Oisix(おいしっくす) DHCオンラインショップ【個人サイト様向け】 HP Directplus オンラインストア 富士通パソコンFMVの直販サイト富士通 WEB MART

 アルドステロン

 アルドステロンは、尿細管腔側(刷子縁膜側)のNa+チャネル(ENaC:epithelial sodium channel)を介して、Na+を尿細管細胞に取り込み、基底膜側(血管側)のNa+/K+-ATPase(Na pump)で汲み出すと言う、Na+再吸収の経路を、活性化させる(注1)。

 遠位尿細管や集合管の上皮細胞では、基底膜側(血管側)のNa+/K+-ATPaseで、細胞内のNa+を、細胞外(血液中)に汲み出し、尿細管腔側のNa+チャネルENaC) から、尿細管腔の原尿中のNa+を、細胞内に流入させる。この際、同時に、K+とH+が、血液中から尿細管腔へ転送される。
 アルドステロンは、腎臓でのナトリウム再吸収(Na+再吸収)と重炭酸イオン(HCO3-)の吸収を促進し、ナトリウム再吸収に伴う水の再吸収を促進し、交換に、カリウム(K+)と水素(H+)の尿中排泄を促進する。その為、原発性アルドステロン症では、高血圧、高Na血症、低K血症、代謝性アルカローシスが現れる。

 アルドステロンは、副腎皮質の球状層から分泌される。
 アルドステロンは、炎症を促進する。

 アルドステロンは、RAA系(レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系)で産生されるアンジオテンシンIIにより、副腎皮質から分泌される。

 体液量は、体内のNa+量により決定される。体内のNa+量は、主にRAA系により調節される。体内のNa+量が低下すると、腎臓の傍糸球体装置が、尿細管液(原尿)のCl-濃度の低下を感知したり、血圧の低下(体液量の低下)を感知すると、レニンの分泌が増加し、アンジオテンシンIIにより、アルドステロンが分泌され、腎臓でのNa+再吸収が増加し、体液量が増加し、血圧が上昇(回復)する。
 アルドステロンの分泌は、アンジオテンシンII(ATII)、カリウム(K)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)によって、刺激される。


 原発性アルドステロン症(PA:primary aldosteronism)など、アルドステロン分泌が亢進すると、高血圧(頭痛)、高Na血症、低K血症(筋力減退、腎濃縮能の低下による多飲・多尿・低張尿)、代謝性アルカローシスが出現する。

 1.アルドステロンは、Na+再吸収を促進する
 
アルドステロンは、遠位尿細管で、尿細管細胞の尿細管腔側(刷子縁膜側:brush boder:apical site)では、Na+チャネルENaC)を活性化させ、尿細管腔内(原尿中)のNa+を細胞内に流入させ、基底膜側(血管側:basolateral site)では、Na+/K+-ATPase(Na pump)を活性化させ、Na+を細胞内から細胞外(血液中)に汲み出すことで、Na+の再吸収を促進させる。なお、Na+の再吸収は、Na+-HCO3-共輸送系により行われるので、アルドステロンは、重炭酸イオン(HCO3-の吸収をも促進する。
 この結果(原尿中からNa+が細胞内に流入した結果)、尿細管腔側にはマイナス電位(陰性荷電)が生じ、管腔側膜の電位依存性Kチャネルから、K+が、原尿中に排泄(放出)される。腎臓の集合管(集合尿細管)で行われるK+排泄は、体内のK調節に最も重要であり、主に、アルドステロンが調節している。

 アルドステロンは、Na+/K+-ATPaseの合成を促進するのではない。アルドステロンは、細胞質内に予め存在するNa+/K+-ATPaseを、基底膜側の細胞膜表面にリクルートさせる。その結果、基底膜側のNa+/K+-ATPaseにより、細胞内からNa+が、細胞外(血液側)に汲み出され、細胞内のNa+濃度が低下して、尿細管腔側では、ENaCが開いて、細胞内に、Na+が取り込まれて、Na+の再吸収が促進される。同時に、Na+-K+-2Cl-共輸送体、水チャネル(AQP-1:aquaporin-1)、Cl-チャネルを介して、Cl-、水が再吸収される。さらに、尿細管腔側では、Na+/H+交換輸送体を介して、H+が原尿中に排泄されると考えられる。

