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 E-ロゼット形成

 1.E-ロゼットの形成方法
 T細胞や、NK細胞は、羊の赤血球(E)を、細胞表面に結合させ、E-ロゼット(E-rosette)を形成する。羊の赤血球(E)は、SRBC(sheep red blood cells)とも、略された。

 E-ロゼットを形成させるには、予め、羊の赤血球を、ノイラミニダーゼ(Test Neuraminidase:N-acyl-neuraminyl-glyco-hydrolase, 3.2.1.18 from Vibrio comma)で処理して置く。ヘパリンを、血液1ml当たり50単位加えて、血液を採取し、試験管(Falcon 2095 Tube等)の中で、Ficoll-Hypaque液に重層させ、比重遠沈法(比重遠心法:1,500〜20,00rpm、30分)にて、中間層の単核球層を採取する。
 単核球(MNC:mononuclear cells)層には、リンパ球、単球が含まれる。単核球層を、PBS(リン酸加生食、リン酸緩衝生理食塩水溶液、注1)で、3回洗浄する。試験管内で、FCS(胎児ウシ血清)を10%加えたRPMI1640液(培養液、注2)に、洗浄した単核球(MNC)を2×106/ml、ノイラミニダーゼ処理SRBC(E)を2×108/mlに浮遊させる(MNC:SRBC=1:50〜200)。
 良く攪拌し(ピペッティグする)、37℃15分間incubateする。その後、1,000rpmで5分間遠沈して、単核球とSRBCとを密着させた後、氷水中で、1時間、反応させる(ノイラミニダーゼで処理したSRBCを用いた場合、23℃でも良い)。
 その後、試験管の底面に遠沈した細胞(MNC+SRBC)を、静かに、ピペッティグにて、浮遊させる。浮遊液を、1滴、スライドガラスに落とし、カバーグラスをかけて、顕微鏡で観察し、ロゼットを形成した単核球の百分率を、求める。
 モノクローナル抗体により、表面マーカー(表面抗原)の検査が行われるまでの時代は、白血病細胞などを分類する際、E-ロゼット形成細胞(E-rosette forming cells)をT細胞、細胞表面に蛍光抗体法で免疫グロブリンが存在する細胞をB細胞と、識別した。
 CD2(LFA-2)は、羊の赤血球の受容体(E-ロゼットレセプター)。NK細胞やCTL表面のCD2(LFA-2)は、標的細胞のCD58(LFA-3)のリガンドとして、標的細胞との接着に関与する。CD2(LFA-2)は、CD48、CD59のレセプター(受容体)でもある。
 NK細胞も、高率にCD2(LFA-2)を有していて、T細胞同様に、E-ロゼットを形成するが、低親和性と言われた。

 2.LCL
 EBウイルス(Epstein-Barr virus:EBV)は、唾液を介して、経口感染し、B細胞に感染する。EBウイルスは、B細胞表面のCD21をEBVリセプターにして、また、MHCクラスII分子を補助リセプターとして、感染する。EBウイルスは、B細胞以外にも、CD21を有さない、T細胞やNK細胞にも、感染する。

 EBウイルスに感染したB細胞は、通常のウイルスに感染した細胞と同様に死滅することもあるが、EBウイルスに感染したB細胞は、形質転換(トランスフォーメーション、不死化)し、試験管内の培養液中で、癌細胞のように、継続的に細胞増殖する。
 このように、EBウイルスに感染して形質転換したB細胞は、形態的には、活性化B細胞のように芽球化するので、リンパ芽球様細胞株(lymphoblastoid cell line:LCL)と呼ばれる。
 LCL(不死化細胞)は、9種類のウイルス蛋白質(EBNA2、LMP1など)と、3種類のRNAを、発現している。LMP1は、NF-kB、ATF-2、PI3K(phosphatidyl inositol 3 kinase)などの細胞転写因子を介して、CD40、CD11a/CD18(LFA-1)、CD58(LFA-3)、ICAM-1などの遺伝子を活性化させる。

 日本人では、2歳までにに60%以上の人がEBウイルスに感染し(EBウイルスに対する抗体が陽性になる)、また、14〜16歳までには、約90%の人がEBウイルスに感染する。
 EBウイルスは、一度、感染すると、他のヘルペス系ウイルスと同様に、B細胞内に、終生潜伏感染する。
 日本人の多くは、EBウイルスに対する抗体(EBV-VCA-IgG抗体など)が陽性で、体内に、EBウイルスに感染した細胞を有している。
 EBウイルスに感染して、EBウイルスに対する抗体(EB-VCA-IgG抗体など)が陽性の人は、EBウイルスに感染したB細胞を、末梢血B細胞106個当たり、1〜50個有している。

