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 イオンチャネル
 細胞膜を貫通しているチャネル(channel:水路)蛋白質が開いて、濃度の高い側から低い側に無機イオンが移動する(開閉ドアに似ている)。
 この際、ATPなどのエネルギーは、必要としない(受動輸送)。

 イオンチャネル蛋白質には、リガンド依存性のものと、電位依存性チャネルの2種類が存在する。

 1.リガンド依存性チャネル
 例:筋細胞のアセチルコリン受容体
 チャネル蛋白質(ニコチン様アセチルコリン受容体)に、リガンドとして、アセチルコリンが結合すると、チャネル蛋白質が開いて、Na+イオンが細胞外から細胞内に移動し、K+が細胞内から細胞外に移動する。
 
 2.電位依存性チャネル
 例:神経細胞のNa+チャネル
 神経線維(神経細胞の軸索)で、脱分極が起きる(細胞膜の外側の電位が陽性だったのが、陰性化する)と、チャネル蛋白質が開いて、Na+イオンが細胞外から細胞内に移動する。
 電位依存性チャネルには、Na+チャネルの他、K+チャネル、Ca2+チャネルが存在する。
 
 ATPチャネルは、細胞内ATPが豊富にあると閉鎖していて、虚血、低血糖、低酸素の状態で、細胞内ATPが欠乏すると開く。
 膵臓のβ細胞に存在するATP感受性K+チャネルは、血糖が上昇して、β細胞内のATP濃度が上昇すると閉鎖して、インスリン分泌が起きる。
 アデノシンは、ATP感受性K+チャネルを開く(ATP利用が減少すると言う)。
 a).電位依存性Ca2+チャネル
 電位依存性Ca2+チャネル(電位依存性カルシウムチャネル:VDC、Voltage-dependent calcium channels:VDCC)は、細胞内外の電位差により、細胞内にCa2+(カルシウムイオン)を流入させる。
 電位依存性Ca2+チャネルは、細胞内Ca2+濃度を調節する。

 電位依存性Ca2+チャネルは、α1、α2、β、γ、δの5種のサブユニットから構成されている。
 Ca2+(カルシウムイオン)は、サブユニットの内、主に、α1サブユニットを経て、細胞外から細胞内へ、流入する。
 電位依存性Ca2+チャネルは、α1サブユニットの構造の違いから、チャネルのコンダクタンス(conductance:伝導率)、イオン選択性、活性化・不活性化反応の時間、薬物(抗不整脈薬など)に対する特異性が、異なる。

 VDCCは、電気生理学的性質の相違から、大きな脱分極によって活性化されるL型、N型、P/Q型と、中程度の脱分極によって活性化されるR型、小さな脱分極によって活性化されるT型の5種類に分類される。
 L型VDCCは、主に腎糸球体の輸入細動脈に分布している。
 T型VDCCは、腎糸球体の輸入細動脈や輸出細動脈に分布していて、細動脈を拡張させる。
 L型VDCCやT型VDCCに拮抗する薬剤(Ca拮抗薬)は、腎糸球体の輸入細動脈収縮の自動調節機能(筋原反応)を抑制し、糸球体高血圧を悪化させるおそれがある。

 3.抗不整脈薬
 抗不整脈薬のVaughan-Williams分類(ボーンウイリアムス分類)を、下表に示す。
 I群に分類される抗不整脈薬は、Na+チャネルを抑制し、活動電位の立ち上がり(Na電流)を抑制し、細胞の興奮を抑制する。I群に分類される抗不整脈薬は、活動電位持続時間(ADP)により、Ia、Ib、Icの3群に分類される。
 Ib群の抗不整脈薬は、Ia群の抗不整脈薬より、効果が劣るが、心臓収縮抑制作用(心機能抑制作用)が弱いので、心不全傾向の患者にも、使用出来る。
 表1 抗不整脈薬のVaughan-Williams分類(参考文献の住友氏の表1、井上氏の表2を改変して引用)
 分類  作用機序    作用部位  心機能抑制  薬品名 
   活動電位持続時間
 Ia  Naチャネル抑制
 (膜安定化、興奮抑制)
 延長(QRS幅延長)   心室筋、心房筋  +  キニジン、プロカインアミド、ジソピラミド、アジマリン
 Ib  短縮(QRS幅不変)  心室筋、病的心筋  −  リドカイン、ジフェニルヒダントイン、メキシレチン
 Ic  不変(QRS幅延長)  心室筋、心房筋  ±  プロバフェノン、フレカイニド、ピルジカイニド
 II  交感神経β受容体遮断作用(β遮断薬)  洞結節、房室結節  ++  プロプラノロール
 III  活動電位持続時間延長作用   心室筋、心房筋  −  アミオダオン、ソタロール、ニフェカラント
 IV  Ca2+チャネル遮断(Ca拮抗薬)   洞結節、房室結節  ++  ベラパミル、ジルチアゼム、ベプリジル
 電位依存性Ca2+チャネル(VDCC)は、不活性化速度により、L型(long-lasting型)、T型(transient型)、N型(neutral型)の3クラス(3種類)に分類される。その他、P型(Purkinje型)、Q型、R型の3種類のサブクラスに分類される。

