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 リポ蛋白

 水に不溶性の脂質(エステル型コレステロール、中性脂肪など)は、血液中を、アポ蛋白と結合して、リポ蛋白(lipoprotein)になって、運搬される。
 細胞膜成分に必須なコレステロール合成は、主に、肝臓で、HMG-CoA還元酵素により、行われる。肝臓に存在するコレステロールは、20%が食事由来(カイロミクロン由来)のコレステロールで、80%が肝臓で生成されたコレステロールと言われる。
 LDLは、肝臓で合成されたコレステロールを、末梢組織に供給する。
 HDLは、コレステロールを末梢組織から除去し、肝臓に転送する。

 リポ蛋白の表層は、親水性のリン脂質、遊離コレステロール(遊離型コレステロール:少ない)、アポ蛋白(apolipoprotein)と呼ばれる蛋白質から構成される。疎水性のトリグリセリド(中性脂肪)とコレステロールエステル(エステル型コレステロール:多い)は、内部の核層に存在する。
 アポ蛋白は、リポ蛋白を細胞内に取り込む際の、リガンド(受容体と結合する物質)になる。
 なお、遊離脂肪酸は、血液中では、主にアルブミンと結合して運搬される(注1)。

 リポ蛋白の代謝の中心となる臓器は、肝臓。
 アポ蛋白は、肝臓や小腸などで産生される。 

 リポ蛋白は、脂質構成などにより比重や粒子の大きさが異なる。
 比重により、カイロミクロン、VLDL(超低比重リポ蛋白)、IDL(中間比重リポ蛋白)、LDL(低比重リポ蛋白)、HDL(高比重リポ蛋白)に分類される。リポ蛋白の比重はこの順に重くなり、粒子の大きさはこの順に小さくなる。
 LDLの90%近くを脂質が占め、HDLの約25%を脂質が占める。

 カイロミクロンやVLDLは、トリグリセリドを多く含むリポ蛋白粒子。
 カイロミクロンは、約90%がトリグリセリド(中性脂肪)で構成され、そのトリグリセリドは、主として、食事から摂取された脂質(外因性脂質)である。
 VLDLは、主に肝臓で生成され、肝臓で合成されたトリグリセリド(内因性脂質)を含んでいる。
 カイロミクロンやVLDLに含まれるトリグリセリドは、血液中を流れている内に、リポ蛋白リパーゼ(LPL:脂肪組織や筋肉の毛細血管内皮細胞表面に存在する)により分解され、カイロミクロンやVLDLの粒子サイズが小さくなり、レムナントリポ蛋白(動脈硬化を起こし易い)が生じる。

 血清中のトリグリセリドやコレステロールは、食餌(食事)由来の外因性脂質(カイロミクロンに含まれる)と、肝臓で合成される内因性脂質(VLDL)とが、ある。
 カイロミクロンは、含まれているアポC-IIというアポ蛋白を介して、主に脂肪組織や筋肉の毛細血管内皮細胞表面のリポ蛋白リパーゼ(LPL)を活性化させ、含まれているトリグリセリドが分解され、粒子が小さくなり、コレステロールに富んだカイロミクロンレムナントになる。カイロミクロンレムナントは、含まれているアポEというアポ蛋白を介して、レムナント受容体により、肝臓に取り込まれる。
 VLDLは、大部分が、カイロミクロンと同様に、リポ蛋白リパーゼ(LPL)によって、含まれているトリグリセリドが、徐々に分解されて、IDLになる。IDLは、含まれるアポ蛋白のアポEを介して、肝臓に取り込まれ、肝性トリグリセリドリパーゼ(HTGL)により分解され、LDLになる。血中LDLの3分の2は、含まれているアアポB-100と言うアポ蛋白を介して、細胞のLDL受容体に結合して、細胞内に取り込まれる。

 血液検査では、リポ蛋白に含まれるコレステロール量を総コレステロール値、リポ蛋白に含まれる中性脂肪量を中性脂肪値として測定する。
 血清中の脂質の基準値は、総コレステロールが220mg/dl未満、LDLコレステロールが140mg/dl未満、HDLコレステロールが40以上、中性脂肪(トリグリセリド)が150mg/dl未満とされる。血液検査で、どれか一つの項目が、基準値を上回る人は、高脂血症と診断される。

 血清中の総コレステロール(LDL)が上昇する、高脂血症のIIa型(家族性高コレステロール血症)では、血清の外観は、透明で、外観上、異常を認めない。
 1.カイロミクロン(chylomicron)
 カイロミクロンは、トリグリセリド(中性脂肪)が主成分(約90%)で、小腸から吸収された外因性(食事性)のトリグリセリドを含んでいる。
 カイロミクロンには、外因性(食事由来)のトリグリセリドが86〜92%、コレステロールエステルが0.8〜1.4%、遊離コレステロールが0.8〜1.62%、リン脂質が6〜8%、蛋白(アポ蛋白)が1〜1.5%、含まれている。
 カイロミクロンと、VLDLは、トリグリセリドリッチリポ蛋白と呼ばれる。

