サイトカイン
IL-2、IFN-γ、TNF-βは、細胞性免疫を制御する。
IL-4、IL-5、IL-6などは、液性免疫を制御する。
1.サイトカインとは
血液中から単核球(リンパ球と単球)を分離し、単球を除去し、リンパ球を試験管内で、PHAなどのレクチンで刺激し、活性化させ、培養する。そうすると、刺激・活性化されたリンパ球から、培養上清中に、リンパ球の増殖に関与したり、単球の機能に作用する蛋白(糖蛋白)が、産生されていることが知られた(1965年、笠倉、Gordon等)。
このような蛋白は、最初、リンホカイン(lymphokine)と呼ばれた。
単球/マクロファージ(Mφ)も、リンパ球の増殖に関与する蛋白を産生することが知られ、それらの蛋白は、モノカイン(monokine)と呼ばれた。
リンホカインやモノカインは、リンパ球からも単球からも産生されるものが存在することが知られ、リンホカイン、モノカインと区別に区別することは、不可能であった。
そこで、リンパ球や単球などの細胞から産生されて、細胞の増殖、分化、成熟、機能発現を作用する蛋白(糖蛋白)を、サイトカイン(cytokine)と総称するようになった。
これらのサイトカインの内、遺伝子工学の技術の進歩により、その蛋白を産生する遺伝子が発見(クローニング)されて、存在が確認されたものは、「インターロイキン(interleukin)-何番」と、命名された。
サイトカインは、極微量(pg〜ng/ml)で、生理活性を有する。
サイトカインは、炎症反応や免疫応答を調節したり、アポトーシスを誘導したり、造血因子や成長因子として作用したりする。
2.サイトカインの種類
1).インターロイキン(interleukin:IL)
白血球(leukocyte)間の情報伝達を行い、細胞の分化、増殖、活性化に関与する。
2).インターフェロン(interferon:IFN)
タイプI IFNINF-α(白血球性IFN)、INF-β、
タイプII IFN:INF-γ(免疫IFN)
3).腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor-α:TNF-α)
TNF-αは、代表的な炎症性サイトカイン。
4).コロニー刺激因子(colony stimulating factor:CSF)
顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、単球コロニー刺激因子(M-CSF)、エリスロポエチン(EPO)、SCF(stem cell factor)
5).成長因子(growth factor:GF)
上皮成長因子(EGF:epidermal growth factor)、線維芽細胞成長因子(FGF:fibroblast growth factor)、インスリン様成長因子(IGF:insulin like growth factor)、神経成長因子(NGF:nerve growth factor)、血小板由来成長因子(PDGF:platelet derived growth factor)、トランスフォーミング成長因子(TGF:transforming growth factor)
3.各サイトカインの特徴
1).IL-1(interleukin-1)
IL-1は、等電点の違いから、IL-1αとIL-1βとに、別けられる。
生体内で産生されるIL-1は、約90%が、IL-1β。IL-1αは、単核食細胞が、IL-1βは、線維芽細胞、ケラチノサイトが、産生する。
IL-1βは、単球・マクロファージ(Mφ)、リンパ球(B細胞)、内皮細胞、ケラチノサイトなどから産生される。
IL-1の産生は、LPS刺激、TNF-α刺激(細菌感染時)、ヘルパーT細胞の相互作用で、惹起される。
IL-1は、(ヘルパー)T細胞によるIL-2産生を、増加させる。
IL-1βは、B細胞を増殖させ、抗体産生を増強させる。
IL-1βは、単球、マクロファージに作用して、TNF-α、IL-1、IL-6、IL-8の産生を誘導する。
IL-1βは、血管内皮細胞を変化させ、血管透過性を亢進させる。
IL-1は、肝細胞での急性期蛋白質(CRP)の産生を、促進させる。
IL-1βは、脳視床下部の温度中枢に作用して、PGE2の産生を亢進させ、発熱を引き起こす内因性発熱物質(endogenous pyrogen:EP)。IL-1以外に、IL-6、IFN-γ、TNF-αにも、内因性発熱物質作用(EP作用)がある。
