ゴマ
1.ゴマの歴史
ゴマ(胡麻、sesame)は、熱帯アフリカのサバンナ地方が原産と言われる。ゴマの原産地は、サハラ砂漠周辺のサヘル(SAHEL)の南のサバンナだと言われる(注1)。
胡麻(ゴマ)の「胡」(えびす)は、中国北西部の匈奴(きょうど)や蛮人を意味し、漢の国から遠い西城の国(=外国)を意味すると言う。
(2005年に栽培したゴマの実)
2.ゴマに含まれるリグナン
ゴマは、微量成分として、リグナンを比較的多く含んでいる。
ゴマに含まれるリグナンには、セサミン(sesamin:C20H18O6)、セサモリン(sesamolin:C20H18O7)、セサモリノール(sesamolinol:C20H20O7)、セサミノール(sesaminol:C20H18O7)、ピノレシノール(C20H22O6)、シンプレオキシドアグリコン(C20H20O6)がある。
セサモリンは、酸加水分解により、セサモールとサミンになり、セサモールには、強い抗酸化作用がある(抗酸化物質)。
黒ゴマ(黒色系のゴマ)の方が、白ゴマ(白色系のゴマ)より、健康増進効果(乱視の改善など)が、強い。黒ゴマは、中国の明の時代の「本草綱目」には、「長服用すると、不老長寿の効果がある」と記されていると言う。黒ゴマには、髪の毛を黒々させるなど、老化防止効果がある。
リグナンの総量や、セサモリンの量は、黒ゴマより、白ゴマの方が、多く含まれている。黒ゴマの方が、リグニン含量が多く、油脂量が少ないと言う人もいる(注2)。
セサモリン/セサミン比は、黒ゴマの方が、白ゴマより、高い。
リグナンには、以下のような作用が知られている。
・抗酸化作用:セサミノールには、強い抗酸化作用がある(抗酸化物質)。セサミノールは、LDLの銅イオンによる酸化を、強力に抑制する。ゴマリグナン(セサミノール、セサモリノール、ピノレジノール、セサモール)やビタミンE(α-トコフェノール)は、ウサギの赤血球膜脂質を、t-ブチルヒドロペルオキシド(t-BuOH)が、酸化する反応(連鎖的脂質過酸化反応)を、抑制する。ゴマリグナン(特にピノレジノール)は、ラットの肝臓のミクロゾーム区分の脂質過酸化反応を、抑制する。
・殺虫協力作用:ゴマ油(ゴマ油中のセサミンのメチレンジオキシフェニル基)は、ピレスリンやロテノンの殺虫作用に、相乗効果を示す。ゴマ油単独では、殺虫作用がない。
・結核菌生育阻害作用:セサミンには、結核菌の生育阻害作用がある。
・アルコール分解促進作用:セサミンは、アルコール分解(アルコール代謝)を促進し、飲酒後の血液中からのアルコール消失を促進する(悪酔いの原因となるアセトアルデヒドによる毒性を、軽減させる)。
ゴマ種子は、自動酸化され易いリノール酸などの不飽和脂肪酸を多く含んでいるが、長期間貯蔵しても、発芽率が低下しない。
ゴマ油は、劣化しにくい。ゴマ油は、大豆油に比して、食品を揚げるのに利用して後も、劣化(変敗)し難い。
ゴマは、セサミンなどのゴマリグナンや、ビタミンEを含む。セサミンは、ペルオキシソームに作用して、脂質の代謝を促進するという。セサミノール配糖体は、抗酸化作用があるが、腸内細菌でセサミノールに変えられ、動脈硬化を予防する。ゴマに含まれるビタミンEは、γ-トコフェノールが多い。
ゴマには、ジホモ-γ-リノール酸(DGLA)を、アラキドン酸(AA)に変換することを、阻害する物質(リグナン類)が含まれていて、抗アレルギー作用もあると言う。ゴマ(胡麻)に含まれるゴマリグナンは、肝臓の活性酸素を減少させ、肝機能を上昇させると言う。ゴマリグナンは、肝臓で、β-酸化を促進させる(β-酸化系酵素と同じ働きをする)。
ゴマには、便秘解消効果もある。
ゴマは、冷え症に、効果がある。ゴマを食べると、体内での熱の産生が、増加する。これは、ゴマに含まれるゴマリグナンが、肝臓などで、β-酸化を促進させ、熱産生を高めるからだと思われる。
ゴマ(胡麻)に含まれるゴマリグナン(セサミンなど)は、肝臓の活性酸素を減少させ、肝機能を上昇させると言う。
ゴマリグナンは、肝臓で、β-酸化を促進させる(β-酸化系酵素と同じ働きをする)。
ゴマに含まれるセサミン(ゴマリグナン)は、肝臓で、ミトコンドリアとペルオキシゾームのβ-酸化系酵素の活性を,、増加させる。セサミンは、PPAR-αを活性化させ、脂肪酸分解(β-酸化)を促進する。セサミンは、脂肪酸合成をは抑制する:セサミンは、SREBP-1を抑制し、脂肪酸合成酵素(FAS)、ATP-クエン酸リアーゼ(ACL)、ピルビン酸キナーゼ(PK)の活性を抑制し、アセチル-CoAカルボシキラーゼ(ACC)の活性も軽度抑制する。