 食事中の脂質(トリグリセリド)は、小腸や胃で消化(分解)され、遊離脂肪酸とモノグリセリドとに分解される。小腸内腔内で、遊離脂肪酸とモノグリセリドとは、それぞれのキャリア蛋白に結合して、小腸絨毛から吸収される。長鎖脂肪酸は、大部分が、腸管粘膜上皮細胞内で、再び、トリグリセリドに合成され、カイロミクロンを構成し、胸管リンパより、大循環(血液中)に入る。短鎖脂肪酸や、一部の長鎖脂肪酸は、トリグリセリドに再合成されることなく、拡散により、腸管粘膜を通過し、直接(リンパ系を経ずに)、門脈(血液中)に入る。

 カイロミクロンは、リンパ管を経て血中に分泌される。
 カイロミクロンに含まれる、アポC-IIというアポ蛋白は、トリグリセリドを脂肪酸とグリセロールに分解するリポ蛋白リパーゼLPL)を活性化させる:LPLは、血管内皮細胞表面に存在する(注2)。

 カイロミクロンの代謝は、まず、LPLにより、含まれるトリグリセリドが分解され、レムナントとなり、次いで、レムナントが、肝臓で、異化(分解)される: 
 カイロミクロンは、主に脂肪組織や筋肉の毛細血管内皮細胞表面のリポ蛋白リパーゼ(LPL)により、含まれるトリグリセリドが分解され、粒子が小さくなり、コレステロールに富んだカイロミクロンレムナントになる。
 カイロミクロンレムナントは、含まれるアポEというアポ蛋白を介して、レムナント受容体により、肝臓に取り込まれるとされる。
 このようにして、カイロミクロン中の食事由来のトリグリセリドや、コレステロールは、肝臓に取り込まれる。

 カイロミクロンレムナント中の食事由来のコレステロールは、肝臓のコレステロール合成系を抑制する。従って、食事由来のコレステロールが増加すると、体内(肝臓)でのコレステロール合成は抑制され、コレステロールが過剰にならないように調節される。

 このように、カイロミクロンは、食事由来のトリグリセリドを脂肪組織や筋肉に運搬し、コレステロールを肝臓に運搬する。

 カイロミクロンが増加する、I型高脂血症の患者さんの血液を、遠心分離して血清にすると、血清の上層に白いクリーム層が見える。

 食事(食餌由来)のカイロミクロンは、リンパ系を経て、血中に流入する。

 カイロミクロンの蛋白は、60%がアポC(C-I、C-II、C-III)、22%がアポB(大部分は、腸由来のB-48)、6%がアポA-I、6%がアポA-IIと言われる。
 カイロミクロンは、血中で、アポEを獲得し、A-Iを喪失し、さらに、LPLを活性化させるアポC-IIを獲得する。

 カイロミクロンは、最大で、直径が1μm(10,000Å)あるので、光学的顕微鏡で、見ることが可能(乳状脂粒)。

 小腸で吸収された脂溶性ビタミン(ビタミンA、ビタミンE、ビタミンK)は、カイロミクロンと結合し、リンパ管を経て、血中に輸送される。

 2.VLDL(very low density lipoprotein)
 VLDLも、トリグリセリドが主成分(約60%)で、主に内因性の脂質(体内で合成された内因性トリグリセリドと内因性コレステロール)を運搬する
 VLDLは、約40%が蛋白、50〜60%がトリグリセリド、15%がコレステロール、15%がリン脂質から、構成されている。
 血漿中のトリグリセリド(中性脂肪)は、VLDLに多く含まれている。

 血漿VLDLに含まれるトリグリセリドは、肝臓で合成されたトリグリセリド(内因性トリグリセリド)。
 肝臓でのトリグリセリドの合成に必要な脂肪酸は、肝臓で、グルコースやアミノ酸の代謝で生成されるアセチル-CoAから生成されるか、又は、脂肪組織でトリグリセリドが分解され、血中を遊離脂肪酸として、肝臓に輸送される。
 糖質やアルコールは、VLDL産生を、亢進させる。

 VLDLは、エネルギー源となる遊離脂肪酸を、(毒性の低い)トリグリセリドとして、肝臓から、末梢組織(筋組織、脂肪組織)に輸送する:遊離脂肪酸は、筋組織では、筋収縮のエネルギー源となり、脂肪組織では、再び、トリグリセリドに合成され、貯蔵される。
 VLDLは、肝臓と小腸で合成される。

 肝臓では、グルコース(ブドウ糖)の代謝(解糖)で生成されるグリセロール3-リン酸(α-グリセロリン酸)と、遊離脂肪酸とから、トリグリセリドが合成される。
 トリグリセリドの原料となる遊離脂肪酸は、食事由来の遊離脂肪酸が多いが、脂肪組織由来の遊離脂肪酸も、原料になる。

 VLDLの生成は、肝臓でのトリグリセリド合成量に、左右される。
 VLDLの生成量は、正常人では、約500mg/日と言われる。

 肝細胞のendoplasmic reticulumで生成されたVLDLは、ゴルジ装置を経て、肝細胞外に分泌される。この新生VLDLは、アポB-100とアポEを含んでいるが、コレステロールエステル含量が少ない。新生VLDLは、肝静脈洞にて、HDLから、コレステロールエステルとアポC(特に、LPLの活性化に必要なアポC-II)を獲得して、成熟VLDL(肝性VLDL)となる。
 小腸で合成されたVLDL(腸性VLDL)は、コレステロールエステル含量が、多い。