 3.E-ロゼット形成細胞を除去して、B細胞を培養すると、LCLが樹立される

 E-ロゼット形成させた後、再度、Ficoll-Hypaque液に重層させ、比重遠沈すると、E-ロゼット形成細胞(T細胞)は、試験管底に沈み、中間層のnon-T細胞(≒B細胞)を採取する。
 non-T細胞を、FCSを加えたRPMI1640液(培養液)にて、培養すると、EBウイルスにより形質転換された(transformed)B細胞株(Bリンパ芽球:lymphoblastoid cell lines:LCL)が、樹立されることが多い。
 このようなLCLは、癌細胞と同様に、試験管内では、無期限に増殖を繰り返すので、長期継代培養が可能なことが多いが、EBウイルスの種類によっては、他のウイルスのように細胞破壊的に作用し、長期継代培養出来ないこともある。

 4.EBウイルスと疾患
 EBウイルス(EBV)は、唾液を介して、感染する。EBウイルス(EBV)に初感染しても、不顕性感染で終わることもある。

 EBウイルスに、乳幼児が、初感染すると、2〜8週間の潜伏期間の後、軽い感冒様症状や、扁桃腺炎の症状を発症することがある。
 EBウイルスは、水痘など他のヘルペス系ウイルスと同様に、初感染時期が遅いと、重症な経過を辿る傾向がある:EBウイルスに、年長児や、成人が、初感染すると、伝染性単核症(infectious mononucleosis:IM:伝染性単核球症)として発症することが多い。
 伝染性単核症は、発熱、咽頭痛、リンパ節腫脹を3主徴とする:伝染性単核症は、EBウイルスが、キスなどにより、唾液を介して経口感染した後、3〜5週間の潜伏期間の後、発症する。伝染性単核症では、発熱(38℃以上の高熱が、1〜2週間続く)、扁桃腺炎(白色の膿が帯状に付着する滲出性扁桃腺炎注3)・咽頭炎、頚部リンパ節腫脹(約90%の症例に見られる)、肝脾腫(約60〜90%の症例に見られる)、眼瞼浮腫(20〜30%程度の症例に見られる)、発疹、関節などを来たす。
 伝染性単核症では、潜伏期間に、EBウイルスに感染し形質転換されたB細胞が、扁桃腺などのリンパ組織で増殖する。その後、そのEBV感染Bリンパ芽球様細胞(LCL)を、特異的に障害するCTL(CD8陽性キラーT細胞)が、増殖し、発熱などを伴って、伝染性単核症を発症する。その結果、伝染性単核症では、末梢血中には、CD8陽性Tリンパ球が増加し、それらの一部は活性化されている(HLA-DR陽性)為、異型リンパ球が増加する。伝染性単核症で、末梢血中に増加する異型リンパ球は、殆どは、EBV特異的CTL(CD8陽性キラーT細胞)であり、EBウイルスにより形質転換されたB細胞ではない。また、リンパ節や扁桃腺が、腫脹する。
 伝染性単核症では、病初期に、EBV-VCA-IgM抗体(生後18カ月以下の患児では陽性にならないことも多い)や、EB-VCA-IgG抗体,が陽性だが、EBNA抗体は、陰性。回復期には、EB-VCA-IgG抗体価が上昇する。EBNA抗体は、3〜6カ月程後に、陽性化する。

 単純ヘルペスウイルスや、水痘帯状疱疹ウイルスの治療に用いられるACV(ビラックス)は、EBウイルスの複製を抑制する。
 ACV(ビラックス)は、伝染性単核症(IM)患者の口腔へのウイルス排出量を低下させるが、伝染性単核症の臨床経過を改善しない。

 5.EBウイルスの腫瘍原性
 EBウイルス(EBV)は、感染したB細胞を形質転換(トランスフォーム)し、腫瘍細胞のように増殖させる腫瘍原性がある(oncogenic virus)。

 1).Burkitt lymphoma
 赤道アフリカ地方の小児が多く発症するBurkitt lymphoma(endemic BL:eBL)は、90%以上が、EBウイルス陽性。eBLは、下額に好発するが、骨髄転移を起こしにくい。
 マラリア感染は、HIVと同様に、リンパ球の増殖を促進し、胚中心を拡大させる。マラリア感染は、リンパ球増殖を促進させ、EBウイルスによるeBL発症を促進させる(マラリア感染が、免疫力を低下させ、EBウイルスの腫瘍原性を高め、BLを発症させると考えられた時期もあった)。

