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 Na量が体液量を決定する

 Na+は、筋肉や神経の機能や、体内の水分量を維持する為に、必要なミネラル。
 生体は、血清電解質濃度(血清Na+濃度)を維持することを、血圧を維持することより、優先して、行う。

 体液量は、体内のNa+量により決定されるので、食餌からのNa+の摂取量、尿中からのNa+の再吸収量(尿中排泄量)は、血圧に影響する。
 PGE2は、Na+と水を排泄させる
 H+が、1ケ排泄される毎に、Na+が1ケと、HCO3-が1ケ、尿細管細胞内に、取り込まれる(再吸収される)。
 高血圧は、食生活を見直すことが大切で、1日の食塩摂取量を、7g以下にする。
 体内のNa+量が低下すると、尿細管でのNa+再吸収が増加し、尿中Na+排泄量が減少する:腎臓の傍糸球体装置が、尿細管液(原尿)のCl-濃度の低下を感知したり、血圧の低下を感知すると、レニンの分泌が増加し、レニンによりアルドステロンなどが分泌され、腎臓でのNa+再吸収が増加し、体液量が増加し、血圧が上昇(回復)する

 生体は、水分量を維持する為に、Na+の再吸収量を、調節している。

 1.血漿浸透圧
 
血漿浸透圧=[Na](mEq/L)×2+[血糖](mg/dL)÷18+[BUN](mg/dL)÷2.8
 血漿浸透圧は、主にNa量(ナトリム量)によって、決定される。

 食塩などで、Na+を過剰に摂取すると、血漿浸透圧が上昇し、水分摂取量が増え、細胞外液量が増え、高血圧になりやすい。減塩療法は、高血圧を改善する。
 腎臓が、過剰に摂取したNaClを排泄するには、数日要するが、過剰に摂取した水を排泄するには、1〜2時間で済む。

 細胞膜は、Na+は透過させないが、水は透過させる

 糸球体では、1日当り、
 [Na]×GFR=145(mEq/L)×170L/day=24,650mEq/day
 のNa+が濾過されている。
 これは、1mEqのNa=23mgなので、約567gのNaが、糸球体で、濾過されていることになる:これは、Clの原子量=35.5なので、約1442gの食塩中のNa量に相当する。
 この、糸球体で濾過されたNa+の99%は、尿細管で再吸収される。
 1日の食塩摂取量が10gだとすれば、摂取する食塩の、約144倍の食塩を、腎臓で再吸収していることになる。

 2.尿細管からのNa+再吸収
 Na+,K+-ATPase(Na+,K+-ATPアーゼ)は、尿細管細胞で、血管側に、Na+を汲み出す。
 細胞内のNa+濃度勾配は、Na+,K+-ATPaseにより、維持される。
 体内のNa+量が低下すると、尿細管でのNa+再吸収が増加し、尿中Na+排泄量が減少する:腎臓の傍糸球体装置が、尿細管液(原尿)のCl-濃度の低下を感知したり、血圧の低下を感知すると、レニンの分泌が増加し、レニンによりアルドステロンなどが分泌され、腎臓でのNa+再吸収が増加し、体液量が増加し、血圧が上昇(回復)する

 1).近位尿細管
 Na+は、尿細管腔の原尿中から、Na+/H+交換輸送体や、SGLTNa+-ブドウ糖共輸送体)により、細胞内に取り込まれる(注1)。
  尿細管腔側(原尿中)から細胞内の取り込まれたNa+は、Na+,K+-ATPase(Na+,K+-ATPアーゼ)により、血管側へ汲み出される。このように、細胞内のNa+濃度勾配は、Na+,K+-ATPaseにより、維持される(注2)。
 2).ヘンレの太い上行脚
 Na+は、尿細管腔側のNa+-K+-2Cl-共輸送体により、細胞内に取り込まれ、血管側のNa+,K+-ATPaseにより、血管側に汲み出される。
 K+は、K+チャネルを経て、尿細管腔の濾液中(原尿中)に分泌される。
 3).遠位尿細管
 Na+は、Na+-Cl-共輸送体により、細胞内に取り込まれる。
 4).集合管(主細胞)
 Na+は、Na+チャネル(ENaC)を経て、細胞内に取り込まれる。
 アルドステロンは、Na+再吸収と、K+の分泌を促進する。
 3.インスリンとNa+再吸収
 尿細管細胞からは、Na+,K+-ATPaseにより、血管側に、Na+が汲み出される。

