RSウイルス感染症
1.RSウイルス
RSウイルス(Respiratory syncytial virus)は、特に、1歳未満の子供さんが感染すると、肺炎(細気管支炎)などを起こし、重症化することが多いので注意が必要。
RSウイルスは、主に、接触感染(ウイルスが付着した手で鼻や眼を触って感染)する(感染予防には、手洗いやマスクの着用が有用)。RSウイルスは、発症7〜10日後(最長3週間以上)も、鼻汁や痰の中に存在する(感染源になる)。
RSウイルスが免疫のない子供さんに感染すると、1週間以内に、鼻水、発熱などの症状が現れ、次第に、咳、喘鳴(息を吐く時にゼーゼーやヒューヒューと音がする)が現れる。
RSウイルス感染に伴う鼻水(鼻汁)は、粘稠のことが多い。
咳が強かったり、喘鳴があり息が苦しそうな場合には、早期に、医療機関で診察を受ける必要がある。
RSウイルスに感染しているかどうかは、鼻汁などを調べることで、迅速診断が可能。
RSウイルスは、予防接種で防ぐことは出来ないが、抗体(医薬品名:シナジス筋注用)を注射して防ぐことは可能(保険適応は、未熟児や、重度の先天性心疾患がある子供さんに限られている)。
RSウイルスは、従来は、冬季に流行したが、近年は、他の季節(夏季など)にも、流行が見られる。
熱型は、RSウイルスでは、弛張熱(remittent fever)のことが多い。
RSウイルスは、2歳以下の喘鳴の原因として多い。2〜16歳の喘鳴は、ライノウイルスが原因のことがある(Gary等)。
RSウイルスが原因の細気管支炎で入院した乳幼児(月齢3〜36カ月)は、ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)のモンテルカスト(医薬品名:キプレス、シングレア)を投与する(内服させる)と、臨床症状の悪化が有意に減少する(Bisgaad等)。
RSウイルスは、インフルエンザウイルスとの重複感染も起こる。
| 疾患 | 原因 | 熱型 | 発熱期間 | 潜伏期間 | 鼻汁 | 咳嗽 |
| インフルエンザ | インフルエンザウイルス | 稽留熱〜弛張熱(ニ峰性発熱) | 3〜7日 | 1〜3日 | + | + |
| 川崎病(MCLS) | 不明 | 稽留熱 | 1〜2週 | 不明 | + | ± |
| 急性気管支炎 | パラインフルエンザウイルス | 弛張熱(39℃以下、下痢、嘔吐あり) | 4〜5日 | 4〜5日 | ± | +(咽頭痛) |
| (喘息様)気管支炎 | ヒトメタニューモウイルス | (咳の後に発熱する、2〜6月に流行) | 4.7日 | 3〜5日 | ± | +(下痢) |
| 細気管支炎 | RSウイルス | 弛張熱(接触感染>飛沫感染、鼻汁粘稠) | 3〜5日 | 4日(2〜8日) | + | +(喘鳴) |
| サルモネラ胃腸炎 | サルモネラ菌 | 弛張熱(非敗血症型の腸チフスは稽留熱)a) | 3〜7日 | 6〜48時間 | − | − |
| 若年性関節リウマチ | 不明(自己免疫疾患) | 弛張熱 | 数週 | 不明 | − | − |
| 猩紅熱 | A群β溶血性連鎖球菌 | 稽留熱 | 3〜7日 | 1〜5日 | ± | − |
| 滲出性扁桃腺炎 | アデノウイルス | 稽留熱〜弛張熱(高熱) | 3〜7日 | 5〜7日 | ± | ±(湿性) |
| 水痘 | 水痘帯状疱疹ウイルス | 稽留熱 | 1〜6日 | 14日(9〜21日) | − | − |
| 大葉性肺炎 | 肺炎球菌菌 | 稽留熱(WBC数↑、杆状核好中球↑) | 数日 | 1〜3日 | ± | + |
| チフス性疾患 | チフス菌、パラチフスA菌 | 稽留熱→弛張熱(比較的徐脈)a) | 数週 | 10〜14 日(3日〜3カ月) | − | − |
| 伝染性紅斑(リンゴ病) | パルボウイルスB19 | 稽留熱(弛張熱の場合もあり) | 数日 | 10〜20日b) | − | − |
| 伝染性単核球症 | Epstein-Barrウイルス(EBV) | 弛張熱(扁桃腺炎、頚部リンパ節腫脹を伴う) | 数週 | 2〜8週 | ± | − |
| 突発性発疹 | HHV-6、HHV-7 | 稽留熱(弛張熱の場合もあり) | 3〜5日 | 約10日 | − | − |
| 白色便性下痢症 | ロタウイルス | 稽留熱(嘔吐、下痢を伴う) | 2日以内 | 48時間以内(1〜4日) | + | + |
| 風疹 | 風疹ウイルス | 稽留熱(40〜60%) | 1〜3日 | 2〜3週 | ± | ± |
