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 一酸化窒素(NO)

 1.NOとは
 NO(Nitric oxide)は、血管内皮細胞から産生され、血管内皮機能を調節している。
 血管内皮細胞から産生されるNOには、血管拡張作用(降圧作用)、血小板凝集抑制作用(抗動脈硬化作用)、単球などの白血球が血管内皮細胞に接着したり内皮細胞下組織に浸潤するのを防ぐ作用、血管平滑筋細胞の増殖を抑制する作用、などがある。
 NOは、血管の内皮由来弛緩因子(EDRF:endothelium-derived relaxing factor)と呼ばれていた。NOは、太い血管に作用する。

 動脈硬化を起こした血管では、酸化LDLなどにより血管内皮機能が低下し、NOの産生が低下して、血管弛緩の悪化、血小板凝集の亢進、血管平滑筋細胞の増殖の亢進などが起こる。
 NOは、従来より、喫煙や大気汚染の有毒ガスとして、悪名が高かった。
 NOは、“諸刃の剣”であり、NO産生が低下し過ぎても、増加し過ぎても、酸化ストレスは、過剰になる。

 2.NOと活性酸素  
 NOも、不対電子を有しており、フリーラジカル
 NOの作用発現時間は、半減期が3〜6秒程度と、短い。
 NOは、近傍細胞(paracrine)や産生細胞自身(autocrine)に作用する。

 血管内皮細胞やマクロファージでは、NOとスーパーオキシド(O2-が同時に発生する。
 NOは、スーパーオキシドを捕捉し、スーパーオキシドを消去する。しかし、この際に、ペルオキシナイトライト(パーオキシナイトライト:peroxynitrite:ONOO-)という、より強力な酸化力や毒性を持つラジカルが生成される(NO+O2-→ONOO-)。
 この、NOとスーパーオキシドとの反応速度は、SODとスーパーオキシドとの反応速度より、3倍も速い。

 このように、NOは、スーパーオキシドが産生されると、消去されてしまう。
 しかし、NOは、ミトコンドリアの電子伝達系を障害して、スーパーオキシドの産生を増加させる。
 他方で、NOは、スーパーオキシドを消去する細胞外SODを増加させて、スーパーオキシドによるNO自身の消去を抑制している(フィードフォワード機構)。
 
 3.NOと動脈硬化
 NOは、グアニル酸シクラーゼ(guanylate cyclase)を活性化して、cyclic GMP(cGMP)レベルを上昇させる(注1)。

 NOには、下記のような作用があり、抗動脈硬化作用を示すとされる。
 1.血管平滑筋を弛緩させる。
 2.血小板凝集を抑制する。
 3.好中球などによる、スーパーオキシド産生を抑制する。
 4.細胞接着因子(VCAM-1セレクチン)の発現を抑制する。
 5.サイトカインIL-8など)の分泌を抑制する。
 6.LDLの酸化を抑制する。
 7.酸化LDLりゾホスファチジルコリン(LPC)が、マクロファージを血管内皮細胞に接着させる作用を抑制する。

 NOは、プロスタサイクリン(PGI2)合成酵素を活性化し、PGI2の産生を高める。
 PGI2は、血管内皮細胞に直接働いて、細胞内cAMP濃度を上昇させ、NO産生を高める。NOは、PGI2の産生を相乗的に高める(ポジティブフィードバック)。

 NOは、PGE2、LTB4PAFIL-6の合成を、抑制する。

 NO産生の基質となるL-アルギニンを強化した食餌を与えられたウサギは、血管内皮細胞機能が改善したという。

 インスリンは、血管内皮細胞から、NOを産生させる。
 糖尿病(2型)、肥満、本態性高血圧になると、血管内皮細胞の機能が障害されて、インスリン抵抗性状態になると、インスリンによるNO産生・放出が低下する。

 15分間程度の入浴は、NO産生を増加させ、毛細血管を新生させる。

 TNF-αIL-1βは、NO産生を亢進させる。

 セロトニンは、血管内皮細胞に5-HT受容体を介して結合し、NOを産生させ、血管を拡張させる。

 NOの血管拡張作用の機序は、NO→グアニレートシクラーゼが活性化される→cGMPの上昇→細胞内から細胞外にCa2+が流出→血管平滑筋が弛緩、とされる。

 ACE阻害剤降圧剤)は、カリクレイン・キニン系でキニナーゼII(=ACE)を抑制し、ブラジキニンの分解を抑制し、蓄積したブラジキニンは、NO、PGI2などの産生を増加させる。

 NOは、血管内皮細胞の血管透過性調節作用、血小板凝集抑制作用、白血球接着抑制作用、活性酸素産生低下作用、活性酸素不活化作用、活性酸素による脂質酸化抑制作用などが知られている。

 「人は血管とともに老いる」

 4.NOS(NO合成酵素)
 NOは、L-アルギニンを基質として、NO合成酵素(NOS:NO synthase)により生成される。
 NOSには、3種類のアイソフォームがある:NOS-1とNOS-3は、構成的(constitutive)に発現されているが、NOS-2は、誘導型(inducible)である(iNOS)。

