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 痛み

 痛みは、悪循環する:痛み→筋肉や血管の緊張→血行の悪化→発痛物質の蓄積→痛みの悪化という、痛みの悪循環がある。
 ケガなどの障害(侵害刺激)で、侵害受容器が刺激され(器質的痛み)、生じたインパルスが、脊髄後角に伝導されると、交感神経節を介して、筋肉や血管が収縮し、血行が悪化(局所乏血)し、生成された発痛物質が蓄積する。発痛物質は、侵害受容器を再び刺激して、痛みが、悪循環する(機能的痛み)。

 慢性的な痛みの悪循環を断つためには、以下の方法が、有効と考えられる。
 1.侵害刺激や炎症の原因を、除去する
 2.消炎鎮痛剤(NSAIDsなど)で、PGE2合成を阻害し、炎症(疼痛腫脹を抑制する
 3.筋弛緩薬で、交感神経節を介する筋肉攣縮や血管収縮を解除して、血行を改善し、発痛物質を除去して、痛みを軽減させる
 4.抗うつ剤、抗不安薬で、脳内のセロトニンなどの分泌を増加させ、痛みの閾値を低くし、痛みを軽減させ、心理的な不安を和らげる

 炎症では、熱感、発赤、疼痛、腫脹が見られる。これらの炎症の四徴は、生体が、患部で、PGE2などを産生し、患部の血流を増加させ、治癒を促進させようとする反応である。

 ストレス等により、交感神経緊張状態が続くと、血行が悪くなり、於血になり、鬱血による頭痛などの症状が現れる。

 ケガなどの障害(侵害刺激)による痛みは、一時的(一次的)で、引き続いて起こる炎症によって産生されるPGE2などの発痛物質が、痛みを持続させる。

 消炎鎮痛剤(NSAIDsなど)は、PGE2合成を阻害し、痛み(疼痛腫脹を抑制する。抗うつ剤(抗鬱剤)は、脳から、痛みを抑制するセロトニンの分泌を増加させ、痛みを軽減させる。筋弛緩剤は、筋肉攣縮を解除して、血行を良くし、発痛物質の産生を減らし、痛みを軽減させる。

 痛みは、検査で異常が発見されなくても、患者が痛いと感じていたのら、痛いのである!
 痛みは、患者を自己中心的な性格にし勝ちである。自己中心的になった患者は、まず、責められることより、話しを聞いてもらって、慰められることを、願うものである。

 脳は、体の局所からの痛覚刺激を、局所に対応する皮質の部位で、知覚している。
 幻肢痛のように、痛覚刺激を伝える局所(例えば、手)が存在しなくなると、局所(例えば、手)からの痛覚刺激を伝達されていた脳皮質が、他の局所(例えば、顔)からの痛覚刺激を伝達する神経と、シナプス(注1)を形成する。そうすると、他の局所(例えば、顔)に痛覚刺激を与えると、脳は、局所(例えば、手)が痛いと知覚する。このように、脳は、脳皮質の部位によって、知覚している体の局所が異なる。そして、例えば、手の痛みを知覚する脳皮質が、顔からの痛覚刺激で刺激されると、手が痛いと、錯覚して、知覚してしまう。

 食用油(リノール酸を含む)や砂糖の摂り過ぎは、それぞれ、発痛物質である、PGE2や乳酸の生成を促進させ、痛みを増強させると考えられる。

 セロトニンは、痛みを抑制する

 炎症時に産生されるPGE2は、ポリモーダル受容器を刺激し、発生されるインパルスは、C線維により伝導され、痛みとして知覚される。
 鎮痛剤や鎮静剤は、難治性疼痛には有効だが、慢性痛には無効ないし、有害。

 Painは、刑罰penaltyの意味。
 侵害受容器に侵害刺激が加わると、細胞膜のイオン透過性が変化して、活動電位が生じる。

 痛みは、脳が認識する。
 炎症などで侵害刺激がある局所に近い部位を、圧迫すると、同じ感覚線維に圧迫刺激が伝導されて、炎症などの侵害刺激による痛みが、軽減される。

 軸索反射により、神経ペプチドが放出され、皮膚発赤(血管拡張、血流増加)平滑筋収縮(気管支収縮、気道収縮)粘膜浮腫(血管透過性亢進による血漿蛋白漏出)粘液分泌亢進が、起こる。

 侵害刺激は、脊髄後角を経た交感神経の作用では、血管を収縮させ(骨格筋肉を収縮・緊張させる)、ポリモーダル受容器(PGE2などの発痛物質で刺激される)を経たC線維からの神経ペプチド遊離作用(軸索反射)では、局所の血管を拡張させる(平滑筋を収縮させる)。

 1.痛みの悪循環
 痛みの侵害刺激が、侵害受容器を刺激し、細胞膜のNa+透過性が上昇し、脱分極により、起動電位が発生する。起動電位が。閾膜電位以上になると、インパルス(活動電位)が発生する。そのインパルスが、脊髄後角に伝導されると、交感神経節を介して、筋肉や血管が収縮して、局所が乏血状態になり、組織の酸素が欠乏して、発痛物質が産生される。この発痛物質が、侵害受容器を刺激するので、痛みの悪循環が起こる。
 内因性発痛物質としては、乳酸、カリウムイオン(K+)、水素イオン(H+)、プロスタグランジンE2PGE2)、プロスタグランジンI2(PGI2)、ヒスタミン、セロトニンブラジキニン補体ATPなどが知られている(注2)。