| ヘルパンギーナ | エンテロウイルスc) | 稽留熱〜弛張熱(扁桃腺炎を伴う) | 3〜7日 | 3日(1週以内) | − | − |
| ヘルペス性歯肉口内炎 | 単純ヘルペスウイルス | (稽留熱→)弛張熱(頚部リンパ節腫脹有り) | 3〜6日 | 3〜12日 | ± | − |
| 麻疹(はしか) | 麻疹ウイルス | 稽留熱(ニ峰性発熱) | 7日 | 9〜12日 | + | + |
| マイコプラズマ肺炎 | マイコプラズマ・ニューモニエ | 稽留熱〜弛張熱 | 1〜2週 | 1〜3週 | − | + |
| 流行性耳下腺炎 | ムンプスウイルス | (稽留熱:WBC数は減少しリンパ球数が増加) | 3〜5日 | 18日(12〜25日) | − | − |
a):サルモネラ胃腸炎では、弛張熱が見られる。チフス性疾患(腸チフス)では、第1病週(腸管リンパ組織内で菌が増殖し菌血症により全身感染する)に段階的体温上昇(39〜40℃)と共に、比較的徐脈、肝j脾腫、バラ疹が見られ、第2病週(腸管リンパ組織が壊死を起こし痂皮を形成する)に稽留熱が見られ、第3病週(腸管リンパ組織の痂皮が剥がれ潰瘍を形成し出血する)に弛張熱になり、腸出血や腸穿孔が見られ、第4病週(潰瘍などが修復される)に解熱する。チフス性疾患では、典型的には、病初期(第1病週)に白血球数が減少しリンパ球数が増加すると言わて来たが、第2病週以内に白血球数が正常か増加し、好中球優位(好中球の割合が増加しリンパ球の割合が減少する)のことが多い。
b):ウイルス感染してから7〜9日後に発熱し(微熱)、更に、7〜10日後に、発疹(紅斑)が現れる。
c):ヘルパンギーナは、エンテロウイルスでも、コクサッキーウイルス、特に、B群のコクサッキーウイルス(Coxsackievirus B)が原因で発症する。ヘルパンギーナは、エンテロウイルスでもコクサッキーウイルス(特にCoxsackievirus B3など)が原因で発症する。ヘルパンギーナでは、ヘルペス性歯肉口内炎の際の様に、口蓋垂の周囲にアフタ(潰瘍)が生じるが、ヘルペス性歯肉口内炎の際の様に、咽頭後壁に顆粒(リンパ濾胞)にアフタ(潰瘍)が現れることはない。また、ヘルパンギーナでは、滲出性扁桃腺炎を合併し、後に、口内炎が現れるが、ヘルペス性歯肉口内炎と異なり、歯肉炎や口周囲の水疱や、頚部リンパ節炎を合併しない。ヘルパンギーナは、鼻水(鼻汁)や咳(咳嗽)が現れない点が、アデノウイルス感染症との相違点。
RSウイルス感染症では、発熱時に、白血球数(WBC数)が増加(10,000以上)することがある:好中球が優位に増加する(白血球像で、好中球が90%以上の症例あり)。
RSウイルス感染症では、CRP値は上昇しないことが多いが、上昇(6mg/dl以上)する症例も存在する(肺炎球菌などの混合感染に注意が必要)。
2.クループ
インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、RSウイルスなどは、仮性クループ(急性喉頭気管炎)を起こすことがある。
仮性クループ(急性喉頭気管炎)は、犬の遠吠えのような咳(犬吠様咳嗽:けんばいようがいそう)がして、声がかすれる(嗄声:させい:声がしゃがれる)が、夜間などに見らられ、吸気性呼吸困難(吸気性喘鳴)になるのが特徴。
<仮性クループに特有な咳発作の録音テープを聞くには、ここをクリック>
仮性クループ(急性喉頭炎)は、喉部の気道が、炎症性腫脹により、狭くなる。
真性クループは、ジフテリア菌が原因で、起こる(喉頭ジフテリア)。
仮性クループの際に見られる、犬吠様咳嗽、嗄声、吸気性喘鳴などの症状は、他の喉頭疾患でも見られることから、クループ症候群と呼ぶこともある。
犬吠様咳嗽、嗄声、吸気性喘鳴などの呼吸困難症状は、3〜4日間程度、続くことが多い。
クループ症候群は、喉頭気管炎(喉頭気管気管支炎:狭義のクループ)、急性喉頭蓋炎、細菌性気管炎など、感染症が原因で起こることが多い(感染性クループ)。また、クループ症候群は、声門下狭窄、喉頭異物、喉頭腫瘍(血管腫)、血管神経性浮腫、痙性クループ(アレルギー素因が関与する)など、非感染性の原因で起こることもある。
クループでは、犬吠様咳嗽、呼気性喘鳴、嗄声、発熱などの症状が現れる・
・急性喉頭気管気管支炎:最も多い。7カ月〜3歳の小児に好発する。パラインフルエンザ、アデノウイルス、RSウイルス、麻疹ウイルスなどが原因。典型的には、2〜3日間、上気道炎症状(鼻水、咳、咽頭痛、微熱など)があった後、犬吠様咳嗽、呼気性喘鳴などが現れる。気道閉塞症状は、3〜4日間続いくが、その後、徐々に1週間程で軽快する。
