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 熱中症

 【ポイント】
 熱中症の予防の為には、汗で喪失する塩分(NaCl:0.1〜0.2%程度の食塩)を、水分同様に、補給することが大切。

 大量に発汗すると、汗腺で、Na+が十分に再吸収されず、Na+や水分が、体外に喪失してしまう。
 そうすると、脳は、体内の血清電解質濃度(水・電解質調節)や脳血流を維持する為に、発汗を停止するので、欝熱により、体温が上昇し、熱中症を来たしてしまう。
 熱中症の予防には、発汗で失われる、水分と塩分(ナトリウム)を、補給することが大切。

 熱射病では、欝熱(うつ熱)により、高体温になる。感染症では、熱産生が増加し、発熱する(高体温になる)。
 熱射病では、欝熱により体温が上昇するので、感染症の発熱と異なり、熱射病では、筋肉の震え、悪寒は、見られない
 熱射病では、皮膚は、発汗がなく、乾燥し、発赤し(真赤)、熱感がある。
 水分や塩分(ミネラル)を補給する為には、簡便には、1Lの水に、食塩を2g溶解させて、飲ませる(0.2%食塩水=Na34mEq/L)。
 熱中症の治療の初期輸液は、Na濃度130mEq/L以上の濃度の輸液製剤を、10〜20ml/kg/hrの速度で輸液する(ソリタ-T1号はNa濃度が90mEq/lなので不可)。


 1.熱中症の分類 
 高温の環境や、筋肉を使用する運動・作業は、体熱の放散を妨げ、また、体熱の産生(熱産生)を増加させ、体内に欝熱(うつ熱)が起こる。
 高温の環境によって引き起こされる熱中症(heat illness)は、熱痙攣(heat cramps:発汗による、Naの欠乏が原因)、熱疲労(heat Exhaustion:発汗による、Naと水分の欠乏による脱水・循環障害が原因)、熱射病(heat stroke:発汗の停止による体温の上昇)に、分類される。なお、炎天下で、直射日光を浴びて起こった熱射病は、日射病(sun stroke)と呼ばれる。  
 熱痙攣では、筋肉の痙攣(けいれん)が見られる。
 熱疲労では、皮膚は青白く(蒼白)、体温は正常。
 熱射病では、発汗が低下し、皮膚は赤く(真赤)、熱感があり、乾燥していて、体温は、40℃以上。
 なお、脇窩温は、深部温より、0.5〜1.0℃、低い。
 表1 熱中症の分類と所見や治療(参考文献のS281頁の前川剛志氏の表1を参考に改変し引用した)
 病名  熱痙攣  熱疲労  熱射病
 発症機序  Na欠乏性脱水  高度の脱水、
 欝熱、
 電解質異常、
 体温調節機能残存(発汗あり)
 体温調節機能障害(発汗停止)、
 (発汗停止による欝熱)、
 高度の脱水(循環障害)、
 多臓器機能不全(肝臓、腎臓など)
 体温  38℃以下  40℃以下  40℃以上
 発汗  あり  あり  なし
 皮膚色  蒼白  蒼白  紅潮(乾燥、高温)
 神経症状    頭痛、眩暈、疲労感、
 興奮、意識障害(軽度)
 精神症状、昏睡、痙攣、巣症状
 筋痙攣  一過性有痛性痙攣  時に有痛性痙攣  ほとんどなし
 その他の症状  嘔気、嘔吐、腹痛  嘔気、嘔吐、頻呼吸  頻呼吸、頻脈、嘔吐、悪心、下痢
 検査所見  低Na血症  血圧正常〜軽度低下、脱水  DIC低血圧、肝不全、腎不全(CPK上昇)
 治療  涼しい場所で臥床、
 食塩水の補給
 熱射病に準じる  体温を冷却(氷嚢、15℃の水スプレー吹き付けなど)、
 輸液(乳酸リンゲル液、生理食塩水:初治療時、成人は500〜1000ml、小児は20ml/kg) 
 2.発汗による体温調節
 生体は、高温の環境では、中枢性(脳の視床下部)の体温を維持する機構が作動し、皮膚血管を拡張させ、また、発による気化熱により、体内の熱を体外に放散させようとする。
 汗1mlが蒸発すると、0.585Calが、放散される(1Lの汗が、全て蒸発すると、600Calの熱が放散され、体温は、12℃下降する)。
 全身の汗量は、最高発汗時には、1時間に1〜1.5L、1日10Lに及ぶ。
 高温になってから、発汗が始まるまで、通常20分程度要するが、夏季は、発汗中枢(視床下部)が敏感になり、高温になってから発汗するまでの期間が、短い。

