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 麻疹

 【ポイント】

 麻疹ウイルスは、ウイルスに感染してから7日目(発熱する3日前)から、麻疹の発疹が出現して5日後(解熱3日後)まで、ウイルスが排出される(特に、麻疹は、発熱してから、発疹が現れて36時間後までの期間、感染力が強い)。
 麻疹は、自然感染の場合、麻疹ウイルスに感染して、10〜12日間の潜伏期間の後、発熱や、咳、鼻汁などの症状で発病する。
 麻疹は、コプリック斑(Koplik斑:やや隆起した白色の小斑点)が、発熱が始まって2〜3日後に出現し、発疹出現3日後以内に消失する。
 麻疹の生ワクチン接種の副反応として、発熱(37.5℃以上)が、接種を受けた子供の約20%に見られる。発熱は、ワクチンを接種して9日後に見られることが多い(発熱は、ワクチン接種7〜12日後に見られる)。
 麻疹に免疫がない人が、麻疹ウイルスに感染した場合、
6日以内にガンマグロブリン製剤を筋注するか、72時間以内に麻疹の生ワクチンを緊急に接種すれば、麻疹の発病を阻止し得る。
麻疹の発疹の写真

 1.麻疹の症状
 麻疹(はしか:measles、Masern)は、ウイルスが感染した後、10〜12日間の潜伏期間の後、発熱、上気道のカタル症状等の症状で発病し、特有な発疹を呈する(潜伏期間は、希に、6〜10日間と短いこともある)。
 麻疹ウイルスは、ヒトからヒトへの空気感染(飛沫核感染)、飛沫感染、接触感染などの感染経路で感染する。
 麻疹ウイルスは、感染後、鼻や喉の粘膜や結膜に付着し、侵入し、潜伏期間中にリンパ節で増殖する。麻疹ウイルスは、一次ウイルス血症では、網内系組織(reticuloendothelial system)に広がり、二次ウイルス血症では、皮膚表面(body surfaces)に広がり、麻疹のカタル期(prodromal illness)が始まる。
 麻疹ウイルスは、感染源となる患者が部屋から離れても、1時間後も(as long as)、空気中に漂っている。
 麻疹は、発症3日前から、発疹出現4〜6日後まで、感染力がある。

 麻疹ウイルスは、発疹が出る前のカタル期と、発疹が現れてから36時間以内が、感染力が強い
 麻疹ウイルスは、発症(発熱)する3〜4日前から、発疹出現2〜3日後までの期間、患者からウイルスが排泄される。
 麻疹ウイルスは、ウイルスに感染後9〜10日目(カタル期の始め:早い人では、感染後7日目)には、感染力がある。病院などでは、ウイルスに感染7日目から、発疹が出現して5日後までの期間、(感染が疑わしい人を)隔離する。

 麻疹の臨床経過は、カタル期、発疹期、回復期に、分けられる。
 ウイルスの感染力が、最も、強いのは、発疹が現れる前のカタル期。
 麻疹ウイルスは、Paramyxovirus科Morbillivirus属の一本鎖RNAウイルス。

 1).カタル期

 ・発熱:カタル期は、発熱(稽留熱)が、2〜4日間続く。発熱が起こるのは、麻疹ウイルスに感染して、10〜12日後。
 麻疹ウイルスは、発熱する3日程前から、放出される。
 しかし、麻疹ウイルスの感染力が強いのは、カタル期であり、発熱前(潜伏期間)と、発疹出現36時間以後は、感染力はないと言われる。

 ・カタル症状カタル症状として、上気道炎症状(くしゃみ鼻汁、咳嗽:漿液性で透明な分泌物が増加する)、結膜炎症状(結膜充血、眼脂、羞明)、消化器症状(下痢、腹痛嘔吐)が現れる。

 ・コプリック斑
:発熱して、数日後に、口腔内の頬側の粘膜に、コプリック斑(Koplik斑、注1)が見られる。コプリック斑は、麻疹の発疹が現れる1〜2 日前に見られるので、診断的な有用性がある。
コプリック斑の写真

 2).発疹期

 ・発熱:カタル期の発熱が、半日程、一旦、下がった後、再び、高熱が出て、さらに、発熱(39.5 ℃以上:稽留熱か、少し、弛張する)が、平均3〜4日間続く(麻疹の発熱は、二峰性発熱)。

 ・発疹:一旦、解熱し、再び発熱する頃、特有な発疹が、耳後部から、顔面、躯幹、四肢へと広がる(発疹が現れるのは、麻疹ウイルスに感染して14日後頃)。発疹は、小斑点丘疹性で、一部は癒合しているが、発疹がない健康皮膚面が残る。顔は、麻疹に特有な麻疹様顔貌を呈する。
 発疹は、最初は、鮮紅色であるが、次第に、皮膚より隆起して、癒合するが、健常皮膚面が残る。麻疹の発疹は、指で圧迫すると、退色する。発疹は、次第に、暗赤色になる。
 発疹の程度は、麻疹の重症度(発熱の程度や全身状態)とは、相関する。
 麻疹の発疹は、3〜4日持続した後、消退するが、その際に、典型的には、色素沈着が残る(注2)。
麻疹の発疹の写真
 麻疹の発疹は、発熱してから第4病日頃、一過性の体温下降の後、高熱と共に、現われる。
 麻疹の発疹は、耳介後部や頚部から、下向性に、顔面→体幹→四肢へと拡大する。
 麻疹の発疹は、直径が2〜5mmの大小不同の紅斑で、辺縁は不整で、やや隆起した丘疹状になる。
 麻疹の発疹は、健常皮膚部分を残して融合傾向を示す。
 麻疹の発疹は、最初は鮮紅色を呈するが、後に毛細血管外に出血し暗紅色になり、色素沈着が残る。

 ・カタル症状:発疹期には、咳嗽などのカタル症状が、一層強くなる(咳嗽や眼脂は、発熱後7日頃が、一番、強い)。
 麻疹では、多量の眼脂、流涙、眼痛が現れる。麻疹では、角膜潰瘍(角膜が白濁する)や、角膜穿孔が起こり、失明することもある。

 ・コプリック斑:コプリック斑は、発疹出現後2日目の終わりには、消失する。

 3).回復期
 ・発熱:発疹期の発熱は、回復期に入ると、渙散状に、解熱する(微熱になって、解熱する)。発熱が長引く場合は、肺炎の合併を疑う。

 ・発疹:発疹は、色素沈着を残して、消退する。糠様落屑が見られる。

 ・カタル症状:咳嗽などのカタル症状が、軽快する。 

 成人の麻疹は、他の潜伏期間の長いウイルスの初感染(水痘など)と同様、重症化することが、多い。
 成人の麻疹では、LDHに加え、肝障害の為、ALT、ASTが上昇することがある。

 2.麻疹の合併症
 麻疹の合併症として、肺炎、急性脳炎、中耳炎、などがある。

 1).肺炎
 肺炎は、麻疹ウイルス性の肺炎と、細菌二次感染(肺炎球菌、インフルエンザ菌、化膿レンサ球菌、黄色ブドウ球菌)による肺炎とが、ある。乳児では、毛細気管支炎になることもある。気管支肺炎、大葉性肺炎(肺炎球菌性肺炎)のこともある。
 麻疹自体でも、咳嗽が続くが、麻疹で、発熱が続いたり、再発熱する際には、肺炎の合併を疑う。

 2).急性脳炎とSSPE
 麻疹に合併する脳炎には、急性期に発症する麻疹脳炎(急性脳炎)と、麻疹罹患後数年して発症するSSPEとがある。

 a).麻疹脳炎
 麻疹脳炎(急性脳炎)は、麻疹ウイルスが、脳神経系を直接侵襲して起こる。
 急性脳炎の主症状は、高熱、頭痛、嘔吐、意識障害(嗜眠状態など)、痙攣など。
 急性脳炎は、麻疹1,000〜5,000例に1例程度の頻度で、発症する。2001年度大阪感染症流行予測調査会報告書によると、麻疹での急性脳炎の合併率は、約1,000人に2人と言われる。
 麻疹脳炎(急性脳炎)は、発疹出現後2〜7日目(発熱6〜12日目頃)に発症することが多い。
 麻疹脳炎は、解熱した後、再び、発熱(高熱)して、発病することがある。