 肝細胞で合成されたトリグリセリドとコレステロールは、VLDLとして、肝臓から血液中に分泌される。
 VLDLの一部は、心臓、筋肉、脂肪組織などに発現されている、VLDL受容体を介して直接組織に取り込まれるが、大部分のVLDLは、カイロミクロンと同様に、リポ蛋白リパーゼ(LPL)によって、含まれているトリグリセリドが徐々に分解されて、トリグリセリドを喪失し、小型化して、IDLになる。リポ蛋白リパーゼ(LPL)は、インスリンによって活性が促進されるが、インスリン抵抗性が亢進した糖尿病などでは、VLDLに含まれるトリグリセリド(中性脂肪)分解が低下する(高VLDL血症になる)。
 この際、VLDL表面の脂質やアポ蛋白の一部が、VLDLより離れて、HDLの原基が形成される。

 VLDLの増加した血清は、冷所(4℃)に放置すると、白濁して見える(血清の白濁は、VLDLでなく、カイロミクロンや、カイロミクロンレムナントが原因とする説もある)。

 肝性VLDL(肝臓由来VLDL)は、アポ蛋白のB-100と、アポEとを、含んでいる。VLDLは、血清中に放出されて後、HDLから、アポCを獲得する。VLDLは、IDLを経て、LDLに変化するが、その間に、アポCを喪失し、アポEが、比較的豊富になる。

 インスリンが不足した糖尿病(NIDDM)では、中性脂肪の原料となる、グルコースや遊離脂肪酸が、血中に増加し、肝臓では、中性脂肪の含量が多いVLDLの合成・分泌が増加する。さらに、インスリン不足の為、LPLによりVLDLが分解されない(HDLが減少する)が、細胞への取り込みなどによるVLDLの直接的代謝除去は、亢進する。

 VLDLには、VLDL1(大型で中性脂肪を多く含む)と、VLDL2(小型)の2種類が存在し、肝臓から別々に分泌される。VLDL1は、VLDL2より代謝速度が遅いので、血中で脂質転送によりsdLDL(コレステロール含有量が少ない)に変換される。
 血液中で、VLDL1は、LPLにより、VLDL2へと変換される。
 インスリンは、VLDL1の(肝臓での)合成を抑制するが、VLDL2の合成には影響しない。インスリン抵抗性が高まったII型糖尿病では、VLDL1の産生が選択的に増加する。

 3.IDL(intermediate density lipoprotein)
 VLDLレムナントの一部。
 IDLは、含まれるアポ蛋白のアポEを介して(レムナント受容体により)肝臓に取り込まれ、肝性トリグリセリドリパーゼ(HTGL、注3)により分解され、LDLになる。 

 4.LDL(low density lipoprotein)
 LDLは、上記のように、VLDL−(LPL)→IDL−(HTGL)→LDLと代謝されて生成される(α2経路:α2 pathway)。
 LDLは、約40%がコレステロールにより構成されていて、主として、コレステロールを、肝臓を始めとしてほとんどの組織に供給している。
 LDLは、約45%がコレステロール(遊離コレステロールが8%、コレステロールエステルが37%)、5〜10%がトリグリセリド、20〜30%がリン脂質から構成されている。HTGLの合成には、甲状腺ホルモンが必要。 

 血清総コレステロールの約3分の2は、LDLに含まれている。
 血中LDL量の45%は、毎日、異化(分解)される。
 血中LDLの3分の2は、LDLのアポ蛋白(アポB-100)を認識するLDL受容体に結合して、肝臓や末梢組織(脂肪組織など)の細胞内に取り込まれ、ライソゾームで分解される(LDL経路):LDLのコレステロールエステルは、遊離コレステロールに分解され、細胞膜の構造に利用され、また、LDLのアポBは、ライソゾームでアミノ酸に分解される。
 コレステロールは、動物の細胞膜に必須な成分:コレステロールは、動物の細胞膜を、強靭な膜にしている。細菌類の細胞膜には、一般的に、コレステロールが含まれず、細胞膜がリン脂質(構成する二本の脂肪酸は、パルミチン酸などの飽和脂肪酸)から構成されている為、柔軟性がなく、堅くて、脆い。
 血中LDLの3分の1は、マクロファージのスカベンジャー受容体で取り込まれる(スカベンジャー経路)。

 LDLに含まれるコレステロール量は、Friedewald式によって推定可能。
 [LDLコレステロール値]=[総コレステロール値]−[HDLコレステロール値]−[トリグリセリド値×0.2]
 なお、TC(総コレステロール量)=VLDL-C+LDL-C+HDL-C
 Friedewald(フリードワルド)等は、VLDL-C(VLDLに含まれるコレステロール量)は、血液中にTG(中性脂肪)の約1/5であることを見出した。しかし、食事後に採血すると、VLDLに含まれるTGが増加しているので、Friedewald式は当てはまらない。また、TG(中性脂肪)が400mg/dl以上に場合も、Friedewald式は当てはまらない。 

