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 Occult bacteremia

 菌血症があっても、発熱が、主な症状で、時に感冒症状や中耳炎を伴っても、明らかな局所感染症状が見られず、全身症状の極度の悪化がない場合、Occult bacteremia(潜在性菌血症)と呼ばれている。
 Occult bacteremiaは、5〜15%の頻度で、化膿性髄膜炎、細菌性肺炎、急性喉頭蓋炎、化膿性関節炎、骨髄炎など、重篤な局所感染を合併する。

 Occult bacteremiaは、主に、3〜36ヶ月の乳幼児に多く発症する菌血症で、39℃以上の高熱があっても、全身状態が悪くならないので、臨床症状からの診断は、困難と言われる。
 3〜36ヶ月の乳幼児が、39.5℃以上に発熱していて、フォーカス不明(感染場所が不明)の場合、2.8〜11.1%の頻度で、Occult bacteremiaが、存在すると言う
 Occult bacteremiaで検出される起炎菌の頻度は、肺炎球菌が85%、b型インフルエンザ菌Hib)が5%、その他の菌が10%、とされる。
 なお、免疫応答が弱い、生後3カ月までの乳児は、occult bacteremiaの状態になりにくく、菌血症を発症する。

 肺炎球菌によるoccult bacteremiaの場合、化膿性髄膜炎を引き起こすリスクは、無治療で5.8%、経口抗菌薬治療で0.4%、抗菌薬の筋肉内注射治療で0.4%とされる。
 インフルエンザ菌(Hib)によるoccult bacteremiaの場合、化膿性髄膜炎を引き起こすリスクは、無治療で26.6%、経口抗菌薬治療で19.2%、筋肉内注射治療で1.8%とされる。
 このように、肺炎球菌によるoccult bacteremiaは、無治療でも治癒例が多く、また、予後が良いが、インフルエンザ菌は、髄膜炎などを来しやすい。

 Occult bacteremiaは、化膿性髄膜炎など、重症細菌感染症に移行するおそれ(リスク)がある。
 Occult bacteremiaを疑い、血液培養を行う基準としては、白血球数やCRP値が、有用とされている。
 白血球数15,000/μl以上の場合、occult bacteremiaのおそれが高い:Bass等は、フォーカス不明(感染場所が不明)で、発熱が39.5℃以上の患児に血液培養を行ったところ、白血球数15,000/μl以上の患児では、16.6%(331例中55例)にoccult bacteremiaを認めたが、白血球数15,000/μl未満の患児では、2.7%(182例中5例)にoccult bacteremiaを認めたに過ぎなかったと言う。
 CRP値に関しては、発熱後12時間以降なら、CRP値が7.0mg/dl以上だと、occult bacteremiaのおそれ(確率)が高いと言う報告もある(Pulliam等)。しかし、occult bacteremia患児の平均CRP値は、4.05±2.67mg/dlであったと言う報告もある(西村等)。
 従って、occult bacteremiaがあるかどうか、発熱早期に、疑う基準としては、CRP値より、白血球数の方が、有用と考えられている。
 CRP値は、発熱と白血球増多を認めた症例に血液培養を行った報告によると、血液培養陽性群と血液培養陰性群とでは、有意な差が認められない(川本等)。CRP値が1mg/dL未満でも、血液培養が陽性の症例が存在する(10/429例、陽性率7.5%)。CRP値が8mg/dL以上の場合、血液培養が陽性の症例の率が高い(陽性率8.6%、6/429例)。CRP値が2〜3.99mg/dLの場合、血液培養の陽性率が1.0%と、最も低い。CRP値のみでは、菌血症やoccult bacteremiaが存在するかどうかを推測出来ない。
 発熱してから採血するまでの時間が短い程、血液培養の陽性率が高い(発熱して一過性の菌血症を来たしても、免疫防御機構により制圧されれば、血液培養を検査しても、陰性結果に出る)。
 CRP値が上昇するのには、炎症が起こってから、4〜6時間要する。

 抗菌薬のCTRX(ceftriaxone:注1)を、1回筋肉注射(50mg/kg)されたoccult bacteremiaの患児では、髄液から血中と同一の細菌が検出された症例は、なかったと言う。
 CTRXは、半減期が長く、投与後24時間でも、血中濃度が高く保たれているので、occult bacteremiaの予防の為に、外来で使用するのに適した薬剤とされる:血液培養を行った後に、CTRX50mg/kgを、1回筋肉注射する(注1)。

 occult bacteremiaに対する抗生剤(抗菌薬)の効果に関しては、無治療群(抗生剤を投与しなかった群)では、5.8%の症例で髄膜炎を発症したが、治療群(抗生剤を投与した群)では、0.4%の症例が髄膜炎を発症した。この結果からは、抗生剤を投与して治療した方が、有意に、髄膜炎の発症頻度を、低下させる(Baraff等)。
 しかし、(occult bacteremiaの患児)で、無治療群では、2.7%の症例(257例中7例)が髄膜炎を発症したが、治療群では、0.8%の症例(399例中3例)が髄膜炎を発症した。この結果からは、抗生剤を投与して治療した方が、髄膜炎の発症頻度を、低下させるが、有意差はないと言う(Rothrock等)。