 麻疹脳炎は、約60%の症例は後遺症なく回復するが、約15%の症例は死亡し、20〜40%の症例は後遺症を残す。
 麻疹の重症度と、麻疹脳炎の発症(neurologic involvement)とには、相関関係がない。初期の麻疹脳炎の病状(severity)と、麻疹脳炎の予後とにも、相関関係がない。麻疹で急性脳炎を合併し、眠ってばかりいた(嗜眠状態)症例でも、後遺症が残らないこともある。

 b).SSPE
 SSPE(subacute sclerosing panencephalitis:亜急性硬化性全脳炎)は、麻疹罹患後、数年(5〜9年)して発症する(学童期に発症する)。
 SSPEの症状は、行動や性格の変化、知能低下で、徐々に現れる。そして、次第に、特有なミオクローヌス発作が周期的に現れ、昏睡状態に陥って、6〜12カ月後に死亡する。
 SSPEの発症頻度は、自然に麻疹に罹患した場合、10万人に1人と言われる(麻疹の予防接種が普及しない時代)。1970〜1978年に麻疹に罹患した症例の調査結果(1993年)では、SSPEの発症頻度は、21/100万人(48,000人に1人)と報告されている。麻疹の生ワクチンを接種した場合も、SSPEの発症が見られるが、その頻度は、100万人に1人と言われる。

 SSPEの発生頻度は、発生率は約1〜1.5万人に1人だが、ワクチン接種者は100万人に1人と少ない。さらに、ワクチン接種後に発生したSSPE患者の脳内から検出される麻疹ウイルスは、当時流行していた野生株ウイルスなので、ワクチン接種後に発生するSSPEは、ワクチン株ウイルスが原因でなく、野生株ウイルスが原因と考えられている。従って、ワクチン接種によりSSPEの発生頻度が減少することはあっても、ワクチン接種(ワクチン株の麻疹ウイルス)がSSPEの原因とはならない。

 SSPEは、2歳未満の時期に麻疹に罹患した子供が、発症し易い。SSPEは、1歳未満の時期に麻疹に罹患した場合や、ステロイドホルモン剤や抗癌剤などを長期に使用して免疫機能が低下している状態に麻疹に罹患した場合に、麻疹に罹患後、数年して、発症することが多い。
 SSPEは、変異した麻疹ウイルス(注3)が、潜伏感染していて起こると言われる。

 SSPEの米国での発症頻度は、1960年は、20歳前の小児では、0.61/100万人。1980年には、0.06/100万人に減少した。
 50%のSSPE患者は2歳前に麻疹に初感染し、75%のSSPE患者は4歳前に麻疹に初感染している。
 麻疹は、男児の方が、女児より、2倍多く、罹患する(affected)。

 3.麻疹と免疫
 麻疹に罹患した後は、細胞性免疫能が低下して、ツベルクリン反応も陰性化(陰転)する。細胞性免疫能は、2週間以内に、正常に回復することが多いが、回復に、6週間要することもある。

 麻疹は、「二度罹りなし」と言われるように、自然感染して発病した場合、終生免疫が成立する(注4)。
 麻疹に罹患後、麻疹ウイルスに再感染した場合、発病しない(臨床症状は現れない)が、血中の麻疹抗体価は再上昇する(注5)。

 3.乳児麻疹
 乳児は、母親が、麻疹の自然感染歴があるか、麻疹ワクチン接種歴があれば、胎児期に胎盤を経て、移行抗体注6)が付与されているので、生後4〜6カ月の期間、麻疹ウイルスに感染しても、発病しないか、発病しても、症状が軽い(乳児麻疹)。

 乳児期に麻疹ウイルスに感染して、発病した乳児麻疹では、発熱(38℃以上)しても、1〜2日以内と短く、咳嗽も軽度で、結膜炎は、認めないことが多い。
 乳児麻疹では、Koplik斑は認められる(出現率は、100%でない)。
 乳児麻疹では、発疹は一過性で、色素沈着を残さないで消退する(突発性発疹など、他のウイルス性疾患による発疹と、鑑別を要する)。

 なお、発熱などの症状は、ウイルスに対する免疫応答で起こるが、リンパ球のIFN-γ産生能は、新生児期や乳児期は、低値である。乳児期の麻疹(乳児麻疹)は、症状が非典型的なことが多い。しかし、発熱などの症状が顕著でなくても、軽症でないことも、有り得る。

 4.麻疹の予防接種
 麻疹の予防接種は、日本では、弱毒生麻しんワクチンが、昭和45年から任意接種で導入され、昭和53年から定期接種に組み込まれた。
 平成18(2006)年4月1日からは、新制度により、麻疹の予防接種は、風疹の予防接種と同時に、しかも、計2回(第1期:1歳〜2歳まで、第2期:学校入学までの1年間)、受けるようになる。

 1).麻疹生ワクチンの副反応
 麻疹の生ワクチンは、発熱の副反応の頻度が高い。ウイルスが体内で増殖する、接種してから7〜12日(5〜14日後)を中心に、37.5℃以上の発熱が約20%の接種者に見られ、38.5℃以上の発熱も数%の接種者に見られる。(発熱した接種者の)10〜20%に、麻疹様の発疹が現れる(ほとんど無熱の接種者に、発疹が現れることもある)。
 麻疹の予防接種が原因で、急性脳炎を発症することが極めて希にある(100万人接種に1人以下)。しかし、自然感染で急性脳炎(麻疹脳炎)を発症する頻度(1,000〜5,000例に1例)より、低い。

 麻疹の生ワクチン接種の副反応としての発熱は、接種して9日後が多い注7):接種して、平均8.9日後に、発熱が見られる:発熱までの期間は、麻疹に自然感染した場合(10〜12日後)より、短い。副反応としての発熱は、通常1〜2日間程度で解熱する。しかし、副反応としての発熱は、長い場合、7日間程度、続くことがある。発熱に伴い、熱性痙攣を来すこともある(200〜300人に1人程度の頻度)。

 副反応としての発疹は、ワクチン株の麻疹ウイルス(に対する免疫応答)が原因で起こる。副反応としての発疹は、接種者の20%程度に見られる。副反応としての発疹は、接種後、平均9.1日後(接種して15日以内)に、見られる。副反応としての発疹は、3日程度で消失する。

 副反応として、鼻汁、咳嗽が、接種15日後以内に、発現することもある。

 麻疹の生ワクチンは、製造には、ニワトリ胚細胞(ニワトリ胚初代培養細胞)を使用している。しかし、麻疹の生ワクチンを接種して、卵アレルギーによるアナフィラキシーショックなどの副反応が現れることはないので、原則として、ワクチン接種に当り、皮内反応を行う必要はないとされる。卵アレルギー児への皮内テストは、卵摂取でアナフィラキシーを来した例のみに行えば良い。なお、麻疹の生ワクチンは、通常、0.5mlを皮下注射するが、皮内反応を行う為に、麻疹の生ワクチンを、少量(0.1ml)皮内注射しただけでも、免疫を誘導する(EIA-IgG抗体価、HI抗体価が、陽性になる)

 麻疹の生ワクチン接種の副反応は、アナフィラキシーは接種24時間以内、脳炎・脳症・痙攣は21日頃見られる。
 副反応として、脳炎・脳症を発症する頻度は、1/100〜150万人以下と言われる。
 副反応として、SSPE(亜急性硬化性全脳炎)を発症する頻度は、1/100万人と言われる。

 麻疹の生ワクチンを接種すると、接種者の98.0%は、HI抗体が陽転する。接種後の麻疹HI抗体価は、平均でX64倍(X26倍)程度に、上昇する。生ワクチンを接種後、麻疹に対する十分な免疫を獲得するまで、約1カ月を要する(注7)。

