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 中耳炎−細菌に対する免疫−

 肺炎球菌や、インフルエンザ菌に対する、血清中の抗体(菌株共通抗原に対する抗体)は、生後6カ月〜2歳までの間は、低い。

 1.鼻咽腔への細菌の定着
 肺炎球菌は、小児では、1歳までに、30〜40%の乳幼児の鼻咽腔に定着する。従って、鼻咽腔の細菌培養で、肺炎球菌が検出されても、常在していただけで、病原性が少ない肺炎球菌の可能性がある。定着した肺炎球菌の血清型は、60%以上が、6型、14型、19型、及び、23型だという。6型は、ペニシリン耐性のPRSPが多い。なお、重篤な大葉性肺炎は、3型の肺炎球菌が原因の場合が多い。定着した肺炎球菌は、鼻咽腔に常在菌として潜伏し、ウイルス感染などで、体力が弱まった時などに、増殖する。2歳を過ぎて、体内で、肺炎球菌に対する抗体(IgG抗体)が作られるようになると、鼻咽腔に定着していた肺炎球菌は、消失する。
 インフルエンザ菌は、20%健康小児の気道から検出され、5歳までには、50%以上の小児に定着する。
 モラクセラ・カタラーリスは、いずれの年齢の小児でも、50%以上の小児に定着している。

 中耳炎を起こす原因となる菌(起炎菌)は、通性嫌気性である菌が多い。
 菌名  英名  グラム染色  呼吸  形状  酵素
 肺炎球菌  Streptococcus pneumoniae   グラム陽性  通性嫌気性  双球菌  カタラーゼ陰性
 インフルエンザ菌  Haemophilus influenzae  グラム陰性  通性嫌気性  球桿菌  カタラーゼ陽性、 オキシダーゼ陽性
 黄色ブドウ球菌  Staphylococcus aureus  グラム陽性  通性嫌気性  球菌  カタラーゼ陽性、 コアグラーゼ陽性
 A群β溶血性連鎖球菌  Streptococcus pyogenes  グラム陽性  通性嫌気性  球菌  カタラーゼ陰性
 緑膿菌   Pseudomonas aeruginosa  グラム陰性  偏性好気性  桿菌  オキシダーゼ陽性
 2.中耳炎は、鼻咽腔から検出された細菌が原因とは限らない
 中耳炎は、鼻咽腔の細菌が、耳管を介して経耳管感染して、起こる。
 中耳貯留液の細菌培養で検出された細菌は、鼻咽腔からも検出されることが多い。
 しかし、鼻咽腔と中耳貯留液から、同じ細菌が検出される率(鼻咽腔から検出された細菌と同じ細菌が、中耳炎の起炎菌として、中耳貯留液から検出される率)は、インフルエンザ菌では高いが、総体的には、低いと言う。鼻咽腔には、複数の細菌が細菌叢を形成して、定着し、常在的に潜伏感染しており、鼻咽腔から検出された細菌が、中耳炎の原因(起炎菌)とは限らない。
 また、上気道と中耳貯留液から、同じウイルスが検出される率は、RSウイルス(Respiratory syncytial virus)で74%、パラインフルエンザウイルス(parainfluenza virus)で42%、インフルエンザウイルス(influenza virus)で42%だったと言う。なお、インフルエンザウイルスが検出された中耳貯留液は、全例、肺炎球菌も検出されたと言う。 

 3.中耳炎の反復
 生後12カ月以内に急性中耳炎を発症した小児は、その後、中耳炎を頻回に反復することが多いと言う。特に、生後6カ月以内に中耳炎を発症した乳児は、その後、中耳炎を反復しやすいと言う。
 母乳栄養の小児は、1歳までに急性中耳炎に罹る率が、少ない。
 母乳中に含まれる、分泌型の抗P6蛋白抗体は、インフルエンザ菌のコロニー形成を予防し、中耳炎に罹患する回数を減少させる。

 4.病原性細菌に対する免疫応答
 中耳炎を反復したり、難治性の中耳炎になるには、起炎菌の種類のみならず、宿主の、細菌に対する特異的免疫応答の高低が、関連している。