 発汗により、水分や、Na(ナトリウム)、K、Ca、Mgなどのミネラルや、乳酸、アンモニア、尿素などが、体外に、喪失する(排泄される)。しかし、発汗により、Naや水分が欠乏し、脱水により、血清電解質濃度を維持出来なくなると、脳は、水・電解質調節脳血流を維持する為、発汗を停止させる。そうすると、中枢性に体温を維持する機構が作動しなくなり、体温が上昇し、熱射病になる。
 感染症では、体温のセットポイントの上昇により、熱産生が増加し、発熱により体温が上昇するが、熱射病では、発汗が停止して、産生された熱が、体内にうっ積し、欝熱(うつ熱)により、体温が上昇する。感染症の発熱時(高体温時)にも、発汗が停止するが、悪寒など、筋肉の緊張、震えが見られ、皮膚は青白く(蒼白)、手足は、冷たくなる(感染症で高体温になる時には、皮膚は蒼白で、熱感がない)。それに比し、熱中症の高体温時には、筋肉の緊張、震えは見られず、皮膚は赤く(真赤)、手足は暖かい(熱中症で高体温になる時には、皮膚は真赤で、熱感がある)。熱射病で、体温が、上昇し過ぎて、42〜43℃の体温上体が、数分以上続くと、細胞が、不可逆的な障害を受けてしまい、治療を受けても、死に至ることもある(ラジエターが壊れた自動車のように、熱射病は、欝熱により、生体が、壊れてしまう)。
 特に、脳、心臓、肺、肝臓の細胞は、熱(体温上昇による高体温)に弱い。

 発汗により、高温の環境でも、体温の上昇が抑制されるが、体内の水分やミネラル(Naなど)が欠乏していると、循環障害による疲労感、吐き気、眩暈などの症状(熱疲労)が現れたり、また、発汗が適切に出来ず、体熱が体内に籠もって、体温が40℃以上に上昇し、意識が混濁したり、呼吸停止により死に至ることもある(熱射病)。

 熱射病では、体温は40℃以上に上昇し、皮膚は温かく(熱感あり)、真赤(まっ赤、紅潮)で、乾燥している。
 熱射病では、呼吸は速く深く(Kussmaul型)、脈拍は頻数(充実性頻脈)で、血圧は上昇する。
 熱射病では、眼球結膜が、充血することも、多い。
 熱射病では、DIC(血小板数減少)、横紋筋融解症(CPK上昇)、多臓器不全(微小循環障害ASTALTBUN上昇)が発生し易い。 

 高温の環境では、生体のグルコース(ブドウ糖)の消費量が増加する(肝臓での糖新生が、増加し、低血糖を来たさない)。

 水分摂取量が少なかったり、発汗が増加したりして、脱水になると、筋肉(骨格筋)の水分量が低下する。そうすると、筋肉での代謝(生活活動代謝)が低下する。
 発汗により、ビタミンB1(水溶性のビタミン)も、体外に、喪失し易い。

 3.熱射病の応急処置
 熱射病では、応急処置として、風通しの良い日陰で(入手可能であれば、冷水や氷で体を冷やす)、足を高くして寝かせ、スポーツドリンクなどで、水分と塩分(NaCl)を、飲ませる。
 コーヒーや御茶は、カフェインを含んでいて、利尿作用があるので、熱射病の予防、治療の水分補給には、適切でない。なお、麦茶(ムギ茶)、蕎麦茶(ソバ茶)は、カフェインを含んでいないので、熱射病の予防、治療の水分補給に、適している。
 アルコール(酒、ビール)も、利尿作用があるので、水分補給には、適切でない。
 牛乳も、胃から、小腸に移行するのに時間を要するので、水分補給には、適切でない。

