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 炎症

 生体は、炎症反応により、体内に侵入した病原体や毒素が、局所から拡散しないようにする:生体は、体内に細菌が侵入したり、毒素が産生された時に、局所に炎症反応を起こし、血管透過性を亢進させ、白血球を、局所に浸出させ、血漿などの防御因子を、局所に漏出させ、血液凝固を促進させ、血管内を閉塞させ、局所の酸素濃度を低下させ、病原体の増殖を抑制したり、全身への毒素の拡散を予防する。

 炎症は、本来は、生体の合目的的な防御反応だが、過剰な炎症反応は、生体の自己組織の損傷をも、もたらす。過剰な炎症反応は、痛みも増悪させる。
 炎症では、熱感、発赤、疼痛、腫脹が見られる。これらの炎症の四徴は、生体が、患部で、PGE2などを産生し、患部の血流を増加させ、治癒を促進させようとする反応である。
 アラキドン酸リノール酸など、不飽和脂肪酸の摂取が多いと、炎症物質(LTC4、D4、E4など)が過剰に産生され、組織損傷を増加させると、考えられる。

 真皮表層で、肥満細胞から放出されたヒスタミンは、紅斑発赤を形成させたり(血管を拡張させる)、浮腫を生じさせたり(血管透過性を亢進させる)、痒み感覚を惹起させる(覚を伝導するC線維を刺激する)。

 炎症時には、肥満細胞などから放出される化学伝達物質(ヒスタミンなど)により、血管の拡張(局所の血流が増加し発赤や熱感が生じる)、血管透過性の亢進(血漿中の補体、抗体、凝固因子、キニンなどが、組織に漏出して、腫脹・浮腫や疼痛が生じる)、食細胞の遊走・浸潤(好中球、次いで、単球/マクロファージが、病巣に浸潤する)が、起こる。
 ブラジキニン(BK)は、血管透過性亢進作用(ヒスタミンの15倍)があり、組織を腫脹させ、浮腫を生じさせ、疼痛を来たさせる。
 PGE2は、細動脈を拡張させ、局所の血流を増加させ、発赤や熱感を来たさせ、ブラジキニンによる疼痛(発痛)を、増強させる。

 自己免疫疾患、アレルギー性疾患では、抗炎症薬(NSAIDsなど)で、炎症を抑制することが、生体の損傷を防ぎ、痛みを軽減するために必要。
 しかし、感染症では、抗炎症薬(NSAIDsなど)で、炎症を抑制すると、例えば、PGE2の産生が抑制され、解熱することで、ウイルスなど病原体の増殖を促進し、治癒を送らせてしまう危険性がある。
 また、抗炎症薬(NSAIDsなど)は、抗炎症作用もあるPGE2の産生を抑制し、T細胞からのインターロイキン-2(IL-2やインターフェロン-γ(IFN-γ)の産生などを増加させ、強い免疫的炎症反応を起し、組織損傷を増加させる危険もある。また、抗炎症薬(NSAIDsなど)は、LTC4、D4、E4の産生を増加させ、気管支喘息の発作を増悪させる危険もある。

 血液凝固と炎症との間には、関連がある。

 炎症を促進する因子と、炎症を抑制する因子がある。

 1.炎症の四徴
 Calor(heat:熱感)、Rubor(redness:発赤)、Dolor(pain:疼痛)、Tumor(swelling:腫脹)を炎症の四徴と呼ぶ。