 麻疹に免疫がない人が、麻疹患者(接触者)と接触し、麻疹ウイルスに感染した場合、感染後2日以内(72時間以内)に、麻疹の生ワクチンを緊急接種すると、麻疹の発病を阻止出来ると言われる。
 しかし、麻疹ウイルスは、発熱する3日前から感染力があり、家庭内では、兄弟に発疹が現れ、麻疹と診断された時点で、既に、感染後、4日以上を経過していることが多い。また、急性脳炎などを発症した場合、自然感染した麻疹ウイルスが原因なのか、それとも、ワクチン株ウイルスが原因なのか、問題になりかねない。従って、麻疹の発症予防の為に、生ワクチンを緊急接種する方法は、乳児院など施設内の流行を阻止する際に、利用する方が良いと言われる。

 2).新制度による麻しん風しん混合生ワクチンの2回接種
 麻疹の予防接種は、1回生ワクチンを接種しただけでは、数%の子供さんは、十分な麻疹に対する免疫を、獲得出来ないことがある(primary vaccine failure:PVF)。また、一旦、生ワクチンを接種して獲得した免疫が、麻疹の野生株ウイルスの流行が少なくなった為、次第に低下して、野生株ウイルスに自然感染した際、麻疹を発症してしまうこともある(secondary vaccine failure:SVF)。
 このように、野生株の麻疹ウイルスの流行(自然麻疹)が減少して、SVFの症例が増加するおそれがある。その為、平成18(2006)年4月1日から、麻しん風しん混合生ワクチン(MRワクチン:医薬品名、ミールビック)を、2回接種するように、スケジュールが改訂され、新制度が導入される。即ち、第1期は、1歳〜2歳まで(生後12月〜生後24月に至るまで)に受け、第2期は、5歳以上〜7歳未満までに(学校入学までの1年間に)、受ける。
 なお、今まで、麻疹や風疹の予防接種を受けていない子供さんは、スケジュールの改訂に合わせて、1998年10月2日〜2004年4月1日までの期間に生まれた子供さんは、2006年3月31日までに、どちらのワクチンも接種を受ける。
 2004年4月2日〜2005年4月1日までの期間に生まれた子供さんも、2006年3月31日までに、どちらのワクチンも接種を受ける。なお、麻疹や風疹を、どちらも、予防接種で受けたり、自然感染で罹患したことがなければ、2006年4月1日〜2歳の誕生日の前日までなら、新制度により、麻しん風しん混合生ワクチン(MR)で、接種を受けられる。麻しん風しん混合生ワクチンは、他の生ワクチンの接種を受けた子供には、通常、27日以上間隔を置いて、接種する。また、他の不活化ワクチンの接種を受けた子供には、通常、6日以上間隔を置いて、接種する。麻しん風しん混合生ワクチン(乾燥弱毒生麻しん風しん混合ワクチン「タケダ」、はしか風しん混合生ワクチン「北里第一三共」、ミールビック)は、成人に接種する際には、「妊娠可能な婦人においては、あらかじめ約1箇月間避妊した後接種すること、及びワクチン接種後約2箇月間は妊娠しないように注意させること」と、添付文書に記載されている。なお、麻しん単独のワクチン(乾燥弱毒生麻しんワクチン「タケダ」、はしか生ワクチン「北里第一三共」)は、接種後の避妊の注意書きはない(「妊娠していることが明らかな者」は接種を受けられない)。
 2005年4月2日以降に生まれた子供さんは、1歳の誕生日を迎えたら、麻しん風しん混合生ワクチン(MRワクチン)の第1期の接種を、受けられる。

 平成18年6月2日に、平成18年政令第210号(改正政令:予防接種法施行令の一部を改正する政令の一部を改正する政令)と、平成18年厚生労働省令第128号(改正省令:予防接種法施行規則及び予防接種実施規則の一部を改正する省令)が公布・施行された。これにより、麻しん風しん混合生ワクチン接種は、勧奨接種となり、麻しんワクチン接種や風しんワクチン接種を、単独で、受けることが出来る。
 麻しん風しん混合予防接種の対象年齢外者(生後2歳〜来年学校に入学しない5歳児、7歳〜7歳半未満の小学校児)や、麻しんか風しんを単独接種したことのある児は、麻しんワクチン接種や風しんワクチン接種を、単独で、受けることが出来る。
 麻しんか風しんに罹ったことがある児や、保護者が単独ワクチンの接種を希望している児は、麻しんワクチン接種や風しんワクチン接種を、単独で、受けることが出来る。
 過去に、単独で、麻しんワクチン接種や風しんワクチン接種を、いずれも接種した児、あるいは、いずれかを接種した児は、第1期の予防接種を受けたと看做され、麻しん風しん混合生ワクチン(MRワクチン)の第1期分の接種は、受けられない。
 麻しん風しん混合生ワクチン(MRワクチン)は、任意接種として行う(市町村の委託が行うのでない)場合は、年齢や性に関係なく接種出来る。

 麻しん風しん混合生ワクチン(MRワクチン)を接種した場合、風しん生ワクチンウイルスが、接種1〜2週間後に、接種を受けた人(小児)の咽頭から、周囲に排泄されるが、周囲の風しん感受性者(風しんに免疫が無い妊娠中の母親など)に感染することはないと言われる。
 麻しん生ワクチンは、麻しん患者と接した麻しん感受性者(麻しんの免疫がない人)に、感染後2日以内(72時間以内)に、緊急に接種すると、麻疹の発病を阻止出来ると言われる。
 風しん生ワクチンは、風しん患者と接した風しん感受性者(風疹の免疫がない人)に、緊急に接種しても、確実に風しん発症を予防出来るとは限らないが、接種自体は構わない。

