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 おたふくかぜ流行性耳下腺炎、ムンプス)

 おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)に罹ると、耳下腺や顎下腺が腫れて、痛みが出るだけでなく、髄膜炎・脳炎(頻度は3%程度)や、難聴(ムンプス聾注1)などの、合併症が起ることがある。
 おたふくかぜウイルスの感染力が強いのは、発症1〜2日前から、発症(耳下腺腫脹)5日後までの期間。


 1.おたふくかぜ
 おたふくかぜウイルス(ムンプスウイルス)の感染源は、患者の唾液:患者との直接接触、飛沫感染、患者の唾液で汚れて間もない器物(媒介物:fomites)を介する間接的な接触、それから、恐らく尿により、感染する。
 おたふくかぜウイルスは、唾液中に、発症6日前から排泄され、耳下腺、顎下腺の腫れが消失するまでの間、排泄が続く。発症1日前から、感染力がある。Nelsonの教科書(第18版:Wilbert H. Mason)によると、おたふくかぜウイルスは、唾液中に、発症7日前から、最大発症(耳下腺腫脹開始)7日後までの期間、検出される。おたふくかぜウイルスの感染力が強いのは、発症1〜2日前から、発症(耳下腺腫脹)5日後までの期間と記載されている。
 尿からも、おたふくかぜウイルスは、排泄される。
 耳下腺の腫脹が消失するまで、出席停止:感染可能期間(最大、発症9日後まで)は、幼稚園、学校は、出席停止になる(流行性耳下腺炎は、学校保健法第ニ種の疾患)。学校保健法は、2009年(平成21年)4月1日から、学校保健安全法と改称された。
 なお、発症10日以降は、腫れが存続しても、感染力は無いと見なされる。
 平成24年4月1日からは、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)に罹った場合、出席停止期間は、現行の「耳下腺の腫れが消えるまで」から、「腫れが出た後5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで」に変更される。
 学校保健安全法では、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)は、第二種の感染症に定められていて、耳下腺、顎下腺又は舌下線の腫脹が発現した後5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで出席停止とされている。ただし、病状により学校医その他の医師において感染の恐れがないと認めたときは、この限りでない。

 潜伏期間は、約18日:ウイルスに感染すると、約18日後(12〜25日後)に発症する。
 発熱も見られる:発熱は、耳下腺が腫れる1日前から見られ、1〜3日続く。発熱は、5日間程度、続くことがある。(鼻汁は出ても、咳はない。)
 耳下腺や顎下腺が腫れる:耳下腺の腫脹は、柔らかく触知され、顎下腺の腫脹は、硬く触知される。顎下腺の腫脹は、痛みが少ないが、耳下腺の腫脹より、回復が遅い。顎下腺は、おたふくかぜで耳下腺が腫れると、50%程の症例で現れる。おたふくかぜは、10%の症例で、顎下腺のみが腫れることがある。顎下腺は、楕円形に腫れることが多い。おたふくかぜで、舌下腺が腫れることは稀。
 不顕性感染がある:不顕性感染と言って、症状が出ないこともある(30〜40%の人)。不顕性感染であっても、ウイルスは排泄され、周囲の人に伝染する。
 無菌性髄膜炎:無菌性髄膜炎の発症は、おたふくかぜの発症5日後に、多い(5〜10日後)。しかし、耳下腺の腫脹が現れる前に、発熱、嘔吐などの症状で、無菌性髄膜炎を発症することもある。おたふくかぜウイルスによる無菌性髄膜炎は、一般的に、脳炎を合併しなければ、予後は良好で、神経的後遺症なく、治癒する。

 おたふくかぜは、家族内では、未罹患の同居者に、高率に感染する。しかし、幼稚園などの室内では、直接の接触がなければ、感染率は、かなり減少する。そのため、年少時に罹らなくて、大人になってから、感染して発症する人も、結構いる(12歳以上の日本人の抗体保有率は、94.5%)。