 1).菌株共通抗原
 a).肺炎球菌
 肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)は、莢膜を有している。
 肺炎球菌の莢膜の多糖体(ポリサッカライド)に対する抗体は、オプソニン効果で、好中球などの貪食を促進させる。しかし、肺炎球菌の表層部に、活性化された補体や、IgG抗体が付着しても、莢膜の多糖体に埋もれてしまい、好中球などの白血球表面に存在する、補体レセプターや、IgGのFcレセプターに結合し難いので、肺炎球菌は、貪食されにくいと言われている。
 また、莢膜多糖体は、血清型により異なる。その為、1つの血清型の肺炎球菌に対する抗体(莢膜多糖体に対する抗体)は、1つの血清型の肺炎球菌にのみ有効で、異なった血清型の肺炎球菌には、無効と考えられている。
 
 PspA(Pneumococcal surface protein A)は、肺炎球菌の表面蛋白抗原の1つ。
 PspAは、全ての血清型の肺炎球菌に共通する抗原(共通抗原:common antigen)で、肺炎球菌に対するワクチン候補として、注目されている。
 動物実験の結果によると、PspAで、経鼻免疫や経口免疫すると、肺炎球菌による敗血症や、肺炎球菌の上咽頭への定着が、阻害されたと言う。
 抗PspA抗体(PspAに対する特異抗体)は、小児では、IgG、IgM、IgAとも、加齢に供なって、上昇する。母親の抗PspA-IgG抗体は、妊娠中に、胎児へ、臍帯を経由して、移行する。乳児の血清中の抗PspA-IgG抗体は、生後6カ月頃までは、低下して、2歳を過ぎないと、上昇しない。抗PspA-IgM抗体は、生後6カ月には、産生されているが、3歳〜6歳の血清濃度の半分以下の濃度に過ぎず、やはり、2歳前は、上昇が悪い。抗PspA-IgA抗体は、2歳過ぎでないと、血清中に有意に検出されない。抗PspA抗体の産生から見ても、2歳前の小児は、肺炎球菌に対する免疫力が、弱い。成人では、抗PspA-IgG抗体は、6歳の血清中濃度(40μg/ml)の、約半分程度の濃度に、低下する。
 血清中の抗PspA-IgG抗体は、2歳前(生後24カ月以内)は、上昇が悪い。抗PspA-IgG抗体は、2歳過ぎから上昇し、5歳(生後60カ月)頃、ピークとなり、その後、減少し、成人では、5歳時の半分程度のレベルしか存在しない。

 肺炎球菌は、健康小児の咽頭には、新生児で2.5%、乳児で41.0%、幼児で13.0%、学童15.5%から検出される(保菌されている)。

 血中移行に優れるペニシリン系抗生剤(AMPC、ABPC)は、MICが1.0μg/ml程度であっても、低感受性株にも有効(低感受性株を抑制することが可能)と考えられている。しかし、セフェム系抗生剤は、投与量が少なかったり吸収が劣る為、MICが1.0μg/ml以下の肺炎球菌にしか有効でないと考えられている。

 肺炎球菌のようなグラム陽性球菌は、ペニシリン系やセフェム系の抗生剤(抗菌薬)の投与を中止した後も、細菌の増殖が抑制される(PAE:post antibiotic effect)。しかし、インフルエンザ菌のようなグラム陰性桿菌は、PAEを殆ど示さない。

 肺炎球菌感染症(肺炎球菌肺炎)を診断する為に、尿中の肺炎球菌莢膜多糖を、免疫クロマトグラフィー法により検出する肺炎球菌尿中抗原検査キット(Binax Now 肺炎球菌)が発売されている。

 b).インフルエンザ菌
 無莢膜型のインフルエンザ菌(注1)に対しては、主に、菌体外膜蛋白の1つである、P2蛋白に対して、抗体が産生される。
 P2蛋白は、菌株特異的抗原である(非共通抗原)。その為、菌株によりP2蛋白の抗原性が異なるので、1つの菌株の菌に感染して、抗P2蛋白抗体(菌株特異的抗体)が産生されても、異なる菌株の菌に感染した際には、以前、産生された抗P2蛋白抗体が、有効とは、限らない。
 しかし、菌体外膜蛋白のP6蛋白(分子量16,000Da)は、菌株共通抗原であり、インフルエンザ菌(有莢膜型のb型=Hib、及び、無莢膜型のNTHi)や、パラインフルエンザ菌にも、共通して存在する。従って、P6蛋白に対する抗体は、異なった菌株のインフルエンザ菌に感染した場合も、有効と考えられている。なお、P4蛋白(分子量28,000Da)も、菌株共通抗原。
 抗P6蛋白抗体(P6蛋白に対する特異抗体)は、健康人では、IgG抗体が主体を占めている。臍帯血中には、母親由来の抗P6蛋白IgG抗体が、高濃度に存在する。そして、新生児血液中には、比較的高い濃度の抗P6蛋白IgG抗体(IgGクラスの抗P6蛋白抗体)が存在する(約5μg/ml)。しかし、母親由来の抗P6蛋白IgG抗体は、生後6カ月頃までに、低下する。生後6カ月〜2歳までは、抗P6蛋白IgG抗体の産生が弱い。抗P6蛋白IgM抗体、抗P6蛋白IgA抗体も、1歳前は、産生が弱い。なお、血清中の抗P6蛋白IgG抗体は、10歳頃まで上昇する(約7μg/ml)が、それ以降は低下して、成人では、臍帯血のレベルまで、低下する。