IL-1は、結合組織系細胞に働いて、PGE2の産生を促進させる。IL-1は、滑膜細胞に働いて、滑膜細胞の増殖と、PGE2の産生を、増加させる。IL-1やPGE2は、破骨細胞を刺激し、骨吸収を促進させる。関節リウマチなどの疾患で、炎症関節局所の骨萎縮が起こるのは、炎症により、単球・マクロファージが、免疫複合体、補体成分、T細胞から分泌されるIFN-γに刺激され、IL-1やPGE2を産生し、これらのIL-1やPGE2が、破骨細胞を刺激し、骨吸収を促進させる為と言われる。
IL-1は、TNF-αと類似した作用を示すが、TNF-αと異なり、高濃度であっても、細胞障害(組織損傷)を起こさない。
2).IL-2(interleukin-2)
IL-2は、T細胞(Th1細胞)、NK細胞、LGL細胞、CTL(キラーT細胞)から産生される。
IL-2は、CD8T細胞(キラーT細胞)やCD4T細胞(ヘルパーT細胞)を増殖、活性化させる。
IL-2は、NK細胞を、増殖、分化、活性化させる。
IL-2は、単球・マクロファージ(Mφ)を活性化させる。
3).IL-4(interleukin-4)
IL-4は、活性化されたCD4T細胞(Th2細胞)、CD8T細胞、マスト細胞(肥満細胞)、好塩基球、NKT細胞から産生される。
IL-4は、Th2細胞の増殖や分化を促進する。
IL-4は、活性化されたB細胞に作用し、IgMから、IgG1、IgEへのクラススイッチを促進させ、IgG1抗体、IgE抗体の産生を促進する。
IL-4は、IFN-γの作用に拮抗し、IgG2へのクラススイッチを抑制する。
IL-4は、マクロファージの活性化を抑制し、NO、プロスタグランジン(PGE2)、IFN-γの産生を、抑制する。
IL-4は、血管内皮細胞のVCAM-1の発現を増強し、リンパ球や単球の、血管内皮細胞への接着を、促進する。
4).IL-6(interleukin-6)
IL-6は、IL-1により刺激された単核食細胞(単球/マクロファージ)、血管内皮細胞、線維芽細胞、ケラチノサイトなどから産生される。
IL-6は、B細胞や形質細胞(プラズマ細胞)を増殖させ、IgG、IgM、IgAを産生させる(抗体産生増強)。
IL-6は、T細胞の分化や活性化にも関与する。
IL-6は、肝細胞に作用し、CRP、ハプトグロビンなどの急性期蛋白を誘導する。
IL-6は、関節リウマチ患者の関節液中に、著明に増加している。
5).IL-10(interleukin-10)
IL-10は、Th2細胞、単球、マクロファージ(Mφ)、B-1細胞(自然抗体のIgM、IgG3、IgAを産生する)、マスト細胞(肥満細胞)、ケラチノサイトなど、多くの細胞から産生される。
IL-10は、Th1細胞からのINF-γ産生を抑制する。
IL-10は、マクロファージからのIL-1、IL-6、Il-12、TNF-αの産生を抑制する。
IL-10は、マクロファージのT細胞活性化補助機能も、抑制する:IL-10は、T細胞のMHCクラスII分子や補助受容体の発現や、マクロファージのCD80/CD86の発現を、抑制する。
6).IL-12(interleukin-12)
IL-12は、強力なIFN-γ誘導因子:IL-12は、NK細胞やNKT細胞を活性化させ、IFN-γ産生を誘導する。
IL-12には、p35とp40の二つのサブユニットが存在する:p35は、恒常的に産生されている。p40は、活性化されたマクロファージ(Mφ)やB細胞が、産生する。IL-12は、T細胞により産生されない唯一のサイトカインである。
抗原提示細胞(樹状細胞、マクロファージ)が分泌するIL-12は、ナイーブヘルパーT細胞(Th0細胞)を、Th1細胞に分化させる。T細胞(Th0細胞)が、IL-12R(IL-12受容体)を発現することが、Th1細胞への分化には、必須。このTh1細胞への分化の際、T細胞表面のCD28と、樹状細胞表面のCD80/CD86とが、相互作用する。
抗原提示細胞がL-12を分泌するには、T細胞とのCD40/CD154(CD40L)共刺激(CD40-CD154 interaction)と、IFN-γが必要。