 MRワクチン第2期接種(学校入学までの1年間)に関して、接種前と後(4〜6週後)と、接種後平均40ヶ月後(34〜46ヶ月)に、抗体を測定した調査結果がある(西村直子等、MRワクチン第2期接種後の抗体追跡調査、第52回日本臨床ウイルス学会、平成23年6月11〜12日)。その結果では、麻疹HI抗体、麻疹NT抗体、風疹I抗体が、接種後に接種前より上昇する。しかし、接種後3〜4年後には、第2期接種前の抗体価と有意差がなくなる。第2期接種は第1期接種でMRワクチンの接種を受けたがで、十分な免疫が作れなかった子供さんや、接種を受けていない子供さんに、免疫を付けることには有用だが、麻疹や風疹に対する免疫(抗体価)を長期に維持させる効果は、限定的なのかも知れない。
 表1:MR混合ワクチン(麻しん風しん混合ワクチン)の各製剤と効果
 医薬品名  乾燥弱毒生麻しん風しん
混合ワクチン「タケダ」
 はしか風しん混合生ワクチン
「北里第一三共」
 ミールビック
 麻疹
 ワク
 チン 
 株名  シュワルツFF−8株  AIK-C株  田辺株
 臨床試験(治験)   製造販売後臨床試験
 抗体陽転率  99.7%(HI法で8倍以上)  99.8%(NT法で4倍以上)  100%(NT法で4倍以上)3)  99.1%(NT法で4倍以上)
 99.1%(HI法で8倍以上)  89.8%(HI法で8倍以上)  97.7%(HI法で8倍以上)
 平均抗体価2)  6.8(HI法)  4.8±0.97(NT法)  6.1±1.3(NT法)  6.5±1.2(NT法)
 5.3±0.98(HI法)  4.5±1.1(HI法)   5.5±1.2(HI法)
 風疹
 ワク
 チン
 株名  TO−336株  高橋株  松浦株
 臨床試験(治験)  製造販売後臨床試験
 抗体陽転率  100%(HI法で8倍以上)  99.1%(HI法で8倍以上)  98.0%(HI法で8倍以上)  99.5%(HI法で8倍以上)
 平均抗体価2)  7.6(HI法)  6.0±1.06(HI法)  5.0±1.5(HI法)  6.0±1.4(HI法)
 副反応1)  発熱(≧37.5)  20%程度  10%程度  27.3%  32.6%
 発熱(≧38.1)    4%  17.6%  15.6%
 発熱(≧39)  3%程度    5.9%  4.6%
 発疹  10%程度  8%程度  12.1%  12.2%
 ワクチンの色  帯赤色で澄明  無色で澄明  帯赤色で澄明
 製造工程でウシ血清の使用  有り   有り  有り
 製造  武田薬品  北里第一三共ワクチン株式会社  阪大微生物病研究会
 発売  武田薬品  北里薬品産業株式会社  田辺三菱製薬株式会社
 1):乾燥弱毒生麻しん風しん混合ワクチン「タケダ」やはしか風しん混合生ワクチン「北里第一三共」は接種後5〜14日に現れた発熱や発疹の頻度。ミールびっきは、接種後30日間に現れた発熱(38.1℃以上と39.1℃以上)や発疹の頻度。
 2):接種後の抗体価は、接種後に陽性になった小児の抗体価の対数変換値(log2)の平均値±標準偏差を示している。
 3):ミールビックは、臨床試験(治験)では、NT法で8倍以上を陽性とすると、抗体陽転率は98.0%、接種後平均抗体価2n(平均値±標準偏差)は6.1±1.3。
 表2:麻疹の単独ワクチンの各製剤と効果
 医薬品名  乾燥弱毒生麻しん
ワクチン「タケダ」
 はしか生ワクチン
「北里第一三共」
 ビケンCAM 
 株名  シュワルツFF−8株  AIK-C株  田辺株(CAM株)
 抗体陽転率  95%以上  98.0%(HI法)  98.6%
 平均抗体価  5.3(log2)  26.6  24.8
 副反応  発熱(≧37.5)  約20%イ)  15〜25%程度(19.6%  11.5%ニ)
 発熱(≧38.5)    10%以下   
 発熱(≧39)  約4%イ)    
 発疹  約12%イ)  10〜20%  3.4%
 ワクチンの色  帯赤色で澄明  無色で澄明  帯赤色で澄明
 製造工程でウシ血清の使用  有り  有り  有り
 製造  武田薬品  第一三共  阪大微研
 発売  武田薬品  ジャパンワクチン  田辺三菱製薬
イ):副反応の発熱は、接種後4〜14日、特に7〜12日を中心として現れる。37.5℃以上の発熱が約20%、39℃以上の発熱が約4%に、また軽度の発疹が約12%に認められた。その他の症状として、発熱に伴う咳、鼻汁、食欲減退、熱性痙攣等が見られた。発熱及び発疹の持続日数は、3日間以内が約80%を占めた。
ロ): 麻疹に対して免疫のない健康児に接種すると、5〜14日後、1〜3日間のだるさ、不機嫌、発熱、発疹等が現れることがある。特に、7〜12日を中心として15〜25%程度に37.5℃以上、10%以下に38.5℃以上の発熱が見られる。被接種者の内、10〜20%に軽度の麻疹様発疹を伴うことがある。発熱時に、咳、鼻汁が出て、食欲が減退することもあるが、これらの症状は、いずれも通常1〜3日で消失する。平均最高体温は38.1℃。発熱までの期間は、平均8.9日であり、有熱期間は平均1.8日。発疹出現率は20.0%。発疹の出現日は平均接種9.1日後。
ハ):69/70例。抗体の上昇が見られなかった1名は、再接種後も抗体上昇は見られなかった。
ニ):副反応の発熱は、接種して9〜12日後に現れることが多く、平均有熱期間は1.5日。発疹も同時期に現れ、平均持続日数は2.3日。
 表3:風疹の単独ワクチンの各製剤と効果(添付文書を引用し作成)
 医薬品名  乾燥弱毒生風しん
ワクチン「タケダ」
 乾燥弱毒生風しんワクチン
「北里第一三共」
 乾燥弱毒生風しんワクチン
「ビケン」 
 株名  TO−336株  高橋株  松浦株
 抗体陽転率  95%以上(HI法)a)  93.9〜100%(HI法)c)  91.3〜98.6(HI法)
 平均抗体価  6.0以上(log2)a)  6.2〜6.4(2nc)  4.7〜5.6(2ne)
 副反応  発熱(≧37.5)  2%前後b)  0%d)  極めて少ないf)
 発熱(≧38.5)    
 発熱(≧39)    
 発疹  軽度の発疹が1%未満b)  0%d)  極めて少ないf)
 ワクチンの色  帯赤色で澄明  無色で澄明  帯赤色で澄明
 製造工程でウシ血清の使用  有り  有り  有り
 製造  武田薬品  第一三共  阪大微研
 発売  武田薬品  ジャパンワクチン  田辺三菱製薬
 a):抗体の持続性は、約17年の長期間持続することが確認されている。
 b):接種後の小児に、37.5℃以上の発熱が2%前後、軽度の発疹が1%未満に認められた。また、青年女子には、発熱、発疹のほか、リンパ節の腫脹及び関節痛を認めた。なお、ワクチン接種後3週間以内に、約20%の被接種者の咽頭拭い液からウイルスが認められたが、閉鎖集団小児への接触感染の有無が調査された結果、接触小児(120例)への感染は認められていない。1. 過敏症(0.1%未満) 接種直後から数日中に、過敏症状として、発疹、蕁麻疹、紅斑、そう痒、発熱等があらわれることがある。2. 全身症状(0.1〜5%未満) 接種後、発熱、発疹を認めることがあるが、通常、一過性で2〜3日中に消失する。3. 局所症状 接種後、1〜2週間前後に頸部その他のリンパ節の腫脹、関節痛などの症状を認めることがある。これらの症状は一過性で、通常、数日中に消失する。発赤、腫脹、疼痛等が接種部位にあらわれることがある。
 c):閉鎖小児(乳児院等の小児)に接種した場合、抗体陽転率は93.9%で、平均抗体価は26.4。開放小児(外来等の小児)に接種した場合は、抗体陽転率は100.0%で、平均抗体価は26.5。青年女子に接種した場合は、抗体陽転率は100.0%で、平均抗体価は26.2
 d):青年女子で関節痛が1/435例にのみ認められている。風しんワクチン(高橋株)接種後の臨床反応として発熱、発疹、リンパ節腫脹はきわめて少なく、関節痛も小児には認められず、青年女子でも0.2%(1/435)程度であった。1. 過敏症 接種直後から翌日に過敏症状として、発疹、蕁麻疹、紅斑、そう痒、発熱があらわれることがある。2. 全身症状 発熱、発疹、頸部その他リンパ節の腫脹、関節痛などの症状を認めることがあるがこれらの症状は一過性で、通常、数日中に消失する。3. 局所症状 発赤、腫脹、疼痛等が接種部位にあらわれることがある。通常、一過性で2〜3日中に消失する。
 e):閉鎖小児(1〜14歳)(乳児院等の小児)に接種した場合、抗体陽転率は91.3%で、平均抗体価は25.7。開放小児(1〜14歳)(外来等の小児) に接種した場合は、抗体陽転率は98.6%で、平均抗体価は25.5。青年女子(15〜21歳)に接種した場合は、抗体陽転率は97.8%で、平均抗体価は24.7
 f):青年女子(15〜21歳) 184例中、発熱が3例、リンパ節腫脹が2例、関節痛が3例認められている。風しんワクチン(松浦株)接種後の臨床反応としての発熱、発疹、リンパ節腫脹はきわめて少なく、関節痛は小児では認められず、青年女子で5%以下であった。1. 過敏症:接種直後から数日中に発疹、蕁麻疹、紅斑、そう痒、発熱等があらわれることがある。 2. 全身症状:発熱、発疹、頸部その他のリンパ節の腫脹、関節痛等の症状を認めることがあるがこれらの症状は一過性で、通常、数日中に消失する。 3. 局所症状:発赤、腫脹、疼痛等が接種部位にあらわれることがある。

 なお、以前、麻疹の生ワクチンと風疹の生ワクチンに、流行性耳下腺炎の生ワクチンを加えた統一株MMR混合ワクチンが、使用されたが、副反応(副作用)として、ムンプスウイルスにより無菌性髄膜炎を来す症例が多く、中止になった。MMR混合ワクチンは、副反応として、発疹(やや発赤を伴なった小丘疹で、水痘様、あるいは、ストロフルス様の発疹)が現れる頻度も多かった(24.2〜24.8%)。副反応の発疹は、主として、顔面、四肢、胸部に、バラバラ程度に現れ(稀に全身に現れた)、色素沈着を残さずに、消失した。副反応の発疹は、ワクチン接種7〜9日後に出現し、平均3.5日間、持続し(消失し)た。