 外傷などに際して、侵害された神経終末が刺激されて痛みが伝導される。神経終末からは、神経ペプチドが放出され、毛細血管が拡張し(CGRP等)、血管透過性が亢進し(SP等)、浮腫が生じる。
 侵害された血管から、血漿や血小板が、血管外に漏出し、血液凝固により、ブラジキニンが生成され、血小板凝集により、セロトニンが生成され、組織の肥満細胞から、ヒスタミンが放出され、発痛させる。
 侵害(障害)された細胞から、カリウムイオン(K+)、水素イオン(H+)、ATPが放出され、発通させる。
 プロスタグランジンE2PGE2)も、侵害(障害)された細胞から生成されるが、プロスタグランジンE2PGE2)自身には、発痛作用がなく、ブラジキニンなどの発痛物質に対する神経細胞の感受性を高め、ブラキニンなどに痛み刺激を増強させる(発痛増強作用)。

 なお、ストレスは、脳からインパルスを脊髄後角に伝導し、交感神経節を介して(緊張させて)、筋肉や血管を収縮させ、局所を乏血状態にし、組織の酸素を欠乏させ、発痛物質を産生させ、侵害受容器(知覚神経)を刺激し、痛みの情報を、脊髄を介して脳に伝導させ、痛みとして知覚される。この痛みが、ストレスとなって、脊髄から伝導され、痛みの悪循環が起こる。
 慢性痛では、冷えると、発痛物質が蓄積して、傷みが増悪する。軽い運動をして、血行を良くすると、発痛物質が除去されて減少し、痛みが軽減する。しかし、急性痛では、運動をすると、組織の酸素需要量が増加し、組織傷害が増悪し、発痛物質が増加し、痛みが増強するおそれがある。

 慢性の痛み(慢性痛)があると、脊髄後角を介して、交感神経が緊張し、血管が収縮し、筋肉が攣縮する。そうすると、局所の血流が低下し、乏血(虚血)状態になり、組織の酸素が不足するので、局所では、PGE2なが産生され、局所の血流が増加する。PGE2は、発痛物質なので、痛みが増強する。
 このように、慢性痛により、局所の血流が低下して、PGE2が産生され、痛みが増強している場合は、温浴などで、局所を暖め、血流(血行)を良くしてやると、PGE2の産生が低下し、痛みが改善する。
 急性の痛み(急性痛)の場合、侵害受容器とC線維を介して、神経ペプチドが遊離され、NK-1受容体に作用し、PGE2を遊離させたりして、痛みが増強する。
 このように、急性痛では、局所を暖めて、血行を良くしてやると、神経ペプチドやPGE2の遊離・産生が促進され、痛みが増強されるおそれがある。
 従って、急性痛は、冷やし、慢性痛は、暖めると良い場合が、多い。
 なお、急性痛でも、感染症による炎症での痛みの際には、局所周囲の血管(細動脈)は、収縮して、全身や周囲に、病原体が、広がらないようにしているので、暖めると、却って、病原体や炎症を、全身に広めてしまうおそれがある。
 2.痛みに対する正しい捉え方
 ・痛みは、感じ方に個人差がある:痛みの程度と、傷害の程度は、相関しない。痛みが慢性化すると、痛覚過敏になったり、強い強度の痛みとして、知覚される。痛みを、1日中、「気」にするようになる。心理的にも、不安になる。痛みを受容して、「気にしなく」なれるまでは、痛みに対しては、敏感になり、他の体の部位の痛みにも、過敏になる。痛みの消失は、必ずしも、傷害の治癒を意味しない。痛覚がない組織(肝臓など)は、病変が存在しても、痛みを感じない。帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹が治った後も、持続してしまう。
 ・痛みは状況に応じて感じ方が変化する:詐病でない限り、検査で異常が発見されなくても、患者が痛いと感じたら、痛いのである。痛みは、どのような痛みなのか、どの程度の痛みなのかは、本人以外に、他人にはわからない。1日の内でも、知覚される痛みの強度は、変化する。また、どの程度の痛みと感じるかは、本人の精神状態や天候などで、変化し得る。逆に、痛みは、精神状態を不安定にさせる(痛みの悪循環)。

 3.抗うつ剤の鎮痛作用
 痛みが続くと、脳血管は収縮して、うつ(鬱)状態になり、体を安静にしようとする(心理的な痛み)。
 うつ状態では、痛みを抑制する、セロトニンやノルアドレナリンの分泌が減少(枯渇)するので、痛みを強く感じるようになる(痛みに過敏になる)。そして、痛みは、悪循環で、うつ状態を、悪化させる(うつ病になる)。
 抗うつ剤は、脳からの下行性抑制系を促進し、痛みを解除する。
 うつ状態であっても、体を動かして、脳の血行を良くした方が、元気が出る。
 抗うつ剤、抗不安薬は、セロトニンやノルアドレナリンの分泌を増加させ、痛みの閾値を低くし、痛みを軽減させ、心理的な不安を和らげる。筋弛緩薬は、交感神経節を介する筋肉攣縮や血管収縮を解除して、血行を改善して、発痛物質の生成を抑制して、痛みを軽減させる。

 4.湿布の効果
 温湿布と冷湿布も、貼付した筋肉の硬さを改善しない。
 冷湿布は、気化熱を奪い、湿布を貼付した皮膚の温度を、冷やす(2℃低下させる)。そして、温湿布も、気化熱を奪い、皮膚温を低下させる。温湿布を貼付すると、温かく感じるのは、温湿布に含まれるカプサイシン(トウガラシの辛味成分)が、温度を感じる神経受容器を刺激するためで、実際は、温湿布により、皮膚温は低下する。ただし、カプサイシンは、浸透した皮膚表面の毛細血管を拡張し、血流を増加させるので、皮膚温は、貼付して90分後頃から、2℃程度、上昇する。
 湿布を貼付すると、皮膚温が低下して、皮膚表面の知覚神経を鈍磨させ、深部の知覚神経からの痛みなどが、紛れる。また、湿布に含まれる消炎鎮痛剤(NSAIDs)が、PGE2合成を阻害し、疼痛腫脹抑制する。
 皮膚には、痛点の方が、圧点より多く存在する。