 1).NOS-1
 NOS-1は、神経型で、小脳や嗅球などのニューロンに存在するのみならず、骨格筋、心筋、膵β細胞、下垂体、腎マクラデンサなどにも存在する。NOは、中枢神経系では、神経伝達物質として作用する。NOS遺伝子をノックアウトしたマウスは、攻撃性が高まる。

 2).NOS-2
 NOS-2(eNOS)は、マクロファージに誘導される。マクロファージ以外にも、肝実質細胞、血管平滑筋細胞、中枢神経系グリア細胞などにも存在する。細胞が、サイトカインや細菌壁リポ多糖類(LPS)などに刺激されると、酵素が誘導され、NOを産生する。
 NOS-2から産生されるNOは、アポトーシスの経路を抑制する。
 TNF-αは、NOS-2を誘導する。
 NOS-2は、COXとクロストークする。

 3).NOS-3
 NOS-3は、主に血管内皮細胞に存在する。血管内皮細胞に、長期間、ずり応力が働くと、NOSレベルが増大し、NO産生が高まり、血管が拡張したり、白血球の接着を抑制するという。また、ブラジキニン、アセチルコリンなども、NOS-3を活性化させるという。

 5.NOと冠攣縮
 冠動脈などの平滑筋は、アドレナリンなど作用すると、細胞内(ミトコンドリア、小胞体)に貯蔵されたCa2+が細胞質内に放出され、また、細胞膜のCa2+チャネルから細胞外のCa2+Cao)が細胞質内に流入し、細胞内Ca2+Cac)が、急激に増加する。平滑筋は、細胞内Ca2+(Cac)が増加すると、カルモジュリン依存性のミオシン軽鎖がリン酸化され、アクチンフィラメントとミオシンフィラメントが相互作用し、収縮する。
 RhoA/Rhoキナーゼ系は、ミオシン軽鎖ホスファターゼの活性を抑制し、オシン軽鎖のリン酸化を亢進させ(リン酸化されたミオシン軽鎖の分解を抑制し)、Ca2+感受性を亢進させる(細胞内Ca2+増加による平滑筋収縮を促進させる)。

 NOは、cGMPを介して、RhoA/Rhoキナーゼ系を抑制し、Ca2+感受性を抑制する(細胞内Ca2+増加による平滑筋収縮を抑制する)。
 ニトログリセリンは、体内で、NOに変換され、亢進したCa2+感受性を抑制し、冠攣縮を抑制し、狭心症の発作を、改善する。

 6.NOと糖尿病性勃起障害(ED)

 性的な刺激により、陰茎の神経末端でNOS-1(nNOS:神経型一酸化窒素合成酵素)が活性化される。産生されたNOは、陰茎の神経末端で、短時間放出され、陰茎の血管が拡張し、陰茎に流入する血液が、一時的に増加し、勃起が始まる。さらに、陰茎に血液が流入するのと同時に、陰茎の平滑筋が、一時的に、弛緩する。このように、陰茎の血管が拡張し、同時に、陰茎の平滑筋が弛緩することで、さらに、陰茎に、多くの血液が流入し、血流が増大して、ずり応力が生じて、陰茎の血管のNOS-2(eNOS)が活性化され、NOが持続的に産生・放出され、平滑筋の弛緩が維持され、陰茎は、完全に勃起する。
 短糖類のO-結合型N-アセチルグルコサミン(O-GlcNAc)は、eNOSの活性化を阻害し、NO産生・放出を抑制し、陰茎の平滑筋の弛緩を妨げ、ずり応力の発生を抑制し、さらなるNO産生・放出を抑制し、勃起を妨げる。
 糖尿病患者では、高血糖に伴い、血中に過剰にO-GlcNAcが増加し、NOの産生・放出が抑制され、糖尿病性勃起障害(ED)が生じる。

 注1:NOは、血小板内のcGMP(GTPから、guanylate cyclaseにより合成される)を増加させて、血小板凝集を抑制する。PGI2は、血小板内のcAMPATPから、adenylate cyclaseにより合成される)を増加させて、血小板凝集を抑制する。

 NOや、アセチルコリン(Ach)は、cGMPを増加させ、血管拡張作用を来たす。
 副交感神経から放出されるアセチルコリン(Ach)は、細胞内cGMPを増加させ、肥満細胞等からのヒスタミン遊離を抑制する。ヒスタミン受容体、アドレナリン受容体、PGE2のEP2受容体は、アデニル酸シクラーゼ(AC)を活性化させ、細胞内cAMPを増加させ、Aキナーゼ(PKA)を活性化させ、肥満細胞等からのヒスタミン遊離(脱顆粒)を、抑制する。
 神経ペプチドのCGRPは、血管内皮細胞のNO産生を介して、また、血管平滑筋のcAMP産生を介して、ミオシン軽鎖キナーゼを不活化させ、血管弛緩作用を示す。

 参考文献
 ・糖尿病性EDの主因は短糖類 Medical Tribune Vol.38, No.45. 1頁(2005年11月10日号).
 ・泰江弘文、他:冠攣縮性狭心症の臨床、発作機序ならびに治療−最近の知見を踏まえて− 日本醫事新報 No.4258、12-17頁、2005年.
 ・山下智也、横山光宏:血管内皮、日本医師会雑誌、第136巻・特別号(1)、メタボリックシンドローム up to date、S104-S106頁.

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