その結果、熱産生が増加するので、ゴマは、冷え性(冷え症)の治療に良い。
3.ゴマに含まれるビタミン類
ゴマは、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン(ニコチン酸)などのビタミン類も、多く含んでいる。
ゴマは、抗酸化物質であるビタミンEを、多く含んでいる。
表1 食品のビタミン含量(可食部100g当たりの含量:四訂食品成分表1992と五訂食品成分表2005とから引用)
食品名 |
ビタミンB1 |
ビタミンB2 |
ナイアシン |
ビタミンB6 |
ビタミンB12 |
葉酸 |
パントテン酸 |
ビタミンC |
ビタミンE |
mg |
mg |
mg |
mg |
μg |
μg |
mg |
mg |
mg |
ごま(乾) |
0.95 |
0.25 |
5.1 |
0.60 |
(0) |
93 |
0.56 |
Tr |
2.4 |
米ぬか(米糠) |
2.50 |
0.50 |
25 |
− |
− |
− |
− |
0 |
− |
玄米(水稲穀粒) |
0.41 |
0.04 |
6.3 |
0.45 |
(0) |
27 |
1.36 |
(0) |
1.3 |
玄米(水稲めし) |
0.16 |
0.02 |
2.9 |
0.21 |
(0) |
10 |
0.65 |
(0) |
0.5 |
精白米(水稲穀粒) |
0.08 |
0.02 |
1.2 |
0.12 |
(0) |
12 |
0.66 |
(0) |
0.2 |
精白米(水稲めし) |
0.02 |
0.01 |
0.2 |
0.02 |
(0) |
3 |
0.25 |
(0) |
Tr |
小麦粉(強力粉1等) |
0.10 |
0.05 |
0.9 |
0.07 |
(0) |
15 |
0.77 |
(0) |
0.3 |
食パン |
0.07 |
0.04 |
1.2 |
0.03 |
(Tr) |
32 |
0.47 |
(0) |
0.6 |
うどん(ゆで) |
0.02 |
0.01 |
0.2 |
0.01 |
(0) |
2 |
0.13 |
(0) |
0.1 |
そば(ゆで) |
0.05 |
0.02 |
0.5 |
0.04 |
(0) |
8 |
0.33 |
(0) |
0.2 |
鶏卵(全卵、生) |
0.06 |
0.43 |
0.1 |
0.08 |
0.9 |
43 |
1.45 |
0 |
1.1 |
鶏卵(卵黄、生) |
0.21 |
0.52 |
0 |
0.26 |
3.0 |
140 |
4.33 |
0 |
3.6 |
鶏卵(卵黄、ゆで) |
0.19 |
0.51 |
0 |
0.24 |
2.9 |
110 |
4.08 |
0 |
3.6 |
鶏卵(卵白、生) |
0 |
0.39 |
0.1 |
0 |
0 |
0 |
0.18 |
0 |
0 |
鶏卵(卵白、ゆで) |
0.01 |
0.35 |
0.1 |
0 |
0 |
2 |
0.18 |
0 |
0 |
普通牛乳 |
0.04 |
0.15 |
0.1 |
0.03 |
0.3 |
5 |
0.55 |
1 |
0.1 |
豚肉(ロース、焼き) |
0.90 |
0.21 |
9.2 |
0.33 |
0.5 |
1 |
1.19 |
1 |
0.1 |
鶏肉(ささ身、生) |
0.09 |
0.11 |
11.8 |
0.60 |
0.1 |
10 |
3.08 |
2 |
0.2 |
鶏肉(ささ身、焼き) |
0.10 |
0.14 |
15.5 |
0.52 |
0.2 |
8 |
3.16 |
2 |
Tr |
さんま(焼き) |
Tr |
0.29 |
10.0 |
0.41 |
19.3 |
19 |
1.00 |
Tr |
0.8 |
糸引き納豆 |
0.07 |
0.56 |
1.1 |
0.24 |
Tr |
120 |
3.60 |
Tr |
1.2 |
ほうれんそう(生) |
0.11 |
0.20 |
0.6 |
0.14 |
(0) |
210 |
0.20 |
35 |
2.1 |
ほうれんそう(ゆで) |
0.05 |