 おたふくかぜは、ウイルスが感染しても、「不顕性感染」と言って、約30%の人は、症状が現れないので、知らない内に、罹って、免疫が出来ている人もいる。
 また、特に乳幼児は、耳下腺の腫れが目立たない傾向があり、おたふくかぜに罹ったと、気付かれないことがある。
 おたふくかぜに免疫があるかどうかは、血液検査をすれば、判明するが、時間・費用を要する。たとえ、おたふくかぜに免疫がある人が、おたふくかぜの予防接種を受けても、副反応は生じない。なお、免疫があるかどうかの判定には、ELISA法でIgG抗体が存在するか、検査すると良い(注2)。
 おたふくかぜは、成人が発症すると、子供より、症状が重くなることが多い。特に、男性は、睾丸炎、耳下腺炎、無菌性髄膜炎などで、入院が必要となることが多いとされる。

 おたふくかぜの髄膜炎や髄膜脳炎は、典型的には、7〜10日間で改善する。
 髄膜炎では、髄液は、白血球数(リンパ球優位)が増加(200-600/mm3)する。髄液中のブドウ糖(グルコース)濃度は、殆どの患者では正常だが、軽度の低下(20-40 mg/dL)が、10〜20%の患者で見られる。髄液中の蛋白濃度は、正常か、軽度、上昇する。

 おたふくかぜは、2歳前の小児には少ない。5〜10歳までに発症することが多い。85%の症例は、15歳以下の小児。
 おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)は、晩冬、春に多く発生する。
 不顕性感染は、約30%。不顕性感染は、学童期は少なく、女性(女児)に多い(男性は顕性感染が多い)。
 おたふくかぜのウイルスは、唾液腺腫脹10日後まで、(唾液から)分離される。尿中からは、唾液腺腫脹14日目まで分離されるが、尿から感染するおそれは、極めて低いと言われる。
 
 2.予防接種
 おたふくかぜは、予防接種で、予防出来る。
 おたふくかぜの予防接種で、重大な副作用が生じるリスクは、少ない。
 予防接種で起る副反応は、自然感染によって起る合併症に比して、頻度がはるかに少なく、経過も良好とされる。
 おたふくかぜは、不顕性感染が多いので、知らない内に、免疫が出来ていることもあるが、おたふくかぜの免疫がある人に、予防接種しても、副反応は、生じない。
 おたふくかぜ生ワクチンは、患者と接触した早期に接種しても、必ずしも、発症を防止出来ない(接触直後に接種してはならないと言うことではない)。
 最近の報告では、家庭内曝露後3日以内(家族がおたふくかぜを発症して3日以内)に、おたふくかぜ生ワクチン(ムンプスワクチン)を緊急に予防接種しても、野生株によるおたふくかぜ発症を予防する効果は、認めがたいと言う。しかし、おたふくかぜ生ワクチンを緊急に予防接種し、野生株によりおたふくかぜを発症した場合、発熱率には差が認められないが、唾液腺の症状(腫れの程度)は、有意に軽症化すると言う。なお、麻疹は、感染しても、抗体(ガンマグロブリン製剤)を6日以内に筋注するか、生ワクチンを72時間以内に接種すれば、発病を阻止出来る。水痘は感染機会があった後、72時間以内に緊急に予防接種すれば、水痘の発病を、80〜90%、防止出来ると言われる。
 予防接種で接種されたウイルスは、被接種者から排泄されないので、周囲の人に伝染しないとされる。

 おたふくかぜの予防接種の接種対象は、生後12月以上のおたふくかぜ既往歴のない人(性、年齢に関係無い)。
 生後24〜60月の間に接種することが望ましい(2〜5歳の間に受けるのが良い)。
 おたふくかぜの予防接種は、生後12ヶ月過ぎのおたふくかぜに罹ったことがない者であれば、性、年齢に関係なく接種出来る。但し、生後24〜60ヶ月の間に接種することが望ましい。おたふくかぜの予防接種は、1回だけでは効果が確実でない(自然感染が少なくなり、野生株の流行が無くなり、ワクチンの効果が低下し易くなった)ので、日本小児科学会では2回目の接種を5歳以上7歳未満で受けることを推奨している。

 おたふくかぜの予防接種は、おたふくかぜに対して免疫が無い健康児に接種した場合、接種2〜3週間後頃に、発熱、耳下腺腫脹、嘔吐、咳、鼻汁等の症状が現れることがある。しかし、「これらの症状は自然感染に比べ軽度であり、かつ一過性で、通常、数日中に消失する」と言われる。 
 星野株は、添付文書によると、ワクチン接種後1か月以内に、耳下腺腫脹(6例:接種後18〜22日目の間)、発熱(2例)が認められたが、軽微であったと言う(耳下腺の腫脹、圧痛、発熱は、一過性で一両日中に消退)。鳥居株は、添付文書によると、接種後2〜3週間頃に、発熱、耳下腺腫脹、嘔吐、咳、鼻汁等を認めることがあるが、自然感染に比べ症状は軽度で一過性であり、通常、数日中に消失する。
 おたふくかぜの予防接種で、難聴の副反応が起こることは、極めて稀(1/600 万人〜 1/800 万人と言う報告がある)。