 2).ホジキンリンパ腫

 ホジキンリンパ腫(Hodgkin lymphoma:HL)では、特徴的な、Hodgkin細胞や、Reed-Sternberg細胞(RS細胞)と言われる腫瘍細胞が、見られる。
(ホジキンリンパ腫:左頚部リンパ節)
 ホジキンリンパ腫は、近年の研究により、B細胞由来のBリンパ腫であると結論された。
 伝染性単核症(IM)の経過中にRS細胞様の細胞が出現する。
 伝染性単核症(IM)の既往がある人は、ホジキンリンパ腫の発症率が、有意に高い。
 1987年に、(ホジキンリンパ腫の)腫瘍細胞中にEBV DNAが検出された。
 ホジキンリンパ腫は、組織型によりEBV陽性率が異なる。
 Reed-Sternberg細胞(RS細胞)は、EBNA1、LMP1、LMP2A、LMP2B、EBER、BARTを発現しているが、EBNA2は発現していない(陰性)で、EBNA1遺伝子の転写には、プロモーターはQpを用いる(EBV遺伝子発現パターンは、II型)。
 表 EBV遺伝子発現パターンとEBV関連疾患(参考文献の藤原氏の表2を改変し引用)
 EBV遺伝子発現パターン   I型   II型   III型
 EBV遺伝子発現  EBNA1   +   +   +
 EBNA2   −   −   +
 EBNA3A〜3C   −   −   +
 EBNA-LP   −   −   +
 LMP1   −   +   +
 LMP2A/B   −   +   +
 EBER   +   +   +
 BART   +   +   +
 プロモーター活性  Qp   +   +   −
 Cp/Wp   −   +   +
 EBV関連疾患  バーキットリンパ腫(BL)、
 胃癌
 慢性活動性EBV感染症(CAEBV)、
 ホジキンリンパ腫(HL)、
 鼻性T/NK細胞リンパ腫
 LPD(リンパ増殖性疾患) 
 6.CD
 CDは、cluster of differentiationの略。CD分類は、ヒト血液細胞上の分子(抗原)の、国際的な分類法になっている。
 1970年代後半から、白血球表面の分子(抗原)に特異的に結合するモノクローナル抗体が、各社(各研究グループ)から、発売された。 
 モノクローナル抗体のLeuシリーズは、Becton Dickinson社が、開発した。OKTシリーズは、Ortho社が開発した。
 しかし、各社により、異なる名称が付けられた為、これらのモノクローナル抗体を、国際的に分類して、統一した名称を付けるために、CD分類が、始まった。

 7.免疫不全とEBウイルス感染
 免疫不全の患者が、EBウイルスに初感染すると、EBウイルスにより形質転換されたB細胞(リンパ芽球様細胞株:LCL)が、体内で、白血病細胞の様に、無制限に増殖し、リンパ節、肝臓、腎臓など、多臓器に浸潤して、致死的な経過を辿ることがある。
 
 注1:PBS(リン酸加生食、リン酸緩衝生理食塩水溶液)の作製は、NaCl 8.0g、KH2PO4 0.2g、Na2HPO4・12H2O 2.9g、KCL 0.2gに、蒸留水(aq)を加え、全量を1Lとする。

 注2:培養液のRPMI1640液(pH6.8)には、1L当たり、Hepes 25ml、ゲンタマイシン(GM) 10mg、メイロン 28mlを添加する。 
 リンパ球幼若化反応(Blastformation)は、培養液(RPMI1640液)に、リンパ球(単核球)を1×106/mlに浮遊させて、レクチンで刺激する場合には、Con A 10〜40μg/mlか、PHA-P 15μg/mlを添加する。LPSは、10μg/mlの濃度に添加する。
 リンパ球混合反応(MLR)は、刺激に用いるアロのリンパ球を、予め、培養液(RPMI1640液)に浮遊させ、マイトマイシンC(MMC) 40μg/mlを添加し、37℃で、45分間培養する(増殖を抑制する)。
 インドメサシン(indomethacin)は、原末40mgを、100%エタノール4mlに溶解し、培養液(RPMI1640液)で希釈し、1μg/mlに調節する(10-7mol/ml)。