0.11 |
0.3 |
0.08 |
(0) |
110 |
0.13 |
19 |
2.7 |
4.ゴマに含まれる脂質
栽培種のゴマ(成熟種子)は、乾燥重量の59.5%が、脂質(油脂)から構成されている。
ゴマ(成熟種子)は、必須脂肪酸も含めた脂肪酸を多く含んでいる:ゴマ(栽培種)に含まれる脂肪酸組成は、オレイン酸(C18:1)が39.8%、リノール酸(C18:2)が46.8%、リノレン酸(C18:3)が1.2%、パルミチン酸(C16:0)が8.0%、ステアリン酸(C18:0)が4.3%。
ナタネ油やダイズ油などの植物油に含まれる不飽和脂肪酸の二重結合は、精製植物油を精製する工程などに際して、熱処理などの影響により、一部が、シス体から、トランス体へと、異性化してしまう。
精製植物油の内、ゴマ油は、不飽和脂肪酸のリノール酸を多く含んでいるが、精製後にも、異性化されたトランス体(トランス異性体)は、ほとんど存在しない。
表2 精製植物油中のトランス異性体含量(参考文献の松枝弘一氏の表3.11を改変し引用)
不飽和脂肪酸 |
ゴマ油 |
ナタネ油 |
ダイズ油 |
コーン油 |
コメ油 |
落花生油 |
リノール酸 |
0 |
2.27 |
1.38 |
2.29 |
3.23 |
2.50 |
リノレン酸 |
0 |
21.97 |
21.97 |
0 |
29.14 |
23.95 |
ゴマ油は、セサミノールの作用により、酸化されにくい。
ゴマ油(胡麻油)には、褐変物質(ゴマ油が黄色になる成分)であるメラノイジンが含まれていて、酸化安定性を高めている。
ゴマサラダ油は、ゴマ油を生成する段階(脱臭のプロセス)で、抗酸化作用のあるセサミノールが二次的に生成される。
ゴマ油に含まれているセサモリンは、ゴマを焙煎する段階で、セサモールに、変化する。ゴマ油に含まれているセサモリンは、てんぷらなどの加熱調理中に、セサモールに変化する。また、セサモリンは、純白ゴマ油などの製造工程で、セサミノールに変化する。
セサモリンは、ゴマ油に含まれる抗酸化物質の前駆体であり、ゴマサラダ油ではセサミノールに変化し、焙煎ゴマ油ではセサモールに変化し、抗酸化作用により、油の酸化安定性を高める。
ゴマサラダ油を、定温(40℃)で放置した場合の酸化安定性を高める作用は、エピセサミノール>γ-トコフェノール>セサミノール>セサモールの順に、強い。
ゴマ油中のセサモリンは、ゴマサラダ油の製造工程(脱色工程)で、セサミノールとセサモールとに変化する。
ゴマ油中のセサモリンは、焙煎ゴマ油の製造工程(焙煎の加熱過程)で、セサモールに変化する。焙煎ゴマ油のフライ加熱時には、ポテトの素揚げでは、セサモリンが、セサモールとサミンに変化し、衣揚げでは、セサミンが、セサモールやセサモール二量体(微量)に変化する。
加熱前の焙煎ゴマ油(焙煎油)は、セサモリンを193.2mg/100g、セサモールを18.6mg/100g含んでいる。また、加熱前のゴマサラダ油は、セサミノールを87.0mg/100g含んでいる。
ビタミンE(γ-トコフェノール)は、加熱前に、焙煎ゴマ油(焙煎油)には、56.4mg/100g含まれ、また、ゴマサラダ油には、22.0mg/100g含まれる。
焙煎ゴマ油(焙煎油)は、食品(エビ、イカ、小魚など)を、160〜180℃で、フライ調理すると、含まれていたセサモリンが、セサモールに変化する。エビ8個を、5分10秒間、フライ調理すると、焙煎ゴマ油中のセサモリンは減少(193.2→102.4mg/100g)し、セサモールは増加する(18.6→42.8mg/100g)。焙煎ゴマ油は、フライ調理しても、含まれていたビタミンE(γ-トコフェノール)の量は、ほとんど変化しない。
ゴマサラダ油は、食品をフライ調理しても、含まれていたセサミノールは、少し、減少するのみである(少ししか、分解されない)。エビ8個を、5分秒間、フライ調理すると、ゴマサラダ油中のセサミノールは、加熱前87.0mg/100gだったのが、フライ調理後76.6mg/100gに、減少する。また、ビタミンE(γ-トコフェノール)は、ほとんど変化しない(分解されない)。
5.ゴマに含まれるアミノ酸
ゴマの成分の約20%は、蛋白質。
ゴマに含まれる蛋白質のアミノ酸は、BCAAが少なく、メチオニンが多い。
大豆食品は、リジンの含有量は多いが、メチオニンの含有量が少ないので、大豆食品で不足するアミノ酸を、ゴマ(胡麻蛋白)を食べることで、補える。