 5.ワクチン株麻疹ウイルスによる発疹
 麻疹ワクチン接種後に、ワクチン株の麻疹ウイルスにより、発疹など、麻疹の症状が現れることがある。

 ワクチン株の麻疹ウイルスによる麻疹は、典型的には、麻疹ワクチン接種後11日目(接種した日が1日目)に、発熱(37.6℃)が現れ、麻疹ワクチン接種後14日後に、発疹が、主に四肢に、出現する(発疹は、躯幹にも、少し出現する)。発疹は、2〜3日後、色素沈着もなく、消失する。

 6.出席停止期間
 麻疹(はしか)は、学校保健法では、第二種の疾患なので、解熱した後3日を経過するまで、出席停止となる。学校保健法は、2009年(平成21年)4月1日から、学校保健安全法と改称された。
 麻疹ウイルスの伝染力は、発疹が出現して5日目には、消失する

 7.異常経過
 1).内攻
 麻疹の経過中、発疹が、急に消退したり、褐色に変化し、一般状態が悪化し、鼻翼呼吸、呼吸困難、チアノーゼなどが現れる。
 麻疹の内攻は、気管支肺炎に、急激に心不全による循環不全(ショック)が加わって起こると言われる(昔の麻疹は、普段から、気管支炎に罹患している子供に、合併することがあった)。

 2).重症出血性麻疹
 急激に発症し、高熱、痙攣、意識障害(譫妄、昏迷、昏睡)が見られる。次いで、呼吸困難、皮膚や粘膜の癒合した出血斑が現れる。口腔、腸管からの出血は、止血しにくい。重症出血性麻疹は、麻疹に、DICを合併して起こると言われる。
 むらさきはしか(black measles)とも呼ばれた。
 通常の麻疹でも、発疹が、出血斑になることがあるが、意識障害などは、現れない。

 3).修飾麻疹
 麻疹は、麻疹ウイルスに対する抗体をある程度有している人が感染すると、発症した際に、修飾された症状を示す(修飾麻疹)。修飾麻疹の患者は、症状は軽い為、麻疹として診断され難いが、麻疹ウイルスを排泄し、麻疹ウイルスの感染源となる。
 麻疹は、予防接種を受けて少ないながらも抗体が残っている人や、ガンマグロブリン製剤(麻疹に対する抗体を含んでいる)の投与を受けた人(特に、3カ月以内)や、母親からの移行抗体が残っている乳児(9カ月未満の乳児)などでは、典型的な症状を呈さず、通常よりも軽い臨床症状を示す。
 潜伏期間中に、ガンマグロブリン製剤(注8)を投与すると、麻疹の症状が、軽くなる(母親由来の移行抗体が存在する乳児麻疹も、修飾麻疹になる)。
 修飾麻疹は、潜伏期間が延長し、麻疹ウイルスに感染した後、14〜20日間後に、発症する(通常の麻疹は、潜伏期間は、10〜12日間)。
 修飾麻疹(修飾麻しん)は、発熱が著明でなく、カタル症状やコプリック斑(Koplik斑)が明白でなく、発疹が少なく、融合傾向が少なく、色素沈着を残さないことがあり、合併症が少ない。
 修飾麻疹(修飾麻しん)の患者は、発疹などの症状が典型的な麻疹の経過を呈しない。しかし、修飾麻疹(修飾麻しん)は、麻疹ウイルスを分泌し、他の感受性者(麻疹自然罹患歴がない人、予防接種を受けたことがなかったり免疫が低下している人)に、麻疹ウイルスを感染させるおそれがある。
 
 4).異型麻疹 
 麻疹の不活化ワクチン(K)を接種された人が、自然感染で、麻疹を発症すると、高熱、異常な発疹、肺炎併発など、重症な経過を辿ることがあった(近年は、日本では、麻疹の不活化ワクチンの接種は行われていない、注9)。
 異型麻疹の発疹は、発熱してから第2〜3病日に、耳介や手足から始まり、上向性に、四肢→体幹へと広がり、時に、顔面にも広がる。異型麻疹の発疹は、蕁麻疹様、斑丘疹状、出血性紫斑状で、時に、水疱形成する。
 典型的な麻疹の発疹は、発熱してから第4病日頃、一過性の体温下降の後、高熱と共に、現われる。典型的な麻疹の発疹は、耳介後部や頚部から、下向性に、顔面→体幹→四肢へと広がる。

 8.病原体
 麻疹(はしか:measles)は、麻疹ウイルスが原因で発症する。
 麻疹ウイルスは、カタル期(prodromal period:catarrhal stage)と、発疹が現れて少しの期間、気道分泌物(nasopahryngeal secretions)や、血液や、尿から検出される。
 麻疹ウイルスには、パラミクソウイルス(Paramyxovirus)科に属するRNAウイルスで、熱には弱く、20℃でも、急速に不活化される。
 麻疹ウイルスは、室温では、少なくとも34時間は、安定である(active)。
 ムンプスウイルス(流行性耳下腺炎の原因)、RSウイルス(細気管支炎の原因)、パラインフルエンザウイルス(気管支炎の原因)も、パラミクソウイルス(パラミキソウイルス)科のウイルス。なお、RSウイルスによる重症細気管支炎患児は、気道分泌物中のインターフェロンγ(IFN-γ)やサブスタンスP(SP)が低下していることが知られている。
 麻疹ウイルスは、宿主細胞を融合させ、多核巨細胞が出現する。麻疹ウイルスは、培養細胞に感染すると巨細胞を形成させ、やがて、死滅させる(細胞変性効果:CPE)。
 麻疹ウイルスは、飛沫感染(空気感染)する:麻疹ウイルスは、ヒト(発病者)の咳の飛沫や鼻汁などに含まれていて、ヒト(免疫がない人)の気道や鼻腔や眼の粘膜上皮に感染する。
 麻疹ウイルスは、空気中や物体表面では、2時間以内に不活化される。

 麻疹ウイルスは、飛沫感染により、鼻咽頭から侵入し、気道粘膜上皮細胞で増殖し、その所属リンパ節に達して、第一次ウイルス血症を起こす。その後、扁桃腺、アデノイド、リンパ節、脾臓など、全身のリンパ組織で増殖し(多核巨細胞が形成される)、第二次ウイルス血症を起こす。

 麻疹ウイルスは、非分節一本鎖RNAウイルス(1万5894の遺伝子を有する)で、直径は100〜150nmで、球状をしている。
 麻疹ウイルスは、外殻蛋白に、(赤)血球凝集素(Hemagglutinin:H、HA)蛋白や、膜融合(F蛋白)を有していて、宿主の麻疹ウイルスレセプターに結合する。H蛋白(HA)は4量体を形成し、F蛋白は3量体を形成し、(宿主細胞を)ウイルス膜と細胞膜融合させる。
 麻疹ウイルス粒子内には、ribonucleocapsid(RNP)が存在する。ribonucleocapsid(RNP)は、nucleocapsid(N)、phospho(P)、large(L)蛋白とウイルス遺伝子とにより、形成されている。麻疹ウイルス粒子内側には、ウイルス粒子を安定化させる作用があるmembrane蛋白(M蛋白)が存在する。

 9.麻疹の診断(抗体価の測定)
 今回の発熱や発疹が、麻疹かどうかは、麻疹HI抗体価か、麻疹EIA-IgM抗体価を測定する(発疹が現れた頃から、陽性になる、注10)。 
 麻疹に免疫があるかどうか検査するのには、麻疹HI抗体価か、麻疹EIA-IgG抗体価を測定する(過去に麻疹に罹患したことがあるか、過去に受けた麻疹の予防接種の効果が残っているか、検査する場合)。

 10.麻疹とビタミンA
 ビタミンAは、気管支などの上皮細胞の再生を促進させる(粘膜を丈夫にする)。
 麻疹に罹患すると、血清中のビタミンA濃度や、レチノール結合蛋白濃度が、著明に低下する。
 麻疹罹患時に、ビタミンAが欠乏すると、重症化、遷延化する。