 インフルエンザ菌に対する免疫では、補体結合性のある、IgG抗体とIgM抗体が、重要な役割を果す。特に、補体結合性IgG抗体により、殺菌することが、インフルエンザ菌の排除に、重要。
 1度、インフルエンザ菌に感染すると、菌株特異的抗原に対して、殺菌抗体(補体結合性IgG抗体)が産生されるが、他の菌株のインフルエンザ菌に感染に対して、殺菌効果は、期待出来ない。

 c).モラクセラ・カタラーリス
 モラクセラ・カタラーリスでは、高分子量のUspAが、共通抗原として、重要と考えられている。

 5.IgG2抗体
 反復性中耳炎の患児は、血清の免疫グロブリン値(IgG、IgM、及び、IgA)は、正常であり、健常児と、差がない。

 IgG2抗体は、殺菌抗体として作用する。

 肺炎球菌に関しては、莢膜多糖体(PCP:Pneumovax 23、注2)を用いて、肺炎球菌の莢膜多糖体に対する、IgG2抗体を測定した結果では、2歳までは、IgG2抗体の上昇が、緩徐であり、3歳頃から、急に、IgG2抗体の上昇が、認められた。
 反復性中耳炎の患児では、肺炎球菌の莢膜多糖体に対する、IgG2抗体の産生が、約半数の症例で、低下していた。
 また、肺炎球菌の共通抗原PspAに対する抗体の産生も、約58%の症例で、健常児より、低下していた。

 インフルエンザ菌に関しては、反復性中耳炎の患児の約45%で、抗P6蛋白IgG抗体が、低下していた。 
 こうした抗体産生の低下は、多くの場合、8〜10歳頃までに、改善する。

 6.肺炎球菌の血清型(6型と3型)による病原性の相違
 日本で分離される肺炎球菌は、19型、6型、23型、3型が多い。19型、6型(小児の肺炎に多い)、23型は、ペニシリン耐性菌(PRSP)が多い。3型(老人の肺炎に多い)は、ペニシリン耐性菌が少ない。
 肺炎球菌は、光に対する感受性があり、光を避けた場所で、空気の通りが良い場所(後鼻腔)に常在している。
 肺炎球菌の形状は、6型と3型とで異なる:6型は、細く小さく、3型は、丸く大きい。
 肺炎球菌を培養した際のコロニーは、6型は、中央が窪んだ、艶のないコロニーを形成し、3型は、盛り上がり、粘りがあるムコイド型のコロニーを形成する。
 肺炎球菌は、6型も3型は、白血球に附着するが、貪食を受けない。肺炎球菌の莢膜は、6型の方が、3型より薄い。 
 肺炎球菌は、増殖4時間後から、自己融解物質を出し、死滅し、増殖を停止して行く:肺炎球菌の自己融解は、6型より、3型の方が、激しい。
 肺炎球菌は、正常な気道(無処理の気道)や、ホルマリン処理した気道に、接種しても、炎症を起こさない(感染しない)が、エーテル処理した気道(エーテルを嗅がせ、気道上皮の繊毛を傷める)と、炎症を起こす。
 6型の肺炎球菌は、エーテル処理したマウスの気道に接種すると、接種24時間後に、片肺に肺炎を起こす:肺炎(気管支肺炎)を起こし、白血球が浸潤し、滲出液が貯留する。6型の肺炎球菌は、滲出液中で、薄かった莢膜が、厚くなる。接種48時間後には、白血球の浸潤は増加するが、肺炎球菌は、消失する。6型の肺炎球菌による肺炎は、片肺性なので、1週間程で、治癒する。
 3型の肺炎球菌は、エーテル処理したマウスの気道に接種すると、6型の肺炎球菌より少ない菌量(1/20)で、肺炎を起こす。3型の肺炎球菌は、肺組織(肺胞等)を破って、増殖する。3型の肺炎球菌は、肺胞マクロファージに貪食されにくい。3型の肺炎球菌は、細胞毒性が強く、肺胞マクロファージを、4時間後には、全て死滅させる(6型の肺炎球菌の1/5の時間で死滅させる)。24時間後には、肺炎(大葉性肺炎)が起こり、肺胞隔が破壊され、出血し、赤血球が混じった浸出液中に肺炎球菌が増殖しているが、白血球の浸潤は少ない(浸出液中には、白血球と赤血球と肺炎球菌が混じり、赤錆色の膿性痰が形成される)。48時間後は、肺炎による炎症により、出血が続き、肺胞中に、肺炎球菌が増加しているが、浸潤した白血球数は少ない。3型の肺炎球菌による肺炎は、出血傾向が激しく、白血球の浸潤が少なく、肺炎球菌が増殖する。その結果、72時間後には、膿胸が形成される。膿胸中の白血球は、活動が鈍く、肺炎球菌を附着させるが、貪食出来ない。膿胸により、72時間後に、死滅するマウスが多い。膿胸は、6型の肺炎球菌の感染では、起こらない。膿胸のみが起こり、肺炎を来たさないこともある。
 インフルエンザウイルスを感染させると、48時間後には、エーテル処理した気道と同様に、上皮細胞の繊毛が脱落したりして、肺炎球菌に感染し、肺炎を起こし易くなる。