 熱射病では、体を冷却し、深部体温を、38℃にまで、急速に、下げる。
 体の冷却方法としては、体表面を冷却する目的で、氷嚢、氷枕、冷却ブランケットを用いたり、体内(体腔内)を冷却する目的で、冷却輸液が行われる。
 体表面を、急速に冷却すると、皮膚血管が収縮し、熱拡散が低下し、冷却効率が低下してしまうので、15℃の水スプレーを吹き付けたり(発汗の替り)、30〜35℃の空気を吹き付ける方法がある。
 深部体温が、41℃を越える患者は、予後が悪い。
 意識障害が遷延したり、多臓器不全に陥った患者も、予後が悪い(数日で、死亡する場合が多い)。

 発汗が多くなると、水や電解質が喪失し、脱水により、血液が濃くなる(ドロドロ血液、注1)。さらに、発汗が不十分で、体温が上昇し40℃を超えると、血小板に突起(偽足)が生じ、血小板が凝集し易くなり、血栓が、出来易くなり(血液が固まり易くなり)、心筋梗塞、脳梗塞のリスクが高まる。
 夏は、脳梗塞の発症頻度が高い。夏は、発汗により、脱水状態になり、血液が濃縮し、血液粘稠度が高まり、血管内で血栓が形成され易くなる為と考えられている。夏は、十分に水分や塩分を補給することが大切。

 4.発汗の機構
 発汗の機構は、まず、皮膚の真皮で、汗腺周囲の毛細血管から、血液中の水分やNaが漏出し、次に、汗腺(注2)で、体に必要なNaなどのミネラルの一部を再吸収し、残りを、汗として、体外に排泄する。なお、乳酸、ピルビン酸(焦性ブドウ糖)は、汗の分泌に際して、汗腺で生成されるので、汗中の濃度が、血漿濃度より、著しく高い。

 汗腺細胞から管腔内に分泌された汗は、最初は、血漿と同じ浸透圧を有している(等張)が、管腔内で、Na+(ナトリウムイオン)が能動的に再吸収され、Cl-も受動的に再吸収され、次第に、低張になり、皮膚表面から、排泄される。
 このように、生体は、発汗により、Na+を体外に喪失させないで、Na+を体内に保存する(再吸収する)。
 汗腺に於いても、腎臓の尿細管と同様に、副腎皮質から分泌されるアルドステロンが、Na再吸収に、関与している。

 大量に発汗すると、汗腺で、Na+が十分に再吸収されず、Na+が、体外に喪失してしまう。普段、汗をかかない人や、体力が低下していて「玉の汗」が出る人は、発汗により、Na+を喪失しやすい。
 そうすると、脳は、血清電解質濃度(水・電解質調節)を維持する為に、発汗を停止するので、欝熱により、体温が上昇し、熱中症を来たしてしまう。
 熱中症の予防には、発汗で失われる、水分と塩分(ナトリウム)を、補給することが大切。

 汗中のNa+濃度は、発汗量が少ない時には薄いが、発汗量が多い時には、40mEq/L以上にまで、濃くなる。その為、マラソンなど、激しい運動をすると、水分と共に、多量のNa+が、喪失してしまう。

 5.発汗機能の低下
 病後などで、発汗機能が低下している人は、汗腺でのNa再吸収が低下し、汗のNa濃度が高くなり、発汗によるNa喪失量が、増加する。その為、病後など、体力が低下している人は、粒が大きい「玉の汗」が、局所から出るが、粘性が高く(粘っこい)、蒸発しにくい。また、「玉の汗」は、汗と同時に、電解質(Naなど)を、喪失し易い。そのような場合、食塩(Na)の補給や、レシチンを含む食品(豆腐など)を摂取すると良いと言う。 

 汗のNa濃度(食塩濃度)は、副腎皮質から分泌されるアルドステロンが、関係する。
 高温の環境では、アルドステロンの分泌が増加し、汗のNa濃度(食塩濃度)は、低下する。

 睡眠中の粘っこい寝汗(ねあせ)は、盗汗(とうかん)と呼ばれる。
 盗汗は、虚証の人に見られ、補中益気湯(注3)のように、甘草(カンゾウ)を含む漢方薬の内服が、良い。
 甘草(カンゾウ)成分のグリチルリチンには、アルドステロン作用がある。