 麻疹では、食事は消化の良い流動食か半流動食にし、味噌汁ORSなどで、水分や塩分を補給する。

 11.妊婦の麻疹と胎児
 麻疹に免疫がない(麻疹に自然感染したり、予防接種歴がない)妊婦が、麻疹ウイルスに感染し、麻疹を発症しても、胎盤がバリアーとなって、胎児には、麻疹ウイルスが感染しない場合がある。
 出産した新生児に、発疹が、既に出生時に存在するか、生後10日以内に出現する場合は、子宮内で麻疹ウイルスに感染していた、先天性麻疹と考えられる。
 先天性麻疹では、潜伏期間(感染から発疹が現れるまでの期間)は、平均6日(2日〜10日)であり、自然感染の潜伏期間(10〜12日)より、短い。
 先天性麻疹には、肺炎など致死的になる重症例も存在する。

 12.その他
 ・水痘、麻疹など潜伏期間が長いウイルス性疾患は、ウイルス感染前に、他の感染症に罹患すると、発症した時の症状が重くなったり、遷延化し易い。
 水痘、麻疹などは、潜伏期間中に、他の感染症により発熱すると、発症した時の症状は、軽くなる。
 水痘、麻疹などは、発症した後、他の感染症(マイコプラズマ肺炎など)に罹患すると、免疫力(細胞性免疫)が低下していて、その感染症の症状が重くなったり、遷延化し易い。

 ・麻疹ウイルスは、ヒト(発病者)の咳の飛沫や鼻汁などに含まれていて、ヒト(免疫がない人)の気道や鼻腔や眼の粘膜上皮に飛沫感染(空気感染)する。
 麻疹ウイルスは、空気中や物体表面では、2時間以内に不活化される。
 麻疹ウイルスは、患者の唾液、鼻水(鼻汁)、目やに(眼脂)、尿などに排泄されるが、主な感染経路は空中に撒布されるウイルスと言われる。
 患者の衣服の消毒は、感染予防に必要でない。麻疹ウイルスは、感染力は強いが、温度や紫外線により死滅し易いので、ウイルスが衣服に付着しても、速やかに失活すると言われる。衣服を介して麻疹ウイルスが感染することはないと言われる。

 ・麻疹では、白血球数が減少する(4400/μL)ことが多い。典型的には、白血球数減少、比較的リンパ球増加、好酸球減少(又は消失)が現れる。白血球の分類では、好中球の左方変移(Stabが30%程度)、リンパ球数減少(6%)も認められる。リンパ球の比較(百分率)は増加しても、麻疹初期には、絶対数は減少している(免疫抑制状態になる)なお、風疹でも、白血球減少、好中球の左方変移(核左方移動)、比較的リンパ球増多、異型リンパ球の出現(多い場合は10%以上)が見られ、2〜3週間で回復するが、好酸球は麻疹と異なり消失しない。
 LDHもリンパ球の死滅の為に、上昇する。
 CRPは、上昇することもある(初診時2.97mg/dL→翌日8.95mg/dL)。

 注1コプリック斑(Koplik's spots)は、やや隆起した白色の小斑点(約1mm径)で、紅暈に囲まれている。コプリック斑は数個〜数十個出現する(赤地に塩の結晶をまいたように見える)。
 コプリック斑は、粟粒大の白斑で、周辺は不規則な形をして、著明な紅暈を伴なっている。コプリック斑は、大小不規則な形をしていて、集合して存在する。
 コプリック斑は、発疹が出現する2日程前(発熱後、第3病日)に、口腔内の頬粘膜に現れる。コプリック斑は、発疹が出現2日後程には、消失する。  
 コプリック斑が現れるのは、発疹が現れる1〜2日前:コプリック斑は、カタル症状が始まって2〜3日後に出現し、発疹出現3日後以内に消失する。
 コプリック斑は、ミルク滓と異なり、粘膜から剥がれない。
 なお、麻疹では、(咽頭粘膜のみならず、)口腔粘膜が、著明に発赤する。軟口蓋や硬口蓋には、粘膜疹(enanthem)や、溢血斑(red mottling)が見られることもある。麻疹では、口腔粘膜(口内粘膜)、特に、口蓋弓部(口蓋垂の両脇)が、著明に発赤する(出血様に充血する)。麻疹では、濾胞性変化も見られる。
 コプリック斑様の白色の小斑点は、RSウイルス感染症(麻疹と同じパラミクソウイルス科)でも、極希に、見られることがある。

 コプリック斑は、年長児では、白色粟粒状の斑点が集まってように現れるが、乳児では、白色鵞口瘡様に(カンジダの病変の様に)、現れることが多い(紅暈に囲まれない、白色のミルク・母乳滓様の病変が現れ、その周囲の発赤した粘膜に、白色の小斑点が、現れる。カンジダによる鵞口瘡とは、白色の小斑点が発赤した粘膜に囲まれていることや、舌に厚い白苔が存在しないことが、鑑別点となる)。

 注2突発性発疹の発疹も、色素沈着を残すことがある。典型的には、突発性発疹は、発疹が現れた後は熱がなく、咳も酷くないが、麻疹は、発疹が現れた後も熱が続き、咳が酷くなる。

 麻疹の発疹は、発疹部の皮膚組織(皮膚小血管内皮細胞、皮脂腺、表皮など)に存在する麻疹ウイルスと、血中の麻疹ウイルス抗体との反応(III型のアレルギーのアルサス反応)によって、生じる。
 免疫抑制状態にある患者は、麻疹に罹患しても、発疹が現れないこともある。

 注3:SSPEの患者の脳の封入体から分離された麻疹ウイルスは、遊離ウイルスを産生しにくい、不完全型の麻疹ウイルスと言われる。SSPEの患者の脳内の神経細胞には、好酸性封入体(Cowdry A型ないしfull型)が認められるが、ウイルスの出芽(budding)は認められない。
 麻疹ウイルスは、F蛋白(Fusion protein)、H蛋白(Hemagglutinin protein)、L蛋白(Large protein)、M蛋白(Membrane-matrix protein)、NP蛋白(Nucleocapsid protein)、P蛋白(Phosphoprotein)の、6種類の蛋白から構成されている。
 M蛋白は、麻疹ウイルス粒子のマトリックスを形成する。M蛋白は、ヌクレオカプシドとエンベロープ(脂質二重膜)との中間に存在し、ウイルスの出芽(budding)の際に、両成分の会合を助ける。
 SSPEの患者から分離される麻疹ウイルスは、M蛋白が欠損していて、感染した細胞から出芽(発芽)することが出来ない。
 最初は、完全型の麻疹ウイルスが、感染して、麻疹を発症させた後、脳に潜伏感染している期間に、不完全型の麻疹ウイルスに、変異して、SSPEを発症させる。

 SSPE患者の血清中では、麻疹のM蛋白に対する抗体が、欠損しているか、低下している。
 SSPE患者は、血清中の麻疹抗体価(HI抗体、CF抗体、NT抗体)が、上昇する。SSPE患者は、初診時、血清中の麻疹抗体価が、X1,000以上のことが多い(近年は、X128〜X256程度の症例が多いと言う)。
 SSPE患者は、髄液中の麻疹抗体価も陽性になる(X8以上である)。
 SSPE患者は、髄液中のIgGも増加する。髄液中の総蛋白量の20%以上を、IgGが占める(普通、髄液中の総蛋白量の50%が、IgG)。

 注4:麻疹や、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)のように、潜伏期間が長いウイルス性疾患は、従来、一度罹患すると、血中に獲得されたウイルスに対する抗体により、ウイルスが体内で増殖出来ないので、二度とは、罹患しない(終生免疫を獲得する)と認識されて来た。
 しかし、ウイルスの自然感染(野生株の流行)が減少すると、一度罹患した後に、ウイルスに暴露される(感染する)機会が減少し、免疫的な記憶が低下してしまう(ブースター効果がかからない)。その為、一度罹患した後、ウイルスに対する免疫がして、二度罹患することもある(終生免疫にならないことがある)。
 実際に、流行性耳下腺炎は、子供の時に一度罹患したのに、老齢になって、孫が流行性耳下腺炎に罹患した際に、二度罹患した症例(祖母)も経験した。