 L型Ca2+チャネルのα1サブユニットには、α1S(骨格筋)、α1C(心筋、血管、肺、脳)、α1D(脳、内分泌系組織)が、存在する。
 L型Ca2+チャネルは、骨格筋、心筋、血管、脳など、多くの興奮性細胞に存在して、細胞外から細胞内に、Ca2+(カルシウムイオン)を流入させ、細胞機能に関与する。
 L型Ca2+チャネルは、活性化電位閾値が高く、不活性化速度が遅い。
 Ca2+拮抗薬(カルシウム拮抗剤:降圧剤)は、L型Ca2+チャネルのα1サブユニットに結合し、血管平滑筋へのCa2+流入を阻害し、降圧効果を現わす。

 T型Ca2+チャネルは、心筋、血管、脳に存在する。
 T型Ca2+チャネルは、活性化電位閾値が低く、不活性化速度が速い:T型Ca2+チャネルは、L型Ca2+チャネルに比して、僅かな膜電位変化により活性化される。

 N型Ca2+チャネルは、特に、脳の神経細胞のシナプス前膜に、存在する。
 N型Ca2+チャネルは、活性化電位閾値が高く、不活性化速度は中等度とされる。

 P/Q型の電位依存性Ca2+チャネル(VDCC)は、ホスファチジルイノシトール2リン酸(PIP2により制御されている。
 P/Q型のVDCCは、PIP2により活性が維持されている。

 4.Ca拮抗剤
 Ca拮抗剤(カルシウム拮抗剤:Ca拮抗降圧剤)は、Caチャネルを阻害する。
 Ca拮抗剤は、血管拡張作用(冠動脈や細小動脈を拡張させる)により、降圧作用を現す。
 ジヒドロピリジン系のCa拮抗剤は、心収縮力や洞房結節を抑制しないので、特に、急性投与すると、j反射性に交感神経が刺激され、心拍数が増加する(反射性頻脈)。
 ジルチアゼムは、ジヒドロピリジン系のCa拮抗剤に比して、血管拡張作用は弱いが、心収縮力や洞房結節・房室結節を抑制するので、心拍数は減少させる(徐脈、稀に、高度の房室ブロックになる)。ジルチアゼムは、β遮断薬とは、併用しない。
 Ca拮抗剤は、糖代謝や脂質代謝に影響を与えないので、糖尿病患者や高脂血症の患者にも、投与出来る。
 Ca拮抗剤は、血管拡張作用により、顔面紅潮、頭痛、頭重感、めまい、熱感、低血圧などの副作用が現れる。

 1,4-ジヒドロピリジン(DHP)系のCa拮抗剤は、血管平滑筋のL型Ca2+チャネルを阻害し、血管平滑筋へのCa2+流入を抑制し、血管収縮(血管平滑筋の収縮)を抑制し、冠動脈などの血管が拡張し、降圧作用を示す。

 交感神経終末からは、ノルアドレナリン(NA)が分泌される。ノルアドレナリン(NA)は、血管平滑筋のα1受容体に作用し、血管を収縮させ、また、心筋のβ1受容体に作用し、心収縮力を増加させたり、心拍数を増加させる。
 ジヒドロピリジン(DHP)系のCa拮抗剤は、血管が拡張し、降圧した反動で、交感神経系の緊張が高まったり、レニン・アンジオテンシン系の活性が亢進し、反射性頻脈や心筋酸素需要増大が、起こることがある。
 反射性頻脈は、血管が拡張し、降圧して、反動で、血圧を維持しようとして、交感神経緊張が増大し、交感神経終末部から、ノルエピネフリンが放出され、心筋β受容体を刺激して、起こると言われる。
 短時間作用型Ca拮抗薬を服用すると、階段を昇ったりなどの日常労作時に、(反射性頻脈による)動悸が現れることがある。
 (DHP系の)Ca拮抗剤で、血管が拡張し、反射性頻脈が現れる際には、β遮断薬を併用する。
 長時間作用型Ca拮抗薬やACE阻害薬は、労作時にも、降圧効果を現し、反射性頻脈を来たさない。