 Baraff等は、患児が、3カ月以上3歳未満で、直腸温が39℃以上で、感染病巣が不明な場合には、血液検査を行うことを勧めている。末梢血白血球数が15,000/μl以上の場合には、重症細菌感染症のリスクが高いと判定し、血液培養を行った後、CTRX50mg/kgを非経口的に投与することを勧奨している。
 Baraff等の基準(患児の年齢が3カ月以上3歳未満、直腸温が39℃以上、末梢血白血球数が15,000/μl以上)を満たす症例は、15%がoccult bacteremiaになると言われる。そのoccult bacteremiaの症例は、無治療の場合、5〜10%が細菌性髄膜炎を併発する。従って、無治療の場合、Baraff等の基準を満たす症例は、約1%が細菌性髄膜炎を発症すると推測されている。
 日本では、直腸温で39℃以上でなく、脇窩温で39℃以上とする方が、基準として現実的。
 細菌性髄膜炎の症例に関して検討すると、脇窩温39℃以上を基準とした場合、発熱第1病日での陽性率は、インフルエンザ菌症例で70%、肺炎球菌症例で72%。従って、脇窩温39℃以上を基準とすると、発熱第1病日では、約30%の細菌性髄膜炎の症例は、血液検査が行われないで、見逃されることになる。
 細菌性髄膜炎、特に、インフルエンザ菌髄膜炎は、発熱第1病日では、過半数が見逃されてしまう。
 日本では、インフルエンザ菌髄膜炎が、細菌性髄膜炎の過半数を占め、増加傾向がある。
 インフルエンザ菌髄膜炎は、経口抗生剤投与しても、髄膜炎発症の予防効果がない。
 インフルエンザ菌髄膜炎の予防には、米国で行われているHibワクチンによる予防が有効。
 肺炎球菌髄膜炎の予防には、米国で行われている7血清タイプ(7-valent)の肺炎球菌ワクチンが、一定の効果がある。

 細菌性髄膜炎では、嘔吐が見られることが多い。嘔吐の頻度は、発熱第1病日では、インフルエンザ菌症例の63%、肺炎球菌症例の42%に見られ、また、発熱第2病日では、インフルエンザ菌症例の71%、肺炎球菌症例の50%に見られる。

 いずれにせよ、occult bacteremiaの患児に、早期に、抗生剤を投与しても(特に、非経口的に投与しても)、確実(100%)、細菌性髄膜炎の発症を、予防出来ない(症状を軽くすることは期待出来る)。
 occult bacteremiaがあるかどうか、確実に、見極めることは、困難で、また、occult bacteremiaがあっても、血液培養で、100%検出されない可能性もある。
 occult bacteremiaが、どのような場合、細菌性髄膜炎などの重篤な疾患を発症するのかも、問題。

 附記:CTRXによる偽胆石症
 抗生剤のCTRX(ceftriaxone)を投与すると、胆嚢内に、一過性に、胆石様物質が沈殿すること(偽胆石)が、報告された(Schaad等、1986年)。
 偽胆石(胆石に類似した沈殿物)は、CTRXのカルシウム塩が、主成分。

 偽胆石症は、CTRX投与後4〜9日以内に形成され、腹部超音波検査で、胆嚢内の音響陰影を伴なう不整形の高輝度エコー物質として、認められる。
 CTRX投与した日本人小児例では、14.8%(4/27名)に、認めれられた(木村等、2006年)。
 偽胆石症は、CTEXの投与を中止すると、自然に消失する。

 偽胆石症は、無症状の場合が多いが、CTRXを長期間(12〜19日間)投与終了後、2〜30日間経過した後、激しい腹痛と、肝機能障害で、発症する(症状が現れる)こともある。
 偽胆石症による症状が現れた場合も、症状発現14〜25日後には、偽胆石は、消失する。

 注1:日本で許可されているCTRX製剤は、ロセフィン(Rocephin)だが、静脈内注射、又は、点滴静注用の製剤しか、存在しない。
 また、日本国内で分離された菌の薬剤感受性成績では、CTRXは、インフルエンザ菌に対しては、有効であるが、CTRXは、肺炎球菌に対しては、無効(耐性菌が存在する)傾向にあると言う。

 参考文献
 ・西村龍夫、他:小児科外来におけるoccult bacteremiaの前方視的調査 日本小児科学会雑誌、108: 620-624, 2004年.
 ・西村龍夫、他:小児科開業医で経験したoccult bacteremia23例の臨床的検討 日本小児科学会雑誌、109: 623-629, 2005年.
 ・木村正人、他:Ceftriaxone投与に伴なう小児の偽胆石症の臨床像、日本小児科学会雑誌、110巻6号、773-780、2006年.
 ・武内一、深澤満:インフルエンザ菌・肺炎球菌髄膜炎の早期スクリーニングの可能性、日本医師会雑誌、110巻10号、1401-1409、2006年.
 ・岸本泰明、川田潤一、鳥居ゆか、山田朱美、伊藤和江、西川和夫:発熱と白血球増多を認め血液培養を施行した497例の検討、日本小児科学会雑誌、111巻1号、28-32頁、2007年.

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