 主な、副反応を、以下に、書き示す。
 1).ショック
 注射直後に、蕁麻疹、呼吸困難、血管浮腫等が、現れることがある。

 2).無菌性髄膜炎
 ワクチン接種後、3週間ぐらいして、発熱、頭痛、嘔吐、痙攣などの症状が、現れる。
 頻度は、1,200人接種あたり1人程度と言われているが、実際は、もっと、頻度は、少ないと思
われる。
 ワクチン接種後の無菌性髄膜炎の頻度は、0.05%で、自然感染後の無菌性髄膜炎の頻度の1.24%より、少ない(注3)。ワクチン接種後の無菌性髄膜炎は、後遺症が少ない。
 おたふくかぜ生ワクチン接種後の無菌性髄膜炎の頻度は、星野株ワクチン(製造販売元:北里第一三共ワクチン株式会社)が1/13,710、宮原株ワクチン(製造販売元:化血研:販売中止)が1/8858、鳥居株ワクチン(製造販売元:武田薬品工業株式会社)が1/6,717と言われる。
 添付文書によると、無菌性髄膜炎の副反応の頻度は、星野株は、2,300接種あたり1人程度発生(接種後3週間前後)し、鳥居株は、1,600接種あたり1人程度発生(接種後3週間前後)する。
 星野株は、添付文書によると、ワクチン接種後1か月以内に、耳下腺腫脹(6例:接種後18〜22日目の間)、発熱(2例)が認められたが、軽微であったと言う(耳下腺の腫脹、圧痛、発熱は、一過性で一両日中に消退)。鳥居株は、添付文書によると、接種後2〜3週間頃に、発熱、耳下腺腫脹、嘔吐、咳、鼻汁等を認めることがあるが、自然感染に比べ症状は軽度で一過性であり、通常、数日中に消失する。
 MMRワクチンの統一株は、麻疹はAIK-C株、おたふくかぜは占部AM-9株、風疹はTo-336株が用いられたが、占部AM-9株のムンプスウイルスによる無菌性髄膜炎の発症が多く、中止になった経緯がある。
 占部AM-9株(阪大微研)のムンプスウイルスによる無菌性髄膜炎が多く、MMRワクチンは中止に追い込まれたが、皮肉な事に、占部AM-9株(阪大微研)は、本来は、無菌性髄膜炎の頻度が、他社のワクチン株ウイルスに比して、一番低いウイルス株だったと言われる。MMRワクチンの統一株に使われた、阪大微研の占部株は、本来認可されていた占部株(CEF3)を継代したM3A株以外に、抗体価上昇を期待して認可を受けていないM3B株を混入(M3A株とM3B株を2:1の割合で混合)させ、MMRワクチンの統一株の無菌性髄膜炎の副反応を高めてしまった要因だと言われる。本来認可されていた占部株のM3A株だけを用いていれば、日本でも、MMRワクチン接種が継続されていた可能性がある。
 ワクチン後の無菌性髄膜炎発生頻度は、統一株MMR(占部株) 0.16%、武田自社株MMR(鳥居株) 0.08%、北里自社株MMR(星野株) 0.05%、微研自社株MMR(占部株) 0.005%で、占部株が最も少なかった。また、武田単味ムンプス(鳥居株) 0.06%、化血研単味ムンプス(宮原株) 0.03%、北里単味ムンプス(星野株) 0.04%で、野生株(自然罹患後の髄膜炎) 1.24%より、頻度が低いと言われる。
 なお、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)により、無菌性髄膜炎を発症しても、耳下腺腫脹がない場合もある。その場合、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)が原因であるか診断するには、血中のムンプスEIA-IgM抗体を測定すると良い。
 また、おたふくかぜの患者は、髄液を調べると、半数以上に細胞増多が見られる。