 2010年2月に発売された、小児用肺炎球菌ワクチン(プレベナー水性懸濁皮下注:PCV7)には、7つの血清型(4、6B、9V、14、18C、19F、23F)の肺炎球菌莢膜ポリサッカライドが含まれている(不活化ワクチン)。 

 7.点鼻療法
 点鼻療法には、生理食塩水などを1ml点鼻する
 小児慢性副鼻腔炎患者に、点鼻(1ml)を4週間施行すると、咳、鼻水(鼻汁)、後鼻漏、X線所見などが改善する。
 点鼻に用いる液としては、生理食塩水(0.9%)、高張食塩水(3.5%)が良い。
 点鼻には、生理食塩水より、高張食塩水を用いた場合の方が、改善率が高い。
 3.5%の高張食塩水(海水と同等の食塩濃度)を点鼻に用いると、(鼻粘膜の)痛みや灼熱感が現れることがあるが、4日程度で消失すると言う。生理食塩水を用いた方が、点鼻時や洗浄時に、粘膜に違和感などが現われ難い。
 高張食塩水の点鼻療法は、細胞内Ca2+濃度(Caイオン濃度)を上昇させ粘膜の線毛運動を亢進させる作用(粘液線毛機能亢進作用)や、漿膜側から管腔側への水の移動を亢進させる作用(鼻汁排除作用)がある。

 8.鼻洗浄
 乳幼児などの鼻詰まりには、点鼻薬を使用するより、鼻洗浄の方が良い。
 鼻洗浄は、(無菌の)生理食塩水(0.9%)を、洗浄液として用いると、有効であることが、実証されている。
 鼻汁(鼻水)は、弱アルカリ性なので、洗浄液に炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)を加え、緩衝作用を有する洗浄液にすると良い。具体的には、水1Lに、塩化ナトリウム(NaCl)7.14g、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)2.69gを加えると良い。水100ml+重曹(炭酸水素ナトリウム)0.5g+塩化ナトリウム(NaCl)2gの鼻洗浄液を乳児用に処方する医師もいる。食塩重曹水を、体温程度に温め、鼻内に注入(スプレー)し、その後、鼻をかませるか、鼻汁吸引機で吸引する。鼻洗浄は、家庭で、1日数回行う。 

 天然のミネラルウォーターには、カルシウムイオン(Ca2+)が含まれていて、洗浄液として用いると、抗アレルギー効果が期待出来る。
 海水(塩分濃度が約3.5%)は、高浸透圧で、緩衝作用も有しており、鼻粘膜の腫脹を軽減させる効果が、強い。
 (Laryngo-Rhino-Otologie, 2006; 85: 448-458.)
 洗浄液は、体温より少し低い温度(25〜30℃)にして、用いると良い。
 日本で販売されている注射用生理食塩水(生食:Na+=154mEq/L、Cl-=154mEq/L)は、pHが4.5〜8.0、浸透圧比が1。