 痛みは、暖めると増強する場合と、冷やすと増強する場合とがある。一般的には、急性期には、冷やし、慢性期には暖めると、痛みは、軽減する。
 急性の痛み(炎症、侵害、侵襲、傷害)では、暖めると、組織の血行が増加し、組織の腫脹などが増強し、痛みが増強(悪化)することが多い。急性期に、生体が、血管を収縮させ、局所に、出血した血液を、貯留させようとしている場合は、暖めるのは、望ましくない。また、急性期に、組織に侵入した病原体や毒素を、速く処理しようとして、炎症反応で、血行が増加している場合も、暖めると、腫脹が増強して痛みが悪化したり、必要以上に血行が良くなり(血管が拡張し)、病原体や毒素を、全身に広げてしまうおそれがある。
 慢性の痛みは、痛み→筋肉や血管が緊張(収縮)→血行が悪化→発痛物質が蓄積→痛みの悪化と言う、悪循環が存在する。そのような場合、入浴などで、血行を良くすると、発痛物質が除去されたり、組織修復が促進され、痛みの原因となっている傷害などが、速く修復され、痛みが軽減する。しかし、冷やすと、血行が悪化し、痛みが、悪化する。

 侵害刺激は、脊髄後角を経た交感神経の作用では、血管を収縮させ(骨格筋肉を収縮・緊張させる)、ポリモーダル受容器を経たC線維からの神経ペプチド遊離作用(軸索反射)では、局所の血管を拡張させる(平滑筋を収縮させる)。

 5.アイシング
 2時間置きに15分間アイシングをすると、筋肉痛や打撲後の痛みが、早く軽減する。
 打撲や捻挫の際には、組織の直接的な損傷に加え、血管の損傷により、細胞に酸素が供給されないため、組織の損傷が増悪する。アイシングで、局所を冷却すると、細胞の代謝が抑制され、酸素需要量が軽減し、組織の損傷が、予防される。
 氷でアイシングする際は、皮膚温を零下にして凍傷を招かないために、氷をタオルなどに包むと良い。
 氷でアイシング出来ない時は、損傷直後に、一度、流水で冷却すると良い。

 6.痛覚の変化
 C線維を伝導された痛覚刺激は、脊髄後角の灰白質の第II層のニューロンを興奮させ、大脳に痛覚を伝導する
 Aβ線維を伝導された触覚刺激は、脊髄後角の灰白質の第III層で終わっている。
 末梢神経を部分切断すると、Aβ線維は、第II層に侵入し、触覚刺激が、痛覚刺激として、大脳に伝導されるため、触っただけで痛く感じるようになる。
 慢性痛では、痛覚神経と交感神経とに、可塑的な連結が生じ、精神的に興奮すると、奇妙な痛みが生じる(交感神経依存性疼痛)。
 慢性痛では、神経の可塑性変化が起きて、オピオイド鎮痛剤は無効な場合が多く、抗うつ剤が、有効。
 なお、Aβ線維は、脊髄後角で、痛覚(痛み)を伝達する、Aδ線維C線維を抑制している(ゲートコントロールセオリー)。帯状疱疹に罹患すると、ウイルスにより、Aβ線維Aδ線維C線維などが破壊される。その後、破壊されたAβ線維は、細い神経線維として再生される為、Aβ線維は、Aδ線維C線維の痛覚を抑制出来ず、帯状疱疹後神経痛として、エアコンの風や、衣服などの触覚刺激でも、痛覚(痛み)を感じてしまう(異痛症:allodynia)。

 7.痛覚受容器
 a).一次疼痛(速い痛み)
 損傷時に、最初に感じる、鋭い痛み。痛みを感じた部位や時間を識別出来る。大脳皮質に伝導される。
 一次疼痛は、特異的侵害受容器である、高閾値機械受容器(主に機械的侵害受容器)が、感知する。
 二次疼痛は、有髄線維のAδ線維が、伝導する:皮膚を圧迫し、有髄線維を圧迫すると、一次疼痛は、消失する。

 b).二次疼痛(じんわりくる遅い痛み)
 損傷時に、少し遅れて感じる、鈍痛。痛みを感じた部位を識別しにくい。大脳皮質だけでなく、視床下部や辺縁系にも伝導される。
 二次疼痛は、非特異的侵害受容器である、ポリモーダル受容器と、特異的侵害受容器である、高閾値機械受容器(熱侵害受容器、冷侵害受容器も含む)が感知する。
 二次疼痛は、無髄線維のC線維が、脊髄後角の第II層に、伝導する:低濃度の局所麻酔で、無髄線維を遮断すると、二次疼痛は消失する。
 C線維が伝導する二次疼痛は、歯髄炎や骨折なの際に、「ガンガン痛む」と表現される痛み。
 
 8.ポリモーダル受容器(polymodal receptor)

 ・ポリモーダル受容器は、原始的な感覚受容器であり、PGE2などの発痛物質で刺激され、興奮する。
 ・刺激され、興奮したポリモーダル受容器は、P物質サブスタンスPSP)、CGRP(calcitonin gene-related peptide:calcitonin 遺伝子関連ペプチド)などの神経ペプチドニューロペプチド)を遊離する:神経ペプチドは、後根神経節細胞(dorsal root ganglion:DRG)内で合成され、神経ペプチドの大部分は、分枝したC線維内を、逆行性に、末梢のポリモーダル受容器へ輸送される。ポリモーダル受容器から、神経ペプチドが、軸索反射として、組織に遊離され、血管拡張(皮膚発赤、血流増加)平滑筋収縮(気管支収縮、気道収縮)血管透過性亢進(血漿蛋白漏出、粘膜浮腫)粘液分泌亢進が、起こる。

 ・多様式な刺激(機械的、化学的、熱刺激)に応答する。
 ・全身組織(皮膚、筋・関節、内臓)に分布する。
 ・ポリモーダル受容器には、プロスタグランジン受容体、ヒスタミン受容体、ブラジキニン受容体、ATP受容体、バニロイド受容体1(VR1)が存在すると言う:炎症に際して産生される発痛物質(PGE2ヒスタミンブラジキニンなど)は、ポリモーダル受容器の興奮性を、著しく、高める為、炎症が続くと、痛覚や痒みに過敏になる。
 ・ポリモーダル受容器からのインパルスは、C線維が脊髄後角の第II層に伝導する。