 3).急性血小板減少性紫斑病
 接種後、数日から3週ぐらいして、紫斑、鼻出血、口腔粘膜出血等が、現れる。頻度は、100万人接種あたり1人程度と言われ、極、希な副作用。
 流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)は、自然感染でも、一過性に血小板が減少することがあると言う。

 4).難聴
 まれに(自然感染より頻度が少ない)、感音性難聴が現れる。自然感染で生じる難聴と同様に、一側性のため、幼児などの場合、発症に気付かれないこともある。

 5).精巣炎(睾丸炎)
 接種後3週間ぐらいして、精巣(睾丸)が腫れて来る。
 特に、思春期以降の男性が、予防接種を受けた場合に見られるが、頻度は、まれ。
 なお、自然感染で、精巣炎(睾丸炎)を起こしても、男性不妊になることは、少ない。自然感染で起こる精巣炎(睾丸炎)は、多くの場合、一側性だが、進行性の睾丸萎縮を来たす。両側性睾丸炎の後に、睾丸が著明に萎縮しないと、男性不妊の原因となることは、稀と言われる。

 6).全身症状
 生ワクチンのために、おたふくかぜに対して、免疫のない健康人に接種した場合、接種後2〜3週間ぐらいして(Nelsonの教科書には、「7-10 days after vaccination」と書かれてある)、おたふくかぜの症状(発熱、耳下腺腫脹、嘔吐、咳、鼻汁等)が、現れることもある。しかし、これらの症状は、おたふくかぜの自然感染に比べ軽度であり、通常、数日中に消失するとされる。

 7).局所症状
 接種局所に発赤、腫脹を認めることがあるが、通常、一過性で、2〜3日中に消失する。

 おたふくかぜは、大人が発症すると、睾丸が腫れたり(睾丸炎)、髄膜炎・脳症など、重症になることが多いが、睾丸炎で、不妊になることは、実際は、希。
 むしろ、おたふくかぜに自然感染した場合、頻度は少ない(15000:1、あるいは、2万人に一人程度)が、難聴(ムンプス聾)になることが問題だと思われる(注1)。
 ムンプス聾は、多くは、一側性の為、小児では、障害が生じても、気付かれないおそれがある。

 以前、知らない内に、「不顕性感染」で、おたふくかぜに罹ったことがあった人が、予防接種を受けても、特に問題は、生じない。

 なお、おたふくかぜは、「終生免疫」(永久免疫)と言って、一度罹ると、一生、再び罹らないと言われて来た。しかし、近年は、老人などで、年少時に一度罹ったことがあったのに、孫から、おたふくかぜウイルスを移され、おたふくかぜに、二度罹った人もいる。
 おたふくかぜの予防接種を受けると、90〜96%の人で、抗体(中和抗体、ELISA抗体)が産生され、免疫が出来る。その後、おたふくかぜウイルスに自然感染すると、不顕性感染に終わり、一生、おたふくかぜに罹らない程の免疫的記憶が形成される(注4)。しかし、予防接種を受けても、3.8〜10%以上の人は、おたふくかぜウイルスに自然感染した際に、おたふくかぜを発症してしまう。その場合も、予防接種を受けなかった人より、症状が軽く、短期間に症状が改善する。

 麻疹では、ウイルスに暴露後72時間以内に、水痘では、家族内暴露後3日以内にワクチンを緊急に予防接種すれば、発病が防がれると言われる(自然感染で体内に入った野生株ウイルスは、体内で、潜伏期間の間、増殖して発病するが、予防接種で体内に入ったワクチン株ウイルスに対して、早い期間に免疫が誘導されるので、野生株ウイルスによる発病が、阻止される。しかし、場合によっては、ワクチン株ウイルスによって、発病することもある)。
 おたふくかぜ(ムンプス)では、家族内に患者が発生して、ワクチンを緊急に予防接種しても、発病を阻止出来ないことが多い。

 3.療養
 おたふくかぜの罹り始めの時期は、安静にして、酸味、辛味、強い甘味のある食物は避けて、柔らかい食餌を食べさせる。
 熱がなければ、シャワー浴ぐらいは、良いが、長時間の入浴は、腫れを増悪化させ、痛みを増すおそれがある。