 体内の水分は、汗以外にも、不感蒸泄として、皮膚や粘膜を、拡散により通過し、体の表面から蒸発する。
 不感蒸泄で蒸発する水分量は、1日に600〜800ml(熱量で約400kcal)。

 6.体温調節中枢
 脳の視床下部には、体温調節中枢がある。
 体温調節中枢では、温度刺激(脳の動脈内血液温度)を、直接感知する細胞(温度感知細胞)が、存在する。体温調節中枢では、主に、体温が、高温であるかを感知している。体温調節中枢(前部視床下部)は、温度(脳の動脈内血液温度)が36.9℃以上になると、温度の上昇に比例して、発汗(や皮膚血管の拡張)などを行い、体熱を放散させる。
 それに比し、末梢の温度受容装置(温度感知細胞)は、温点より、冷点の方が、多く存在し、皮膚では、主に、外気温が、低温であるか、感知している。

 体温調節中枢には、体熱の産生(熱産生)を増加させる産熱中枢と、発汗などので体熱を放散させる放熱中枢とが、別個に、存在する。

 体温調節中枢には、体温のセットポイントがあり、脳の温度(体温)が、体温のセットポイントより高い時には、体熱放散(発汗)の指令を出し、反対に、脳の温度(体温)が、体温のセットポイントより低い時には、熱産生の指令を出す。
 体温調節中枢付近で、IL-1により生成されたPGE2は、体温のセットポイントを上昇させる。その結果、体温調節中枢は、より高い体温をセットポイントに設定し、熱産生の指令を出すので、筋肉の震えを伴ない、熱産生が行われ、発熱が起こる。
 NSAIDsアスピリンは、プロスタグランジン(PGE2)の生成を抑制するので、体温調節中枢のセットポイントが下がる。その結果、体温調節中枢は、より低い体温をセットポイントに設定するので、体熱放散(発汗)の指令を出し、解熱が起こる。 

 体温調節中枢は、体内温度皮膚温度の情報を感知し、体温を一定に維持する為に、発汗させたり、血管を拡張させたりする。

 湿度が高いと、発汗した汗が蒸発し難いので、体温が下がり難い。
 熱中症は、炎天下でなくても、26℃程度の気温でも、湿度が高いと、起こり易い。

 体温調節中枢は、エアコンの温度調節機能のように、設定された温度(セットポイント)に、体温を維持している。
 通常は、体温のセットポイントは、36.9℃程度で、これ以上に脳の温度が上昇すると、体温調節中枢は、発汗などにより、体温を低下させる。
 しかし、感染症に罹患して、特に、病原体から産生された毒素などが、血中に移行すると、サイトカイン(IL-1)の作用を介して、体温調節中枢のセットポイントが、上昇する。例えば、セットポイントが、通常の36.9℃から、39℃に上昇した場合、体温が39℃になるまで、体内での熱産生が亢進し、発汗による体温の低下は抑制される(解熱する際には、体温調節中枢のセットポイントが下がるので、発汗が起こる)。感染症に際して、生体が発熱するのは、微生物の増殖を抑制したり、免疫系を活性化させる効果があるので、生理的に目的に適った反応と考えられる。生物が、病原物質に対して、体温を上げて反応するのは、ヒトなど哺乳類に限らず、魚類、爬虫類、鳥類において認められる。魚類は、外因性の発熱物質が投与されると、体温を上げる為に、温かい水のほうに泳いで行く。爬虫類のトカゲは、外因性の発熱物質が投与されると、体温が上がるまで、日向に横たわるという。
 ですから、感染症に伴なう発熱の場合には、解熱剤を無闇に使用して、熱を下げようとするのは、良くないと言われる。
 熱中症の場合には、体温調節中枢のセットポイントは上昇しておらず、発汗が停止して、欝熱により体温が上昇している(発熱ではない)ので、解熱剤は、効果がない(無効)。