 9.軸索反射(axon reflex)

 侵害局所のポリモーダル受容器が刺激されると、発生したインパルスが、脊髄後角に伝導される。後角で、インパルスは、C線維の別の分枝に伝導され、逆行性に末梢に伝導され、侵害局所の周囲のポリモーダル受容器(C線維末端)から、神経ペプチドが遊離され、血管拡張(皮膚発赤、血流増加)平滑筋収縮(気管支収縮、気道収縮)が起こる。また、肥満細胞からヒスタミンが放出され、血管透過性亢進(血漿蛋白漏出)により、浮腫が起こり、皮膚に膨疹が生じたり、粘液分泌亢進が、起こる。
 また、神経ペプチドのサブスタンスP(SP)は、真皮表層の肥満細胞やケラチノサイトに作用して、ヒスタミン、LTB4などのメディエーターを遊離させ、血管透過性亢進、マクロファージの貪食、好中球の遊走などの炎症を来たす。
 トリガーポイント(ツボ)には、神経と血管が、密に存在している。トリガーポイントを押すと、軸索反射により、サブスタンスPP(SP)、CGRPなどの神経ペプチドが遊離され、ツボの近辺の血管が拡張して、血行が良くなり、発痛物質が除去され、痛みが軽減する(注3)。

 10.オピオイド受容体と作用物質
 表1 オピオイド受容体
 受容体  内因性オピオイド  前駆体
 μ(ミュー)  β-エンドルフィン  プロオピオメラノコルチン
 δ(デルタ)  エンケファリン  プロエンケファリン
 κ(カッパ)  ダイノルフィン  プロダイノルフィン

 11.モルヒネの痛覚抑制作用
 モルヒネの痛覚抑制作用は、下記のような機序によるとされる。
 1).シナプス前抑制:1次求心性ニューロンからの神経伝達物質の放出の阻害する。
 2).シナプス後抑制:脊髄後角ニューロン(2次侵害受容ニューロン)の活性化の阻害する。
 3).下行性抑制系の賦活:脊髄後角ニューロン(2次侵害受容ニューロン)を抑制する。


 12.局所麻酔薬の作用機序
 局所麻酔薬は、ナトリムチャネルを遮断して、神経膜を安定化させ、疼痛を抑制する。

 13.片頭痛とトリプタン
 片頭痛注4)の発症機序は、完全には解明されていないが、片頭痛の際には、脳内の太い血管に炎症が起こり、まず、血小板から放出されるセロトニンにより、脳内の血管が収縮する。次に、炎症性に、血管透過性が亢進し、脳内の血管が拡張し、発痛物質が放出され、三叉神経が刺激され、痛みが伝導される。
 トリプタン(イミグラン錠)は、脳の三叉神経の
セロトニン受容体(5-HT1B/1D受容体)に選択的に作用して、セロトニン作用を示し、脳血管の拡張を抑制したり、痛みの伝達を抑制して、片頭痛を改善すると考えられている。
 コーヒーは、片頭痛の予防に良いと言う。
 
 片頭痛の人は、40歳未満に、若年性無症候性脳梗塞になるリスクが高い。脳ドックや一般外来の患者での調査結果によると、片頭痛患者は、24%もが、若年性無症候性脳梗塞の所見を示した。他方、片頭痛のない患者は、7%が、若年性無症候性脳梗塞の所見を示した。
 片頭痛の発作時には、74%の患者で、片側性に、主に、後頭葉(occipital region)の脳血流が、低下(hypoperfusion)する。
 片頭痛の発症には、ラクナ梗塞同様に、高脂血症など、血流を悪化させ要因が、あると考えられる。

 女性では、月経に伴ない、女性ホルモン(エストロジェン:estrogen)が変化し、片頭痛が起こる(月経片頭痛)。
 女性ホルモン(副腎皮質ステロイドと同様に血栓を形成させ易くする)の変化により、血小板凝集能が亢進し、血小板からセロトニンが、放出されることが、片頭痛の契機かも知れない。

 片頭痛は、ミトコンドリア病(MELAS)の初発症状のこともある。

 片頭痛は、チョコレート、チーズ、グルタミン酸などを摂取すると、発作が、誘発される。
 チョコレートは、カカオ豆が原料。カカオには、カカオポリフェノール、カフェイン、ビタミンA、ビタミンE、テオブロミン、チラミンを含んでいる。チラミンは、最初、血中に増加すると、血管を一次的に収縮させ、その後、チラミンが減少すると、血管が拡張しする。その結果、片頭痛様に、頭痛や嘔吐が現れたり、鼻出血が起こる。
 カカオポリフェノールは、甲状腺ホルモンの分泌を促進させ、基礎代謝を増加させる。
 テオブロミン(Theobromine)は、犬には強い毒性を示す(癲癇症の犬が食べた場合、発作を誘発し易い)。アリルプロピルジスルフィド(Allyl Propyl Disulfide:玉ネギ、長ネギに含まれる)は、犬の血液中のヘモグロビン(Hb)を酸化させ、溶血性貧血を起こすことがある。

 ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)は、片頭痛(偏頭痛)の発作を予防する効果がある。片頭痛患者は、高血圧リスクが高い。

 女性は、月経時に片頭痛が起こることが多い。女性ホルモンのエストロゲン(の血中濃度)が急激に低下すると、片頭痛発作が起こる。
 片頭痛発作は、湿度、天候、月経、多忙、ストレスなどが誘因で起こる。
 女性は、妊娠すると、片頭痛発作が軽快する人が多い(約80%の症例)。