 トリグリセリド(中性脂肪)の値が高い時は、必ずしも正確でない。

 VLDL、IDL、LDLは、HDL2から、コレステロールエステル転送蛋白(CETP)の作用で、コレステロールエステルを受け取る。そのために、LDLは、コレステロールに富んだ粒子になる。CETPは、交換に、トリグリセリドをHDLに転送する。

 小型で比重の高いLDLは、酸化されやすく、また、動脈壁内に透過しやすいため、動脈硬化の危険性が高い。
 一般の組織細胞は、コレステロール合成能を有しているが、実際には、LDLからコレステロールを供給されている。

 このように、LDLは、肝臓で合成されたコレステロールを、末梢組織に供給する。

 LDLに含まれるアポ蛋白は、殆んど(98%)がアポB(B-100)であり、極少量、アポA-I、アポA-II、アポC、アポEを含んでいる。

 LDLの大きさ(直径)は、25nm程度。
 血清LDLの約10%が、濃度勾配によって、血管内皮細胞間を通過して、血管壁(動脈壁)の内膜の中に、侵入する。

 高中性脂肪血症(高TG血症)だと、LDLやHDLは、小型化する。

 血清LDLコレステロール値(LDL-C値)は、動脈硬化(特に冠動脈疾患)の主要なリスクファクターであるが、インスリン抵抗性には関連がない(メタボリックシンドロームの診断基準に入らない)。

 a).sdLDL
 sdLDL(small dense LDL)は、小型の比重が重いLDL。
 sdLDLは、酸化LDLになり易い。
 sdLDLは、LDL受容体と結合親和性が悪いため、血中滞在時間が、正常LDLより長いため、血管内皮と、長時間接触する。また、抗酸化物質である、ビタミンEや、CoQ10(ユビキノール10)の含量が乏しい為、活性酸素による参加を受け易い。また、粒子サイズが小さいため、血管内皮細胞の間隙を通過して、動脈壁に浸透し、血管壁に炎症を進展させる。
 sdLDLは、血漿中トリグリセリド値が高い(高中性脂肪血症がある)と、生成され易い。
 sdLDL(小型LDL)は、糖尿病、高血圧、肥満などの人で、増加する。
 sdLDL(超悪玉LDL)は、生活習慣病、メタバリックシンドローム(高脂血症、糖尿病、高血圧、肥満)で、増加する。
 減量する(3カ月で3kg程度)と、中性脂肪値やLDL値が改善し、sdLDLも減少する。
 内臓肥満(内臓脂肪が多く蓄積する)の小児肥満では、血清トリグリセリドが上昇し、sdLDLが、増加する。
 内臓肥満(内臓脂肪の蓄積)は、肝臓でのVLDL合成を促進させ、血漿中トリグリセリド値を上昇させ(高中性脂肪血症を来たす)たり、LDL粒子サイズや、HDL粒子サイズを、小型化させる。
 内臓脂肪の蓄積は、代謝の異常を来たし、メタボリックシンドローム(メタボリック症候群)を招き、動脈硬化による心臓病(狭心症、心筋梗塞)、脳卒中(脳梗塞)、閉塞性動脈硬化症などを、重篤な疾患の危険性を高める(注4)。
 sdLDLは、以下のような特徴を有する:
 ・LDL受容体への親和性が通常のLDL粒子に比して低く血中に停滞する時間が長い
 ・小型なので血管壁を通過し易い
 ・酸化変性を受け易い 

 5.HDL(high density lipoprotein)
 HDLは、主に肝臓と小腸で合成される。HDLは、カイロミクロンやVLDLの代謝からも、形成される。

 腸性HDLは、肝性HDL(肝由来HDL)より、アポ蛋白のA-I量が多く、リン脂質を多く含み、末梢組織から、遊離コレステロールを引き抜く能力が、高いと考えられる。

 合成された直後は、円盤状をしていて、約50%がアポ蛋白(アポA-I、アポA-IIが主。アポC、アポEは少ない)により構成されている。

 HDLは、肝臓由来のもの以外に、血液中でアポBを含むトリグリセリドリッチリポ蛋白(カイロミクロンやVLDL)が、リポ蛋白リパーゼ(LPL)により分解された際に、リポ蛋白表層物質より、生成される。

 HDLのアポA-Iは、レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT:lecithin cholesterol acyltransferase)を活性化させる。
 HDLは、血漿中のLCATの作用により、HDL表面の遊離コレステロールが、エステル化され、コレステロールエステルが生成される。
 コレステロールエステルは、疎水性の為、HDL粒子の核部分(核層)に移動し、HDL表面に、空隙が出来、末梢組織の細胞膜表面から遊離コレステロールを引き抜く。この遊離コレステロールも、エステル化され、コレステロールエステルが蓄積し、HDLは、球状に変化する。
 このようにして、HDLは、末梢組織の細胞膜表面から遊離コレステロールを引き抜く。
 
 LCATは、レシチンのβ位の脂肪酸を、遊離コレステロールの3β位に転移させ、コレステロールをエステル化(H2Oを分離して、コレステロールと脂肪酸の化合物を合成)する酵素。
 LCATは、肝臓で合成分泌され、HDLを酵素反応の場とする。アポA-Iが活性化因子として重要。