 炎症の初期段階では、まず、ヒスタミンセロトニンが、肥満細胞と血小板から放出される。ヒスタミンやセロトニンは、短時間に、一過性に血管を収縮させる。続いて、炎症局所(細動脈、細静脈、および、毛細血管)の血管を拡張させ、血流を増加させ、熱感発赤が生じる。
 また、血管透過性を亢進させ(血管内皮細胞のアクチンが収縮する)、血管内皮細胞の隙間が広がって、全身(血液中)から、白血球(好中球が主:注1)を、局所に浸出させ、血漿などの防御因子を、局所に漏出させ(注2)、腫脹浮腫)が生じる(注3)。
 血管内皮細胞の破壊に伴ない、血液凝固第XII因子が活性化され、カリクレイン・キニン系で、ブラジキニン(BK)が産生され、血管透過性が亢進したり、疼痛が生じる。
 単球・マクロファージからは、ブラジキニンの発痛作用を増強する、PGE2が産生され、疼痛が増強される。
 生体は、カゼなどで、体内に炎症が起きた時に、血液凝固を促進させ、血管内を閉塞させ、局所の酸素濃度を低下させ、病原体の増殖を抑制したり、全身に拡散しようとする病原体を、局所に隔離しようとする。また、毒素などが全身に拡散しないようにする。
 なお、発熱は、内因性発熱物質(endogenous pyrogen:EP)であるIL-1、TNF−α、IL-6IFN-γにより、視床下部の血管内皮細胞が、PGE2を産生し、起こる。
 表1 炎症とメディエーター
  徴候   機序   メディエーター
 発赤、熱感  細動脈拡張  PGE2ブラジキニンヒスタミンセロトニンPGI2NO
 疼痛  知覚神経(C線維)の刺激  ブラジキニンPGE2LTB4
 腫脹浮腫  血管透過性の亢進  ブラジキニンヒスタミン、セロトニン、PGE2LTC4
 膿  白血球遊走  LTB4、C5a、IL-8
 発熱  体温調節中枢セットポイント上昇  PGE2
 2.炎症時に「痛み」を感じることは、合目的的である
 ・痛みは、体に異常があることを警告する。

 ・痛みを避けることで、安静を保ち、病変部から病原体が、全身に広がるのを予防する。ただし、痛みのため、全く、局所を動かさないと、血流が悪くなり、発痛物質が除去されないので、痛みが増悪して、痛みの悪循環が起こり、また、局所の筋力などが低下する。痛みで、不安を感じたりすると、疼痛閾値が低下して、弱い痛みも、強い痛みとして感ずるようになる。

 ・いったん、COXCOX-2)が活性化された組織では、過敏になり、圧迫刺激などでも、瞬時に痛みが増強する:産生されたブラジキニンなどは、灼熱感のある、神経を刺激するような痛みを発生する。ブラジキニンが失活すると、痛みが和らぐ。

 3.ヒスタミンの作用
 ヒスタミンには、平滑筋収縮(気管支収縮、腸管収縮)、細動脈拡張(発赤、低血圧)、血管透過性亢進、胃酸分泌促進(H2受容体を介する)などの作用がある。

 表2 平滑筋収縮作用や血管透過性亢進作用のある化学伝達物質
  作用  ヒスタミン  セロトニン  PGF  PGD2  TXA2  SRS-A  PAF
 気管支平滑筋収縮  +  +  +  +  +  +  +
 血管透過性亢進  +  +  −  +  −  +  +
 ・血管拡張作用:ヒスタミンは、血管(細動脈、細静脈、および、毛細血管)を著明に拡張させ、紅斑が形成されたり、血圧を低下させる。

 ・血管透過性亢進作用:ヒスタミンは、毛細血管の血管透過性を亢進させ、蛋白質を含む血漿成分を血管外に漏出させ、粘膜浮腫を生じさせる。
 血管内皮細胞は、H1受容体(H1レセプター)を有しており、ヒスタミンが作用すると、収縮して、血管内皮細胞間にgapが形成され(血管透過性が亢進する)、血管腔に突出して、核の表面の凹凸が著しくなる。

 ・痒み惹起作用:真皮表層で、肥満細胞から放出されたヒスタミンは、C線維上のH1受容体に結合し、中枢神経(脳)に、痒み感覚を伝達する。

 ・気管支平滑筋収縮作用。

 ・外分泌腺刺激による分泌物増加作用(粘液分泌亢進)。

 ・酸度の高い胃液を、多量に分泌させる。

 ・ヒスタミンは、末梢血管から、プロスタグランジン(E、I2、F、D2など)を遊離させる。

 ・I型アレルギー反応では、プロスタグランジン(PGD2など)は、ヒスタミンと共に肥満細胞から遊離され、ヒスタミンの血管透過性の亢進を増強させる。
 他方で、 プロスタグランジン(PGE2PGE1PGI2など)は、EP4受容体を介して、アデニル酸シクラーゼ(AC)を活性化させ、cAMP濃度を上昇(増加)させ、ヒスタミンの遊離を抑制させる。