漢方薬の葛根湯は、マウスの実験結果では、インフルエンザ感染時に、IL-12の産生を増加させ、肺インフルエンザウイルス量を減少させ、IL-1の産生を抑制し、発熱や関節痛など、インフルエンザの症状を軽快させる。
7).IL-18
IL-18は、アレルギー性疾患(IgE産生やアレルギー性炎症)の発症に関与する。
IL-18は、マクロファージ内で前駆体として産生され、グラム陰性菌の細胞壁のリポ多糖体(LPS)により活性化されたcaspase-1により切断され、活性型となり、分泌される。
IL-18は、Th1細胞を、抗原で刺激し(抗原存在下に)、活性化させ、IFN-γを産生させる。また、IL-18は、(IL-2が共存すると、)Th2細胞を、活性化させ、Th2サイトカイン(IL-4、IL-5、IL-9、IL-13)を産生させる。
IL-18は、マウスに投与すると、抗原刺激無しに、T細胞を活性化させ、T細胞のIL-4産生、CD40リガンド(CD40L)発現を増強させ、IgE産生を誘導する。
IL-18は、IL-3と相乗的に、肥満細胞(マスト細胞)や、好塩基球に作用して、IL-4、IL-13、ヒスタミン産生を誘導する。
感染症は、アレルギー性疾患の症状を、増悪させるが、病原体成分は、気道上皮細胞や、皮膚ケラチノサイトを刺激し、IL-18を産生させる。
8).IFN-α、IFN-β
IFN-αやIFN-βは、タイプI IFNと呼ばれる。
IFN-αやIFN-βは、ウイルスに感染した細胞が、産生する。
IFN-αやIFN-βは、ウイルス感染を契機に産生され、抗ウイルス作用がある。IFN-αやIFN-βは、ウイルス由来の二本鎖RNAが引き金となり、産生される。
IFN-αは、単核食細胞から産生される白血球性IFNで、20種類のサブタイプが存在するが、全て、同じ受容体(タイプI IFN-R)に結合する。
IFN-βは、線維芽細胞から産生され、1種類のみ存在し、IFN-αと同じ受容体に結合する。
ウイルスに感染すると、マクロファージ(Mφ)や好中球は、IFN-αを産生し、線維芽細胞は、IFN-βを産生する。
IFN-αやIFN-βが、標的細胞(組織細胞)の受容体(タイプI IFN-R)に結合すると、2,5-AS(2',5'-オリゴアデニル酸合成酵素)など、特定の酵素の生成が誘導される。2,5-ASは、エンドヌクレアーゼを活性化させ、ウイルスのmRNAを破壊し、細胞内でのウイルス複製を阻害する。このように、IFN-αやIFN-βは、ウイルス複製の阻害による抗ウイルス作用を示す)。
(ウイルスの)二本鎖RNAは、IFN-αやIFN-βの産生を惹起する。
IFN-αやIFN-βは、NK細胞活性を亢進させ、CTL(キラーT細胞)の生成を増強する。このように、IFN-αやIFN-βは、ウイルス感染細胞の障害により抗ウイルス作用を示す。
IFN-αやIFN-βは、MHC分子(MHC抗原)の発現を制御する:IFN-αやIFN-βは、MHCクラスI分子の発現を促進し、MHCクラスII分子の発現を抑制(阻害)する。
樹状細胞は、TLRsが刺激されると、核内に情報が伝達され、インターフェロンを産生する。TLR7、TLR9を介しては、INF-αの産生が誘導される。plasmacytoid DC(形質細胞様樹状細胞)は、TLR7、TLR9を発現していて、IFN-αの産生能が高い。TLR3、TLR4を介しては、INF-βの産生が誘導される。
9).IFN-γ
IFN-γ(interferon-gamma)は、タイプII IFN(免疫IFN)と呼ばれる。
IFN-γは、CD4T細胞のTh1細胞、CD8T細胞、NK細胞、NKT細胞から産生される:IFN-γは、主に、CD4陽性ヘルパーT細胞(特に、Th1細胞)や、CD8陽性キラーT細胞(CTL)が産生するが、IL-12で活性化されたNK細胞やNKT細胞も、IFN-γを産生する。
IL-12で活性化されたNK細胞は、IFN-γを産生する。NK細胞から産生されたIFN-γは、NK細胞活性を、培養3日目をピ−クに、増強させる。 IFN-αやIL-2も、NK細胞活性を増強させるが、活性の増強は、早期に見られる(IFN-αでは、活性の増強は、培養1日以内に見られ、IL-2では、活性の増強は、培養2日目からピークになる)。
IFN-γは、IFN-αやIFN-βの受容体(タイプI IFN-R)と異なる、特異的な受容体に結合する。