 片頭痛は、母系遺伝をする症例が多い。
 第19番染色体短腕(19p13)に連鎖するP/Q型電位依存性カルシウムチャネルα1Aサブユニット遺伝子(CACNA1A)のミスセンス変異が原因で、家族性片麻痺性片頭痛が起こる。
 Na+/K+-ATPaseのα2サブユニット遺伝子(ATP1A2)のミスセンス変異が原因で、家族性片麻痺性片頭痛が起こる。Na+/K+-ATPase(Naポンプ)の機能が低下し、神経細胞の脱分極や興奮が起こったり、細胞内Na+濃度が上昇してNa+とCa2+の交換が低下して細胞内Ca2+濃度が上昇する。

 アロディニア(allodynia)とは、本来、疼痛を惹起しない程度の刺激によって、疼痛を感じる現象。
 片頭痛の発作により、アドディニアが、三叉神経支配領域(頭部アロディニア)や、三叉神経支配領域以外の領域に、現れる。
 片頭痛の発作中は、顔の皮膚に風が当たると痛み(疼痛)を感じたり、髪の毛がピリピリとして髪の毛を結っていられなくなる。

 片頭痛の発作中にセロトニン(5-hydroxytryptamine:5-HT)を注射すると、頭痛が軽減することが知られ、セロトン(seritonine)のアナログのスマトリプタンが片頭痛の治療に用いられるようになった。
 トリプタンは、5-HT1B/1D受容体に作用し、拡張した硬膜血管を、血管壁に存在する5-HT1B受容体を介して収縮させ、三叉神経を、三叉神経の5-HT1D受容体を介して沈静化(正常化)させ、片頭痛発作を改善させる。

 トリプタン製剤として、日本では、スマトリプタン、ゾルミトリプタン、エレトリプタン、リザトリプタンが販売されている。
 表2 トリプタンの比較(参考文献の竹島多賀夫氏らの表1や添付文書などを参考に作成) 
 一般名  スマトリプタン  エレトリプタン  リザトリプタン  ゾルミトリプタン  ナラトリプタン
 医薬品名  イミグラン錠50  レルパックス錠20mg  マクサルト錠10mg  ゾーミッグ錠2.5mg  アマージ錠2.5mg
 投与量(1回)  50mg  20mg  10mg  2.5mg  2.5mg
 追加投与まで必要な間隔  2時間以上  2時間以上  2時間以上  2時間以上  4時間以上 
 最高投与量(日)  200mg  40mg  20mg  10mg  5mg
 半減期(hr)  2.0  3.2  1.6  3.0  5.0〜6.3
 最高血中濃度
到着時間(hr)
 発作中  2.5  2.8  1.0  4.0  −
 非発作時  2.0  1.4〜1.8  1.0  1.8〜2.5  2.0〜3.0
 代謝  CYP  −  CYP3A4  c)  CYP1A2d)  CYP3A4等e)
 MAO  MAO-A  −  MAO-Ac)  MAO-Ad)  −e)
 排泄  尿中  約40%a)  44.5%b)  82.4%c)  60%以上  約50%e)
 糞中  −  45.0%  11.5%c)  約30%  −
 生物学的利用率(経口投与・%)  14  50  40  40  63〜74
 副作用  喉や頚部の締め付け感、めまい感、悪心・嘔吐  痙攣、WPW症候群の発作性頻脈の誘発   痙攣、WPW症候群の発作性頻脈の誘発  胸痛、胸部圧迫感(虚血性心疾患の誘発)、眠気  悪心、嘔吐、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)の誘発 
 特徴  切れ味が良く有用性が高い、点鼻液や注射液もあり  副作用が少ない  有効性が高い  脂溶性が高い、中枢性服作用(眠気、めまい)多い  作用時間(半減期)が長い  
 a):スマトリプタン50mg及び100mgを、健康成人男性に、単回経口投与した場合、投与24時間後までに、未変化体が約2%、インドール酢酸体が約40%、尿中に排泄された。
 b):尿中に、未変化体は投与量の6%、N-脱メチル体(活性代謝物)は投与量の2%認められる。
 c):リザトリプタンは、主に、A型モノアミン酸化酵素(MAO-A:monoamine oxidase、MAO、EC番号 1.4.3.4)により酸化的脱アミノ化を受け、薬理学的に不活性なインドール酢酸体が生成される。リザトリプタンは、ヒトの肝臓の各種CYP(肝チトクロムP450各分子種:CYP3A4/5、1A2、2C9、2C19、2E1)のマーカー活性を阻害しないが、CYP2D6に対しては、競合的に阻害する(Ki=1400 nmol/L)。14C標識リザトリプタン10 mgを用いて健康成人を対象して行った実験結果では、14C標識リザトリプタン10 mgを単回経口投与した後、放射能活性で測定すると、投与5日後までに、82.4%が尿中に、11.5%が糞便中に排泄される。なお、投与量の約14%は未変化体として、51%はインドール酢酸代謝物として尿中に排泄された。
 d):ゾルミトリプタンは、主として肝臓に於いてCYP1A2により活性代謝物に代謝され、更に、A型モノアミン酸化酵素(MAO-A)により不活性代謝物に代謝され、尿中及び糞中に排泄される。主な代謝物は、N-脱メチル体、N-酸化体、インドール酢酸体(血漿中及び尿中の主代謝物)の3種。ゾルミトリプタン25mgを、単回経口投与した場合、投与量の60%以上が尿中に排泄され(主にインドール酢酸体)、約30%が糞中に排泄される(主に未変化体)。
 e):ナラトリプタンは、CYP1A2、CYP2C9、CYP2D6、CYP2E1、CYP3A4/5などの複数のCYP分子種で代謝される。ナラトリプタンは、各CYP分子種(CYP1A1、CYP1A2、CYP2A6、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP2E1、CYP3A4/5)の代謝活性を阻害しない。ナラトリプタンは、モノアミンオキシダーゼ(A型及びB型)の代謝活性を阻害しない。ナラトリプタン2.5mgを、健康成人男性に、空腹時に単回経口投与した場合、投与24時間後までに、投与量の約50%が未変化体として尿中に排泄された。

