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 クラミジア感染症

 クラミジアは、細菌に分類される小微生物。
 クラミジアは、細胞壁を有して、グラム陰性球菌に類似しているが、宿主細胞の細胞内に寄生する(偏性細胞内寄生体)。
 クラミジアは、基本小体(感染力がある)が、宿主の細胞内に取り込まれ(宿主に感染する)、細胞質内に封入体を形成し、代謝が活発な大型の網様体に変化し、分裂を繰り返し増殖した後、再び、基本小体に変化し、宿主細胞の崩壊(感染後48〜72時間)に伴ない、細胞外に、放出され、感染を繰り返す。

 クラミジア属には、4種類存在するが、ヒトでは、オウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)、トラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)、肺炎クラミジア(Chlamydia pneumoniae)の3種類が、病原性がある。
 オウム病クラミジアは、鳥類から、ヒト(成人)に感染し、トラコーマクラミジアは、母親から、新生児・乳児に感染し、肺炎クラミジアは、ヒトからヒトへ、咳嗽により、感染する。

 1.オウム病クラミジア
 オウム病クラミジア(Chlamydia psittaci:クラミジア・シッタシ)は、オウム、インコ、ハト(鳩)などの鳥類、ネコ(猫)やウシ(牛)などの哺乳類、爬虫類などが、宿主になる。 
 オウム病クラミジアは、鳥の病原菌であるが、哺乳類のヒトにも感染する(人獣共通感染症)。 
 オウム病クラミジアを含む、鳥の排泄物を吸入すると、ヒトに感染する(飛沫感染)。
 オウム病クラミジアの、ヒトへの感染源は、鳥類のみ:オウム病(鳥クラミジア症)の鳥や、保菌している鳥(注1)の排泄物により汚染した埃(ほこり)を吸入したり、口移しの餌づけで、鳥類から、ヒトへ、感染する(経気道感染する)。
 オウム病クラミジアのヒトへの感染源は、オウム、インコ、ジュウシマツ、ブンチョウなど、鳥のペットが、多い。
 オウム病クラミジアは、ヒトからヒトへは、ほとんど、感染しない(抗生剤で無治療例の咳嗽、喀痰には、注意が必要)。

 オウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)が、気道を経て感染すると、オウム病肺炎(異型肺炎)を引き起こす。
 オウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)に感染すると、1〜2週間の潜伏期の後に(潜伏期間は約10日)、突然の発熱共に、オウム病(オウム病クラミジア感染症)を、発症する。

 オウム病(オウム病クラミジア感染症)では、発熱(38℃以上の高熱)、咳嗽が、ほとんどの症例で、見られる。咳嗽は、通常は、乾性で、粘液性の痰を伴なう。頭痛、比較的徐脈も、半数の症例で、見られる。全身倦怠感、食欲不振、筋肉痛、関節痛、頭痛など、インフルエンザ様症状が、見られる。比較的徐脈、肝脾腫も、見られる。症状は、小児より、高齢者で、重くなる。
 オウム病(オウム病クラミジア感染症)の臨床病型には、感冒型(肺炎を伴なわず軽症に経過する)、肺炎型(肺炎を伴なう)、肺チフス型(肺炎に、高い稽留熱や、比較的徐脈を伴なう)、チフス型(肺炎像がなく高熱が見られる)が、ある。
 オウム病では、髄膜炎、心外膜炎、心筋炎、関節炎、膵炎などを、合併することがある。
 重症例では、呼吸困難、意識障害、髄膜炎、肝臓、脾臓、腎臓などの多臓器障害、DICを合併し、死に至ることもある。

 血液検査所見では、赤沈値(赤血球沈降速度)の亢進、CRP値の上昇が見られるが、白血球数の増加は、稀にしか見られない。
 約半数の症例で、ASTGOT)、ALTGPT)が、上昇する。
 胸部X線所見では、肺炎型では、異常陰影が、下肺野に、見られることが多い(約60%の症例)が、中肺野、上肺野にも、見られる。異常陰影の性状は、半透明スリガラス様で、その中に、微細な斑点状影、又は、網状影が、混在する。異常陰影の吸収(消失)は、比較的、遅い。