 末梢組織のコレステロールは、肝臓に輸送され、大部分は、胆汁酸として排泄される。コレステロールは、脂肪酸のように、分解(β-酸化)され、TCA回路で代謝されない。肝臓から胆管に排出された胆汁酸(成人で20〜30g/日)は、95%以上が、小腸で再吸収され、肝臓に取り込まれる(腸肝循環)。
 HDLは、アポA-Iを介して肝臓のHDL受容体に取り込まれるという。
 肝臓では、多量のLDLコレステロールがLDL受容体から取り込まれるが、HDLコレステロールの方が、LDLコレステロールより、速やかに胆汁中へ、排泄されるという。 
 なお、食物繊維は、胆汁酸と結合し、胆汁酸を便として排泄させるので、食物繊維は、コレステロールの異化(排泄)を促進させ、高コレステロール血症を、改善する。また、食物繊維は、小腸での、脂質や糖質の吸収を、抑制し、カイロミクロン量や、肝臓でのVLDL合成量を減少させ、高中性脂肪血症(高トリグリセリド血症)を、改善する。

 トリグリセリド値が高いと、血液中のHDL値は、低くなる。

 末梢組織の細胞の余剰なコレステロールは、HDLによって肝臓に運ばれ、胆汁酸に変換されるか、コレステロールのまま胆汁中に分泌され、処理される。
 
 このように、HDLは、コレステロールを末梢組織から除去し、肝臓に転送して異化する(コレステロール逆転送系)。

 HDLは、炎症を抑制し(抗炎症作用)、動脈硬化を抑制する(抗動脈硬化作用)。

 6.レムナント(remnant)
 リポ蛋白リパーゼ(LPL)の作用により、カイロミクロンVLDLより、トリグリセリドが失われた残余体は、レムナント(remnant:レムナントリポ蛋白)と呼ばれる。
 外因性リポ蛋白代謝で生じるカイロミクロンレムナントや、内因性リポ蛋白代謝で生じるVLDLレムナントとがある:主要なアポ蛋白は、カイロミクロンレムナントはB-48で、VLDLレムナントはB-100。なお、III型高脂血症では、レムナントとして、β-VLDLが増加する。
 レムナントは、コレステロールとトリグリセリドをほぼ同量(30〜40%)含み、アポEとコレステロールエステルに富んでいる。
 IDLをVLDLレムナントと呼ぶこともあるが、正確には、比重が1.006より軽いものがVLDLレムナント
 肝臓から分泌されたVLDLは、リポ蛋白リパーゼ(LPL)の作用を受けてトリグリセリド含量が減少し、より小型で比重の高いレムナントになる。このレムナントは、カイロミクロン-レムナントと同様の比重を持ち、比重分離上はIIDL分画に現われる。

 VLDLレムナントは、血管壁に取り込まれやすく、レムナント中のコレステロールが血管壁に蓄積する。

 レムナント様リポ蛋白コレステロール(remant-like particles-cholesterol:RLP-C)として、カイロミクロンレムナントやVLDLレムナントは、測定可能になった。
 (空腹時だけでなく、食後の)RLP-C値は、動脈硬化の危険因子と考えられている(食後のVLDLの分解障害のために増加する、VLDLレムナントが、動脈硬化の危険因子だという)。
 レムナント粒子は、健康な人では、肝細胞などによって速やかに吸収・分解されるが、動脈硬化の患者では、血液中に長く留まる。
 なお、トリグリセリドに富んだレムナントの増加は、血液検査では、高トリグリセリド血症として、捉えられる。高トリグリセリド血症では、HDL値が低下し、動脈硬化が促進される。(高トリグリセリド血症は、カイロミクロン、VLDL、カイロミクロンレムナント、VLDLレムナント、IDLが増加すると、起こる。)
 RLPは、ずり応力による血小板の凝集を、増強させる:RLPは、ずり応力がかかった時に、血小板が凝集し易くする。
 RLP-Cは、平滑筋細胞を増殖させ、動脈硬化を促進させる。
 RLP-Cは、血小板凝集を促進し、血液粘度(血液粘稠度)を亢進させ、血栓を形成させ易くする
 RLP-Cは、それ自体が粘稠性があり、血液をドロドロ(ドロドロ血液)にし、血行を悪くし、於血(おけつ)の原因となる。

 LDLは、酸化LDLになって初めて、マクロファージを泡沫化させて、動脈硬化を起こすが、レムナントは、酸化されなくても、マクロファージを泡沫化させる。

 RLP分画中のトリグリセライド(RLP-TG)は、冠動脈硬化がほとんどないような突然死症例で非常に高い。このような症例では、赤血球が血小板表面に密着するような形で凝集しており、シクロオキシゲナーゼ(COX)を介する経路とは別の経路で、RLP-TGが血小板を凝集させるためと考えらる。 

 RLP(レムナントリポ蛋白)は、血管内皮細胞に強い炎症を引き起こす。単球由来のU937細胞を用いて、血管内皮細胞(HUVEC)への接着を研究した結果、PLP濃度が高くなる程、単球(U937細胞)の接着が増加する。

