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 神経ペプチド

 気道に存在する神経ペプチド(神経ペプタイド:neuropeptide)としては、副交感神経に存在するVIP、知覚神経C線維の末端に存在するSP、NKA、CGRPなどが、知られている。
 SP、NKAは、タキキニン(タヒキニン)と呼ばれる
 知覚神経のC線維の末端には、タキキニンである、NKAが、存在する。
 タキキニンは、ヒスタミンなどにより、知覚神経が刺激されると、軸索反射により放出される。
 迷走神経(副交感神経)を刺激すると、SPなどのタキキニンが、C線維の末端から放出され、血管透過性が亢進し、血漿が血管外に漏出し、浮腫により、皮膚に膨疹が生じる。

 ヒトの気道の平滑筋には、副交感神経が分布している(交感神経の分布は明らかでない)。
 気道の副交感神経の末端では、アセチルコリン(Ach)と共存して、VIP(vasoactive intestinal peptide)などの神経ペプチドが共存する。
 また、気道上皮の間隙や、平滑筋に分布しているC線維の末端には、SP、NKA、CGRPなどの神経ペプチドが存在する。
 インフルエンザなどの感染や、好酸球から放出されるMBPなどにより、気道上皮が障害されると、知覚神経のC線維末端が、露出し、刺激を受け易くなり、気道が過敏になる。

 軸索反射などで、C線維の末端から放出される神経ペプチドは、平滑筋収縮(気道収縮、気管支収縮)、血管拡張(皮膚発赤、血流増加)、血管透過性亢進(血漿蛋白漏出による浮腫、粘膜の腫脹、皮膚の膨疹)、粘液分泌亢進、肥満細胞活性化(ヒスタミン遊離)などの作用を示す。

 表 神経ペプチドの作用
 作用  SP  NKA  CGRP  VIP
 平滑筋収縮(気道収縮)  +  +  +  拡張
 血管拡張(皮膚発赤)  +  +  +  +
 血管透過性亢進(血漿蛋白漏出)  +  +  −  −
 粘液分泌亢進  +  +  +  +
 肥満細胞活性化(ヒスタミン遊離)  +  +  +  +
 1.VIP
 VIP(vasoactive intestinal peptide)は、28ケのアミノ酸からなる神経ペプチドで、血管平滑筋には強力な拡張作用を、気道平滑筋には強力な弛緩作用を示す。
 VIPは、平滑筋に存在する特異的受容体に結合し、アデニル酸シクラーゼ(AC)活性を上昇させ、細胞内cAMP濃度を増加させ、平滑筋を弛緩させる。
 VIPは、気道の粘膜下腺に作用する:VIPは、漿液分泌細胞より、粘液分泌細胞に、強く作用する(分泌を促進する)。
 VIPは、気道平滑筋を弛緩させ、活性酸素(oxygen radical)を排除し、炎症を抑制すると考えられる。

 2.SP
 SP(Subsatnce-P)は、11ケのアミノ酸からなる神経ペプチド。
 SPには、平滑筋収縮(気管支収縮、腸管収縮)、血管拡張、血管透過性亢進、粘液分泌、肥満細胞からのヒスタミン遊離などの作用がある。
 SPは、主として、C線維に発現していて、軸索流に乗って、終末(ポリモーダル受容器)に運ばれる。
 SPは、気道上皮のNK-1受容体(タキキニンの受容体)に作用し、PGE2血管透過性を亢進させ、腫脹浮腫などを来たす)などを放出させる。
 SPは、粘膜下腺の粘液分泌細胞に作用してグリコプロテイン(糖蛋白)を、漿液分泌細胞に作用して、ライソゾームを放出させる。
 SPは、末梢気道の杯細胞の粘液分泌を亢進させる。
 SP、NKA(Neurokinin A)、NKB(Neurokinin B)は、タキキニン(tachykinin:タヒキニン)と、呼ばれる。

 3.CGRP
 CGRP(calcitonin gene-related peptide:カルシトニン遺伝子関連ペプチド)は、37ケのアミノ酸からなる神経ペプチド。
 CGRPは、ポリモーダル受容器である、知覚神経C線維の末端に存在する。
 CGRPは、C線維から、SPと共に放出され、血管内皮細胞に作用し、NO(一酸化窒素)を産生させ、強力な血管拡張作用を示す。NOは、COX-1を活性化させ、PGI2産生を高め、微小循環を、維持する。 

 4.神経原性炎症(neurogenic inflammation)
 肥満細胞は、表面のIgE抗体が、抗原により架橋されると、ヒスタミンなどのメディエーターを放出すると同時に、IL-4、IL-5などのサイトカインを産生する。
 IL-5は、好酸球を走化(遊走浸潤)させる。
 好酸球からは、細胞障害作用のある、MBP(major basic protein:主要塩基性蛋白)、ECP(eosinophilic cationic protein:好酸球陽イオン蛋白)、EPO(eosinophilic peroxidase)が、放出される。これらの物質は、気道上皮を障害するので、上皮間隙や上皮直下に分布している知覚神経のC線維末端が、露出し、刺激を受け易くなり、気道が過敏になる。また、ヒスタミンにより、知覚神経のC線維が刺激されると、刺激は、神経系により、上行性に中枢に伝達されると同時に、軸索反射により、逆行性に末梢に伝達され、C線維末端より、SP、NKAが放出される。その結果、気道炎症が、亢進(増悪)する。
 ヒスタミン以外にも、内因性のブラジキニン、外因性のカプサイシンなどは、C線維末端から、タキキニンを放出させ、神経原性炎症を引き起こす。

 5.神経ペプチドの分解
 放出されたタキキニンや神経ペプチドは、主に、気道上皮(基底細胞)で産生されるNEP(neutral endopeptidase)により、不活化される。
 気道上皮が、インフルエンザなどのウイルス感染、喫煙、オゾンの吸入などで障害される(気道上皮が剥離する)と、気道上皮由来のNEPが低下して、SPなどタキキニンの作用が、強く現れる。

 気道上皮で産生されるACE(キニナーゼII)も、タキキニンや神経ペプチドを、不活化する。従って、降圧剤でも、ACE阻害剤を服用すると、SPなどのタキキニンや、ブラジキニンの不活化も阻害され、C線維が刺激されるので、空咳が出現することがある。

 参考文献
 ・矢田純一:アレルギーの発現機序とその制御 小児科 35:1167-1174, 1994.
 ・浜崎雄平:気道炎症と神経ペプタイド 小児科 36:789-796, 1995. 

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