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 播種性血管内凝固症候群(DIC)

 1.播種性血管内凝固症候群(DIC)とは
 播種性血管内凝固症候群(DIC:disseminated intravascular coagulation:汎発性血管内凝固症候群、)では、重篤な基礎疾患の存在下に、全身の細小血管内に微小血栓が形成される。
 そのため、微小循環が障害され、臓器の機能不全や出血傾向が見られる。
 DICの病態は、SIRS(全身性炎症反応症候群)とも関連する。

 DICでは、下記の3つの障害や反応が起こる。
 1).微小血栓形成による微小循環障害
 微小血栓が微小循環を障害し、虚血の為に、多数の臓器が機能不全に陥る
 虚血性変化が出現しやすいのは、腎臓で、血尿、乏尿、無尿になる。
 中枢神経の虚血性変化としては、意識障害や多彩な局所神経症状が現われる。
 消化管では、急性潰瘍による下血、腹痛などが起きる。
 肺では、肺梗塞のために、呼吸困難などの症状を呈する。
 ショック状態を呈することもある。

 2).微小血栓形成による消費性凝固障害
 組織因子(tissue factor:TF)が、細胞表面に多く発現し、外因系血液凝固が促進される。
 血液凝固因子や血小板が消費され、出血傾向が現われる。
 血液中の第VIII因子、第V因子、アンチトロンビンIII(antithrombin III:ATIII)が低下する。
 フィブリノゲンは、基礎疾患の為に産生が亢進していて、血液中の濃度が低下しないことがある。

 3).過剰線溶
 凝固の促進に応じて、線溶系も活性化され、フィブリンを分解するプラスミンが生成される。
 プラスミンを阻害するα2プラスミンインヒビター(α2PI)が消費され、正常の60%未満に減少すると、プラスミンによってフィブリンが分解され、出血傾向が現われる。
 フィブリンの分解産物(fibrin degradation products:FDP)が血液中に増加する。FDP高値のDIC患者は、線溶が盛んなことを示し、臓器障害は少ないという。
 
 2.敗血症に伴うDIC
 敗血症に伴うDICでは、単球(マクロファージ)から産生される、腫瘍壊死因子(TNF-α)や、インターロイキン(IL-1β)などのサイトカインが、好中球を活性化させる。
 好中球から産生される、好中球エラスターゼ活性酸素により、血管内皮細胞が障害され、血管内皮透過性が亢進したり、血管攣縮が起こり、循環が泥状化し、微小循環が障害される。
 また、障害された血管内皮では、単球自身や血管内皮細胞が活性化され、細胞表面に組織因子を発現させ、微小血栓が形成されると考えられる。

 白血病や産科異常に伴うDICでは、微小血栓形成が主な病態と考えられる。それに対して、敗血症に伴うDICでは、血管内皮細胞障害が主な病態で、その為に、微小循環障害微小血栓形成が起こると考えられる。微小血栓形成は、微小循環障害をさらに悪化させ、多臓器不全(multiple organ failure:MOF)を引き起こす。

 TNF-αなどのサイトカインは、プラスミンを阻害するα2PIの産生を亢進させ、また、プラスミンの産生を抑制するPAI-1(プラスミノゲンアクチベーターインヒビター-1)の産生を亢進させる。
 その結果、敗血症に伴うDICでは、線溶系はむしろ抑制され、形成された微小血栓は、溶解されにくくなり、出血傾向は、現われにくい
 しかし、血管内皮細胞障害と、微小血栓形成による臓器微小循環障害により、重篤な臓器機能不全が起こりやすい。
 
 敗血症では、内因系血液凝固も活性化され、血液凝固第XII因子が活性化され、カリクレインブラジキニン補体(C5a)が生成される。
 ブラジキニンには、強力な血管平滑筋弛緩作用があり、血管を拡張させて血圧を低下させ、ショック状態の発現に関与すると考えられる(注1)。これらの。また、ブラジキニンは、毛細血管の透過性を亢進させて、浮腫をもたらす。

 3.DICの治療
 ・基礎疾患の治療。
 ・抗凝固療法:ヘパリンATIIIを投与する。
 ・補充療法:血小板、凝固因子(新鮮凍結血漿)を補充する。
 ・血管内皮細胞障害の治療:FOY(メシル酸ガベキサート:単球からのサイトカイン産生を抑制する)の投与。ATIIIも、血管内皮細胞からのPGI2産生を促進させ、活性化白血球(単球、好中球)を抑制する。

 4.ショック
 ショックとは、末梢循環不全の為、生命維持に必要な血流を維持出来ない上体を意味する。ショックでは、末梢の虚血、意識障害、血圧低下、体温低下などが見られる。

 ショックには、ウォームショックと、コールドショックとがある。

 1).ウォームショック
 ウォームショックは、毛細血管が拡張し、末梢の血流が増加し、皮膚は暖かくなるが、循環血液量が、相対的に不足する。ウォームショックは、神経原性ショック、アナフィラキシーショック、エンドトキシンショックで見られる。 ウォームショックは、心臓を空うちさせて疲労させる為、最終的に心機能が低下し、コールドショックへ移行すると言われる。

 2).コールドショック
 コールドショックは、末梢の血流が虚血になり、皮膚は冷たくなる。コールドショックは、出血性ショック、熱傷性ショック、心原性ショックで、見られる。

 注1:LPSなどのエンドトキシンによるショックでは、アナンダマイド(ANA)や2-AGという内因性マリファナが、低血圧を起こす原因だという。


 注1:LPSなどのエンドトキシンによるショックでは、アナンダマイド(ANA)や2-AGという内因性マリファナが、低血圧を起こす原因だという。

 参考文献
 ・川上哲夫:DIC(汎発性血管内凝固症候群) 小児科 Vol.40, No.9, 1109-1116, 1999年.

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