、脳、骨格筋、心臓、腎臓に発現する。
citrinとaralarは、アスパラギン酸-グルタミン酸輸送体(AGC)として機能する。
citrinは、肝臓で、アスパラギン酸-グルタミン酸輸送体(AGC)として機能し、アンモニアを処理する尿素回路に必要なアスパラギン酸(Asp)を、ミトコンドリア内から、細胞質へ、供給する。
アンモニアは、肝細胞のミトコンドリア内では、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GDH)により、グルタミン酸(Glu)に変換され、更に、グルタミン酸(Glu)は、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST、別名、GOT)により、オキサロ酢酸と反応し、アスパラギン酸(Asp)に変換される。ミトコンドリア内に生成されたアスパラギン酸(Asp)は、細胞質のグルタミン酸(Glu)と交換に、アスパラギン酸-グルタミン酸輸送体(AGC)により、細胞質に輸送され、尿素回路などで、利用される。
アスパラギン酸(Asp)の炭素骨格のオキサロ酢酸は、主に、ミトコンドリア内で生成されるので、アスパラギン酸(Asp)の生成も、主に、ミトコンドリア内で行われると、言われる。

NADH2+還元当量をミトコンドリア内に輸送するNADHシャトルには、リンゴ酸-アスパラギン酸シャトル(malate aspartate shuttle:MA shuttle)、グリセロリン酸シャトル(glycerophosphate shuttle:GP shuttle)、リンゴ酸-クエン酸シャトル(malate citrate shuttle:MC shuttle)が存在する。
ヒト肝臓では、mitochondrial glycerophosphate dehydrogenase(mGPDH)の活性が低い為、グリセロリン酸シャトル(GP shuttle)は、殆ど、機能しないと言われる。
リンゴ酸-クエン酸シャトル(MC shuttle)が作動すると、クエン酸が、細胞質に輸送され(リンゴ酸が交換にミトコンドリア内に輸送される)、アセチル-CoAが細胞質に増加し、脂肪酸合成が促進する。

還元基質(グリセロールやソルビトールなど)からの糖新生は、NADHシャトルを必要とする(糖新生の場合、細胞質のNADH2+が必要なので、ミトコンドリア内から、細胞質に、NADH2+還元当量を、輸送する)。 参考文献
・小林圭子、飯島幹雄、牛飼美晴、池田さやか、佐伯武頼:総説 シトリン欠損症、日本小児科学会雑誌、110巻8号、1047-1059、2006年.
・鈴木紘一、他:ホートン生化学 第3版(東京化学同人、2005年、第3刷).
・ヴォート生化学(東京化学同人、2003年、第4刷).
・ハーパー・生化学(丸善株式会社発行、1975年).
|トップページ|脂質と血栓の関係|ミニ医学知識|生化学の知識|医学の話題|小児科疾患|生命の不思議|リンク集|
| SEO | 仕事 母の日 | 無料レンタルサーバー ブログ SEO | |