 治療には、マクロライド系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系の薬剤が、有効。
 抗生剤は、重症肺炎例では、治療初期には、ミノサイクリンやドキシサイクリンを、点滴静注(ミノマイシン100mg1日2回点滴静注)し、解熱後には、10〜14日間、経口的に内服させる。
 ミノマイシンは、「小児(特に歯牙形成期にある8歳未満の小児)に投与した場合、歯牙の着色、エナメル質形成不全、また、一過性の骨発育不全を起こすことがあるので、他の薬剤が使用できないか、無効の場合にのみ適用を考慮すること」と、添付文書に明記されている。

 オウム病(オウム病クラミジア感染症)は、鳥の雛が孵化する1〜6月頃に多く、マイコプラズマ肺炎(肺炎マイコプラズマ感染症)は、7〜12月に多い。
 
 なお、オウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)の株の中でも、ウシやヒツジ由来の株は、DNAホモロジーの相違から、新種のChlamydia pecorumとして、独立して、分類される。

 比較的徐脈は、オウム病、腸チフス、マイコプラズマ肺炎、レジオネラ症などで見られる。

 2.トラコーマクラミジア
 トラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis:クラミジア・トラコマティス)は、古くは、トラコーマ(眼疾患)の病原体として、知られていた。

 トラコーマクラミジアは、性感染症(STD)のみならず、母子感染(産道感染)により、新生児や乳児に、封入体結膜炎や肺炎を発症させる。
 トラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)に感染している妊婦では、治療を行わない場合、50〜75%の新生児は、母親から、母子垂直感染(産道感染)する(結膜、鼻咽腔、直腸、膣などに感染する)。また、20〜50%の新生児は、封入体結膜炎を発症し、3〜20%の児は、新生児期や乳児期に、肺炎を発症する。
 トラコーマクラミジア感染症は、淋菌感染症に、混合感染していることがある。

 1).封入体結膜炎
 新生児の封入体結膜炎は、生後1週間前後(出生後3〜15日)に発症する。新生児の封入体結膜炎は、両眼性に発症することが多い。
 トラコーマクラミジアに感染した妊婦から生まれた新生児は、約30〜50%が、封入体結膜炎を発症する。封入体結膜炎を発症した新生児の半数は、鼻咽腔に、トラコーマクラミジアを感染している。
 著明に眼瞼が腫脹し、時に、偽膜形成を認める。結膜はもろくなり、スワブすると、容易に出血する。結膜が瘢痕化すると、睫毛内反により角膜が障害され、失明に至ることがある。
 クラミジア結膜炎は、アデノウイルス結膜炎や、ヘルペス結膜炎と異なり、遷延化、慢性化するので、早期に、抗生剤(抗クラミジア剤)を、投与する。
 なお、トラコーマでは、角膜パンヌスや結膜瘢痕形成などが見られる。活動性トラコーマは、学童期の小児に多く見られる。トラコーマの眼病変は、クラミジアが、長期間、再感染を繰り返し、炎症が、慢性的に反復し、遷延することによって、生じる。

 2).肺炎
 Chlamydia trachomatis肺炎(注2)は、生後6カ月未満(生後3〜16週)の新生児、乳児が、発症する(鼻咽腔感染した新生児の約30%は、無治療の場合、肺炎に進展する)。鼻汁や軽度の咳嗽で発症し、発熱は見られず(無熱性肺炎:afebrile pneumonia)、胸部聴診所見でも、ラ音が聴取されないこともある。多呼吸、嘔吐など、百日咳様の痙攣性咳嗽が見られることもある(注3)。
 胸部X線所見は、透亮性が高く、過膨張の所見を呈する(微慢性間質性陰影)。大葉性肺炎、肋膜炎の所見は、認められない。
 血液検査では、免疫グロブリン、特に、IgMが、増加する。白血球数は正常、赤沈値(赤血球沈降速度)は亢進、CRP値は上昇。
 肺炎の治療には、EM(エリスロマイシン)の点滴静注か、内服(50mg/kg/日、10〜14日間)を行う。