 シルニジピン(Cilnidipine:医薬品名アテレック)は、交感神経終末のN型Ca2+チャネルを阻害し、交感神経終末からのノルアドレナリン(NA)の分泌を、抑制する。ノルアドレナリン(NA)の分泌を抑制することで、血管収縮(血管平滑筋の収縮)を抑制し、また、心収縮力の増加や、心拍数の増加を、抑制する(ストレス性昇圧を抑制し、降圧作用を示す)。
 シルニジピンは、神経細胞で、L型Ca2+チャネルと、N型Ca2+チャネルの両方のを、阻害する。その結果、シルニジピンは、従来のDHP系のCa拮抗薬の様に、L型Ca2+チャネルを阻害して、血管を拡張させ、緩徐な降圧作用を示すと同時に、N型Ca2+チャネルを阻害して、交感神経終末からのノルエピネフリン放出を抑制し、ノルエピネフリンによるα作用(血管収縮)や、β作用(心収縮力増加、心拍数増加)を抑制し、降圧作用を示す。従って、シルニジピンは、降圧に伴なう反射性交感神経緊張を起こしにくく、反射性頻脈の発生が起こりにくいと言われる。
 表2 降圧薬の心拍数への影響(参考文献の有田氏の表2を引用)
 降圧薬  安静時  運動負荷時
 収縮期血圧  収縮期血圧  心拍数  血漿ノルエピネフリン
 α遮断薬  ↓  →  ↑  →
 β遮断薬  ↓  ↓  ↓  
 サイアザイド系利尿薬  ↓  →  →  →
 ACE阻害薬  ↓  ↓  →  
 短時間作動型Ca拮抗薬  ↓  →  ↑  
 長時間作動型Ca拮抗薬  ↓  ↓  →  →
 表3 シシリアンギャンビットに基づく薬剤選択参考文献小川聡氏等の表を改変し引用)
 薬剤  チャネル  受容体
 一般名  商品名  Na  Ca  K  If  α  β  M2
 fast  intermediate  slow
 ビルジカイニド  サンリズム      ●            
 フレカイニド  タンボコール      ●    ●        
 プロパフェノン  プロノン      ●            
 アプリンジン  アスペノン    ●    ●  ●  ●      
 シベンゾリン  シベノール      ●  ●          
 ベプリジル  ベプリコール  ●      ●          
Sicilian Gambit不整脈薬分類::強、:中、●:弱
 表4 降圧薬の心拍数への影響(参考文献の山村氏の表などを引用)
 降圧薬  適応疾患  禁忌
 α遮断薬  高脂血症、前立腺肥大  起立性低血圧
 β遮断薬  狭心症・心筋梗塞後、頻脈、心不全  喘息、房室ブロック
 利尿薬  脳血管疾患後、心不全、腎不全(ループ利尿薬)、高齢者  痛風
 ACE阻害薬  脳血管疾患後、心筋梗塞後、心不全、左室肥大、腎障害、糖尿病、高齢者、  妊娠、高カリウム血症、両側腎動脈狭窄
 ARB  脳血管疾患後、心筋梗塞後、心不全、左室肥大、腎障害、糖尿病、高齢者、  妊娠、高カリウム血症、両側腎動脈狭窄
 Ca拮抗薬  脳血管疾患後、狭心症、左室肥大、糖尿病、高齢者、  房室ブロック