 RLP(レムナントリポ蛋白)が接触した冠動脈は、攣縮(冠攣縮)しやすくなる。

 レムナントは、HDLから転送されるアポ蛋白のアポEと結合している。カイロミクロンのアポC-II蛋白は、HDLに転送される。
 レムナントが肝臓に取り込まれる際は、レムナントのアポEと肝臓のレムナント受容体の結合を介するとされる。
 VLDLレムナントは、肝臓で、LDLに変換される。

 レムナントは、リポ蛋白リパーゼ(LPL)により、カイロミクロンやVLDLが分解されて、産生される。
 脂肪摂取後に増加するカイロミクロンは、リポ蛋白リパーゼ(LPL)の分解作用に関して、VLDLと競合する。
 カイロミクロンが増加する(食事の脂肪量が多い)と、large VLDLからsmall VLDLへの分解が阻害されるという。
 VLDLが増加する(血液中のトリグリセリド値が高くなる)と、(HDLを生成する、カイロミクロンの分解が進まず)HDLが低値になることが多い。
 
 7.アポ蛋白(apolipoprotein)
 アポ蛋白(アポリポ蛋白)は、水に不溶性の脂質(エステル型コレステロール、中性脂肪など)を、血液中を、リポ蛋白として運搬するのに、必要。
 日常的に測定可能なアポ蛋白は、アポA-I、アポA-II、アポB、アポC-II、アポC-III、およびアポEの、6種類がある。

 アポBには、肝臓由来のアポB-100と、腸由来のアポB-48とがある。
 血液中のアポBは、ほとんどがアポB-100で、大部分がLDL中に存在し、LDL受容体との結合に関与する。
 アポB-100は、VLDLやLDLでは、1粒子あたり1分子存在するので、アポB-100の測定は、これらの粒子の数を反映する。
 アポB-48は、カイロミクロンの主要な構成蛋白。
 マクロファージには、アポB-48と結合する受容体がある。
 過栄養では、肝臓に、脂肪酸が中性脂肪などの脂質として蓄積して、脂肪肝になるが、低栄養でも、アポ蛋白の合成が低下すると、VLDLとして分泌されず、脂肪肝になる。
 アポ蛋白は、肝臓や小腸などで産生される。

 表1 主要なアポ蛋白の機能
 アポ蛋白  産生臓器  存在するリポ蛋白  機能
 アポA-I  小腸、肝  HDL←カイロミクロン  LCATの活性化、HDL受容体との結合
 アポA-II  肝  HDL  LCATの活性阻害、HTGLの活性阻害
 アポB-100  肝  VLDL、IDL、LDL  LDLのLDL受容体との結合
 アポB-48  小腸  カイロミクロン、カイロミクロンレムナント  カイロミクロン粒子の統合
 アポC-I  肝(小腸)  HDL⇔カイロミクロン、VLDL、IDL  LCAT、LPLの活性化
 アポC-II  LPLの活性化(注5
 アポC-III  LPLやHTGLの活性阻害、レムナント受容体との結合を阻害
 アポE  肝、末梢組織  カイロミクロン、カイロミクロンレムナント、VLDL、LDL、HDL   レムナント受容体との結合、VLDLやIDLのLDL受容体との結合、VLDL受容体との結合
 8.リポ蛋白(a)(LP(a))
 Lp(a)は、LDLのアポ蛋白であるアポB-100に、アポ蛋白であるアポ(a)が結合して構成されるリポ蛋白。
 Lp(a)に含まれるアポ(a)は、線溶系でフィブリン網を溶解するプラスミノゲンと構造的相同性がある。
 血液中のLp(a)濃度と、冠動脈疾患や脳梗塞の発症に正相関がある。
 
 酸化Lp(a)中に含まれる脂溶性の抗酸化物質量は、LDLより少なく、LDLより酸化されやすい。
 酸化Lp(a)は、濃度依存性に、LDLより強く、血管拡張を阻害する。

 酸化Lp(a)は、マクロファージにスカベンジャー受容体を介して取り込まれる。コレステロールエステルの蓄積速度で比較すると、酸化LDLは、糖化LDLの10倍蓄積する。

 Lp(a)およびアポ(a)は、用量依存性に血管平滑筋細胞の増殖を促進する。

 なお、リポ蛋白の代謝に関しては、別のページを参照して下さい。

 9.高脂血症の分類
 高脂血症の分類を、表2に示した。表で、CMは、カイロミクロン、Cは、コレステロール、TGは、中性脂肪(トリグリセリド)を意味する。
 I型の高脂血症は、先天性LPL欠損や、先天性アポCII欠損が原因で、発症する。
 IIa型の高脂血症は、LDL受容体の異常が原因で、遺伝性の家族性高コレステロール血症を、発症する。家族性高コレステロール血症は、ヘテロ型とホモ型がある。ヘテロ型は、500人に1人程度と、頻度が高く存在し、総コレステロール値は250 〜500mg/dL程度の値を示す。ホモ型は、100万人に1人程度と、頻度は稀だが、若いうちから、動脈硬化などを発症し易く、治療が必要。