 鼻洗浄は、(1回)100〜250mlの生理食塩水を、体温に温めて、用いる。鼻・副鼻腔疾患(アレルギー性鼻炎、老人性鼻炎、萎縮性鼻炎、後鼻漏)の患者には、高張食塩水による鼻洗浄を、2回/日、6週間、行う。

 9.その他
 ・中耳炎の80%は、抗生剤(抗菌薬)を投与しなくても、自然に治癒する。
 中耳炎は、発症後3日間に重症化することは極めて稀(0.5%)なので、軽症例では、3日間は、抗生剤を投与しなで、経過観察するのが標準となっている。

 ・抗菌薬8抗生剤)は、中耳への移行は、気道に比して悪く、血中濃度の約1/3が移行するに過ぎない。
 日本耳鼻咽喉科感染症研究会が作成した「小児急性中耳炎診療ガイドライン」や、米国小児科学会が作成した「急性中耳炎診断と治療」では、抗菌薬を投与する場合には、高用量投与することを推奨している。抗菌薬の投与日数は、5日間が推奨されている。
 急性中耳炎の非重症例には、AMPC80〜90mg/kg/日を内服させる。AMPC/CVA(1:14製剤)は90mg/kg/日を内服させる(24カ月未満の乳幼児には10日間、2歳以上の小児には5日間、投与する)。重症例には、AMPC/CVA(1:14製剤)90mg/kg/日を10日間内服させるか、CTRX50mg/kg/日を3日間筋注する。

 ・ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP:penicillin resistant Streptococcus pneumoniae)は、抗菌薬のペニシリンに耐性を獲得した肺炎球菌。
 臨床検査標準協会(CLSI:Clinical and Laboratory Standards Institute)の基準では、ペニシリンGの最小発育阻止濃度(MIC)が0.06μg/mlの肺炎球菌をペニシリン感受性肺炎球菌(PSSP:penicillin sensitive Streptococcus pneumoniae)、MICが0.125〜1.0μg/mlの肺炎球菌をペニシリン中等度耐性肺炎球菌(PISP:penicillin intermediate resistant Streptococcus pneumoniae)、MICが2.0μg/ml以上の肺炎球菌をペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)と定義している。
 抗菌薬でも、βラクタム薬は、肺炎球菌の耐性化を増加させる。
 カニ(蟹)は、肺炎球菌を含んでいる。レバノンの海で獲れたカニや水溜りなどから、肺炎球菌が検出されている。
 肺炎球菌は、βラクタマーゼを産生しない。  
 肺炎球菌感染症には、経口薬は、ペニシリン、レスピラトリーキノロン、テリスロマイシン(ケテック錠300mgを2錠=600mgを1日1回5日間内服)が有効で、注射薬は、ペニシリンが有効。注射用ペニシリンは、肺炎球菌感染症では、常用量の2〜4倍を投与することが望ましい。

 注1インフルエンザ菌(ヘモフィルス-インフルエンザ菌:Haemophilus influenzae)には、有莢膜型のHib(Haemophilus influenzae type b)が多いが、無莢膜型のNTHi(nontypable Haemophilus influenzae、Hinとも呼ばれている)も、存在する。
 有莢膜型のHibは、組織侵襲性が強いので、病原性も高く、小児の髄膜炎、敗血症、重症肺炎の原因となる。無莢膜型のNTHi(Hin)は、組織侵襲性はないが、気道粘膜への親和性が高い為、小児や高齢者の、気道炎や肺炎の原因菌となる。
 インフルエンザ菌は、莢膜多糖の有無と血清型により、non typable、Type a〜fに、分類される。咽頭から分離されるインフルエンザ菌の大部分は、莢膜多糖を有しないnon typableのNTHi(Hin)であり、莢膜多糖を有するHibは、咽頭から分離されるインフルエンザ菌の3〜5%に過ぎないと言われる。莢膜多糖を有しないNTHi(Hin)は、主に成人で、肺炎などの呼吸器感染症、中耳炎、副鼻腔炎などの起因菌となる。他方、莢膜多糖を有するHibは、PRP(polyribosylribitol phosphate)と言う多糖を主成分とする莢膜多糖を産生し、組織障害性が強い。莢膜多糖を有するHibは、小児の髄膜炎、敗血症、喉頭蓋炎などの起因菌となる。
 中耳炎では、ほとんどの症例で、エピソード毎に、起炎菌として検出されるインフルエンザ菌の株が、異なると言う。
 急性中耳炎を含めた、上気道感染症の起炎菌となるインフルエンザ菌は、95%以上が、無莢膜型のNTHiである。Hibワクチンは、中耳炎に対する予防効果は、期待出来ない。
 小児の下気道感染症症例の上咽頭から検出されるインフルエンザ菌を検査した結果では、インフルエンザ菌の7.1%(127株中9株)が、βラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性株(BLNAR)の7.6%(92株中7株)が、Hibだった。
 なお、インフルエンザ菌は、インフルエンザ桿菌とも呼ばれる。インフルエンザ菌(インフルエンザ桿菌)を、インフルエンザウイルスと、混同しないこと。インフルエンザ菌は、インフルエンザが、ウイルス性疾患であることが知られていない時代に、インフルエンザの原因と考えられたようだ。