 トリプタン製剤の半減期は、アマージ錠2.5mg=5.05時間、エレトリプタン錠20mg=3.2時間、ゾルミトリプタン錠2.5mg=2.4時間、スマトリプタン錠50mg=2.2時間、スマトリプタン点鼻液20mg=1.87時間、スマトリプタン注3mg=1.46時間、リザトリプタン錠10mg=1.6時間。

 トリブタンは、血管収縮作用がある。
 トリブタンは、心筋梗塞の既往がある患者、虚血性心疾患又はその症状・兆候のある患者、異型狭心症(冠動脈攣縮)のある患者、脳血管障害患者、一過性脳虚血発作の既往がある患者、末梢血管障害を有する患者、コントロールされていない高血圧症の患者には、内服させてはならない(禁忌)。
 トリプタン(スマトリプタン、エレトリプタン、リザトリプタン)は、主に肝臓で代謝されるので、重篤な肝機能障害を有する患者では、血中濃度が上昇するおそれがある。
 トリプタン(スマトリプタン、エレトリプタン、リザトリプタン、ゾルミトリプタン)は、家族性片麻痺性片頭痛、孤発性片麻痺性片頭痛、脳底型片頭痛あるいは眼筋麻痺性片頭痛の患者には投与しないこと。
 ナラトリプタン(アマージ錠2.5mg)は、半減期が長い:アマージ錠2.5mgを1回内服させると、約2時間半で最高血中濃度に到達し、半減期は約5時間と、持続時間が長く作用する(投与24時間後も、頭痛改善効果は、71.6%)。ナラトリプタン(アマージ錠)投与24時間以内の片頭痛再発率は、約12%であり、また、再発例の再発までの時間は、ナラトリプタン投与群では15.3時間であり、プラセボ群より2倍以上、長い。

 重度の片頭痛発作(月経時片頭痛など)には、トリブタンに、鎮痛薬や非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)と併用すると良い。

 片頭痛は、軽度な頭痛から始まり、時間と共に頭痛が増強し、ピークを超えると、痛みが次第に減弱し、消失して行く。
 トリプタンなどの片頭痛の治療薬は、発作の早期の時期で、頭痛が軽度なうちに使用した方が、良い(発作の痛みがピークにならずにやり過ごすことが可能)。
 点鼻液(イミグラン点鼻液20)は、錠剤に比して、使用タイミングによる影響を受け難く、頭痛が始まってからのどの時期に投与しても、頭痛軽減効果がある(頭痛早期軽減率は、約0%)。イミグラン点鼻液20は、片頭痛(前兆のない片頭痛、あるいは、前兆のある片頭痛)にのみに、保険適応が認められている。
 片頭痛の治療には、トリプタンとNSAIDsを併用することがある。

 女性の片頭痛患者は、月経に関連した片頭痛発作を、60〜70%の人が体験している。
 月経に関連した片頭痛発作(月経関連片頭痛)は、持続時間が長く、再発し易かったり、重傷度が高かったり、治療に抵抗性の傾向が見られる。

 悪心や嘔吐がひどく、薬を内服出来ない片頭痛患者には、イミグランキット皮下注3mg(スマトリプタンコハク酸塩注射液をシリンジに充填したキット製剤)を自己注射(皮下注射)する。効果は、注射10分後から現れる(60分後には、93.9%の症例に有効)。イミグランキット皮下注3mgは、
片頭痛や群発頭痛発作の頭痛発現時に、通常、成人は、プタンとして1回3mgを皮下投与する。1日6mgを使用限度とする。イミグランキット皮下注3mgは、イミグラン錠内服後には、2時間以上あけて使用する。イミグランキット皮下注3mgを使用後に、再度、イミグランキット皮下注3mgを注射したり、トリプタン製剤(イミグラン錠50)を内服したり、点鼻液(イミグラン点鼻液20)を使用したりするには、1時間以上、間隔を空ける。イミグラン製剤を使用後に、他のトリプタン製剤やエルゴタミン製剤を使用する場合(あるいはその逆の場合)は、24時間以上、間隔を空ける:トリプタン製剤(5-HT1B/1D受容体作動薬)は、他のトリプタン製剤やエルゴタミン製剤とは、併用禁忌。
 イミグランキット皮下注3mgは、
「前兆のない片頭痛」、「前兆のある片頭痛」、あるいは、「群発頭痛」と確定診断が行われた患者のみが、使用可能。
 片頭痛は、他の頭痛を呈する疾患(例えば、くも膜下出血等の脳血管障害)などを鑑別し、除外してから、トリプタンなどの治療を行う。

 14.抜歯と鎮痛剤
 抜歯をすると、プロスタグランジンは、抜歯直後から、歯周組織で急速に増加し始め、3〜5時間後にピークに達し、7時間後に、元のレベルまで、減少する。抜歯後の痛みは、3〜5時間後に、ピークになるが、痛みを感じてから、鎮痛剤を飲んでも、鎮痛剤の効果が得られるまで、速くても15分は要する。抜歯に際しては、抜歯前に、予め鎮痛剤を服用した方が、痛みを遮断するにには、望ましいと言う。