 注5:麻疹HI抗体価は、麻疹に免疫がある人は、陽性(X8以上:X32〜X128)を示す。
 麻疹に自然感染した場合、麻疹HI抗体価は、発病初期(麻疹で発疹が現れた時期)は、X8〜X64と低いが、感染後4〜6週後(発病1カ月後)の回復期には、X256〜X1,024までに上昇する。その後、麻疹ウイルスに再感染(再暴露)されなければ、抗体価は次第に低下し、1〜5年後には、X64〜X128に低下し、10〜15年後には、X8〜X32に低下すると言われる。
 麻疹の生ワクチンの接種を受けた場合、接種2週間後では、麻疹HI抗体価は、陰性(X8未満)だが、接種3週間後過ぎ頃から陽転し、接種4〜6週間後には、最高値となる(X8〜X512:平均X64程度)。その後は、自然感染の場合と同様に、麻疹HI抗体価は、次第に、低下して行く。
 麻疹に自然感染したり、生ワクチンを接種した場合、HI抗体の方が、NT抗体やCF抗体より、速く上昇する。

 注6:母親からの麻疹の移行抗体は、生後4〜6カ月程で、血中から消失する(検出感度以下になる)と言われて来た。
 最近は、移行抗体が陰性となる時期(生後カ月)は、平均で、麻疹(NT法)=8.8、風疹(HI法)=7.7、おたふくかぜ(EIA法)=5.0、水痘(IAHA法)=9.6、と言われる。移行抗体が消失する時期(90%の子供の消失時期:生後カ月)は、麻疹(NT法)=11.5、風疹(HI法)=9.9、おたふくかぜ(EIA法)=5.4、水痘(IAHA法)=12.0、と言われる。
 生後1歳6カ月以下の麻疹症例(103例)を検討した結果では、発熱(38℃以上)期間は、1歳未満の症例の方が、1歳以上の症例より、短い:1歳未満の症例の発熱期間は、5.0±1.9日、1歳以上の症例の発熱期間は、7.4±0.5日)。従って、麻疹の母親からの移行抗体は、生後1歳近くまで、作用している(生後1歳未満に麻疹の予防接種をした場合、効果が弱くなるおそれがある)。

 自経例:7カ月の幼児。姉が麻疹に罹患。(2週間後、)血液検査で、麻疹IgM抗体陽性だったが、麻疹の症状は現れていなかった。6カ月後、麻疹HI抗体X64。この症例では、母親からの移行抗体により、麻疹の発病が阻止され、かつ、麻疹に対する免疫も誘導された。このように、麻疹は、移行抗体が存在すれば、初感染であっても、不顕性感染で終わり、抗体も出来る。

 乳幼児の麻疹の移行抗体は、母親が、麻疹ワクチン接種により、麻疹の免疫を有していた場合は、母親が、麻疹に自然感染して、麻疹の免疫を有していた場合に比して、早く、消失してしまう。

 注7:麻疹は、自然感染した場合、発疹が現れた頃(感染14日後頃)には、麻疹抗体(麻疹HI抗体)は、検査で陽性になる。
 しかし、麻疹の生ワクチンを接種して、副反応として、発熱したり、発疹が現れた頃(ワクチン接種10〜12日後)では、麻疹に対する抗体(麻疹HI抗体)は、陽性にならないことが多い(X8以下)。例えば、自経例で、麻疹の生ワクチンを接種して17日後ぐらいでは、麻疹HI抗体価は、陽性にならなかった(X8未満)
 なお、自経例で、麻疹の生ワクチンを接種して、2日後に、水痘を発症したが、軽症に経過し、治癒した。

 注8ガンマグロブリン製剤には、麻疹ウイルスに対する中和抗体(NT抗体)などが含有されている。
 接触した人(接触者)が、麻疹だと判明した場合は、麻疹ウイルスに暴露後6日以内に、ガンマグロブリン製剤を投与すると、発病が阻止され得る:筋注用のガンマグロブリン製剤(150mg/dl)は、麻疹の発病を阻止するには0.3ml/kg(50mg/kg)、症状の軽減させるには0.1ml/kg(15mg/kg)、筋肉内注射する(麻疹の発病阻止には、感染5日以内に、0.25ml/kgを、筋注する。病状を修飾して軽症にするには、0.05ml/kgを、筋注する)。
 接触した人(接触者)が、麻疹だと判明した場合、麻疹ウイルスに暴露された日(感染した日)が、いつなのか、問題になる。麻疹は、発熱してから、発疹が現れて36時間の間、感染力が強い。しかし、麻疹ウイルスは、麻疹発病者(接触した人)が発熱する3日程前の潜伏期間中から、排泄されていて、感染していることもある(接触した人に発疹が現れた日を、感染第4日と計算する)。
 麻疹では、発疹が現れる4日前から、発疹が現れて3日後までの期間、鼻咽頭から、高率に麻疹ウイルスが検出される。
 麻疹は、自然感染の場合、麻疹ウイルスに感染して、10〜12日間の潜伏期間の後、発熱や、咳、鼻汁などの症状で発病する。麻疹は、ウイルスに感染してから7日目(発熱する3日前)から、麻疹の発疹が出現して5日後(解熱3日後)まで、ウイルスが排出される。
 麻疹の発症阻止には、生ワクチンの接種は72時間以内に行えば良いが、実際には、患者さん(接触した人)が、麻疹を発症した場合、発熱して発疹が現れるまで(4日間程)麻疹と診断されず、潜伏期間中に感染していて日数が経っている可能性があるので、抗体(ガンマグロブリン製剤)の注射の方が、有用な場合が多い。

 筋注用のガンマグロブリン製剤(ガンマグロブリン-ニチヤク)は、麻疹、A型肝炎、ポリオには、予防や症状の軽減目的で、使用することが、保険で認められている。

 なお、ガンマグロブリン製剤の投与を受けると、生ワクチン(麻疹ワクチン、おたふくかぜワクチン、風疹ワクチン、水痘ワクチン等)の予防接種を受けても、効果が得られないおそれがある。ガンマグロブリン製剤の投与を受けた後は、3カ月以上、生ワクチンの予防接種を延期する。また、生ワクチンの予防接種を受けた後、14日以内に、ガンマグロブリン製剤の投与を受けた場合は、投与後3カ月以上経過した後に、生ワクチンを再接種する。なお、ガンマグロブリン製剤を大量(200mg/kg以上)に投与された場合(川崎病、特発性血小板減少性紫斑病など)は、6カ月以上(麻疹に感染する危険性が低い場合は11カ月以上)経過するまで、生ワクチンの接種を延期する。なお、麻疹の抗体を含むガンマグロブリン製剤を、大量に静注を受けても、麻疹に罹患したり、予防接種を受けていなければ、6カ月後には、麻疹抗体(HI抗体)は、陰性になる。

 麻疹の発病を阻止する為に、ガンマグロブリン製剤を0.3ml/kg(50mg/kg)程度、筋注しても、麻疹に感染していなかった場合は、血中の麻疹の抗体価は、上昇しない。自経例では、3カ月後検査した麻疹HI抗体価は、X8未満。