 アルドステロンは、Na+チャネル(ENaC)の合成を促進するのではなく、尿細管腔側の細胞膜に予め存在していたNa+チャネル(ENaC)を、迅速に活性化させる。

 抗アルドステロン薬(スピロノラクトンなど)は、アルドステロン受容体に結合して、アルドステロンの作用を抑制する:Na+/K+-ATPaseの活性が抑制されるので、むしろ、高K血症を起こしやすい。

 Na+は、尿細管腔内からENaCにより、尿細管上皮細胞内に取り込まれ、Na+/K+-ATPaseにより、細胞外(血液側)に汲み出される(下図にで示す)。
 2.PGE2は、Na+再吸収を抑制する
 cAMPは、PKA(Aキナーゼ)を介して、Na+/K+-ATPase、Na+チャネル(ENaC)、K+チャネル、Cl-チャネル、Na+-K+-2Cl-共輸送体、K+-Cl-共輸送体を刺激し、Na+/H+交換輸送体を抑制する。
 PGE2は、Na+/K+-ATPaseを抑制して、尿細管でのNa+再吸収を抑制する:PGE2は、尿細管では、抑制性G蛋白(Gαi)を介して、cAMPの産生を抑制し、PKAによりNa+/K+-ATPaseが刺激されることを抑制し、Na再吸収を抑制する。

 アドレナリン等は、(α1受容体の)Gαq蛋白を介して、PLC系(ホスホリパーゼC)を活性化させ、ジアシルグリセロール(DAG)を生成し、PKC(Cキナーゼ)を活性化させて、Na+/H+交換輸送体と、Na+-HCO3-共輸送系を活性化させる。なお、AC(アデニル酸シクラーゼ系)が活性化され、細胞内cAMP濃度が上昇し、PKA(Aキナーゼ)が活性化されると、Na+/K+-ATPase、H+/K+-ATPaseが活性化される。

 3.アルドステロンは、血管炎症反応を亢進させる
 近年、アルドステロンには、血管の炎症を起こす作用があることが、注目されている。

 ・アルドステロンは、COX-2や、MCP-1(ヒト単球走化活性因子:注2)を発現させる。このアルドステロンの作用は、アルドステロン・ブロッカーで、抑制される。

 ・アルドステロンは、心筋の線維化、左室肥大を引き起こすとされる。アルドステロンは、腎臓のメサンギウム細胞領域のミネラロコルチイコイド受容体(MR)に作用して、メサンギウムの細胞外基質を増加させて、糸球体硬化症など、腎臓の線維化にも影響していると考えられている。

 ・アルドステロンは、主に、副腎皮質球状層で産生されるが、心筋からもアルドステロンが産生される。
 アルドステロンは、腎臓の遠位尿細管からのNa再吸収(と水再吸収)を促進させる(H+やK+の排泄が促進される)。
 アルドステロンは、直接、心筋や血管平滑筋に作用し、増殖を促進させたり、酸化ストレスを増加させる。

 ・アルドステロンは、NADHオキシダーゼ(NADPH酸化酵素)を発現させ、ROS(reactive oxygen species:活性酸素種)の産生を亢進させ、酸化ストレスを産生させる。その為、
アルドステロンは、LDLの酸化を亢進させ、動脈硬化を進展させる
 ROSは、さらに、NF-Bを活性化させ、VEGF(vascular endothelial growth factor:血管内皮増殖因子)、MCP-1PAI-1を発現させる。VEGFは、血管内皮細胞を増殖させ、血管新生を促進させ、糖尿病性血管障害を来たす。
 NF-Bは、また、I-Bの発現を低下させることにより、炎症性サイトカインの遺伝子を活性化させ、血管障害を来たす。