 インフルエンザ菌は、細胞内侵入性を示す(侵入性細菌)。
 インフルエンザ菌は、鼻腔粘膜の上皮細胞に、マイクロフィラメントを介して侵入し、上皮細胞のファゴゾーム内に入ったり、基底膜側の細胞外(基底膜下)に出て、増殖する。

 日本でも、2006(平成18)年11月に、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会で、Hibワクチン(破傷風トキソイド結合インフルエンザ菌b型多糖)の「アクトヒブ」(サノフィパスツール第一ワクチン)が、インフルエンザ菌b型による感染症の予防を効能・効果とする新有効成分含有医薬品として、承認された。

 注2:肺炎球菌に対する予防接種用のワクチンには、23価莢膜多糖体抗原多価コンポーネントワクチン(Pneumovax 23:ニューモバックス)と、7価莢膜多糖体抗原蛋白結合型ワクチンとが、販売されている。23価莢膜多糖体抗原多価コンポーネントワクチンは、PPV23(pneumococcal polysaccharide vaccine 23)、7価莢膜多糖体抗原蛋白結合型ワクチンは、PCV7(pneumococcal conjugate vaccine 7)と、略称される。

 ・23価莢膜多糖体抗原多価コンポーネントワクチン(PPV23):血清型(デンマーク式命名法の肺炎球菌莢膜型)が、1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、33Fの、23つの型の莢膜多糖体抗原(莢膜型抗原)を、含有している。6B、9V、14、19F、23Fは、薬剤耐性肺炎球菌の主な血清型であり、PCV7にも、含まれている。PPV23は、血中に肺炎球菌の莢膜多糖体に対するIgG抗体を産生させ、肺炎球菌による敗血症を予防する。肺炎球菌による、成人の肺炎、髄膜炎、敗血症の予防効果があると言う。しかし、PPV23によって作られる抗体は、IgG抗体で、血中に存在して、特に上気道の粘膜からは、分泌されにくい(肺炎などでは、血中のIgG抗体が、移行する)。PPV23は、肺炎球菌の鼻咽腔粘膜への定着(付着)は、阻害出来ないので、上気道炎、中耳炎、副鼻腔炎などには、予防効果は少ない。
 2歳未満の小児は、含有されている莢膜型抗原の一部に対して、十分応答しないことが知られている。また、2歳未満の小児は、本剤(23価莢膜多糖体抗原多価コンポーネントワクチン)の安全性も確立していない。従って、2歳未満の小児には、PPV23は、投与出来ない
 2歳以上で、肺炎球菌による重篤疾患に罹患する危険が高い、脾摘患者などに、肺炎球菌による感染症の予防の為に、適用がある。1回0.5mLを、筋肉内、又は、皮下に注射する。1回の接種効果は、接種後5〜10年以降、消えて行く(半年しか接種効果が続かないと言う説もあるが、PPV23は、再接種出来ない)。また、莢膜多糖体は、T細胞非依存性の抗原であり、直接、B細胞を刺激して抗体を産生させるので、ヘルパーT細胞による、メモリー効果がないと言う。
 保険給付は、「2歳以上の脾摘患者における肺炎球菌による感染症の発症予防」の目的で、使用した場合にのみ、認められる。
 フィンランドで、1977年〜1979年にかけて、行われた第一次大規模臨床試験では、ワクチンの効果は、生後6カ月以下では認められず、それ以上の年齢でも、ワクチンの効果は、接種後6カ月しか認められなかった。1979年〜1981年にかけて、行われた第ニ次大規模臨床試験では、6〜11カ月の乳児3,340人に、ワクチンを皮下接種したが、急性中耳炎の罹患回数は、減少しなかったという。
 母親に23価莢膜多糖体抗原多価コンポーネントワクチン(Pneumovax 23)を接種すると、胎児には、胎盤を経て移行抗体が付与される:胎盤移行抗体には、肺炎球菌の5株、14株に対するIgG抗体が含まれていて、5株に対するIgG抗体は、生後6カ月頃まで児に残存し、14株に対するIgG抗体は、生後36カ月頃まで残存する。移行抗体には、23F株(乳児の鼻咽腔に最も早期にコロナイズする)、6B株、19F株に対するIgG抗体が含まれているが、23F株に対するIgG抗体は生後1カ月程度で、6B株、19F株に対するIgG抗体は生後2カ月程度で血清中から消失する。
 母親に23価莢膜多糖体抗原多価コンポーネントワクチン(Pneumovax 23)を接種すると、母乳を介して、5株、7F株、14株、23F株に対するIgA抗体や、6B株、14株に対するIgA抗体が、乳児に移行し、生後7カ月頃まで、血清中に残存する。