 糖尿病に続発する高脂血症(二次性高脂血症)は、VLDLが増加するIV型と、VLDLとLDLとが増加するIIb型とか多いとされている(WHO分類)。重症の糖尿病では、V型の高脂血症になることがある。
 表2 高脂血症の分類
 型  I   IIa  IIb  III  IV  V
 増加するリポ蛋白  CM  LDL  LDLとVLDL  IDL  VLDL  CMとVLDL
 増加する脂質   C   C↑〜   ↑↑↑  ↑↑  ↑↑  〜↑  ↑
 TG  ↑↑↑  〜↑  ↑↑  ↑↑  ↑↑  ↑↑↑
 C/TG比  <0.2  1.5<  >0.5変動大  0.3〜2.0  <0.2変動大  0.15〜0.6
 血清外観  上層  クリーム層  透明  透明〜白濁  やや白濁  白濁  クリーム層
 下層  透明  透明  透明〜白濁  やや白濁  白濁  白濁
 LPL活性   低下  正常  正常  正常  正常  ときに低下
 動脈硬化     促進  促進  促進  やや促進  やや促進
 黄色腫  発疹性  結節性(腱、眼瞼)  結節性(腱)  扁平(手掌)  発疹性  発疹性
 角膜環    ++  +  ++    
 頻度(日本)  極稀  最多  中等度  少  中等度  稀
 発症  10歳以下  成人後(ヘテロ型)  30歳前後  成人後  成人後  成人後
 二次性高脂血症を来たす原因  SLE、糖尿病性ケトアシドーシス、多発性骨髄腫  甲状腺機能低下症、動物性脂肪過剰摂取、更年期  甲状腺機能低下症、糖尿病、肝障害、ネフローゼ  甲状腺機能低下症、糖尿病、SLE  アルコール過剰摂取、糖尿病、ステロイド剤  甲状腺機能低下症、糖尿病、アルコール過剰
 カイロミクロンやVLDLは、粒子径が大きく(カイロミクロンの直径は、最大1μ、VLDLの直径は、最大0.075μ)、光を散乱(反射)させるので、血清中に、カイロミクロンやVLDLが増加すると、血清は、白濁する(IDLも、光を散乱させ、血清を白濁させる)。
 採血した後、血清に分離し、冷所(4℃)に、一晩静置すると、血清は、カイロミクロンやVLDLにより、白く混濁(turbid)する。
 血清中にカイロミクロンが増加すると、血清が、白濁して、冷所保存するとクリーム層が形成される。
 高脂血症のI型では、カイロミクロンが増加し、血清の上澄み(上層)は、クリーム層が形成され、血清の下層は、透明になる。
 高脂血症でも、VLDLが増加する、IIb型、IV型では、血清全体が、白濁する。なお、血清中の総コレステロール(LDL)が上昇する、高脂血症のIIa型(家族性高コレステロール血症)では、血清の外観は、透明で、外観上、異常を認めない。
 高脂血症のV型では、カイロミクロンとVLDLが増加する為、血清の上澄み(上層)は、カイロミクロンによりクリーム層が形成され、血清の下層は、VLDLにより、白濁する。
 高脂血症のIIa型(家族性高コレステロール血症)では、LDLが増加するが、LDLは、カイロミクロンやVLDLのようには、光を散乱しないので、血清は、白濁せず、透明で、外観上、異常を認めない。

 10.その他
 ・アテローム性動脈硬化(アテローム硬化)の早期発生メカニズムに関して、Williams and Tabasによるresponse-to-retension仮説が提唱されている(1995年)。
 この仮説によると、血管内膜に存在する細胞外マトリックスが様々な刺激により変化し、内膜に染み込んで沈着(retension)した脂肪が、変化したプロテオグリカンに結合し、その後、マクロファージ反応(response)がおこり、マクロファージが浸潤し、脂肪を貪食する。
 最近の生化学的研究や動物実験でも、アテローム硬化では、最初に、血管内膜に瀰漫性内膜肥厚(DIT:Grade 0:Sudan染色陰性)が起こり、次いで、DITの深部に脂肪沈着が起こる(Grade 1:Sudan染色陽性)ことが解明されている。DIT深部のプロテオグリカン(特にビグリカン)に脂肪(リポ蛋白)が結合し沈着する。脂肪沈着が増強すると、マクロファージが増加し、浸潤する(Grade 2)。

 ・国際的な症例対照研究(INTERHEART試験)の結果では、急性心筋梗塞(AMI)の最も優れたリスク予測因子(脂質関連)は、非空腹時のアポリポ蛋白B100/Apo A1比(Apo B/Apo A1比)であると報告されている。

 ・サンスター(SUNSTAR)が発売して特定健康用食品「緑でサラナ」(1缶=160g)は、SMCS(S-メチルシステインスルホキシド)を26mg/1缶含んでいる。「緑でサラナ」は、キャベツ、ブロッコリー、セロリ、レタス、ホウレンソウ、パセリ、。ダイコン葉、コマツナの8種類の野菜と、リンゴとレタスの果汁を含んでいる。砂糖、食塩、香料、保存料は、無添加。「緑でサラナ」は、1日2缶を飲む。
 SMCSには、LDL低下作用がある。SMCSは、天然アミノ酸であり、キャベツやブロッコリーなどアブラナ科の野菜に含まれている。
 SMCSは、肝臓で処理されるコレステロール量を増やし、胆汁酸へ変換する酵素の働きを活性化させ、コレステロールを、胆汁酸として、小腸を経て、体外へ排泄させる。