 ・アルドステロンは、副腎皮質のみならず、病的な心臓組織からも、合成、産生されている可能性が、示唆されている。

 ・アルドステロンエスケープ:アルドステロンは、最初は、Na+再吸収を増加させ、尿中Na+排泄量が低下して、体重が増加するが、長期的には、逆に、尿中Na+排泄量が増加して、体重が、正常化する。
 アルドステロンブレークスルー:ACE阻害剤を内服すると、血症アンジオテンシンII(AII)濃度は、抑制されるが、半数以上の患者さんでは、血漿アルドステロン濃度は、いったん低下した後、治療前より、むしろ、上昇することがある。これは、アンジオテンシンII(AII)は、ACE以外の経路で、産生される為、アンジオテンシンII(AII)が増加して、アルドステロンも増加することが理由と考えられている。また、アルドステロンは、AIIを介さないで、産生されることも、考えられる理由の一つ。
 アルドステロンブレークスルーは、長期間(6カ月以上)、ACE阻害剤や、AII受容体拮抗剤(ARB)など、RAA系(レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系)を抑制する薬剤を投与し、いったん低下していた血漿アルドステロン濃度が、再び、上昇し始める現象。アルドステロンブレークスルーにより、血漿アルドステロン濃度が上昇しても、正常範囲内であり、高血圧になることはないが、臓器障害は進展し易くなると言われる。

 ・血中アルドステロン値は、体位により、変動する。
 アルドステロンの分泌は、主にレニン・アンジオテンシン系(RAA系)により調節されるので、腎血流量によって、変動する。
 血中アルドステロン値は、臥位で最も低く、座位では臥位の1.5倍、立位では臥位の2倍に増加する。
 血中アルドステロン値(アルドステロン分泌能)を正確に評価するには、食塩摂取量を一定(通常9g/日)にして、朝食を止めて2時間以上安静臥床させた後に、採血をする方が良い(体位の影響を避ける為には30分〜1時間程度安静臥床させてから採血する)。
 月経周期がある女性では、卵胞期(月経初日から10日以内)に採血を行う。

 ・グリチルリチン(甘草に含まれる)や甘草を含む漢方薬を、大量に服用すると、偽性アルドステロン症により、血中アルドステロンが低下することがある。
 甘草を漢方薬で摂り過ぎると、偽性アルドステロン症(Naが貯留したり低K血症を伴う)が引き起こされる。甘草による偽性アルドステロン症の副作用は、五苓散によって著明に改善する。柴苓湯(小柴胡湯+五苓散)も、有用。ネフローゼ症候群(微小変化群)の治療に、柴苓湯、五苓散、小柴胡湯が用いられた。

 ・血中アルドステロン濃度は、降圧剤投与により、影響を受ける。
 Ca拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、β-ブロッカー(β遮断薬)は、服用中に、血中アルドステロン濃度が低下する。利尿薬は、服用中に、血中アルドステロン濃度が上昇する。α-ブロッカー(α遮断薬)は、影響が少ない。

 注1:アルドステロンは、集合管のPC cell(principal cell:主細胞)の尿細管腔側に存在するNa+チャネル(ENaC)やNa+/H+交換輸送体、基底膜側に存在するNa+/K+-ATPaseを活性化させ、Na+再吸収を促進させ、また、K+チャネルを活性化させて、 K+排泄を促進させる。
 アルドステロンは、集合管のIC cell(intercalated cell:間在細胞)の尿細管腔側に存在するH+-ATPaseを活性化させ、H+排泄を促進させる。
 その結果、Na+-HCO3-共輸送系も活性化されるので、原発性アルドステロン症では、代謝性アルカローシスになる。(上図にで示した)

 注2MCP-1は、炎症を活性化させ、血管周囲や心筋の線維化を引き起こすと言う。

 参考文献
 ・カラー図説 人体の正常構造と機能 V腎・泌尿器(日本医事新報社).
 ・鈴木泰三、他:臨床生理学 上巻(南山堂、1975年).
 ・Eric Feraille, et al (2001) Sodium-Potassium-Adenosinetriphosphatase-Dependent Sodium Transport in the Kidney: Hormonal Control. Physiol. Rev. 81: 345-418.

 ・小児内科 尿細管異常症−最近の進歩 第23巻第5号特大号、1991年(東京医学社).
 ・小島元子、他:アルドステロン、内科61巻6号(19988-6)、61:13491.
 ・藤田敏郎、下澤達雄:副腎皮質 アルドステロン、最新 臨床検査のABC、日本医師会雑誌 第135巻・特別号(2)、生涯教育シリーズ−70、平成18(2006)年10月.S251-S252頁.

 |トップページ脂質と血栓の関係ミニ医学知識生化学の知識医学の話題小児科疾患生命の不思議リンク集