表3 食品中のBCAA含量(可食部100g当たりの含量:五訂食品成分表2005より引用)
食品名 |
蛋白質 |
分岐鎖アミノ酸(BCAA) |
芳香族アミノ酸(AAA) |
BCAA/
AAA比 |
その他 |
Val |
Leu |
Ile |
合計 |
Phe |
Tyr |
Trp |
合計 |
Ala |
Glu |
Met |
g |
mg |
mg |
mg |
mg |
mg |
mg |
mg |
mg |
ratio |
mg |
mg |
mg |
ごま乾 |
19.8 |
1100 |
1500 |
840 |
3440 |
1000 |
770 |
370 |
2170* |
1.585 |
1000 |
4000 |
720 |
糸引納豆 |
16.5 |
830 |
1300 |
760 |
2890 |
870 |
680 |
240 |
1790 |
1.615 |
680 |
3200 |
260 |
木綿豆腐 |
6.8 |
380 |
600 |
370 |
1350 |
390 |
290 |
100 |
780 |
1.731 |
320 |
1300 |
100 |
凍り豆腐 |
50.2 |
2900 |
4600 |
2800 |
10300 |
3000 |
2200 |
760 |
5960 |
1.728 |
2400 |
9700 |
790 |
精白米 |
6.8 |
430 |
570 |
290 |
1290 |
370 |
280 |
99 |
749 |
1.722 |
390 |
1300 |
170 |
食パン市販 |
8.4 |
400 |
660 |
340 |
1400 |
460 |
240 |
96 |
796 |
1759 |
270 |
3100 |
150 |
うどん生 |
6.8 |
300 |
510 |
260 |
1070 |
370 |
200 |
75 |
645 |
1.659 |
260 |
2600 |
120 |
さんま生 |
20.6 |
1100 |
1600 |
950 |
3650 |
830 |
690 |
230 |
1730* |
2.110 |
1200 |
2800 |
660 |
まぐろ赤身生 |
28.3 |
1400 |
2100 |
1300 |
4800 |
1000 |
920 |
320 |
2220* |
2.162 |
1500 |
3700 |
810 |
豚ひき肉 |
18.2 |
870 |
1300 |
770 |
2940 |
650 |
500 |
200 |
1400* |
2.100 |
1100 |
2500 |
440 |
若鶏むね皮なし |
22.9 |
1200 |
1900 |
1200 |
4300 |
960 |
820 |
280 |
2080* |
2.067 |
1400 |
3700 |
660 |
若鶏もも皮なし |
18.0 |
920 |
1500 |
880 |
3300 |
740 |
620 |
210 |
1610* |
2.050 |
1100 |
2900 |
530 |
鶏卵全卵生 |
12.3 |
830 |
1100 |
680 |
2610 |
640 |
500 |
190 |
1290* |
2.023 |
700 |
1600 |
400 |
牛乳生乳 |
2.9 |
190 |
280 |
150 |
620 |
140 |
110 |
38 |
288 |
2.153 |
93 |
560 |
75 |
プロセスチーズ |
22.7 |
1600 |
2300 |
1200 |
5100 |
1200 |
1300 |
290 |
2790 |
2.153 |
670 |
5000 |
580 |
たらこ生 |
24.9 |
1600 |
2500 |
1500 |
5600 |
1000 |
1100 |
300 |
2400 |
2.333 |
1900 |
3200 |
560 |
しじみ生 |
6.8 |
360 |
460 |
300 |
1120 |
280 |
220 |
90 |
590 |
1.898 |
540 |
830 |
180 |
ほうれんそう生 |
3.3 |
120 |
170 |
95 |
385 |
