腎臓とプロスタグランジン
 
 1.腎臓でのプロスタグランジン
 腎臓で、PGE2を始めとするプロスタグランジン(PGs)は、以下のような作用を有している。
 1.腎の微小血管、特に、輸入細動脈を拡張させて、腎血流量や腎糸球体濾過率(GFR)を上昇させる。また、腎髄質の血流量を調節する。
 2.緻密斑(マクラデンサ)で産生され、レニン分泌を促進させ、血管を収縮させたり、血圧を上昇させる。
 3.尿細管で、Naと水の再吸収を抑制する。
 4.抗利尿ホルモン(バゾプレシン)の作用に拮抗し、水の再吸収を抑制する。
   
 表1.腎臓でのプロスタノイドの作用
 機能  腎血流量・糸球体濾過率
 の調節
 腎髄質血流量
 の調節
 レニン分泌の調節   Na/Clイオンの再吸収
 の調節
 水再吸収の調節
 (尿濃縮能)
 作用部位  腎糸球体
 メサンギウム細胞
 輸入細動脈
 腎髄質  傍糸球体装置
 緻密斑、
 顆粒細胞
 遠位尿細管
 ヘンレ上行脚
 集合管
 COXアイソフォーム  COX-1/COX-2  COX-1>COX-2  COX-1<COX-2  COX-1<<COX-2  COX-1>COX-2
 プロスタノイド  PGE2、PGI2、PGD2、TXA2  PGE2、PGI2、PGD2  PGE2、PGI2  PGE2  PGE2、PGI2、PGF
 作用機序  血管平滑筋やメサンギウム細胞の弛緩・収縮、
 輸入・輸出細動脈や小葉間動脈の拡張・収縮
 アンジオテンシンIIによる血管収縮、
 腎髄質の血行調節
 レニン分泌を刺激  Na・Cl再吸収の抑制
 抗利尿ホルモンに拮抗、
 水透過性の抑制

 2.腎臓とCoX-1、COX-2
 腎臓では、COX-1は、血管内皮に存在する:輸入細動脈、輸出細動脈、髄質へ流れる直血管、集合管にも、存在する。
 COX-2は、血管平滑筋に存在する:緻密斑に豊富に存在し、レニン分泌の調節に関与し、アルドステロンを介する、Na再吸収(電解質調節)を調節する。腎血流量や腎糸球体濾過率(GFR)を調節する。
  腎臓では、COX-2は、誘導的に発現している(inducible)のではなく、常時発現している(constitutive)。

 3.NSAIDsによる腎機能障害
 NSAIDsは、以下のような腎機能障害を来たすことが、知られている。
 表2.NSAIDsによる腎機能障害とその発症機序
 腎機能障害  発症機序
 Na貯留と浮腫  PGE2減少(COX-1<<COX-2)
 高K血症  PGE2減少(COX-1<<COX-2)
 遠位尿細管のK排泄の低下
 レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の活性低下
 腎血流量・糸球体濾過率の急激な低下  PGE2、PGI2、PGD2減少(COX-1/COX-2)
 間質性腎炎  プロスタノイド減少、ロイコトリエン増加
 急性・慢性腎乳頭壊死  プロスタノイド減少、
 薬剤過敏(毒性)

 参考文献
 ・Medical Tribune Vol.37, No.43 (2004年10月21日号)
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