Oisix(おいしっくす)  富士通パソコンFMVの直販サイト富士通 WEB MART

 突発性発疹

 突発性発疹(exanthema subitum)は、生後6カ月頃(生後1カ月〜2歳頃まで)の乳幼児が、発症することが多い病気です。主に、HHV-6(ヒトヘルペスウイルス6:注1)というウイルスが原因で、発熱後、発疹が、現れる病気です。
 突然、高熱を出し、発熱(稽留熱:弛張熱の場合もある)が、3〜5日間、持続した後、解熱に前後して、風疹様の発疹が、腹部から始まって、顔などに現れます(発疹は、四肢に現れることは少ない)。発疹は、2日程度で、消えて行きます。子供さんが、生後、初めて高熱を出した時は、突発性発疹による発熱の場合が多いです。
 発疹が現れるまでは、突発性発疹と確定診断することは、困難ですし、不顕性感染と言って、発熱だけで、発疹が現れない場合もあります(20〜40%)。
 突発性発疹では、下痢を伴うことがありますが、普通の風邪と異なり、通常、咳や鼻水は、目立たないことが特徴です。また、発熱時に、まぶた(眼瞼)が、浮腫状になるのも、特徴です。その他、頚部のリンパ節の腫大、大泉門の膨隆、永山斑(粟粒大の隆起が、口蓋垂の根本両側に見られる:注2)などが、特徴です。
 発熱は、生後、初めての発熱のことが多く、ひきつけ(熱性痙攣)を伴うこともあります。高熱があっても、機嫌が良いことが多い(注3)のですが、元気がない場合は、ごく希ですが、脳炎などの合併症を起こしているおそれもあります。
 熱が有る期間は、入浴は、控えて下さい。 
 HHV-6は、ほぼ全ての成人に潜伏感染しています。成人(母親など)の唾液に含まれているHHV-6が、生後6カ月頃を過ぎて、移行抗体が消失した時期の子供さんに感染し、約10日の潜伏期間の後、突発性発疹を発症すると、考えられています。
 突発性発疹の子供さんが、他の子供さんにHHV-6を感染させることはないと、考えられていますので、発疹が軽快すれば、登園は、可能です(注4)。予防接種は、治ってから2週間は、受けられません(注5)。
 HHV-6以外のウイルスによって、突発性発疹を来たしますので、突発性発疹に、2度、3度と、罹ることもあります。
 注1HHV-6とは、Human herpesvirus 6(ヒトヘルペスウイルス6型)の略。
 突発性発疹の原因は、HHV-6が85%、HHV-7が7%、エンテロウイルスが7%とされる。
 HHV-6が原因かどうかは、血液検査で、HHV-6−IgG抗体を検査すると良い(HHV-6-IgM抗体は、上昇しにくい)。