 15.咳嗽の発症機序
 有髄線維のAδ線維と、無髄線維のC線維は、咳嗽(がいそう)の発現に関与している。
 Aδ線維の末端のRARs(rapidly adapting receptors)は、機械的な刺激、化学物質(アンモニア、ヒスタミン:注5、プロスタグランジンなど)の刺激、煙草の煙などの刺激を受けると、咳嗽を誘発する。
 C線維は、知覚神経で、副交感神経求心路として機能する。タキキニン(P物質、ニューロキニンA、CGRP)は、迷走神経頚部神経節にて合成され、無髄神経のC線維の軸索内を、末梢側のC線維末端へ下降的に、輸送される。C線維は、カプサイシン、ヒスタミン、ブラジキニン、煙草の煙、などの刺激を受けると、C線維末端より、タキキニンを放出する。
 C線維より放出されるP物質(サブスタンスP)は、肥満細胞を活性化させ、脱顆粒を起こさせる(ヒスタミンが放出される)。反対に、肥満細胞から放出されるロイコトリエンC4LTC4)は、C線維を刺激し、C線維末端から、タキキニンを放出させる。このように、C線維と肥満細胞のどちらか一方が、活性化ないし、刺激されると、相互に活性化・刺激し有って、咳嗽を悪化・慢性化(慢性咳嗽)させるおそれがある。
 タキキニンには、粘液糖蛋白分泌を促進させる作用がある。
 気道炎症で産生・放出される、ヒスタミン、ブラジキニン、ロイコトリエン、プロスタグランジン、アセチルコリン、エピネフリン、神経ペプチド(P物質、ニューロキニンAなど)は、気道上皮細胞のイオン輸送を活性化する。

 16.天候と痛み
 慢性痛は、天候変化(気圧低下)により、増強する。
 気圧が低下すると、交感神経が緊張し、副腎髄質からのアドレナリン分泌が亢進し、末梢血管(細動脈)が収縮し、組織内の血行が低下(虚血)し、酸素(O2)濃度が低下し、組織のpHが低下(乳酸の蓄積など)し、感受性が高まっていた痛み情報を伝達する痛覚繊維が興奮し、痛みが増強すると考えられている。
 気圧を感知する「気圧センサー」が、内耳に存在する可能性が示唆されている。

 17.おまけ
 ・眼の網膜で感知された視覚情報は、視床で中継され、後頭葉の「第一次視覚野」に、伝わる。「第一次視覚野」では、基本的な視覚情報が検出される。
 その後、視覚情報は、さらに、「背側視覚路」により、その物体が、どこにあるのか(動きや空間の情報処理を行う)、また、 「腹側視覚路」により、その物体が、何であるのか(形や色の情報処理を行う)が、認識される。
 このように、視覚情報は、「どこにあるのか(Where)」と、「何であるのか(What)」が、別々の脳中枢で分析される
 その為、例えば、脳梗塞などで、「何であるのか(What)」を認識する「腹側視覚路」だけが、障害されると、見させられた図形を、スケッチ出来ても、その図形が、何であるか、解らなくなる。
 また、最近の研究では、脳には、神経細胞を含む「コラム」が、多数、存在し、1つの「コラム」は、特定の図形のパターン(図形特徴)に反応すると考えられる。
 脳は、視覚情報を、特定の図形のパターンに、分析して、反応する「コラム」の情報を統合して、実際の物体の、複雑な形状を、認識している。

 ・英語では、痛み(pain)の感じ方を表現する語彙が、多数存在する。
 aching:うずく(歯痛のような、ズキンズキンとした、継続的な痛み)
 biting:(寒さが)身を刺すような痛み
 burning:ほてる(強烈な、激しい痛み)
 cramping:引きつるように痛い
 cutting:身を切るような痛み
 like a sting:(動植物が)刺すように痛い
 punching:殴られたように痛い
 sore:さわると痛い(爛れて、ひりひり痛い)
 swollen:腫れた(腫れたような痛み)
 throbbing:ずきずきする拍動性の痛み

 ・肘内障の徒手整復方法は、肘関節を90℃屈曲させ、片方の手の母指で、患児の撓骨頭部を押さえ、もう片方の手で、手関節を軽く保持して、患児の前腕を、回外させる。
 通常、患児の前腕を、70〜90℃回外させると、クリックを触知し、整復に成功する。
 肘内障の徒手整復方法:一方の手で親指で撓骨頭部を押さえる→他方の手で前腕を回内位にする→肘関節を90℃屈曲させる→前腕を回外させる→肘関節をさらに屈曲させる(前腕を肘関節の方向に押し込む)

 肘内障の徒手整復は、患児の前腕を内側に向け(手の甲を上側にする:回内位)、次に、肘関節を90℃に曲げ、その後、前腕を外側に回し(手の平を上側にする:回外位)、さらに、肘関節を前腕が上腕にくっつくまで曲げる(骨折が疑わしい場合は無理に行わないこと)。
 両腕の万歳が出来れば、整復成功。


 ・骨折した部位に超音波を当てると、骨折治癒が4割早くなる。
 超音波(1.5MHz)を、毎日20分間、低出力(30mW)で、パルス(1000μ秒中200μ秒間発する)で、患部に照射する。
 超音波を照射すると、骨系細胞が刺激され、各種サイトカインが放出され、骨の修復機構が活性化される。
 超音波が届き易い、体表に近い骨の骨折部位の方が、超音波照射の効果が現れ易い。

 ・血管迷走神経反応(血管迷走神経反射)は、深いな光景、疼痛、医療行為(採血など)、長時間の立位等が誘因となって、副交感神経の緊張が高まり、徐脈、血管拡張により、低血圧を来たす。
 血管迷走神経反応(vasovagal reaction:VVR)は、顔面蒼白、冷汗、悪心、意識消失、痙攣、失禁等の症状が現れる。
 血管迷走神経反応(VVR)は、若年者、特に、女性に多く見られる。
 治療としては、安静臥床、必要に応じて補液療法を行う。
 採血や注射は、臥位で行った方が、血管迷走神経反応(血管迷走神経反射)は、起こり難い。検査目的の採血を行おうとして、悪性血管迷走神経反応が起こり、心停止を反復することがある。