 インスリンには、Na+,K+-ATPaseを、細胞質から、細胞膜にトランスロケーションさせる作用があるという。

 糖尿病昏睡時など、インスリンの作用が不足すると、Na+,K+-ATPaseの活性が低下し、細胞内Na+濃度が増加し、高K血症を来たす(細胞内では、NaとHは増加し、Kは減少する)。
 しかし、糖尿病でも、インスリン抵抗性によって、高インスリン血症が存在する時には、尿細管からのNa+再吸収が増加し、高血圧を来たし易い。

 4.PGE2とNa+再吸収
 PGE2は、腎では、腎血管(輸入細動脈)を拡張させて、腎血流を増大させる。また、PGE2は、近位尿細管でのNa+再吸収を減少させ、利尿させる。
 このように、
PGE2は、Na+と水を排泄させる

 cAMPは、PKA(Aキナーゼ)を介して、Na+/K+-ATPaseなどの発現を促進させる。
 PGE2は、腎臓では、EP3受容体(EP3AとEP3B)を介して、cAMPの産生を抑制し、PKAによるNa+/K+-ATPaseの発現を抑制して、尿細管でのNa+再吸収を抑制するので、Na+と水を排泄させ、降圧作用を示す。
 なお、PGE2は、昇圧作用のあるレニンの分泌を、増加させる作用も示す。

 NSAIDsによる腎障害は、糸球体血流量が低下すること(尿量が低下する)と、PGE2産生が抑制されるため、尿細管からのNa+再吸収が増加する(浮腫が現れる)ことが、原因と考えられる。

 5.血清ナトリウム濃度と熱性痙攣
 
乳幼児(生後6カ月〜5歳)は、熱性痙攣と言って、発熱時に、ひきつけ(痙攣)を起こすことがある。

 発熱は、痙攣の有無に関わらず、血清ナトリウム濃度(s-Na)や、血清浸透圧(血漿浸透圧)を、低下させる。

 血清ナトリウム濃度(s-Na)の正常値は、乳幼児では、成人より、高値を示す。
 熱性痙攣を起こす乳幼児は、発熱時に、血清ナトリウム濃度(s-Na)が、低値を示す。
 熱性痙攣を起こす乳幼児は、短時間単発群(熱性痙攣の持続時間が10分未満で、反復しない)や、長時間連発群(熱性痙攣の持続時間が10分以上で、反復しない)共には、非痙攣群(発熱時に、熱性痙攣を起こさない)の乳幼児に比し、血清ナトリウム濃度(s-Na)が、低値を示す:血清ナトリウム濃度(s-Na)は、短時間単発群が135.55±2.20mEq/L、長時間連発群が135.56±2.65mEq/Lで、熱性痙攣を起こさない非痙攣群の発熱早期群(発熱1〜2日の群)の138.80±2.26mEq/Lより、低値を示す。
 電位依存性Naイオンチャネルに異常があると、(発熱時に、)血清ナトリウム濃度(s-Na)が、過剰に細胞内に流入し、(熱性痙攣を引き起こし、)血清ナトリウム濃度(s-Na)が低下する可能性がある。
 抗ヒスタミン剤は、痙攣閾値を低下させる。

 なお、血清ナトリウム濃度(s-Na)は、熱性痙攣を起こさない非痙攣群の乳幼児では、無熱群(発熱していない時)と、発熱早期群(発熱1〜2日の群)とでは、有意差はない。しかし、血清ナトリウム濃度(s-Na)は、発熱中期群(発熱3〜4日の群)、発熱後期群(発熱5日以上の群)は、無熱群、発熱早期群に比し、低値を示す。

 6.尿濃縮機構
 
発熱や、下痢・嘔吐などに際して、腎臓は、尿濃縮機構により、尿を濃縮して、体液が喪失すること(脱水)や、血清中のNa濃度が上昇すること(高ナトリウム血症)を、予防する。
 鳥類や哺乳類など恒温動物は、陸上生活で乾燥しないように適応する為、Naや尿素を貯留させて(同時に、水を再吸収して)、尿を濃縮させて、水分の排泄を抑制する。

 腎糸球体で濾過された尿は、近位尿細管→ヘンレの細い下行脚→ヘンレの細い上行脚→ヘンレの太い上行脚→遠位尿細管→接合尿細管→皮質部集合管→髄質部集合管と経て、排泄される。
 ヘンレの下行脚では、水は透過するが、Na+などのイオンは透過しない。
 ヘンレの上行脚では、水は透過しないが、Na+、K+、Cl-などのイオンは透過する(Na+-K+-2Cl-共輸送体により汲み出される)ので、ヘンレ脚(Henle係蹄)周囲の髄質組織の浸透圧が高くなる。
 その為、腎糸球体で濾過された等張性(浸透圧300mosm/kg程度)の尿が、ヘンレの下行脚に流入すると、髄質組織の浸透圧が高いので、水のみが透過して再吸収され、尿は、濃縮され、髄質深部では、尿は、高浸透圧(1,200mosm/kg程度)になる。そして、ヘンレの上行脚では、Na+などのイオンが吸収され、皮質部の遠位尿細管に入る頃には、低浸透圧になる。