 注2:永山斑(Nagayama spots)は、口蓋垂の根本両側に見られる粟粒大の隆起で、突発性発疹の特徴と言われる。
 永山斑は、アフタ様に潰瘍化し、ヘルパンギーナと紛らわしい咽頭所見を示すこともある。
 永山斑が咽頭に見られても、HHV-6感染(突発性発疹)でないこともある。
 ウイルス学的に、HHV-6感染が証明された突発性発疹での、永山斑の出現頻度は、65.3%と言われる。
 HHV-6感染による突発性発疹での、他の臨床症状の頻度などは、
 ・発熱 98.3%:持続期間は4.1±1.2日間。発熱は40℃以上のことが多い。発熱のみで、発疹が出現しないことがある
 ・発疹 97.7%〜83%:風疹様あるいは麻疹様。体や顔面に多く出現するが、全身に出現したり、四肢のみに出現することもある。色素沈着は、残さないことが多いが、残すこともある。突発性発疹の発疹は、典型的には、高熱が3日間持続し、分利性に解熱した後に現れる。突発性発疹の発疹は、解熱当日に現れることが最も多いが、解熱翌日、または、発熱が持続中で分利(解熱)直前に発疹が現れることもある。突発性発疹の発疹は、躯幹(腹部)に最も著明に現れ、四肢にも現れるが、顔面には少ない。なお、風疹の発疹は、発熱とはほぼ同時に現れ、典型的には、まず、顔、耳の後ろなどに現れ、その後、すみやかに、頭部、胴体、四肢に広がる。突発性発疹の発疹は、24〜48時間持続後に、現れた順序で消退する。突発性発疹の発疹は、一般的には、色素沈着を残したり、落屑が現れない。
 ・下痢 67.8%:突発性発疹では、軟便程度の下痢から軽度脱水を来たす程度の下痢まで、様々な程度の下痢が見られる。突発性発疹で見られる下痢は、92.9%以上が、発熱2日後に見られ、53.1%が、発疹が出現する以前に見られる。下痢は、黄緑色〜黄褐色の水様便で、粘液を多量に含む(粘液は混濁しない)。粘液に、点状〜線状の血液が混じることがある。嘔吐も見られる。
 ・咳嗽 52.0%
 ・眼瞼浮腫 30.0%:有熱期から出現する。
 ・頚部リンパ節腫脹 31.1%
 ・大泉門膨隆 25.7%
 ・熱性痙攣 7.5%
 と言われる。
 HHV-6初感染では、高熱(平均39.7℃)が出る。HHV-6初感染は、病期は平均6日間の期間だが、15%の小児は6日間以上、熱が続くと言う。
 HHV-7初感染による突発性発疹は、HHV-6感染による突発性発疹に比し、最高体温が低く、発熱期間も短く、発疹出現時期が遅く、比較的軽症と言われる。HHV-7初感染は、無症状か、熱だけが3日程続くこともある。
 
 突発性発疹では、白血球数が減少し、リンパ球の比率が増加する(比較的リンパ球増加)。異型リンパ球が現れることがあっても、風疹のように多数現れることはない。
 好酸球は、発病初期から発疹が現れ始めた時期に、消失、または、減少するが、発疹出現後には、現れる。
 CRPは、上昇しないか、後期に上昇しても軽度(5mg/dl以下)。

 注3:熱が下がって、発疹が出てからの方が、ぐずったりして、機嫌が悪いことが多い。これは、発疹が、いためなのかも知れない。

 注4:唾液中には、長期間、ウイルスが、排泄される。

 注5:突発性発疹、伝染性紅斑(りんご病)、手足口病などは、普通、治ってから1〜2週間空けて、予防接種をするようになっているが、突発性発疹はヘルペスウイルス系のウイルスが原因なので、発疹が消えてから2週間は空けた方が良いと思われる。
 なお、熱性痙攣(単純型)を起こした場合には、1カ月以上、予防接種を控える。初回に痙攣発作を起こした場合や、複合型熱性痙攣の場合には、癲癇などの疾患の可能性もあるので、2〜3カ月間、予防接種を控える。

 参考文献
 ・中島俊彦、他:ヒトヘルペスウイルス6初感染像(突発性発疹)の臨床的検討 日本小児科学会雑誌 97: 2252-2260, 1993年.
 ・熊本忠史、他:ヒトヘルペスウイルス7型感染症の臨床像 日本小児科学会雑誌 100: 1065-1070, 1996年.
 ・川本智章、他:突発性発疹症における消化器症状の検討 小児科 Vol.33 No.2、193-197、1992年.
 ・植田浩司:突発性発疹症、小児感染病学III、31-37頁、新小児医学大系(全41巻) 第20巻C、小林登、多田啓也、薮内百治 責任編集、中山書店、1981年5月30日 第1刷発行.

 禁無断転載<疾患説明文に戻る><小児科疾患に戻る

 |トップページ脂質と血栓の関係ミニ医学知識生化学の知識医学の話題小児科疾患生命の不思議リンク集