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 不飽和脂肪酸の酸化と、その予防

 1.不飽和脂肪酸の酸化
 油脂を空気にさらしておくと、色が変わって劣化するのは、空気中の酸素により、不飽和脂肪酸が自動酸化され、過酸化脂質脂質ヒドロペルオキシド)が生じるためです。光(特に、波長が短い紫外線)が当たることでも、自動酸化は起きます。
 -CH2-CH=CH-+O2→-CH=CH-CH(OOH)-

 不飽和脂肪酸は、体内で、活性酸素により連鎖的脂質過酸化反応が起こり、酸化されます。
 つまり、活性酸素のヒドキシルラジカルにより脂質(LH)が酸化させて生じる脂質ラジカル(L・)が、酸素分子(O2)と反応して、脂質ペルオキシルラジカル(LOO・)となります。この脂質ペルオキシルラジカル(LOO・)が、他の脂質(LH)と反応して、過酸化脂質(LOOH)と新たなる脂質ラジカル(L・)を生成する反応が、連鎖的に起こります。

 体内では、リノール酸が最も酸化され易く、次いで、γ-リノレン酸、アラキドン酸などであり、n-3系多価不飽和脂肪酸のエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)の方が酸化されにくいと言われています。

 細胞膜のリン脂質に含まれる不飽和脂肪酸が酸化されると、細胞機能が低下します。

 また、血液中では、酸化された不飽和脂肪酸を含む酸化LDLは、動脈硬化の原因となったり、血管内皮細胞に作用して血栓形成を促進します。

 なお、過酸化脂質は、体内で不飽和脂肪酸(リン脂質や中性脂肪に含まれる)やコレステロールが、活性酸素などにより酸化され、生成されるものが、問題です。
 食品にも、過酸化脂質が含まれます。しかし、食品中の過酸化脂質は、小腸で、99.5%が安全な形に変わってから吸収されると言われます。

 2.組織(細胞膜)では、抗酸化物質のビタミンEが、過酸化脂質の生成を防ぐ
 抗酸化物質ビタミンEは、組織(細胞膜)で脂質ペルオキシルラジカル(LOO・)に電子と水素を供与して安定させ、連鎖的脂質過酸化反応を停止させ、過酸化脂質の生成を防ぎます。

 生体にとって重要な抗酸化物質であるビタミンEは、LDLと同時に運ばれていて、LDLが酸化されるのを防いでいると、考えられます。
 実際に、ビタミンE製剤の内服は、心筋梗塞発症の予防に有効とされています。

 しかし、血液中では、抗酸化物質のビタミンEが十分にあっても、過酸化脂質は生成されてしまいます。
 
 3.血液中では、抗酸化物質のビタミンCやユビキノールが、過酸化脂質の生成を防ぐ
 血漿を用いた実験では、水溶性のが、(LOOH:cholesterylester hydroperoxide、phosphatidylcholine hydroperoxide)の生成を抑制しました。
 しかし、この際、ビタミンEは消費されませんでした。

 血漿を用いた実験では、ビタミンEではなく、水溶性ビタミンCが、過酸化脂質脂質ヒドロペルオキシド:LOOH)でも、特に、CE-OOH(cholesterylester hydroperoxide)の生成を、抑制しました。
 ヒト血漿に、Cu2+(5μm)を添加し、37℃の空気中で、インキュベートした実験結果によりますと、脂溶性のビタミンEの濃度は、変化しませんが、最初に、水溶性のビタミンCの濃度が減少し(インキュベート開始6時間後程で涸渇し消滅)、次いで、脂溶性のCoQH2-10(CoQ10の還元型のユビキノール)の濃度が減少しました(インキュベート開始24時間後程で消滅)。それに伴ない、インキュベート開始22時間後から、血漿中に、過酸化脂質(脂質ヒドロペルオキシド)のCE-OOH(cholesterylester hydroperoxide:コレステロールエステルの不飽和脂肪酸が酸化)が増加し、インキュベート開始46時間後には、血漿中のCE-OOH濃度は、約0.4μMに達しました。なお、過酸化脂質のPC-OOH(phosphatidylcholine hydroperoxide:リン脂質のレシチンの不飽和脂肪酸が酸化)の増加は、インキュベート開始46時間後でも、明白でありませんでした。
 なお、ヒト血漿に、Cu2+(5μm)を添加しない場合、Cu2+(5μm)を添加した場合に比して、ビタミンCや、CoQH2-10の減少・涸渇に要する時間は長く(消費が遅い)、過酸化脂質のCE-OOH(cholesterylester hydroperoxide)の生成も遅く、生成量も、少量でした(CE-OOH血漿中濃度は、インキュベート開始46時間後でも、約0.05μM程度でした)。

 ビタミンCには、酸カしたビタミンEを再生させる作用があります。

 酸化ストレスがある肝疾患(慢性肝炎、肝硬変、肝癌など)では、ビタミンCが消費され、血液中のビタミンC濃度は低下しています。

 また、還元型コエンザイムQ-10であるユビキノールが、血液中で過酸化脂質の生成を抑える強力な物質として、注目されています。
 ユビキノールは、別名、(還元型)ユビキノン、補酵素Q、コエンザイムQ、ビタミンQなどとも呼ばれています。
 ユビキノールは、血漿を用いた実験で、過酸化脂質の生成を、ビタミンCより長い時間、抑制しました。
 酸化ストレスがある肝疾患では、酸化型のCoQユビキノン)が増加しています。

 4.野菜を食べて、抗酸化物質を摂りましょう
 緑黄色野菜は、ビタミンCが含まれているだけでなく、ビタミンE/多価不飽和脂肪酸比(mg/g)が高く、ビタミンE供給源としても優れています。
 また、ユビキノールやβ-カロテンなども含まれています。

 野菜を食べることにより、体内に抗酸化物質が増え、活性酸素により、有害な過酸化脂質が生成されるのが予防され、酸化ストレスから体が守られます。

 また、野菜に含まれる食物繊維が、食物中に含まれるリン脂質や中性脂肪やコレステロールの吸収を抑制し、高脂血症を予防することで、体内の過酸化脂質の増加を防いでくれると、も考えられます。

 抗酸化物質は、活性酸素発癌作用も抑えます。

 その他、大豆の発酵食品(納豆、味噌、醤油など)、ゴマニンニクも、抗酸化食品として、勧められます。

 参考文献
 ・吉川敏一:特集 生活習慣病と酸化ストレス 酸化ストレスとは 日本医師会雑誌 第124巻・第11号、1549-1533, 2000年.

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