 4.肥満細胞からのヒスタミン遊離(脱顆粒
 ・肥満細胞表面のIgE抗体が、抗原により架橋されると、Ca2+の肥満細胞内への流入が30秒前後から始まり、2分後まで続く。ヒスタミンの遊離は、Ca2+の流入に少し遅れて始まり、2〜3分後にピークとなる。
 架橋に伴い、ヒスタミン以外にも、ロイコトリエン(LTC4、D4、E4)などのメディエーターも、放出される。また、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、TNF-αなどのサイトカインの産生が、促進される。

 ・C3aやC5a(アナフィラトキシン:注4)は、肥満細胞・好塩基球からヒスタミンを遊離させ、血管透過性を亢進させる。C5aは、好中球とマクロファージの遊走をもたらす。

 ・サブスタンスP(SP)、ロイコトリエン(LT)、Il-1などのサイトカインは、抗原が存在しなくても、組織肥満細胞や好塩基球を脱顆粒させ、ヒスタミンを遊離させる。

 5.血管透過性を亢進させる物質
 ・ヒスタミン
 ・PGE2
 ・PGI2 
 ・LTC4、D4、E4
 ・PAF
 ・ブラジキニン

 6.痛みを増悪させる食事
 砂糖などの糖質(グルコースを含む)や、食用油などの脂質(アラキドン酸の原料になるリノール酸を含む)は、発痛物質である、乳酸、プロスタグランジンE2PGE2)の生成を増加させ、痛みを増悪させると考えられる。、
 また、砂糖の摂り過ぎは、血中の中性脂肪を増加させ、血小板が偽足を出して凝集しやすくなり、血行を悪化させ、酸性の代謝中間産物(乳酸など)を蓄積させ、痛みを増悪させると考えられる。
 御菓子、酒、穀類(御飯、パン、ウドンなど)、肉類(獣鳥魚介)、卵なども、痛みを増悪させる。
 野菜(緑葉食や青汁)や果物は、痛みを軽減する血行を良くし、発痛物質の除去を促進する)。

 7.痛い時、冷やすか、暖めるか?
 急性期:冷やす、安静←冷やしたり、安静にすることで、炎症を抑制し、組織の障害を軽減出来る(注5)。なお、冷やした後は、リバウンドで、血流が増加する。
 慢性期:暖める、動かす
←暖めたり、軽く動かして、血行を良くし、発痛物質(注6)を除去する。
 暖めて、血行が良くなり、痛みが増悪する場合は、急性期の炎症が存在すると考えられる。

 8.風邪に罹ったら、暖めるか、冷やすか?
 寒気がある風邪:暖める(風邪の引き始め)
 熱感がある風邪:冷やす(風邪の発熱期)


 1).暖めた方が良い風邪:風寒型
 ゾクゾクと寒気を感じる、頭痛がする、手足の冷え感がある→風呂に入り、身体を暖めると良い。葛根湯(注7)、ジャガイモ等の根菜類が良い。

 2).冷やした方が良い風邪:風熱型
 熱っぽい、黄色い鼻水が出る、喉が乾いて痛む→喉、頭を冷やすと良い。銀翹散(ギンギョウサン)、ミカン等の柑橘類が良い。
 食事として、白米の御粥は、どちらの型の風邪の際にも良い。

 9.アレルギー性炎症
 1).early phase reaction(EPR:即時型反応)
 抗原暴露後、15〜30分後に、発赤、膨疹が出現する。
 肥満細胞表面のIgE抗体に、抗原が結合して、ヒスタミンが遊離される。
 ヒスタミンにより、血管が拡張し、平滑筋が収縮し、血管透過性が亢進する。

 2).late phase reaction(LPR:遅発型反応)
 抗原暴露後、6〜12時間後に、紅斑浮腫(腫脹)が生じる。
 リンパ球、好酸球、好中球が浸潤している。
 PAFLTB4、ECF-A、NCF-Aによって、好酸球、好中球が遊走し、浸潤する。 
 PAF、LTC4、D4、E4によって、血管透過性が亢進する。
 好酸球から放出される酵素やEPOは、ヒスタミン、PAF、LTC4、LTD4、LTE4を分解するが、好酸球から放出されるMBP、EPO、ECP、EDNは、炎症局所の組織を障害したり、肥満細胞を活性化させる。このように、好酸球は、アレルギー性炎症を、抑制する側面と、促進させる側面がある。 
 10.炎症(痛み)を、消炎鎮痛剤で軽減することの問題点
 炎症では、熱感、発赤、疼痛、腫脹が見られる。これらの炎症の四徴は、生体が、患部で、PGE2などを産生し、患部の血流を増加させ、治癒を促進させようとする反応である。
 炎症(痛み)を消炎鎮痛剤(NSAIDsど)で抑制すると、PGE2などの産生を抑制し、治癒を遅延させてしまうおそれもある。
 炎症(痛み)は、緩和する必要があるが、原因を治さないで、原因に対する結果(生体の反応である炎症)を、完全に抑制することは、却って、悪い結果を招くおそれがある。