120 |
88 |
53 |
263* |
1.464 |
110 |
300 |
29 |
*:芳香族アミノ酸(AAA)の項の合計量で、*印を上付きに表示した食品は、五訂食品成分表2005で、芳香族アミノ酸(AAA)の合計量が、フェニルアラニン(Phe)と、チロシン(Tyr)の数値を足した値と異なっている。
6.その他
・ゴマは、鉄(Fe)、カルシウム(Ca)、リン(P)などのミネラルも、多く含んでいる。
ゴマ(ゴマ種子)は、セレンも含んでいる。セレンは、過酸化脂質を無毒化するのに必要なグルタチオンペルオキシダーゼに必須なミネラル(微量元素)。
・ゴマは、200℃で5秒間程、炒ってから、さらに、すり鉢で、擂る(する)と、ゴマに含まれるリグナンの腸からの吸収率が、高まる。
炒りゴマは、特有の香りがする。炒りゴマの香気成分には、こうばしい香りを有するピラジン類や、焦げ臭や甘い香りがするフラン類や、煙臭がするピロール類などの含窒素化合物が含まれている。
7.おまけ
・ゴマは、さく果(刮ハ)の中の種子が成熟すると、縫合線が綻んで、縦に開く。
アラビアン・ナイト(千夜一夜物語)では、アリ・ババが、盗賊たちが財宝を隠していた洞窟を開く為に、「開け!ゴマ」と叫んだことになっている。
ゴマ(セサミ)は、古代の中東社会では、魔法の霊験を持った、神秘の食材だったようである。
・ゴマ油はアルカリ性食品。
聖天の洛儀式のように、ゴマ油を体全体に塗ると、皮膚から吸収され、健康になる。
結核菌は酸性菌(酸性の環境を好んで増殖する)なので、結核患者に、アルカリ性のゴマ油を煙霧させて吸入させると、効果があると言う。
癌も、酸性体質の時に生じ易いので、体をアルカリ性体質にすることが癌予防に有効と言う。
注1:ゴマは、古代メソポタミア文明の時代から、栽培が行われて来た。ゴマ(セサミ)は、スーダンのナイル河流域が、栽培の発祥地と言われる。古代エジプト(紀元前300年頃)のパピルスに記された医薬書(文書)にも、象形文字で、ゴマ(セサミ)の薬効が記されている。オルーブが栽培されなかったペルシャでは、ゴマ油は、非常に高価だった。
ゴマは、アフリカのサバンナ地帯から、ナイル河を経て、エジプトに伝播され、さらに、メソポタミアに伝播された。ゴマは、ターメリックなどの香辛料と同様に、メソポタミア地方から、陸路を、インドに伝播された(エジプトから、船団により、インド洋を経て、海路によっても、インドに輸送された)。
ゴマは、アフリカのエチオピアと、インド亜大陸とで、互いに無関係独立的に発症したと言う説もある。
ゴマ(セサミ)が学名は、1784年にスウェーデンの植物分類学者カール・フォン・リンネにより、セサマム・インディカム・リンネと命名され、インドが原産だと信じられて来た。
聖書によれば、人類最古の文明は、エジプト文明でなく、メソポタミア文明(シュメール人の都市国家)と言われる。
聖書には、ゴマ(胡麻)のことは、記載されていないので、ユダヤ教社会では、インドのカースト社会や仏教社会のように、ゴマは、用いられなかったようである。なお、旧約聖書のヨナ書4:6の「とうごま」は、かぼちゃか、ひょうたんの類の植物とされる。
ゴマは、古代のインドでは、薬として注目され、インドの伝統医学「アーユルウェーダ」にも、登場する。ゴマは、インドで、バラモン教から、仏教に伝承された。
ゴマは、日本には、縄文時代晩期に、中国から、(朝鮮半島を経て、)伝播されたと言われる。
注2:黒ゴマの方が、原種(野生タイプ)と言われる。
植物の種子は、有色種子(黒色、赤色、紫色)が、原種と考えられる。
人間も、祖先(ノアの時代)の皮膚の色は、黒色だったと考えられる。
参考文献
・並木満夫、小林貞作:ゴマの科学、シリーズ《食品の科学》、朝倉書店(1989年).
・大澤俊彦、井上宏生:胡麻の謎、双葉社1999年、第1刷).
・香川芳子:五訂食品成分表2005(女子栄養大学出版部、2005年)
・香川綾:四訂食品成分表1992(女子栄養大学出版部、1992年).
・新改訳聖書 注解・索引・チェーン式引照付、いのちのことば社(2005年10月1日改訂新版).
・柳沢文正:健康食入門−酸性体質をかえる−、食と健康の古典3、農山漁村文化協会(1978年第1刷発行、2003年ワイド版第1刷発行).
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