 注3:伝染性単核症(伝染性単核球症)では、扁桃腺に白色の膿が付着し、一見、化膿性扁桃腺炎の像を呈することが多い。また、軟口蓋に、出血性の粘膜疹が見られ、咽頭痛が出現することが多い。
 白色の膿が付着しているが、綿棒でスワブして細菌を検査(咽頭培養)しても、病原菌は、検出されない。しかし、伝染性単核症の扁桃腺から、混合感染により、同時に、A群溶血性連鎖球菌(溶連菌)が検出されることもある(1/3の伝染性単核症の症例に、溶連菌性扁桃腺炎を合併している)。
 伝染性単核症でも、溶連菌感染症でも、発疹が見られる:伝染性単核症による発疹は回復期に、溶連菌感染症による発疹は急性期に見られる。

 滲出性扁桃腺炎(化膿性扁桃腺炎)は、EBウイルス以外に、アデノウイルス、エンテロウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)等のウイルス性扁桃腺炎でも、見られる。アデノウイルスは、扁桃腺、アデノイド、腸組織、膀胱組織などに、数ヶ月から数年の期間、潜伏感染し、時に、少量のウイルスを排出し、他の固体に、感染する。アデノウイルスによる扁桃腺炎は、白色の膿(滲出物)が、点状、線状、ないし微慢性(べったり)に、扁桃腺の表面に付着する。
 
滲出性扁桃腺炎(化膿性扁桃腺炎)の細菌培養で、インフルエンザ菌、肺炎球菌、ブドウ球菌等が検出されても、扁桃腺炎の原因(で起炎菌)ないことが多い。細菌培養で、溶連菌(A群溶血性連鎖球菌)が検出された場合も、菌数が少ない場合は、起炎菌でないことが多い。
 小児の滲出性扁桃腺炎(膿のような滲出物を伴なう扁桃腺炎)の原因は、ウイルスが原因の場合が42%(内45%はアデノウイルスが原因)、溶連菌(A群溶血性連鎖球菌)が原因の場合が12%と言う報告もあると言う。
 咽頭培養(咽頭ぬぐい液)では、非感染時も、α連鎖球菌、γ連鎖球菌などの非病原常在菌のみならず、インフルエンザ菌、肺炎球菌など保菌状態にある細菌も、検出される(常在していて、宿主の免疫力が低下した際に、増殖して、病原性を示すことがある)。
 急性咽頭炎の原因となるウイルスには、アデノウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、コクサッキーウイルス、パラインフルエンザウイルス、インフルエンザウイルス、RSウイルス、単純ヘルペスウイルス(歯肉口内炎、アフタも伴なう)、HHV-6やHHV-7(突発性発疹)、EBウイルス、サイトメガロウイルスなどがある。
 滲出性扁桃炎(152検体)から分離されたウイルスは、A型インフルエンザ(FluA)が7例、C型インフルエンザ(FluC)が3例、パラインフルエンザウイルスが5例、RSウイルス(RSV)が3例、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)が2例、ライノウイルス(Rhino)が1例、アデノウイルスが19例、エンテロウイルスのコクサッキーAウイルス(CoxA)が5例、コクサッキーBウイルス(CoxB)が15例、エコーウイルス(Echo)が19例、単純ヘルペスウイルス(HSV)が6例だったと言う報告もある(板垣等)。
 
滲出性扁桃腺炎(化膿性扁桃腺炎)で、点状の膿栓が見られる時には、エンテロウイルスや、A型インフルエンザウイルス(FluA)や、C型インフルエンザ(FluC)や、パラインフルエンザウイルス(Para)が原因のことが多く、線状ないし微慢性(べったり)の膿栓が見られる時には、アデノウイルスが原因のことが多い

 参考文献
 ・宮坂信之、他:わかりやすい免疫疾患 日本医師会雑誌 特別号(1) 生涯教育シリーズ−67、2005年.
 ・谷口克、他:標準免疫学(第2版、医学書院、2004年).
 ・岸本忠三、他:岩波講座 免疫科学3 免疫担当細胞(岩波書店、1986年).
 ・矢田純一:E(赤血球)リセプター 免疫学1 免疫担当細胞 リンパ球表面レセプター、220-225, 1981年(中山書店).
 ・藤原成悦:EBウイルス感染症をめぐる新しい状況と研究の進展 (第108回日本小児科学会学術集会 教育講演) 日本小児科学会雑誌 109巻12号、1417-1424、2005年.
 ・赤羽太郎、青山香喜、柳沢光彦:特集・新しい臨床検査 リンパ球のSubpopulation 小児科診療 第45巻・第6号、39-46、昭和57年(診断と治療社).
 ・柳沢光彦、青沼袈裟佐賜、天野芳郎、市川元基、小宮山淳、赤羽太郎:培養ヒトT4+T細胞の形態と機能−Recombinant IL-2とアロ抗原刺激による長期培養− 組織培養 14(3): 26-30, 1988年.

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