 11.急性炎症の生理学
 急性炎症に際しては、炎症の四徴(熱感、発赤、疼痛、腫脹)が現れる。
 急性炎症では、微小循環系血管(細動脈→毛細血管→細静脈)で、以下のような変化が起こる。
 1).血管径と血流の変化
 2).白血球の粘着性亢進と血管外遊走
 3).血管透過性亢進

 血管径と血流の変化は、細動脈側で起こる。
 白血球の粘着(接着)性亢進と血管外遊走や、血管透過性の亢進(血清の滲出)、赤血球の漏出は、細静脈側(特に、毛細血管と細静脈との吻合部附近)で起こる。

 1).血管径と血流の変化

 急性炎症の初期には、侵害が加わった局所で、まず、(細動脈が)強く血管収縮する(血行が低下する)。
 血管収縮に次いで、5分程度後、細動脈の収縮が解除され、血行(血流)が回復し、侵害数十分後には、細動脈が、拡張する。細動脈の拡張により、血流速度や血流量が増加し、拍動性に、微小循環系血管(毛細血管や細静脈も含む)に、多量の血液が流れ、炎症部位(皮膚など)に、熱感、発赤、拍動性疼痛が現れる。
 血流が増加すると、白血球が粘着し、血栓が形成され、血行が阻害される。また、血管透過性亢進が起こり、血液粘稠度が増す。その結果、血流速度が低下し、血流量が低下する(血行停止)。血流速度が低下すると、赤血球は、連銭形成する。

 2).白血球の粘着性亢進と血管外遊走
 急性炎症があると、血管内皮細胞表面にセレクチンが発現し、血液中の白血球(好中球や単球など)が、特に、細静脈の血管内皮細胞に、粘着(接着)する。
 白血球の粘着性亢進は、侵害数分後から細静脈の血管内皮細胞で起こり、15〜30分後に、増強する。侵害後の白血球の粘着性亢進は、数時間後にピークに達し、20時間後には、白血球の粘着性亢進は、消失する。

 3).血管透過性亢進
 急性炎症時には、微小循環系血管は、血管透過性が亢進し、血管内を流れる血液中の血清蛋白が、多量に、組織に漏出し、腫脹(浮腫)が生じる。
 侵害数分後から、主として、静脈側毛細血管や細静脈の血管透過性が亢進する(細動脈や真性毛細血管は、血管透過性が亢進しない)。
 肥満細胞などから放出されるヒスタミンは、血管透過性を亢進させる。
 血管透過性亢進は、即時型と、遅発型(遅延型)の二相性で起こる。
 即時型の血管透過性亢進は、侵害5〜10後に起こり、一過性で、持続が短い。即時型の血管透過性亢進は、ヒスタミンやヒスタミン様物質の作用によって起こるので、抗ヒスタミン剤で、抑制される。
 遅発型(遅延型)の血管透過性亢進は、侵害5時間後ぐらいをピークとして起こり、強く、長い時間、血管透過性が亢進する。炎症における血管透過性亢進は、主に、遅発型の血管透過性亢進。遅発型の血管透過性亢進は、抗ヒスタミン剤で、抑制されない(遅発型の血管透過性亢進には、vasoexinが関与する)。
 ブラジキニン(BK)やプロスタグランジン(PGE2)も、血管透過性を亢進させる。