 近位尿細管では、尿は、ほぼ等張性に再吸収され、尿は濃縮されない(尿浸透圧は、血清浸透圧と殆ど差がない)。
 近位尿細管では、ナトリウムイオン(Na+)や重炭酸イオン(HCO3-)の再吸収により生じる、わずかな浸透圧格差と、近位尿細管の高い水透過性により、水が再吸収される。

 髄質部のヘンレの細い下行脚には、大量の水チャネルAQP1が存在し、水透過性が高く、管腔内外の浸透圧格差により、尿は、再吸収される。ヘンレの(細い)下行脚では、水は透過するが、Na+などのイオンは透過しない。
 ヘンレの上行脚は、水透過性がない:ヘンレの細い上行脚では、Na+が受動的に再吸収され、ヘンレの太い上行脚では、尿細管腔側のNa+-K+-2Cl-共輸送体により、Na+が能動的に再吸収され、血管側のNa+,K+-ATPaseにより、血管側に汲み出されるが、水は再吸収されない。ヘンレの細い上行脚では、バゾプレシン受容体(V2受容体)が存在し、また、尿素は、再吸収される。ヘンレの太い上行脚では、尿素は、再吸収されない。

 遠位尿細管や接合尿細管も、水透過性がない(Na+が再吸収され、尿は希釈される)。

 集合管は、利尿時には(利尿状態では)、水透過性が著しく低い。しかし、抗利尿時(脱水時など)には、尿細管腔側に、水チャネルAQP2(注3)が多量に発現し、水透過性が高まる(尿の再吸収が促進する)。腎乳頭部の集合管は、抗利尿時には、尿素が多量に再吸収される(尿素の透過性が著しく亢進する)。

 脳下垂体後葉から分泌されるバゾプレシン(vasopressin:AVP)は、尿濃縮機構に、関与する。
 AVP(バゾプレシン)受容体には、V1a受容体(V1aR)、V1b受容体(V1bR)、V2受容体(V2R)の3種類が存在する。その中で、血管側に存在するV2受容体(V2R)が、尿濃縮機構に於いて、重要な役割を果たしている。
 ヒトでは、バゾプレシン受容体(V2受容体)は、集合管で、水透過性を亢進させ、また、尿素透過性を亢進させる。ヒトでは、バゾプレシン受容体(V2受容体)は、ヘンレの太い上行脚で、Na+再吸収を促進させない。
 動物では、バゾプレシン受容体(V2受容体)は、ヘンレの細い上行脚やヘンレの太い上行脚や皮質部集合管では、Na+再吸収を促進させ(ヘンレの細い上行脚では、クロライドチャネルCLC-K1を活性化させる)、皮質部集合管や髄質部集合管では、水透過性を亢進させ、髄質内層集合管では、尿素透過性を亢進させる。

 尿素は、脂溶性でない為、細胞膜(脂質二重層)を通過しにくいので、尿素輸送体により、細胞膜を通過する。
 哺乳類では、尿素輸送体が、尿濃縮機構で、重要な働きを果たしている。

 尿中に排泄されるNa量は、常食では、平均7g/day(50〜150mEq/day)。

 注1H+の排泄は、主に、Na+/H+交換輸送体(NHE)によって行われるNa+/H+交換輸送体で、H+が排泄され、交換に再吸収されるNa+は、Na+-HCO3-共輸送系で、血液中に、取り込まれる。そのためH+が、1ケ排泄される毎に、Na+が1ケと、HCO3-1ケ、尿細管細胞内に、取り込まれるNa+が再吸収され、血液は、アルカリ化する)。
 体内にNa+が不足すると、Na+/H+交換輸送体によるH+の排泄が低下して、アシドーシス(酸性)になることも考えられる。