 ・7価莢膜多糖体抗原蛋白結合型ワクチン(PCV7):肺炎球菌の多糖体を、担体としての蛋白(CRM197:ジフテリア毒素の変異蛋白)に結合させ、T細胞依存性抗原とした、蛋白結合型ワクチン。上記の23価のワクチンの低免疫原性、T細胞非依存性を改良するために、開発された。血清型が、4、6B、9V、14、18C、19F、23Fの、7つの型の莢膜多糖体抗原を、含有している。この7つの型は、6歳以下の肺炎球菌感染症患児(敗血症、中耳炎など)から分離された肺炎球菌株の65%をカバーする。また、6B、9V、14、19F、23Fは、薬剤耐性肺炎球菌の主な血清型である(莢膜は薄い)。
 PCV7は、血清型が一致すれば、重症肺炎球菌感染症(髄膜炎、敗血症など)を、高率(95%以上)、予防する。
 PCV7は、肺炎球菌の鼻咽腔粘膜への定着(付着)を、阻害するので、上気道炎、中耳炎、副鼻腔炎などにも、予防効果が期待される。ただし、ワクチンに含まれていない血清型の肺炎球菌の、鼻咽腔粘膜への定着(付着)が、増加することもある。PCV7には、肺炎球菌による、急性中耳炎の罹患回数を、減少させる効果がある。しかし、PCV7に含まれていない血清型の肺炎球菌による、急性中耳炎に罹患する回数を、増加させると言う。

 2002年の米国の乳幼児の推奨予防接種スケジュールでは、PCVとして、計4回(生後2、4、6カ月、12〜15カ月)、予防接種することになっている。

 PspA、PspC(Pneumococcal surface protein C)、PsaA(Pneumococcal surface adhesion A)、Pneumolysin、Neuraminidaseなどが、肺炎球菌のワクチン抗原として、検討されている。
 PspAワクチンにより抗PspA-IgG抗体が血中に産生されれば、肺炎球菌による敗血症や肺炎などの重症全身感染症を予防する効果が期待されるが、抗PspA-IgG抗体は、粘膜から分泌されにくいので、鼻咽腔への肺炎球菌の定着(付着)を予防する効果は、低いと考えられている。他方、PspCワクチンや、PsaAワクチンで産生される抗体は、敗血症、肺炎などの重症全身感染症を予防する効果よりも、鼻咽腔への肺炎球菌の定着(付着)を予防する効果の方が期待されている。
 母親の抗PspA-IgG抗体は、胎盤を経て、胎児に移行する。

 マウス(BALB/Cマウス)の実験では、母親マウスをインフルエンザ菌の外膜蛋白P6で、経鼻免疫すると、産生された外膜蛋白P6に対する抗体が、胎盤や母乳を経て、児マウス(仔マウス)に移行する。その結果、児マウスは、血清中のIgG1、IgG2a、IgG2bクラスの抗体が、増加する。

 参考文献
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