 12.関節炎と安静
 関節は、関節軟骨により、クッション作用が営まれて、骨への衝撃が軽減されている。
 軟骨細胞は、コラーゲンやプロテオグリカンを産生する。コラーゲンは、軟骨の硬度を維持し、プロテオグリカンは、軟骨の水分保持作用を維持し、両者により、軟骨のクッション作用が営まれている。
 軟骨細胞が、コラーゲンやプロテオグリカンを産生するには、酸素が必要。関節周囲の血行が悪いと、関節軟骨へ酸素が十分に供給されず、軟骨細胞によるプロテオグリカンなどの産生が低下し、死滅した軟骨細胞が、滑膜を刺激し、滑膜に炎症が起こり、関節に痛みが生じる(関節軟骨自体には、神経が存在しないので、関節軟骨から痛みが生じない)。炎症に伴ない産生されるサイトカインは、軟骨細胞を死滅させ、痛みの悪循環が起こる。
 変形性関節症で、痛みが強くても、安静にし過ぎると、関節周囲の血行が低下し、却って、関節軟骨への酸素の供給が低下し、関節軟骨を減らして、痛みの悪循環を起こす。関節軟骨は、スポンジ状に、圧迫と解放により、酸素や水を吸い込むので、運動により、関節軟骨に、圧迫と解放の刺激(圧力)を繰り返すと、酸素や水分の供給量が増加し、軟骨細胞が活性化される(軟骨細胞を培養して、圧力をかけて、刺激すると、軟骨細胞から産生されるプロテオグリカン量が、2倍に増加する)。

 関節周囲の血行を改善し、関節軟骨を刺激するには、脚上げ体操(あしあげたいそう)が良い。脚上げ体操は、患側の膝を伸ばしたまま(反対側の膝は、屈曲して立てる)、踵を10cm程度上げて、5秒間程静止し、その後、下げる動作を、1回20回、1日朝夕の2回行う。脚上げ体操の効果は、2週間程で現れ、関節の痛みが軽減し、膝を曲げても、痛みが少なくなると言う。

 注1浮腫など、炎症が始まって、6〜24時間後(初期段階)に、血管内から炎症局所の組織中に、好中球が、遊走して来る。そして、炎症が始まって、24〜48時間後に単球やリンパ球が、遊走して来る。
 好中球と単球・マクロファージは、細菌や異物を貪食し、過酸化水素(H2O2)を産生する。また、炎症に伴い、スーパーオキサイド(O2-)、ヒドロキシルラジカル(HO・)など、他の活性酸素も産生される。
 好中球は、様々なプロテアーゼ(エラスターゼ)も分泌する。
 好中球、好塩基球、マクロファージは、PAFを産生し、血小板凝集血管透過性亢進(ヒスタミンより強力)、好酸球の遊走が、起きる。
 炎症時に、炎症局所の血管内皮細胞は、セレクチン(細胞接着分子)を発現する。血管内の好中球や単球など白血球は、白血球表面のセレクチンリガンド糖鎖)で、血管内皮細胞表面のセレクチン(細胞接着分子)と、結合し、遊走を始める。
 好中球から産生される、PAFLTB4は、好酸球を刺激して、好酸球の基底膜通過を増加させる。刺激された好酸球は、autocrineな機序で、PAFを産生する。
 なお、慢性の炎症で重要な働きをするのは、単球・マクロファージで、Tリンパ球や、好酸球も、炎症局所に浸潤する。

 注2急性炎症の局所では、初期には、蛋白成分の少ない濾出液が、血管内から組織中に漏出して来る。次第に、血漿蛋白を含む蛋白液が、血管内から組織中に漏出して来る。出て行く。濾出の漏出には、主に、静水圧が関与(毛細血管の清水圧が、組織の浸透圧より上昇して、血管内から組織中に、液体成分が濾出transudationする)し、蛋白液の漏出には、血管透過性亢進が関与(蛋白成分が滲出exudationする)する。蛋白液が漏出(滲出)すると、血液は、濃縮して、血液粘稠度が増加し、血流が停滞する(鬱血して、古い血液が貯留する)。
 炎症局所では、血管透過性が亢進して、NSAIDsなどの薬剤も、組織へ移行し易くなる。

 注3:炎症では、血管透過性が亢進し、血管内皮細胞のアクチンが収縮し、血管内皮細胞の隙間が広がって、血液中から、血漿などの水分が、局所に漏出し、炎症性の浮腫が生じる為、腫脹が起こる。
 PGE2PGD2PGFは、血管を拡張させたり、血管透過性を亢進させ、炎症性浮腫を引き起こす。
 血小板の濃染顆粒から放出されるセロトニンは、血管収縮作用、血管透過性亢進作用がある。