 3).不妊症
 トラコーマクラミジアは、性行為により感染する(性感染症)。
 トラコーマクラミジアが、性行為で感染した場合、自覚症状が現れるとしたら、約2週間後に、自覚症状が現れる:女性では、帯下の増加、下腹部痛、性交痛などが現れる。男性では、尿道炎症状(漿液性〜粘液性の尿道分泌物の増加、尿道掻痒感、排尿痛)、精巣上体炎(陰嚢内容の腫脹、疼痛、発熱)が現れる。男性のクラミジア性尿道炎は、淋菌性尿道炎に比し、潜伏期間は長く、臨床症状は軽い(排尿痛も少ない)。
 しかし、70%の症例では、感染しても、自覚症状が現れず、無症状である。

 トラコーマクラミジアは、初感染時、女性では子宮頚部に、男性では尿道に、感染する。
 トラコーマクラミジアは、女性では、初感染時、子宮頚管炎を来たす。
 トラコーマクラミジアによる子宮頚管炎は、抗生剤の治療をすれば、1週間で、治癒する。しかし、自覚症状が現れず、無治療の場合、子宮頚管から、子宮内膜、卵管、骨盤腔へと、腹腔内に、感染が及ぶ。子宮内膜炎から、絨毛羊膜炎が起こると、流産、早産を来たす。卵管炎から、卵管狭窄、卵管閉鎖が起こると、卵管性不妊症を来たす。

 トラコーマクラミジアは、婦人科領域では、子宮内膜炎、卵管炎、付属器炎などの骨盤内感染症(PID)の原因となり、不妊症を引き起こすこともある。
 トラコーマクラミジアは、男性では、尿道炎や、精巣上体炎を、引き起こす。トラコーマクラミジアによる尿道炎(非淋菌性尿道炎)は、淋菌性尿道炎に比し、潜伏期間が長く(1〜3週間)、排尿痛が軽い。また、分泌物の性状は、漿液性で、分泌物の量は、少ない。

 3.肺炎クラミジア
 肺炎クラミジア(Chlamydia pneumoniae:クラミジア・ニューモニエ)は、咳嗽による飛沫感染(経気道感染)により、ヒトからヒトへ感染し、呼吸器感染症を発症する。潜伏期間は、3〜4週間(2〜4週間)で、微熱、鼻汁、咳嗽、咽頭痛などの症状が、現れる。抗生剤で無治療例は、咳嗽が存在する間は、感染可能(伝播可能)と言われる

 肺炎クラミジアによる呼吸器感染症としては、感冒、上気道炎(咽頭炎、扁桃炎、気管支炎、肺炎、中耳炎、副鼻腔炎などがある。
 肺炎クラミジアに感染しても、無症状や軽症状で経過することが多く、下気道感染症(気管支炎、肺炎)まで進展するのは、5〜10%の症例と言われる。
 肺炎クラミジアによる下気道感染症は、気管支炎が、肺炎より多い(気管支炎:肺炎=3:1)。乳幼児では、肺炎クラミジアによる肺炎(注2)は、稀。
 肺炎クラミジアによる肺炎は、異型肺炎であり、マイコプラズマ肺炎と、臨床像が、似ている。肺炎クラミジアによる肺炎は、マイコプラズマ肺炎に比し、発熱の頻度が低く、高熱でない傾向にある(発熱の頻度は、大学生での調査結果では、10%と、低い)。
 肺炎クラミジア感染症は、マイコプラズマ感染症と同様に、異型肺炎を起こすが、マイコプラズマ感染症と異なり、全身症状が侵されることは、比較的少ない。