 注1:毛細血管内皮細胞に存在するリポ蛋白リパーゼ(LPL)により、リポ蛋白の中心部分の中性脂肪(トリグリセリド)が水解され、遊離脂肪酸とグリセロールが、生成される。
 遊離脂肪酸は、細胞毒性がある。遊離脂肪酸は、両親媒性の為、大量に存在すると、洗剤作用(界面活性作用)により、細胞膜を溶解させ、細胞を破壊する。必須脂肪酸多価不飽和脂肪酸は、毒性が非常に高い。
 遊離脂肪酸は、アルブミンと結合して組織に運ばれたり、ミトコンドリア内でβ酸化されたり、肝臓でVLDLに再合成されたりする。
 注2:リン脂質は、LPL活性を阻害すると言う。

 注3:肝性トリグリセリドリパーゼ(HTGL)は、肝細胞(肝実質細胞)で合成され、肝臓の血管内皮細胞に存在する。リポ蛋白リパーゼ(LPL)とは、一次構造が46%相同している。HTGLは、カイロミクロンやIDLに含まれるトリグリセリドを分解し、それぞれ、カイロミクロンレムナントやLDLにする。
 HTGLは、LPL同様に、ヘパリンを静脈注射すると、(毛細血管内皮細胞から)血液中に遊離して来る。過栄養性脂肪肝では、血漿中HTGL値(12〜24時間絶食後、朝食前に、ヘパリン10U/kg体重を静注し、10分後に採血する)が、上昇する。

 注4メタボリックシンドローム(メタボリック症候群:metabolic disorders:MetS)では、内臓脂肪の蓄積(ウェスト径が、男性85cm以上、女性90cm以上)に加え、高脂血症(中性脂肪150mg/dl以上)、HDLコレステロール40mg/dl未満)、高血圧(最高血圧130mmHg以上、最低血圧85mmHg以上)、高血糖(空腹時血糖110mg/dl以上)が、二項目以上、見られる。
 内臓脂肪が蓄積し、中性脂肪が脂肪細胞に蓄積すると、“善玉ホルモン”のアディポネクチン(肝臓や筋肉へのグルコース取り込みを増加させ、脂肪燃焼を促進させる)の放出量が減少し高脂血症を来たし、また、インスリンの作用を妨げる“悪玉ホルモン”の産生を増加させ、インスリン抵抗性が高まり、高血糖(糖尿病)を来たす。
 メタボリックシンドローム(メタボリック症候群)の状態が、長く続くと、(酸化LDLなど過酸化脂質が血中に増加し、)血管が徐々に障害され、動脈硬化や、心筋梗塞、脳梗塞など重篤な疾患の発症リスクを高める。
 肥満(内臓脂肪型)、高血圧、高血糖(糖尿病)、高脂血症(高中性脂肪血症)の危険因子を有する数が増加すると、心筋梗塞など虚血性心疾患を発症するリスクが、急激に増加する(死の四重奏)。

 血管内皮細胞は、一酸化窒素(NO)、プロスタグランジンI2PGI2、トロンボモジュリン(TM)、ヘパリン様分子、t-PA(tissue plasminogen activator)などを産生し、血管内皮細胞表面に発現させ、血管壁を「抗血栓性」(血小板凝集を抑制する)。
 メタボリックシンドロロームでは、酸化ストレスが増加し、血管内皮細胞は、一酸化窒素(NO)産生低下、一酸化窒素に対する反応性の低下、トロンボモジュリンの発現低下により「抗血栓性」が低下する。また、PAI-1や組織因子の発現増加により「血栓活性」が優位になっている(血管内で血栓が形成され易くなっている)。
 酸化ストレスは、血管内皮細胞や血管平滑筋細胞のNF-Bを活性化させ、炎症性サイトカイン(IL-1,IL-6、TNF-αなど)やケモカイン(MCP-1など)の産生を増加させ、細胞接着因子(P-セレクチンVCAM-1、ECAM-1など)や増殖因子(PDGF、GM-CSF、VEGFなど)や血液凝固線溶系阻害因子(t-PAを阻害するPAI-1、組織因子など)を発現させことにより、動脈硬化巣では、炎症を促進させたり、血液凝固を促進させる方向に作用する。
 
 注5肝硬変患者の血中アポC-II濃度は、1.2±0.5mg/dlであり、健康人の値2.9±1.0mg/dlと比較して、有意に低下している。 

 参考文献
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 ・石橋俊:Q&A LDL-コレステロールはどうして診断基準に入らないのですか?、日本医師会雑誌、第136巻・特別号(1)、メタボリックシンドローム up to date、S189頁.
 ・高脂血症診療のてびき 日本医師会雑誌、第108巻第13号、平成3年12月15日発行(付録)、厚生省・日本医師会 編.
 ・宿松道子:気になる健康、特定保健用食品「緑でサラナ」、信濃毎日新聞、2011年(平成23年)6月7日 火曜日 22面.

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