 5.抗てんかん薬
 抗てんかん薬(AED)には、イオンチャネルを抑制することで、その薬理作用を現す薬剤が多い。
 表5 抗てんかん薬の作用機序(参考文献の山磨康子氏の表1と臼井桂子氏の表2を改変し引用)
 薬剤  一般的名称  フェニトイン  カルバマゼピン  フェノバルビタール  ゾニサミド  バルプロ酸  クロバザム  ガバペンチン
 略号  PHT  CBZ  PB  ZNS  VPA  CLBa)  GBP
 医薬品名  アレビアチン  テグレトール  フェノバール  エクセグラン  デパケン  マイスタン  ガバペン
 作用
 機序
 電位依存性Na+チャネル抑制(阻害)  +  +  −/+  +  +  −/+  +?
 電位依存性Ca2+チャネル抑制  −  −  −/+  +  +  −/+  +b)
 GABA  GABAを介した抑制  −  −  +  −  +  +  
 GABA受容体賦活        −/+  +/−  +  
 脳内
 GABA
 増加
 GABA再取り込み抑制              
 GABA-T抑制          +?    
 その他/不明の機序          +  +?  +
 興奮性神経伝達物質放出抑制  +  +     +      +?
 NMDA型グルタミン酸受容体抑制      +  +/−  +/−  +  
 未知の機序         +  +    +
 最大電撃痙攣抑制  +  +  +  +  +  +  +
 PTZけいれん閾値上昇      +    +  +  +
 効果  部分発作  +  +  +  +  +  +  +
 二次性全般化部分発作  +  +  +  +  +  +  +
 全般強直間代発作      +  +  +  +  +
 欠神発作      +  +  +  
 ミオクロニー発作      +  +  +  +  
 a):DZP(diazepam:ジアゼパム:医薬品名、ホリゾン)、CZP(clonazepam:クロナゼパム:医薬品名、リボトリール)、も、CLB(clobazam:クロバザム:医薬品名、マイスタン)と同様に、BZPs(benzodiazepin:ベンゾジアゼピン)系の薬剤。DZP、CZPなどが1,4-BZPなのに対して、CLB(clobazam)は1,5-BZP(1,5位にN原子を有している)。
 CLB(clobazam)は、小児には、0.2〜0.8mg/kg/日を投与する。
 b):GBP(Gabapentin:医薬品名、ガバペン)の化学名は、(1-Aminomethylcyclohexyl)acetic acid。GBP(1-aminomethyl, cyclohexaneacetic acid)は、電位依存性Na+チャネル抑制や、電位依存性Ca2+チャネル抑制(L型)により、モノアミン伝達物質の放出を調節すると推測されている。GBPは、GABA受容体には作用しないが、GABA合成酵素、グルタミン酸合成酵素、グルタミン酸脱炭酸酵素などを調節し、GABA濃度(グリアと神経細胞内)を上昇させると言われる。
 表6 抗てんかん薬の作用機序と副作用(参考文献の臼井桂子氏の表2を改変し引用)
 薬剤  電位依存性
 Na+チャネル
 阻害
 電位依存性
 Ca2+チャネル
 阻害
 GABAを
 介した
 抑制
 効果
 一般的名称  医薬品名
 エトスクシミド  ザロンチンシロップ    +    小発作、ミオクロニー発作、点頭てんかん、失立発作
 カルバマゼピン  テグレトール錠  +      大発作、精神運動発作、三叉神経痛
 クロナゼパムa)  リボトリール錠      +  ミオクロニー発作、点頭てんかん、精神運動発作
 ゾニサミド  エクセグラン錠  +  +    大発作、部分発作、精神運動発作
 バルプロ酸ナトリウム  デパケン錠  +  +  +  小発作、焦点発作、精神運動発作、躁病
 フェニトイン  アレビアチン錠  +       大発作、自律神経発作、精神運動発作
 フェノバルビタール  フェノバール錠      +  大発作、焦点発作、自律神経発作、不眠症
 参考文献
 ・ヴォート生化学(東京化学同人、2003年、第4刷).
 ・今井正、他:標準薬理学 第6版 (医学書院、2001年).
 ・住友直方:小児の不整脈治療 日本小児科学会雑誌 109巻 3号、323-336, 2005年.
 ・加藤貴雄:シシリアン・ガンビットの考え方を活用する 日本醫事新報 No.4229(2005年5月14日)、53-56頁.
 ・井上博:頻脈性不整脈薬物療法の実際とケア・ポイント NIKKEI MEDICAL 1993年10日号、144-147頁.
 ・有田幹雄:危険因子としての心拍数増加−高血圧治療の新たな指針 運動時の心血行動態を考慮した降圧治療の提言、Medical Tribune Vol.36, No.51, 12頁(2003年12月18日).
 ・高血圧 診療のてびき、厚生省・日本医師会 編、日本医師会雑誌、第104巻第2号、平成2年7月.
 ・池田宇一、花岡健、山下武志、富田威:外来における心房細動の治療戦略、Medical Tribune、特別企画、第3部、1-4頁、2005年11月24日(提供:第一製薬株式会社).
 ・小川聡、他:心電図17:191-197、1997.
 ・猿田亨男、他:高血圧治療ガイドライン2004、日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会編集、日本高血圧学会発行(2004年12月初版発行、2005年2月2刷発行).
 ・山村卓:動脈硬化性疾患関連ポケット診療ガイド、三菱ウェルファーマ株式会社(CLB-031B、2005年7月).
 ・山磨康子:新しい抗てんかん薬、MEDICO Vol.31 No.4、2000年、6-11頁.
 ・竹内和久:質疑応答 腎におけるカルシウムチャネル、No.4305(2006年10月28日)、87-89頁.
 ・臼井桂子、井上有史:成人てんかんの薬物治療、特集 てんかんの基礎と臨床、日本医師会雑誌、第136巻・第6号、平成19年(2007年)9月、1093−1097頁.

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