・急性喉頭蓋炎:頻度は稀。致死率は高い。インフルエンザ菌(Hib)が原因のことが多い。2〜6歳の小児に好発する。先行する上気道炎症状がなく、急に、高熱、咽頭痛で発症する。喘鳴は、低調性のことが多い(ゴロゴロした感じに聞こえる)。患児は、座位で下顎を突き出した姿勢をとる(sniffing position)。診断には、頚部の側面X-P写真が有用。短時間で窒息状態に陥ることがあるので、刺激をしないようにして、専門の医療機関に送る(咽頭培養は呼吸停止を誘発するおそれがある。不要な注射などは避けて泣かせないようにする)。血液培養を行う。
クループの治療としては、エピネフリン吸入(エピネフリン0.2〜0.3mlを生理食塩水1〜2mlと混ぜて吸入)、ステロイド薬投与(デキサメサゾンを、初回0.5mg/kg筋注、以後、6〜8時間毎0.2mg/kg投与)、抗生剤投与(アンピシリン、セフォタキシムを静脈注射:急性喉頭蓋炎や細菌性気管支炎の場合)などが行われる。
クループ(喉頭気管気管支炎)は、7カ月〜3歳の小児が、発症することが多い。
クループは、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、RSウイルス、麻疹ウイルスなどのウイルスが、原因となることが多い。
3.迅速診断
RSウイルス感染症であるかどうかは、インフルエンザと同様に、鼻水(鼻腔液)を採取することで、迅速診断が可能。
ただし、3歳未満の入院例でないと、保健適応がない(医療機関のサービスで行なわれることが多い)。
RSウイルス迅速診断陽性例(BD RSVエグザマン)
RSウイルス迅速診断陽性例(チェックRSV):鼻腔を綿棒で擦って鼻水を採取、1歳男児RSウイルスの迅速診断のためには、検体は、後鼻腔(上咽頭)から採取した方が、咽頭から採取するより、陽性率が高いと言う(鼻咽頭分泌液を吸引採取するのが良い)。しかし、乳幼児は、鼻孔が細いので、カテーテルを用いて鼻咽頭分泌液(鼻汁)を吸引採取するより、細い(柔らかな)綿棒を用いて、鼻腔内の鼻汁を採取する方が、侵襲が少ないと思われる。
鼻咽頭分泌液(鼻汁)中には、RSウイルスは、104〜106TCID50/ml存在するが、RSウイルス迅速診断キットの検出感度は、103〜104PFU/mlと言われる(TCID50:50% Tissue Culture Infectious Dose、PFU:Plaque Forming Unit)。
米国食品医薬局(FDA)は、2008年(平成20年)に、12種類の呼吸器ウイルスを検出・同定可能な検査キットxTAG Respiratory Viral Panel(RVP)の上市を承認した。
xTAG Respiratory Viral Panel(RVP)が検出・同定可能なウイルスは、インフルエンザA型、インフルエンザAH1、インフルエンザAH3、インフルエンザB型、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)、RSウイルスA型、RSウイルスB型、パラインフルエンザ1型、パラインフルエンザ2型、パラインフルエンザ3型、ライノウイルス、アデノウイルス。ヒトメタニューモウイルス(hMPV)を検出するキットとしては、最初の検査キットとなる。
xTAG Respiratory Viral Panel(RVP)は、カナダ・トロントのLuminex Molecular Diagnostics社が製造している。
参考文献
・大黒一成、他:発熱を伴なう冬季の小児上気道感染症の原因ウイルス検索 小児科臨床 Vol.52 No.5、813-816、1999年.
・細谷光亮:MS4-1 RSウイルス迅速診断の有用性と問題、第111回日本小児科学会学術集会、抄録、日本小児科学会雑誌、第112巻・第2号、183頁、2008年.
・12種類のウイルスを同時検出 FDAが検査キットの上市を承認、Medical Tribune、2008年3月6日号、Vol.41 No.10、5頁.
・James E. Crowe, Jr.: Chapter 258 Human Metapneumovirus, 1391-1393, Nelson Textbook of Pediatrics (18th Edition, 2007).
・Gary P, et al.: Am J Resp Crit Care Med 159: 785, 1999.
・Bisgaad H. et al.: N Eng J Med 354: 1988, 2006.
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