 「高熱が続くと頭が悪くなる」と言う人もいるが、感染症に伴ない発熱し、高熱のみによって、一次的に、脳障害が引き起こされることは、考え難いと言われる。
 インフルエンザなどの感染症に罹患し、高熱を伴なって、脳障害が起こっている場合には、脳症(急性壊死性脳症など)や脳炎などを併発している場合が多い。

 注1:「ドロドロ血液」と言う言葉は、定義が曖昧だが、脱水などによる血液の濃縮や、高脂血症により、血液の血行が、悪い状態を意味することが多いようだ。
 学者によっては、ドロドロ血液以外に、「ベタベタ血液」、「ザラザラ血液」、「ネバネバ血液」などと言う言葉を、提言している。
 ベタベタ血液(白血球):ストレスで、交感神経が活動すると、白血球同士や、白血球と血管内皮細胞とが、結合し易くなる。
 ザラザラ血液(血小板):甘い物を食べ過ぎると、血液中に中性脂肪が増え、レムナントが増加して、血小板が偽足を出して、凝集し易くなる。
 ネバネバ血液(赤血球):糖尿病で、赤血球表面の陰性荷電が減少して、連銭を形成し易くなる
 東洋医学の「於血」は、血行が悪くなり、体の中に、悪い血が鬱血した状態を指す。於血は、高脂血症などにより、血液中の、血小板凝集能、血液凝固能、赤血球変形能などが、悪化するのも、原因と思われる。  
 血液レオロジーは、血液の流れやすさを意味する。MC-FAN(Micro Channel Array Flow Analyzer)は、血液レオロジーの変化を測定し、「ドロドロ血液」か、「サラサラ血液」か、観察が可能と言われる。

 注2:発汗による体温調節に関与するのは、エクリン腺。エクリン腺は、交感神経により分泌が調節されるが、エクリン腺の場合、普通の交感神経と異なり、アセチルコリンにより刺激され、汗の分泌が促進される。
 汗腺の総数は、200〜400万とされるが、個人差が大きい。
 汗腺は、出生時に、既に尽く存在していて、出生後に、増加しない。汗腺は、すべてが汗の分泌機能を有する訳でなく、実際に汗を分泌する能動汗腺と、組織学的には欠陥がないのに汗を分泌しない不能動汗腺とが、存在する。汗腺が汗を分泌するかどうか(汗腺の能動化)は、出生1〜2年までの間に決定され、例えば、この時期に、熱帯に居住していると、能動汗腺の数は、多くなる。

 注3:漢方薬の補中益気湯(ホチュウエッキトウ) には、薬用人参(ニンジン)、黄耆(オウギ)、甘草(カンゾウ)などの生薬成分が、含まれている。
 黄耆(オウギ)は、豆科の植物で、強壮効果があり、寝汗(ねあせ)を改善する。
 補中益気湯の「中」は、胃腸のことを指し示すと言う。
 補中益気湯は、胃腸の機能を高め、体力と気力を改善し、病弱体質、疲労倦怠、病後の衰弱、食欲不振、寝汗(ねあせ)などに、効果を示す。
 補中益気湯(7.5g中)は、オウギ(4.0g)、ソウジュツ(4.0g)、ニンジン(4.0g)、トウキ(3.0g)、サイコ(2.0g)、タイソウ(2.0g)、チンピ(2.0g)、カンゾウ(1.5g)、ショウマ(1.0g)、ショウキョウ(0.5g)の混合生薬の乾燥エキス(5.0g)を含んでいる。オウギ(黄耆)やトウキ(当帰)は、皮膚の栄養を改善し、寝汗を治す。サイコ(柴胡)やショウマ(升麻)は、抗炎症作用、解熱作用がある。タイソウ(大棗)は、諸薬を調和し薬力を強化スルと言う。
 補中益気湯は、疲労感がある、気力がない、手足の倦怠感がある、動作が鈍い、話し方に力が無い、目に勢いがない、発汗や盗汗がある、心下振水音がある、脈が弱くしまりがない、などの証の患者に用いられる。
 補中益気湯は、感冒、気管支炎、鼻炎、副鼻腔炎などの呼吸器系疾患(耳鼻科疾患)や、慢性肝炎、肝硬変、胃下垂、慢性下痢症などの消化器疾患や、盗汗、多汗、夏痩せ、眼精疲労など慢性疲労倦怠や、虚弱児・虚弱者の体質改善に用いられる。