IFN-γは、MHCクラスI分子、MHCクラスII分子、Fcγレセプター、TNFレセプターの発現を、増加させる。
IFN-γは、抗ウイルス効果、NK細胞やCTLやマクロファージの細胞障害活性の増強作用が、ある。
IFN-γは、単核食細胞の活性化因子であり、マクロファージを活性化させ(IL-1を産生させる)、マクロファージによる細胞内寄生菌の殺菌を促進しする。
IFN-γは、マクロファージによる一酸化窒素(NO)産生を、高める。
IFN-γは、MHCクラスII分子の発現を促進する。
IFN-γは、Th2細胞を抑制して、IgE抗体産生を抑制する:Th1細胞が産生するIFN-γは、Th2細胞のCD40リガンド(CD40L、gp39)発現を抑制し、IgE抗体産生を抑制する。Th1細胞が産生するIFN-γは、ナイーブヘルパーT細胞(Th0細胞)のTh1細胞への分化を促進し、Th2細胞の生成を抑制する。
IFN-γの産生は、IL-12、IL-18により、促進される。
10).TNF-α
TNF-αは、炎症性サイトカイン。
TNF-αは、主にマクロファージ(Mφ)から産生される。マクロファージ以外に、好中球、線維芽細胞、リンパ球(T細胞)、NK細胞、肥満細胞、などからも産生される。
TNF-αは、腫瘍細胞を障害する(抗腫瘍効果)。
TNF-αは、標的細胞のTNF受容体に結合し、細胞内へ「死のシグナル」を伝達し、標的細胞をアポトーシスにより、死滅させる。
TNF-αは、マクロファージやNK細胞を活性化する。
TNF-αは、血管内皮細胞や血管平滑筋細胞に作用して、PGI2、NOを介して、血管透過性亢進、血管拡張、浮腫、血圧低下を来たす。
TNF-αにも、IL-1、IL-6、IFN-γ同様に、内因性発熱物質(endogenous pyrogen:EP)作用がある。
低濃度のTNF-αは、血管内皮細胞に作用し、接着分子の発現を増強させる。
低濃度のTNF-αは、白血球を活性化させ、細胞内寄生菌の殺傷を促進する。
低濃度のTNF-αは、単核食細胞から、IL-1、IL-6、TNF-αなどの産生を、促進させる。
高濃度のTNF-αは、内因性発熱物質(EP)として作用する。
高濃度のTNF-αは、肝臓で、急性期蛋白質(急性炎症性蛋白質:CRPやMBL)の産生を、促進させる。
TNF-αは、IFN-α(主に、plasmacytoid DCが産生する)の産生を抑制する。Plasmacytoid DCsは、表面マーカーが、CD11c-CD4+CD123+CD45RA+HLA-DR+。
11).TNF-β(LT)
TNF-βは、LT(Lymphotoxin:リンフォトキシン)と呼ばれる。LT(TNF-β)は、TNF-αと同じ受容体(TNF-R)に結合するが、産生される量は、TNF-αより微量で、産生された局所で作用する。LT(TNF-β)は、腫瘍細胞にアポトーシスを誘導するが、正常細胞には、作用しない。
12).TGF-β(transforming growth factor-β)
TGF-βは、血小板、胎盤、肺、脾、骨髄、脳、臍帯などから、産生される。
TGFには、TGF-αと、TGF-βとが、存在する。TGF-βには、TGF-β1〜TGF-β2の5種類が存在する。TGF-β1は、免疫細胞が産生する。
TGF-βは、主に免疫抑制的に作用する、抗炎症サイトカイン:TGF-β1は、リンパ球(T細胞やB細胞)の増殖・分化を抑制する。TGF-β1は、NK細胞活性を抑制する。その結果、免疫応答、炎症反応、造血が、抑制される。
TGF-βは、多くの組織で、細胞外基質蛋白を産生し、分解酵素を抑制し、創傷治癒を促進する。
TGF-βは、上皮細胞や血管内皮細胞の増殖や新生を促進する。
TGF-βは、単球からのTNF-α産生、IFN-γの産生を抑制する。参考文献の「カラー図解 靭帯の正常構造と機能」の38頁の図72と、「わかりやすい免疫疾患」のS47の表1、「標準免疫学」の278頁の表7A-3を参考に、内容を改変して作成した