 耳下腺の痛みには、冷やしたり、湿布を貼ってやると良い。

 4.おたふくかぜ罹患後の予防接種
 おたふくかぜが、治ってから、4週間は、予防接種(麻しん、三種混合など)を受けられない。

 5.ムンプス聾

 おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)に、難聴を合併することがある(注1)。多くの場合、難聴は、片側(一側)の耳にのみ起こり、母親などに、気付かれにくいことがある(両側の耳が難聴になることもある)。
 難聴を発見するには、「指すり法」と言って、片側の耳のそばで、指を擦って、音が聞こえているか、スクリーニングすると、良い。
 難聴は、おたふくかぜを発症後0病日〜13病日に発生する(7病日以内が多い)。難聴の発生時に、耳鳴りや眩暈(めまい)を訴えることもある。難聴が発生する側は、必ずしも、始めに耳下腺が腫れた側ではない。難聴の発生は、おたふくかぜの重症度(耳下腺の腫れの強さ)とも、無関係で、不顕性感染でも、難聴は、発生する。難聴を来たす場合、ムンプスウイルスは、血行性に内耳に到達するか、あるいは、中枢神経系から内耳に到達すると、考えられている。

 おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)に合併した難聴(ムンプス難聴)は、比較的軽症で、回復することが多いが、高度難聴例などは、永続性の高音性難聴に移行する(永続性難聴のムンプス聾)。
 おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)では、4%の症例が、一過性の高音域難聴(ムンプス難聴)を発生するが、普通は、回復し、一部の症例(1/20,000人)は回復せず、一側性の永続性難聴(ムンプス聾)となる(Jenson等)。
 永続性の高度難聴(ムンプス聾)の発生頻度は、2万人に1人程度と言われる(Nelson教科書には15,000人に1人と記載されている。297人に1人と言う報告もある)。

 おたふくかぜの予防接種(麻疹や風疹との混合ワクチンのMMR)を受けてあったのに、おたふくかぜに罹患し、ムンプス難聴を来たした症例もある(secondary vaccine failure)。
 若年者の一側性感音性高度難聴は、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)以外に、中耳炎、遺伝性疾患が、原因のことがある。

 感音性難聴は、ムンプスウイルス(おたふくかぜの原因ウイルス)以外に、麻疹ウイルス、インフルエンザウイルスなどによっても起こる。
 おたふくかぜ(ムンプス)の流行によっては、高頻度(1/294人)に難聴患者が生じることも報告されている(青柳等)。
 難聴を発症した患児は、ムンプスウイルスによる無菌性髄膜炎を合併している場合もある(3.1%)が、難聴の発症と、髄膜炎の合併とは、必ずしも関連がない。
 一側性の難聴が、始めに耳下腺が腫れた側に生じるとは、限らない。
 おたふくかぜ(ムンプス)が重症(耳下腺腫脹が酷い)だと、難聴の発症が多いとも言えない。おたふくかぜ(ムンプス)が不顕性感染で終わっても、難聴が発症することがある。 

 成人のおたふくかぜ(ムンプス)患者298例から、難聴患者が13例発症し、比較的軽症の12例は回復(6例が全快、6例が軽快)したが、1例で永続性の高度難聴が残ったと言う報告がある(Vuori等)。難聴は、高温域が障害され、回復した症例は、数週間以内に回復が見られたと言う。

 難聴発症時に、耳鳴りを合併する症例が存在する(18/28例、23/79例)。耳鳴りは、年長者に多く合併する。
 難聴に、眩暈を合併する症例が存在する(15/35例)。眩暈の合併は16歳以上の難聴患者に多い。

 6.その他 
 ・心内膜線維弾性症(endocardial fibroelastosis)は、ムンプスウイルス(おたふくかぜの原因ウイルス)が、胎内(子宮内)で胎児に胎内感染することが、原因と言われる。
 北米では、MMRワクチンの普及により、おたふくかぜ(ムンプス)の流行が減少し、心内膜線維弾性症の症例が、減少したと言う。

 ・妊婦が、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)に罹っても、奇形児が生まれたり、流産すると言う事実は、確認されていない。
 妊娠中におたふくかぜに罹っても、胎児が影響を受けるおそれは、低い。
 おたふくかぜの予防接種(ワクチン株ウイルス)が、胎児に及ぼす危険性は、確認されていない。しかし、妊娠中のおたふくかぜ(流行性耳下腺炎)の予防接種は、禁忌。