 補中益気湯は、補剤(ニンジンやオウギを含む)で、消化吸収機能や免疫機能(NK細胞活性など)を高める。補剤に含まれるニンジン(人参)は、消化吸収機能を賦活し新陳代謝を高める。オウギ(黄耆)は、末梢循環を改善し栄養状態を改善する。
 補中益気湯は、剣状突起下端から臍までの腹部(中焦)を補い、気を益する。ニンジンは中焦に働いて消化機能を高める(脾胃の気を大補する)ことで、また、オウギは気を益する(虚して下垂した気を益し、上に引き揚げる)ことで、元気を出させる。
 補中益気湯は、「元気がなく胃腸の働きが衰えて疲れ易いものの次の症状:虚弱体質、疲労倦怠、病後の衰弱、食欲不振、ねあせ」に効能効果があるとされる。
 補中益気湯を、癌患者に、術前投与すると、NK細胞活性が優位に上昇する(手術後に、手術侵襲によりNK細胞が低下するが、補中益気湯を投与してあると、比較的早期(術後2週目)に、Nk細胞活性が上昇する)。

 補気剤は、四君子湯を原法とする。
 補血剤は、四物湯を原法とする。

 中医学で言う「」(中医学の五臓の一つ)は、自律神経系及び情動の一部を結合した存在(西洋医学で言えば中枢神経系の機能の一部を総括した概念)。「肝」は、精神機能の安定を司る。
 「肝」の失調は、消化吸収機能である脾臓や、呼吸機能である肺臓の働きを大きく損なう。

 気虚下陥とは、脾気(消化吸収機能)が虚で、気血の源が不足し、栄養が行き渡らないために、元気が出ない、疲れ易い、四肢がだるく無力、立ちくらみなどが生じる病態。

 残暑の頃、脾胃が疲れ弱って、食欲不振、疲れ易さ、全身倦怠などに伴って、微熱が出る場合、補中益気湯の方が、清暑益気湯より、適切なことがある。
 夏場に、口渇があっても熱い飲み物を欲する場合、暑邪によって舌や肌の乾燥症状など(陰虚)がそれ程顕著でない場合は、補中益気湯を投与した方が良い。

 補剤でも、補中益気湯は、気が虚した気虚の状態に用いられるが、十全大補湯は、気血ともに虚した常態に用いられる。
 十全大補湯は、血虚の症状である、脱毛、爪が割れ易い状態、皮膚の艶が悪い、皮膚が乾燥するなどの症状を改善する。十全大補湯は、造血作用がある(抗癌剤による白血球減少や貧血を軽減する)。十全大補湯は、気虚の症状である、疲れ易い、だるい、食欲低下などの症状も改善する。十全大補湯は、癌のあらゆる段階の患者にも、処方出来る。
 漢方のみで癌を消失させることは非常に困難。
 漢方薬は、癌治療(抗癌剤の効果)を減弱しないと、基礎研究の結果から、考えられている。

 「四君子湯は、補気の基本」と言われる。
 「気虚症」(元気ない、易疲労、消化不良)は、「気」(エネルギー)の不足が原因。「気」(エネルギー)の入り口は、消火器(五行の「脾})。
 「脾」の機能障害は、消化吸収不全を招くので、健脾が必要。水分代謝障害には、利水(利尿)が必要。
 五行:肝=木、心=火、=土、肺=金、腎=水
 五行の相生関係:木(肝)→火(心)→土(脾)→金(肺)→水(腎)→木(肝)
 五行の相克関係:木(肝)→土(脾)→水(腎)→火(心)→金(肺)→木(肝)

 参考文献
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 ・地主和人:特集 ガン治療と漢方 癌患者の免疫機能に対する補中益気湯術前投与の臨床的有用性、漢方と最新治療、15(1): 15-19、2006.
 ・柴原直利、岩崎鋼、渡辺賢治:日常診療における補剤の使い方、Medicament News、第1844号(2005年8月15日)別冊.
 ・下田哲也:平凡社新書194 漢方の診察室、株式会社平凡社、2003年初版第1刷発行.

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