 注1ヒト大脳皮質のニューロン数(密度)は、生下時が1番多く、生直後から急激に減少し、一部の例外(海馬など)を除いて、その後、新たにニューロンが産生されることはない。大量にニューロンを持って誕生した後、盆栽を刈り込むように、必要とされないニューロンは、淘汰されて行く。死んで行く細胞(ニューロン)は、生き残る細胞に、情報を伝える。
 生直後から、ニューロンは、減少するが、生き残ったニューロンが、樹状突起を伸ばし、シナプスが、豊富かつ急速に形成される。豊かな環境は、ニューロンの樹状突起を発達させる。そして、ヒト大脳皮質のシナプス数(密度)は、5歳頃がピークとなり、15歳頃までに、成人レベルに減少する。しかし、ニューロン数とことなり、シナプス数は、20歳以降、ほとんど減少しないが、65歳以降は、減少する。
 最終的に残されるニューロンやシナプスの量は、遺伝的に定められているが、どのニューロンやシナプスが、残されたり、淘汰されるかは、環境因子によって、支配されているという。
 他人に対する共感性が乏しい家庭環境に育った子供は、被害者の痛みや恐怖に、無関心で、暴行を加えるという。

 注2乳酸は、嫌気的解糖時に生成される。PGE2は、炎症時に、マクロファージから産生されるIL-1βが、線維芽細胞や滑膜細胞などに働いて、産生される。ヒスタミンは、炎症時に、白血球(肥満細胞など)から遊離される。セロトニンは、血小板や肥満細胞から放出される。
 
ビタミンB1不足は、乳酸が蓄積しやすくなり、神経痛を悪化させると考えられる糖分(グルコースを含む砂糖)、肉(アラキドン酸)、油脂(リノール酸)が多い食餌は、PGE2の産生を増加させて、神経痛などを悪化させると考えられる。 

 注3:トリガーポイント(ツボ)を押すと、近辺の、痛みを感じている部位の血管が拡張して、発痛物質が除去され、痛みが軽減する。
 トリガーポイント(ツボ)は、徐々に痛みを感じない程度に、皮膚に垂直に、指圧すると、最も効果的。
 ツボの存在部位は、電気が通り易いことが知られている。ツボは、神経細胞が集中していて、気功などで発せられる「気」のパワーを吸収し易い部位と、思われる(神経細胞の方が、「気」を、吸収、伝導し易い?)。「気」が流れる「経絡」は、肉体に存在するが、神経組織ではない。ただ、ツボを刺激すると、神経組織を介して、脊髄から脳に刺激が伝導され、脳から自律神経を介して、臓器に情報が伝導されて、体調が変化するものと思われる。

 注4:偏頭痛とも書く。
 頭痛は、痛みの性質から、大きく、3種類に、区別される。
 @拍動性にズキズキ痛む(片頭痛、群発頭痛、感冒時の頭痛)
 A持続性に絞めつけられるように痛む(筋緊張性頭痛)
 Bナイフで突き刺されるように痛む(三叉神経痛、舌咽神経痛)
 片頭痛の発作は、月に1〜2回(多い人で週に2〜3回)起こり、1回の発作は、数時間〜3日間続く。片頭痛は、女性に多い。
 群発頭痛の発作は、毎日、1〜2時間続く激しい頭痛が、1〜2カ月間、群発地震のように続き、数か月毎に、再発する。群発頭痛は、片側の眼の奥にも激しい痛みが起こり、飲酒で血管が拡張すると、増悪する。群発頭痛は、男性に多い。
 筋緊張性頭痛は、鉢巻で絞めつけられるような圧迫性の痛み、ジワーとした痛み、重い痛みなどが、毎日、持続する(多くは、両側性)。頭痛の痛みは、夕方や、週末に、ひどくなる傾向がある。こめかみや、眼の奥が痛む場合もある。めまいや、倦怠感を伴うこともある。同じ姿勢を続けたり(うつむいた姿勢で仕事を続ける)、精神的に緊張し、頚部や頭の筋肉が収縮し、発痛物質が蓄積することが、原因らしい。肩こり、首の筋のこりを伴うことが多い。頚椎に変形のある人は、筋緊張性頭痛が、起こりやすい(後頭神経痛)。筋緊張性頭痛は、中高年の男女に多い。
 三叉神経痛の発作は、誘発部位が刺激されると、数秒間の鋭い痛みが起こる。

 片頭痛(偏頭痛)は冷やすと良くなる。反対に、筋緊張性頭痛は暖めると良くなる。

 注5:抗ヒスタミン剤(抗ヒスタミン薬)は、鎮咳作用がある。
 酢酸クエン酸、蒸留水(の吸入)は、咳嗽を誘発させる。 

 参考文献
 ・村上隆志:子どもの症状をどう考えるか−少年犯罪について考える−.日児誌 108巻4号 593〜601(2004年).
 ・半場道子:痛みのサイエンス 新潮選書(2004年).
 ・衣笠清人:肘内障、実践 救急医療、日本医師会雑誌、第135巻・特別号(1)、S359-340、2006年.
 ・野村和博:超音波で骨折を早く治す、Nikkei Medical、2007年1月号、34-35頁.
 ・藤田浩:血管迷走神経反応、日本医事新報、No.4319(2007年2月3日)、107頁.
 ・佐藤純:天候変化と慢性疼痛には因果関係があるか、日本医事新報、No.4336(2007年6月2日)、68-71頁.
 ・ARBに片頭痛予防効果 発作頻度が約80%減少、Medical Tribune、2007年7月12日、6頁.
 ・北川泰久、間中信也、坂井文彦、立岡良久:特集 頭痛診療の進歩と課題、座談会 頭痛診療の進歩と今後の課題、日本医師会雑誌、第136巻・第11号、平成20(2008)年2月、2146-2160頁.
 ・竹島多賀夫、佐久間研司、中島健二:特集 頭痛診療の進歩と展開 トリプタンの使い方と注意点、日本医師会雑誌、第136巻・第11号、平成20(2008)年2月、2186-2189頁.
 ・De Benedittis G, et al: CBF changes during headache-free periods and spontaneous/induced   attacks in migraine with and without aura: a TCD and SPECT comparison study. Neurosurg Sci. 1999 Jun; 43(2): 141-6; discussion 146-7.

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