 ガンマグロブリン製剤は、血液製剤なので、注射により、未知の病原体などを、感染するおそれがある。しかし、現代の日本の医療レベルを考えると、そのようなリスクは、自然感染した麻疹を発症した場合のリスクより、少ないと考えられる。
 なお、生ワクチンは、製造工程で、ウシの血液由来成分(血清)などを使用しているので、予防接種も、未知の病原体などを、感染させるおそれ(リスク)は、存在すると思われる。
 野生株ポリオウイルスにより、ポリオ(急性灰白髄炎)を発症した症例の経過を上記に示した(2008年3月時点で、日本で、最後の野生株ポリオウイルスによるポリオの症例となっている)。
 野生株ポリオウイルスに感染した際に、筋肉注射などにより骨格筋が物理的に障害されると、ポリオを発症するリスクが高くなることが知られている(傷害誘発性急性灰白髄炎:injury-provoked poliomyelitis)。
 経口ポリオ生ワクチン(oral polio vaccine:OPV)を接種(経口内服)した後、接種15日頃(4〜35日)に、1/450万人の頻度で、弛緩性麻痺(VAPP:Vaccine associated paralytic polio)が見られる。経口ポリオ生ワクチン(OPV)を接種した子供からワクチンウイルスが排泄され、周囲の人(親など)に感染して、1/550万人の頻度で、弛緩性麻痺(ポリオ:contact case)を来たすことが知られている。
 経口ポリオ生ワクチン(OPV)を接種して1カ月以内に、頻繁に筋肉注射すると、ワクチン関連麻痺(VAPP)を発症するリスクが高まる。
 ポリオウイルスは、感染初期にウイルス血症を来たす。
 ポリオウイルスは、末梢神経に存在するポリオウイルス受容体から取り込まれ、神経軸索を介して、逆行性に中枢神経に移行し、運動神経障害(ポリオ)を発症させる。
 筋肉注射などにより骨格筋組織が傷害されると、逆行性のポリオウイルス神経軸索輸送が活性化され、ワクチン関連麻痺(VAPP)のリスクを高める。
 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者は、セフェム系等の抗生剤(の注射)が筋肉の萎縮を抑制すると言う。 

 ポリオウイルスは、消化管粘膜からリンパ節を経由し、血液に侵入し、一過性にウイルス血症を来たす。
 ウイルス血症が存在する際には、筋肉注射などにより筋肉が挫滅すると、変性した筋繊維の受容体発現量が増加し、筋繊維内神経終末からウイルスが受容体を介して取り込まれ易くなると推測されている。
 βラクタム系抗生物質(抗菌薬)は、GLT1(glutamine transporter-1)の発現を増加させる作用が知られている(Rothstein等、2005年)。
 アストロサイトに存在するGLT1は、シナプス間隙の細胞外グルタミン酸濃度を低濃度に維持する作用に関与している。
 βラクタム系抗生物質は、GLT1の発現を増加させ、神経細胞死を抑制し、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の筋肉萎縮を抑制すると考えられている。

 注9:麻疹の生ワクチンは、もともと、発熱や発疹の出現率が多く、弱毒化させる為の改良が加えられて来た。

 1).KL法
 生ワクチン(L:live vaccine)の副反応(発熱)を軽減させる為に、あらかじめ、不活化ワクチン(K:killed vaccine)を注射してから、生ワクチン(L)を注射するKL法が、考案された。
 日本でも、1966(昭和41)年から、KL法による麻疹予防接種が、任意接種で行われた。
 しかし、KL法は、1967年に異型麻疹の報告があり、中止された。
 不活化ワクチン(K)を接種すると、異型麻疹を発症するのは、不活化ワクチン(K:ホルマリンで不活化)では、麻疹のF蛋白に対する抗体を産生出来ない為、ウイルスが細胞から細胞へと感染することを、予防出来ない為と言われる。

 2).FL
 高度弱毒生ワクチン(further attenuated vaccine:FL)の開発が試みられ、日本では、微研-CAMワクチン(阪大微研)、Schwarz株ワクチン(武田薬品工業)、AIK-C株ワクチン(北里研究所)などが、開発された。その後、1990年からTD97株ワクチン(千葉県血清研)も、販売された。

 2013年7月時点で販売されている麻しん生ワクチンは、シュワルツFF-8株(武田薬品工業株式会社)、AIK-C株(北里第一三共ワクチン株式会社)、CAM株(田辺株:阪大微研)、の3種類。千葉県血清研のTD97株があったが、2002年9月に閉鎖され、販売されていない。

 注10:麻疹の抗体価の測定方法には、赤血球凝集抑制試験(HI法)、中和試験(NT法)、補体結合試験(CF法)、酵素免疫測定法(EIA法)などが、行われる。

 赤血球凝集抑制試験(HI法:hemagglutination inhibition test)は、感度や特異性が高く、測定方法が比較的簡便で、短時間に検査が出来る(結果判明までの時間が短い)。赤血球凝集抑制試験(HI法)は、インフルエンザウイルス、麻疹、風疹など、赤血球凝集能を有するウイルスの抗体価の測定に、用いられている。HI法は、検査の保険点数が、安価。しかし、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、単純ヘルペス(HSV)など、ヘルペス群ウイルスは、赤血球凝集能を有さないので、HI抗体価を検査出来ない。また、ムンプスウイルスに対するHI抗体価は、パラインフルエンザウイルスに対するHI抗体価を拾ってしまうことがある。

 中和試験(NT法)は、感度や特異性が高く、感染防御効果を反映する。NT法は、コクサッキーウイルスや、エコーウイルスなど、エンテロウイルス属のウイルスの型同定に、用いられる。検査に長時間を要する。

 補体結合試験(CF法)は、比較的短時間で検査が出来る。CF法は、群特異性があり、インフルエンザウイルスのA型・B型の同定、アデノウイルスや、エンテロウイルスなどの群の同定等に、用いられる。CF抗体は、ムンプスウイルスの抗体価の測定にも、持ちいられるが、上昇が遅い。

 酵素免疫測定法(EIA法:ELISA法)は、感度が非常に高く、髄液中などに存在する微量な抗体も測定可能。EIA法は、IgM、IgGなど、免疫グロブリンクラス別に、抗体量を定量可能。EIA-IgM抗体が検出されれば、感染初期であることが多い(今回の病気が、このウイルスが陽性の可能性が高い)。EIA抗体の検査は、保険点数が高い(検査費用が、HI抗体の検査より、高い:検査費用は、平成17年時点で、麻疹EIA-IgG抗体が2600円なのに対して、HI抗体は850円)。
 EIA-IgM抗体(IgM-EIA抗体)が陽性の場合、最近、感染を受けたことを意味する。
 風疹EIA-IgM抗体(風疹IgM-EIA抗体)は、風疹感染180日後にも、検査キットによっては、67%の症例で、陽性を示す。

 赤血球凝集抑制試験(HI法)は、ワクチン接種後の抗体陽転率を調べる検査として用いられる(接種6〜8週間後に陽性になる)。HI抗体価は、ワクチン接種10年後には陰性(8倍未満)に低下することが多い(NT法、EIA-IgG法で測定すると陽性を示す)。
 中和試験(NT法)は、安価で信頼性が高いが、結果報告まで時間が要する(約1週間)。ワクチン接種して数年後に、麻疹ウイルスを予防する免疫(抗体)がどの程度存在するか検査するには、NT法が推奨される。
 EIA-IgG法(ELISA-IgG法)は、感度が高いが、費用(コスト)が高い。EIA-IgG法で測定した抗体(麻疹EIA-IgG抗体)は、4.0以上が陽性と判定される(陽性基準4.0)が、感染予防効果があるのは8.0以上の場合と言われる(デンカ生検のキットで測定した場合)。
 日本環境感染学会では、医療従事者に対しては、麻疹のEIA抗体価(デンカ生研製キットで測定した麻疹EIA-IgG抗体価)が16.0未満の場合は、抗体を上昇させる為に、麻疹のワクチン接種を受けることを推奨している(院内感染対策としてのワクチンガイドライン)。

 予防接種を受けたり、ガンマグロブリンを受けた人は、麻疹抗体価(麻疹EIA-IgG抗体)が4.0以上で「陽性」であっても、麻疹に罹患することがある。
 麻疹抗体価(麻疹EIA-IgG抗体)が8.0以下の人は、再度、麻疹の予防接種を受けた方が良いと言われる。

 麻疹は、NT抗体価(中和抗体価)が4〜8倍未満(EIA-IgG抗体価が6未満)の人には、ワクチン接種が推奨される。
 風疹は、HI抗体価が16倍未満(EIA-IgG抗体価が5〜8)未満の人には、ワクチン接種が推奨されている。

 ボランティアを対象に採血した結果では、麻疹ウイルスNT抗体価は64倍までの人が殆ど(16倍の人が多い)で、麻疹ウイルスHI抗体価は128倍までの人が殆ど(8倍の人が多い)で、麻疹ウイルスCF抗体価は、4倍未満の人が74%を占めていた(CF抗体価は感染後、短期間に低下・消失する)。

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