 小児呼吸器感染症667例の内、肺炎クラミジア感染症は8.1%(54例)、肺炎マイコプラズマ感染症は10.9%(73例)であった。
 肺炎クラミジア感染症では、38℃以上の発熱は、47.8%の症例に見られたに過ぎず、肺炎マイコプラズマ感染の発熱頻度95.4%より、少なかった。

 肺炎クラミジアによる肺炎は、市中肺炎の約1割を占める。

 気管支炎は、肺炎クラミジアが原因のことが多く、肺炎は、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)が原因のことが多い。
 肺炎クラミジア感染では、嗄声が見られることが、肺炎マイコプラズマ感染や、ウイルス感染に比して、多い。
 肺炎クラミジアによる肺炎は、肺炎マイコプラズマによるマイコプラズマ肺炎と異なり、小児と、60歳以上の高齢者に多い。

 肺炎クラミジア感染では、乾性咳嗽が、遷延することがある(1カ月以上、乾性咳嗽が、遷延することがある)。
 肺炎クラミジアによる肺炎は、トラコーマクラミジア感染症(肺炎など)と異なり、結膜炎を伴なうことは、稀(稀に、ブドウ膜炎を伴なうことがある)。

 肺炎クラミジア感染により、喘息(気管支喘息)の症状が、悪化することもある(発熱を伴なわないことがある)。
 肺炎クラミジアは、乳児から老人まで、幅広い世代のヒトが、感染し、発症する。
 肺炎クラミジアは、小児期に、初感染する:肺炎クラミジアは、集団生活が始まる4〜5歳頃から、感染者数(抗体陽性者数)が、増加し、小学校高学年では、約半数の児童が、肺炎クラミジアに感染した既往を有する(抗体が陽性になる)。
 肺炎クラミジアの初感染時に産生された抗体は、3〜5年程で、血中から検出されなくなる。肺炎クラミジアは、初感染後も、再感染、持続感染を繰り返す。

 肺炎クラミジアの抗体保有率は、年齢と共に上昇する傾向がある。世界では、成人の肺炎クラミジアの抗体保有率は、50〜70%と言われる。日本では、低年齢から肺炎クラミジアに感染し抗体を保有する傾向があり、肺炎クラミジアの抗体保有率は、10歳前後の小児で、約50%と言われる。
 肺炎クラミジアの抗体保有率は、呼吸器感染症で受診した小児では、20.7%と報告されている。
 肺炎クラミジアの抗体保有率は、年齢と共に増加し、0〜4歳で3.6%、5〜9歳で31.0%、10〜14歳で19.6%(肺炎クラミジアに対する抗体は、感染後、陽性になるが、数年後には、陰性になって、検出感度以下になる)。
 肺炎クラミジアは、肺炎、気管支炎、喘息様気管支炎を来たしたり、気管支喘息の発作を誘発・増悪させる。肺炎クラミジアは、9歳以下の小児では、肺炎と気管支炎を、同等の割合で起こすが、10歳以上の小児では、肺炎を起こす場合の方が、気管支炎を起こす場合より、多い。

 肺炎クラミジア感染症(肺炎、気道感染など)では、血液検査で、赤沈値(赤血球沈降速度)の亢進が見られる(50mm/h以上が46%)。白血球数の1万以上の増加、CRP値の(++)以上の上昇は、1/4の症例に見られるに過ぎない。

 肺炎クラミジアには、マクロライド系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系の抗生剤が、効果がある。しかし、どの抗生剤も、除菌率は80〜90%程度である。