命名 主な産生細胞 主な標的細胞 主な作用 IL-1 単核食細胞(Mφ)、B細胞 リンパ球、肝細胞 結合組織系細胞のPGE2産生、T細胞のIL-2産生、肝細胞のCRP産生、発熱 IL-2 T細胞(Th1細胞)、NK細胞 T細胞 T細胞の増殖とサイトカイン産生、NK細胞の増殖・分化・活性化 IL-4 T細胞(Th2細胞)、NKT細胞 B細胞 B細胞の分化・増殖、IgE・IgG1産生、Th2細胞への分化 IL-5 T細胞(Th2細胞)、肥満細胞 B細胞、好酸球 B細胞の分化・増殖(IgM・IgA・IgG3産生)、好酸球の増殖・分化・活性化・遊走 IL-6 単核食細胞、血管内皮細胞 B細胞、肝細胞 B細胞や形質細胞の増殖(Ig産生)、肝細胞のCRP産生、発熱 IL-10 T細胞(Th2細胞)、Mφ T細胞(Th1細胞) IFN-γ産生を抑制、MφのIL-1産生を抑制、T細胞のMHCクラスII分子発現を抑制 IL-12 Mφ、樹状細胞、B細胞 NK細胞、T細胞(Th0細胞) NK細胞・NKT細胞を刺激しIFN-γ産生、Th0細胞からTh1細胞への分化を誘導 IL-13 T細胞(Th2細胞)、NK細胞 B細胞、Mφ B細胞の分化・増殖、Mφの炎症性サイトカイン産生を抑制しMHCクラスII分子を発現 IL-15 単核食細胞(Mφ) BK細胞、T細胞、B細胞、Mφ IL-2と同じくNK細胞の増殖・分化・活性化、記憶T細胞の維持、骨破壊 IL-17 活性化記憶T細胞 好中球、内皮細胞、線維芽細胞 好中球の遊走、局所の炎症、線維芽細胞などによるサイトカイン産生 IL-18 Mφ、肝クッパー細胞 Th1細胞、B細胞、NK細胞、Mφ IL-2と共にT細胞からIL-4を産生(Th2細胞へ分化)、IgE産生、血管新生、 IFN-α 単核食細胞(Mφ)、好中球 組織細胞、NK細胞 ウイルス複製の阻害、MHCクラスI分子を発現、2,5-AS産生、 IFN-β 線維芽細胞 組織細胞、NK細胞 ウイルス複製の阻害、MHCクラスI分子を発現、2,5-AS産生、IL-6と同じ作用 IFN-γ Th1細胞、CTL、NK細胞 組織細胞、NK細胞 MφとNK細胞の活性化、MHCクラスI・II分子を発現、IgE抗体産生を抑制、発熱 TNF-α Mφ、NK細胞、T細胞 T細胞、NK細胞、Mφ 腫瘍細胞を障害、局所の炎症を誘導、血管新生、IL-1、CRP産生、発熱 TNF-β Th1細胞 T細胞、B細胞 腫瘍細胞を障害、局所の炎症を誘導、血管新生、単核食細胞活性化、NO産生 TGF-β CD4T細胞、Mφ、血小板 T細胞、B細胞、Mφ B細胞の増殖やIg産生抑制、線維芽細胞の増殖、創傷治癒の促進 附記:STATとサイトカイン
STAT1(signal transducer and activator of transcription 1)は、シグナル伝達と、転写活性化の二つの機能を有する。
STAT1は、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、上皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、IL-6などにより、チロシン部分がリン酸化され、活性化される。
マクロファージ/DC(樹状細胞)は、ヘルパーT細胞や、NK細胞細胞や、自分が産生するIFN-γにより、細胞表面のIFN-γ受容体(レセプター)が刺激されると、STAT1が活性化され、TNF-α、IL-12などの遺伝子の発現が増加し、抗酸菌、リステリア、サルモネラ、レジオネラなど細胞内寄生菌が、排除される。STAT1が活性化されると、マクロファージ/DC(樹状細胞)からIL-12が分泌され、ヘルパーT細胞や、NK細胞細の表面のIL-12受容体に結合し、STAT4が活性化され、IFN-γが産生される。
参考文献
・山本一彦、他:カラー図解 靭帯の正常構造と機能 IV 血液・免疫・内分泌 (日本医事新報社、2002年).
・遠田悦子、他:サイトカインとケモカイン わかりやすい免疫疾患 日本医師会雑誌 特別号(1) S46-S50, 2005年.
・谷口克、他:標準免疫学(第2版、医学書院、2004年).
・吉野加津哉、他:サイトカインと炎症 小児科 Vol.35, No.10, 1233-1246, 1994年.
・原寿郎:STAT1欠損症による免疫不全の病態(質疑応答) 日本醫事新報 No.4222(2005年3月26日)、108-110頁.
・Mary F. Lipscomb et al: Dendritic Cells: Immune Regulators in Health and Disease Physiol. Rev. 82: 97-130, 2002.