 また、NaClの補給は、先天性肥厚性幽門狭窄症のアルカローシスを改善する。
 先天性肥厚性幽門狭窄症では、Cl-が欠乏しているので、原尿中からNa+を再吸収するためには、Na+/Cl-共輸送体を使用しにくい。 そこで、原尿中からNa+を再吸収するために、Na+/H+交換輸送体を使用するので、交換に、細胞内のH+が、尿細管腔の原尿中に、排泄される。細胞内のH+は、CAによって供給されるが、同時に、細胞内に多くなる重炭酸イオン(HCO3-)は、細胞の血管側では、Na+,K+-ATPaseではなく、Na+-HCO3-共輸送系を使用して、細胞内Na+と共に、細胞外(血液中)に輸送される。このように、先天性肥厚性幽門狭窄症では、Na+-HCO3-共輸送系により、血液中に重炭酸イオン(HCO3-)が汲み出される為、血液は、アルカローシス(アルカリ性)になる。
 先天性肥厚性幽門狭窄症では、生理食塩水の点滴などで、NaClと水分を補給すると、尿細管腔側では、Na+/H+交換輸送体ではなく、Na+/Cl-共輸送体を使用して、Cl-を再吸収し、血管側では、Na+-HCO3-共輸送系ではなく、Na+,K+-ATPaseを使用して、Na+を汲み出す(再吸収する)。その結果、Na+-HCO3-共輸送系により、重炭酸イオン(HCO3-)を、細胞外(血液中)に汲み出さなくなるので、アルカローシスが補正される。


 注2:Na+は、近位尿細管で、糸球体で濾過されたNa+量の70%以上が、再吸収される。
 Na+は、近位尿細管でも、early proximal tubuleでは、尿細管腔側Na+/H+交換輸送体(NHE-3)により、細胞内に再吸収され、血管側のNa+,K+-ATPaseか、又は、Na+-HCO3-共輸送系(NBC-1)により、細胞外に汲み出される。尿細管腔側で、原尿中の9ケのNa+が、Na+/H+交換輸送体から尿細管細胞内に取り込まれたとすると、血管側では、6ケのNa+が、Na+/K+-ATPaseにより(2ATP消費する)、細胞外(血液中)に輸送され、3ケのNa+Na+-HCO3-共輸送系により、細胞外(血液中)に輸送される(下図に赤字で示した)。
 Na+は、近位尿細管でも、late proximal tubuleでは、尿細管腔側Na+/H+交換輸送体(NHE-3)か、又は、ENaCにより、細胞内に再吸収され、血管側のNa+,K+-ATPaseにより、細胞外に汲み出される(late proximal tubuleでは、血管側にNa+-HCO3-共輸送系は、存在しない)。

 Na+は、Henle係蹄上行脚(thick ascending limbs of Henle's loop)では、尿細管腔側Na+-K+-2Cl-共輸送体により、細胞内に再吸収され、血管側のNa+,K+-ATPaseにより、細胞外に汲み出される。
 Na+は、集合管の主細胞(principal cells of the collecting duct)では、尿細管腔側ENaCにより、細胞内に再吸収され、管側のNa+,K+-ATPaseにより、細胞外に汲み出される。なお、血管側にNa+/H+交換輸送体(NHE-1)が存在して、細胞内にH+を、取り込む。

 注3AQP(aquaporin)は、水チャネルのこと。
 AQP2は、腎臓の集合管の尿細管腔側の細胞膜に存在し、水の再吸収を促進する。AQP2は、バゾプレシン感受性水チャネルであり、尿崩症の発症に関連する。AQP2は、乳頭部集合管(principal cells)では、尿細管腔側と血管側とに存在する。
 AQPには、複数のサブタイプが存在する。AQP0、AQP1、AQP2、AQP4、AQP5、AQP6、AQP8は、水分子のみを透過させる(通す)。AQP1も、腎性尿崩症の発症に関連する。
 GlpF、AQP3、AQP7、AQP9、AQP10は、水分子とグリセロールとを透過させる。
 AQP3とAQP4は、乳頭部集合管と皮質部集合管の血管側に存在する。

 サイアザイド系利尿薬は、遠位尿細管のNa+-Cl-共輸送体を阻害しNa+の再吸収量を減少させ、利尿効果を現わす。その結果、体内のNa+が欠乏し、糸球体濾過量が減少し、近位尿細管での水や電解質の再吸収が促進される。その為、サイアザイド系利尿薬を、腎性尿崩症に投与すると、尿量が、3割〜5割、減少する。

 参考文献
 ・カラー図説 人体の正常構造と機能 V腎・泌尿器(日本医事新報社).

 ・武市知己、他:発熱後の血清ナトリウム濃度と熱性痙攣との関連 日本小児科学会雑誌 109巻3号、 377-380, 2005年
 ・根東義明:腎における尿濃縮機構の生理・発生・発達・病態 日本小児科学会雑誌 109巻8号、975-984, 2005年.
 ・河合忠、水島裕:今日の臨床検査 2001/2002 (2001年、南江堂).

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