 注4:活性化された補体C3aC5aは、アナフィラトキシン活性があり、マクロファージや肥満細胞を活性化させたり、血管透過性を亢進させたり、平滑筋を収縮させる。

 注5:筋肉痛も打撲痛も、アイシングすると、早く回復する。アイシングは、2時間おきに、15分ずつ行うと良い。
 特に、打撲や捻挫のように、外力で組織が損傷を受けた場合は、応急処置として、冷やすことが大切。損傷を受けた組織では、細胞が破壊され、血管も障害されると、酸素供給が低下する。冷やすことで、周囲の細胞の代謝が抑制され、組織の酸素需要量が低下し、細胞の障害が予防されると考えられる。
 冷やし方としては、直後に、一度、流水で冷やすだけでも、効果が現れる。氷で冷やす時には、タオルなどで、直接、皮膚に氷が当らないように配慮する。

 注6:内因性の発痛物質と発痛補助物質には、下記のような物が知られている。
 ブラジキニン(BK)、セロトニン、ヒスタミン、カリウムイオン、プロスタグランジンE2PGE2)、プロスタグランジンI2PGI2)、ロイコトリエン(LT)、補体、乳酸

 注7葛根湯は、カッコン(葛根:葛の根)、マオウ(麻黄:中国では草原に生えている)、タイソウ(大棗:乾燥させたナツメの実)、ケイヒ(桂皮:シナモン)、シャクヤク(芍薬:牡丹科の植物)、カンゾウ甘草グリチルリチンを含む)、ショウキョウ(生姜:ショウガ)の7つの生薬から、構成されている。葛根湯は、感冒、鼻かぜ、頭痛、肩こり、筋肉痛、手や肩の痛みに、用いられる。
 葛根湯は、寒気のある風邪の際、体を温め、発を促すのに効果的

 葛根:風邪の際、効果的なほか、筋肉をゆるめ、下痢を止める働きがある

葛根湯は、自然発汗がなく、頭痛、発熱、悪寒、肩こり等を伴う比較的体力のある人の諸症(感冒、鼻かぜ、熱性疾患の初期、結膜炎、角膜炎、中耳炎、扁桃腺炎、乳腺炎、リンパ腺炎、肩こり、上半身の神経痛、じんましん)に良いとされる。

 漢方薬の葛根湯は、マウスの実験結果では、インフルエンザ感染時に、IL-12の産生を増加させ、肺インフルエンザウイルス量を減少させ、IL-1の産生を抑制し、発熱や関節痛など、インフルエンザの症状を軽快させる。
 葛根湯に含まれるマオウ(麻黄)は、インフルエンザウイルスが、赤血球凝集素(HA)により、赤血球表面のウイルス受容体(シアロ糖鎖)と結合するのを阻害し、インフルエンザウイルスの感染を阻止する効果があると言う。

 漢方薬は、構成されている生薬の相互作用で、効果を現す。
 十全大補御湯は、病気の後の体力回復に用いられるが、十全大補御湯は、リンパ球を増加(増殖)させる作用がある。この十全大補御湯のリンパ球増殖作用は、桂皮を除くと消失するが、桂皮単独では現れず、桂皮と、他の生薬との相互作用で現れる。

 生の生姜(ショウガ)には、免疫力増加作用があるジンゲロールが含まれている。ジンゲロールは、辛味成分で、抗菌作用(細菌類を殺菌する作用)がある。ジンゲロールは、加熱や酸化で減少する。摩り下ろした生姜に含まれるジンゲロールは、空気中に放置すると、酸素と反応し酸化して減少して行く(3分後には半分になる)。ジンゲロールは、加熱すると、熱産生作用があるショウガオールへ変化する。ショウガオールは、血管を拡張させ(PGI2増強)、血小板凝集を抑制し(TXA2抑制)、血行を良くする。風邪をひいた時には、温めのお湯で、生姜湯(ショウガユ)を作って飲むと良い。

 参考文献
 ・山本一彦、他:カラー図解 靭帯の正常構造と機能 IV 血液・免疫・内分泌 (日本医事新報社、2002年).
 ・安保徹:免疫革命 講談社インターナショナル、2003年.
 ・影山圭三:図説<炎症>シリーズ@ 炎症の形態学 −急性から慢性へ− 日本医師会雑誌 昭和55年1月1日号.
 ・林秀男:図説<炎症>シリーズA 炎症の病理化学−急性から慢性へ− 日本医師会雑誌 昭和55年2月1日号.
 ・浅野牧茂:図説<炎症>シリーズB 炎症の生理学−微小循環からみた炎症反応− 日本医師会雑誌 昭和55年3月1日号.

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