アクアポリン・アディポース
脂肪細胞は、絶食時(飢餓時、運動時)には、脂肪細胞内に貯蔵した中性脂肪(トリグリセリド)を分解し、遊離脂肪酸とグリセロールを血中に放出する(脂肪分解)。
脂肪細胞は、摂食時には、血中から遊離脂肪酸とブドウ糖を取り込み、中性脂肪として貯蔵する(脂肪合成)。
脂肪細胞内で中性脂肪が分解され、グリセロールが産生される際には、細胞内浸透圧が急激に上昇する。
中性脂肪の分解によって産生されるグリセロールは、水チャネルファミリーに属するアクアポリン・アディポース(aquaporin adipose:AQPap)を通じて、脂肪細胞内から脂肪細胞外に輸送される。
AQPap(アクアポリン・アディポース)は、水のみならず、グリセロールをも通過させる(アクアグリセロポリン)。
脂肪細胞から血中に放出されたグリセロールは、肝臓で、AQP9を介してAQP9(内に取り込まれ、糖新生の基質として、利用される。
AQPap(脂肪細胞特異的グリセロールチャネル)と、AQP9(肝細胞特異的グリセロールチャネル)は、連動して発現する。絶食時(飢餓時、運動時)には、脂肪細胞でのAQPap発現と、AQP9でのAQP9発現が、増加する。
KOマウスは、自然に肥満を発症し、食餌誘導性に肥満を呈する。
KOマウスは、AQPapを欠損していて、細胞細胞内グリセロール含量が増加し、グリセロールキナーゼ(glycerokinase)活性が上昇し(グリセロール 3-リン酸が生成され、遊離脂肪酸とエステル結合し、中性脂肪の生成が促進する)、中性脂肪が蓄積し易くなっていて、肥大化した脂肪細胞が増加し、肥満になる。
その他
・抗アクアポリン4抗体(AQP4)は、視神経脊髄炎(NMO)に特異的な抗体。
参考文献
・ハーパー・生化学(丸善株式会社発行、1975年).
・ヴォート生化学(東京化学同人、2003年、第4刷).
・鈴木紘一、他:ホートン生化学 第3版(東京化学同人、2005年、第3刷).
・前田法一、火伏俊之、船橋徹:アクアポリン・アディポース、メタボリックシンドローム
up to date、日本医師会雑誌、第136巻・特別号(1)、生涯教育シリーズ−72、S306-S307頁.
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