 ・おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)では、耳下腺や、顎下腺が腫れて、血液中アミラーゼ値や、尿中アミラーゼ値が、上昇する。
 アミラーゼ(amylase)は、デンプン(澱粉)を分解する酵素(ブドウ糖とマルトースとに分解する)。
 アミラーゼは、唾液腺(Salivary gland:耳下腺など)や、膵臓(Panceas)から分泌されるので、これらの組織が障害されると、血液中に増加する。アミラーゼは、卵管、肝臓、小腸にも存在する。 
 アミラーゼのアイソザイムを、調べると、どの組織が障害されているのか、推定可能。アミラーゼのアイソザイムは、電気泳動法で調べると、5つのバンドに別れます。1、2、4番は膵型(P型)、3、5番は唾液腺型(S型)と言われます。
 P型アミラーゼ(膵臓型アミラーゼ)を調べるには、モノクローラル抗体で、唾液腺型アミラーゼを阻害し、残ったアミラーゼ活性を求める。P型アミラーゼは、急性膵炎などで、血液中や尿中に増加する。
 正常人では、血清中アミラーゼは、約40%がP型アミラーゼ、約60%がS型アミラーゼと言われる。
 また、尿中アミラーゼは、約70%がP型アミラーゼ、約30%がS型アミラーゼと言われる。


 ・耳下腺腫脹は、おたふくかぜ(ムンプスウイルス)以外に、パラインフルエンザウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、サイトメガロウイルス、麻疹ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスでも現れる。
 細菌感染では、連鎖球菌(溶連菌)、肺炎球菌、ブドウ球菌(黄色ブドウ球菌)でも起こるが、腫脹部を圧迫すると、頬粘膜の耳下腺開口部(Stensen管口部)から膿が出る。

 注1:難聴(ムンプス聾)は、ムンプスウイルスが、内耳細胞を直接障害することにより、起こるという。
 難聴(ムンプス聾)は、片側の耳のみが、ほぼ、全聾になる。健康側の耳の聴力が保たれるので、難聴の発見が遅れ易い。難聴の発見には、「指すり法」と言って、片側の耳のそばで、指を擦って、音が聞こえているか、スクリーニングすると、良い。
 難聴(ムンプス聾)の有効な治療方法はないが、予防接種を受けると、自然感染より、難聴(ムンプス聾)の頻度が、減少すると考えられる。
 難聴(ムンプス聾)は、おたふくかぜ(ムンプス)罹患3〜7日目に、突然、発症する。眩暈(めまい)、平衡感覚の障害、耳鳴、悪心、嘔吐を伴う。

 注2:おたふくかぜに免疫があるかの判定には、ELISA法で、ムンプス-IgG抗体(EIA)を測定するのが、良い。今回、おたふくかぜなのかの判定には、ELISA法で、ムンプス-IgM抗体(EIA)を測定するのが、良い。なお、CF抗体は、上昇が遅い。HI抗体は、ムンプス-IgG抗体(EIA)が陽性で、おたふくかぜに免疫があっても、8倍未満のことがある。また、HI抗体は、パラインフルエンザウイルスに対する抗体も測定するので、不正確。

 注3:流行性耳下腺炎の患児の脊髄液を検査したところ、約60%の患児は、細胞数が、増加していたという。流行性耳下腺炎では、無菌性髄膜炎と診断するに当っては、嘔吐、頭痛などの症状や、項部強直などの所見も合わせて、臨床診断する必要がある。

 注4:Nelsonの教科書によると、過去におたふくかぜの予防接種を受けた子供の内には、おたふくかぜが流行した時に、発熱、倦怠感(malaise)、嘔気(nausea)、赤い丘疹性発疹(a red papular rash :胴体と四肢に多く、手の平や、足の裏には少ない)を特徴とする疾患を、発症したことがあったという。

 参考文献
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 ・木村三生夫、平山宗宏、堺春美:予防接種の手びき 第11版、近代出版(2006年8月15日).
 ・坂元正一 監修:妊娠中の予防接種(2)、acog、28 Technical Bulletin、An Educational Aid to Obstetrication-Gynecologists、Number 160-October 1991、平成4年12月1日、日母医報付録、協賛 ワイス・エーザイ株式会社.
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 ・Wilbert H. Mason: Chapter 245 Mumps, 1341-1344, Nelson Textbook of Pediatrics (18th Edition, 2007).
 ・Wilbert H. Mason: Chapter 240 Mumps, , 1078-1081, Nelson Textbook of Pediatrics (19th Edition, 2011).

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