 肺炎クラミジアは、30〜83%の動脈硬化病変から検出される(マクロファージに貪食された肺炎クラミジアが、血中を輸送され、動脈硬化病変に、移行する)。 

 肺炎クラミジア(クラミジア・ニューモニエ)は、気道粘膜細胞内に感染し封入体を形成する。肺炎マイコプラズマ(マイコプラズマ・ニューモニエ:Mycoplasma pneumoniae)は、気道粘膜細胞外(気道粘膜表層)に感染する。
 マイコプラズマ肺炎(マイコプラズマ・ニューモニエによる肺炎)では、寒冷凝集反応(寒冷凝集価)が、重症例では75〜90%、軽症例では30%の頻度で上昇する(寒冷凝集価が最高に達するのは3〜4病週のことが多い)。寒冷凝集反応(cold agglutination)は、アデノウイルス、パラインフルエンザ、インフルエンザ等による感染症(ウイルス性肺炎)でも上昇する(陽性を示す)ことがあるが、頻度は少ない(10%程度)。
 マイコプラズマ肺炎(マイコプラズマ・ニューモニエによる肺炎)では、CRP値は上昇しない(平均2.8)が、白血球数(好中球数)が増加することがある。白血球数は、増加しない(正常下限か低値)が、好中球の左方移動を伴う。マイコプラズマ・ニューモニエ(M. pneumoniae)は、百日咳毒素のS1サブユニット様の蛋白( a protein similar to the S1 subunit of pertussis toxin)を産生出来る。マイコプラズマ・ニューモニエ(M. pneumoniae)は、PI蛋白の遺伝子解析により、I型とII型の2タイプに分類すると、流行を、I型とII型とに分けることが出来る。PI蛋白(P1蛋白質)は、M. pneumoniaeの表面に存在し、宿主の気道上皮細胞に付着するのに作用する。
 マイコプラズマ・ニューモニエ(M. pneumoniae)は、初発症状(熱、咳)が現れる2〜8日前から、気道粘液へ排泄される(感染力がある)。気道粘液への排泄は、臨床症状が現れた時点で最大になり、約1週間、多量に排泄され続け、4〜6週間以上排泄が続く。
 マイコプラズマ・ニューモニエ(肺炎マイコプラズマ)は、マクロライド系抗生剤(ML)に耐性菌が増えている。マクロライド耐性菌は、エリスロマイシン(EM)、 クラリスロマイシン(CAM)、 アジスロマイシン(AZM)等に、高度耐性化している。ミノマイシンは、耐性菌は認められていないが、抗菌力が格別に優れている訳でない。マイコプラズマ肺炎で、マクロライド系抗生剤を使って解熱しないと、ミノマイシンに変更する事があるが、ミノマイシンに変更する頃は、自然に解熱する時期になっていているのかも知れない。ミノマイシンは、将来、着色歯を来たすことがあるので、8歳以上の小児でないと、使い辛いが、点滴静注(2mg/kg/回、1日2回、内服量も同じ)は、7日以内が望ましい。薬が飲めない場合などは、クリンダマイシンの点滴静注(5〜6mg/kg/回、1日3〜4回)が有効(投与量は大目の方が確実に効果がある)。
 マイコプラズマニューモニア(肺炎マイコプラズマ)は、咳や痰などにより、経気道的に飛沫感染する。接触感染もあるが、濃厚接触が必要と言われる。
 マイコプラズマニューモニアは、気道粘液に、症状が発現する2〜8日前から排出され、症状発現時に最も排出され、約1週間多量に排出された後も、4〜6週間以上排出が続くと言われる。

 クラミジアは、繊毛に付着するのみならず、マクロファージ内でも増殖するので、クラミジア肺炎は、気管支と肺胞(間質)にも病変が起こる。
 マイコプラズマは、繊毛を有する宿主の上皮細胞にのみ感染するので、マイコプラズマ肺炎では、呼吸細気管支より太い気管支にのみ病変が起こるので、マイコプラズマ肺炎では、病初期には、ラ音は聴取されることが少ない。

 マイコプラズマ肺炎(マイコプラズマ・ニューモニエによる肺炎)は、年長児では、胸部X線検査では、陰影は面を示す(無気肺と同様に陰影部分の肺容積が小さくなる)。
 マイコプラズマ肺炎は、年少児では、ウイルス肺炎やクラミジア肺炎と同様に、線を示す。

 肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)は、細菌と異なり細胞壁を有さないが、限界膜(3層)を有する。
 肺炎マイコプラズマの感染力が強いのは、初発症状発現前2日前から、強い呼吸器症状がある間。
 なお、マイコプラズマ肺炎は、学校保健法(学校において予防すべき伝染病)には明確に規定されていない。学校で流行が起こった場合に、流行を防ぐ為に、必要であれば、学校長が学校医の意見を聞き、第3種学校伝染病としての措置を講じることが出来る疾患の内、条件によっては出席停止の措置が必要と考えられる伝染病の一つとして例示されている。登校や登園は、急性期が過ぎて症状が改善し、全身状態が良くなれば、可能。学校保健法は、2009年(平成21年)4月1日から、学校保健安全法と改称された。

 マイコプラズマ感染症では、鼻水は、水様性鼻汁でなく、粘稠性鼻汁のことが多い(鼻閉あり)。

 注1:オウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)は、鳥には、鳥クラミジア症を起こす(症状は、無気力、食欲不振、体重減少、下痢、等)が、不顕感染で、保菌していることもある。
 鳥では、オウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)に感染した後、発症するまでの潜伏期間は、3日〜数週間とされる。

 注2:クラミジア肺炎と言った場合、肺炎クラミジア(Chlamydia pneumoniae)が、ヒトからヒトに、咳嗽などにより飛沫感染して発症させる肺炎(小児〜高齢者にまで見られる)と、トラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)が、病原体を子宮頚管に有する母親から、産道感染して発症させる肺炎(新生児や乳児に見られる)と、二種類、存在する。
 オウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)は、オウム病として、肺炎を発症させるが、オウム病では、感染症法の四類感染症であり、病原体診断や血清学的診断で確定診断された場合は、届出の義務がある。
 トラコーマクラミジアは、性器から、病原体が検出された場合(培養による病原体の検出、酵素抗体法による病原体抗原の検出、PCR法などによる病原体遺伝子の検出)、感染症法により、届出の義務がある。

 注3百日咳は、百日咳菌に感染した後、1〜2週間(7〜14日間)の潜伏期間の後、無熱の感冒様症状で咳が始まり(カタル期)、咳は、1〜2週間後には、百日咳に特有な咳発作が現れる(痙咳期)。百日咳に特有な咳発作は、夜間の方が、昼間より、多い。

 百日咳では、コンコンコンコン→ヒューと、特有の咳発作が見られる:百日咳で見られる特有な咳発作は、staccato(呼気:咳を、コンコンと、数回〜20数回、連続して、長い間、咳き込む)と、reprise(吸気:長く咳き込んだ後、ヒューと笛声を発して、息を吸い込む)のが、特徴。
 <百日咳特有の咳発作の録音テープを聞くには、ここをクリック>

 百日咳は、特有な咳発作に伴ない、咳き込んで、嘔吐することが多い。体重減少が見られる。

 百日咳は、カタル期では、普通の感冒と区別することは、困難である。
 百日咳は、痙咳期でも、夜間は、百日咳に特有な咳発作をしていても、昼間(外来受診時)は、気付かれないこともある。咳き込みの為、眼瞼が浮腫状に腫脹し、所謂、百日咳顔貌を呈する。

 百日咳に特有な咳発作は、3〜4週間、続く。
 百日咳に特有な咳発作は、百日咳菌が産生する毒素によって生じるので、百日咳菌に有効な抗生剤(EMなど)が投与され、百日咳菌が消失しても、直ちに、咳の改善は、得られない。
 乳児、特に、6カ月未満の小児が百日咳に罹患すると、重篤になるおそれがある。

 百日咳では、末梢血液検査で、カタル期の終わり頃に、白血球数が増加する(リンパ球が増加する)。白血球数は、リンパ球が優位に、20,000〜45,000にまで増加し、白血病と誤診されることもあった。
 百日咳では、通常(細菌の混合感染がなければ)、CRP値は正常で、赤沈(血沈)も亢進しない。

 肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)は、細菌と異なり細胞壁を有さないが、限界膜(3層)を有する。

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