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 Th1細胞とTh2細胞

 リンパ球には、T細胞と、抗体(免疫グロブリン)を産生するB細胞とがある。
 T細胞には、さらに、単球・マクロファージから抗原を提示され、免疫反応を調節する、ヘルパーT細胞(CD4抗原陽性)と、ウイルス感染細胞などを傷害する、キラーT細胞(CD8抗原陽性)がある。
 ヘルパーT細胞には、Th1細胞とTh2細胞とがある。

 抗原提示細胞が、IL-12を産生するか、それとも、PGE2を産生するかが、Th1細胞(細胞性免疫)と、Th2細胞(液性免疫)のどちらが優位になるのか、決定している。
 リノール酸(LA)やアラキドン酸の摂取量が多いと、PGE2の産生が過剰に行われ、Th1細胞による細胞性免疫が低下し、発熱期間が長引き(熱が長く続く)、Th2細胞による抗体産生が過剰に行われ、アレルギー体質になりやすくなると、考えられる。


 1.ヘルパーT細胞による免疫応答の調節
 ヘルパーT細胞(CD4陽性細胞)の大部分は、特定のサイトカイン産生パターンを有しない、ナイーブヘルパーT細胞(ナイーブTh細胞:Th0細胞)。
 Th0細胞(ナイーブTh細胞)は、抗原提示細胞(マクロファージ、樹状細胞など)が産生するサイトカインにより、細胞性免疫に関与するTh1細胞か、液性免疫に関与するTh2細胞へと、分化する。

 a).Th1細胞(T helper 1 cell)
 抗原提示細胞であるマクロファージが、抗原をT細胞に提示する際に分泌するIL-12は、Th0細胞(ナイーブTh細胞)を、Th1細胞(T helper 1 cell)に分化させる。
 Th1細胞は、IL-2IFN-γ(IgE抗体の産生を抑制する)、TNF-α、TNF-β、GM-CSF、IL-3(注1)を産生し、T細胞や、単球など貪食細胞の活性を高め、
細胞性免疫(ツベルクリン反応など)に関与する。
 Th1細胞が産生するIFN-γは、Th0細胞(ナイーブTh細胞)のTh1細胞への分化を、促進させる。

 b).Th2細胞(T helper 2 cell)
 マクロファージが、抗原をT細胞に提示する際に分泌するPGE2は、Th0細胞(ナイーブTh細胞)を、Th2細胞(T helper 2 cell)細胞に分化させる(注2)。
 Th2細胞は、IL-3、IL-4(IgE抗体の産生を増加させるサイトカインで、肥満細胞や、NKT細胞からも産生される)、IL-5、IL-6IL-10、IL-13を産生し、
液性免疫(抗体産生)に関与する。IL-10は、Th1細胞からのIFN-γの産生、IL-12の産生を抑制する。
 Th2細胞が産生するIL-4や、IL-6は、Th0細胞(ナイーブTh細胞)のTh2細胞への分化を、促進させる。
 Th0細胞(ナイーブTh細胞)が、Th2細胞に分化するには、IL-4より、アラキドン酸から生成されるPGE2の方が、重要と考えられている。
 Th2細胞は、抗原提示細胞として、B細胞(IL-12を産生しない)から抗原刺激を受けても、増殖する。

 2.Th1細胞とTh2細胞の免疫応答の違い
 Th1細胞による免疫応答では、細胞性免疫が働いて、リンパ球やマクロファージなど単核細胞中心の炎症反応が起る。真菌のクリプトコッカスに対する免疫応答では、Th1細胞が優位に働くと、強固な肉芽腫が形成され、感染が局所に封じ込められる。
 しかし、Th2細胞が優位に働くと、炎症性細胞浸潤が極めて乏しい。例えば、液性免疫では、クリプトコッカスなどの細胞内寄生菌を、殺せない。その為、肺胞腔にクリプトコッカスが充満して、感染が、容易に血行性に広がって、髄膜炎などを発症する。


 Th1細胞より、Th2細胞が優位に働いている状態では、IgE抗体産生が増加し、アレルギー体質に陥りやすいと考えられている。
 菌体成分(Pathogen-associated molecular pattern:PAMP)は、樹状細胞に作用し、Th0細胞(ナイーブTh細胞)のTh1細胞への分化を促進し、Th1細胞優位の状態にし、アレルギー体質を改善する。納豆ヨーグルト、などの食材を摂取すると、アレルギー体質が改善されると言う(Hygiene hypothesis)。

 ウイルス感染では、1型インターフェロン(IFN-αとIFN-β)が産生される。1型インターフェロン(Type-I IFN)は、T細胞に作用し、IFN-γやIL-10を産生させる。
 細菌感染では、2型インターフェロン(Type-II IFN)のIFN-γが産生され、Th1細胞が誘導される。

 細胞内寄生性細菌(結核菌、サルモネラ菌、リステリア菌など)による感染症では、主に、Th1細胞が誘導され、Th1細胞から産生されるIFN-αにより食細胞(マクロファージ)が活性化され、また、Th1細胞から産生されるIL-2によりCD8陽性キラーT細胞が活性化され、殺菌等が行われる。
 細胞外で増殖する細菌(Staphylococcusなどのグラム陽性球菌など)による感染症では、主に、Th2細胞が誘導され、Th2細胞から産生されるサイトカインにより、抗体が産生され、殺菌等が行われる。

 生体の抗酸化能が低下する(抗酸化物質が減少する)と、Th1細胞より、Th2細胞が優位に働くと考えられる。
 ビタミンC(90mg/日)、ビタミンE(20mg/日)、β-カロテン(0.75mg/日)などの抗酸化物質は、Th2細胞優位の状態を改善すると考えられる。


 アラキドン酸(脂質や、肉類に含まれる)の過量摂取は、PGE2の生成を促進させ、Th2細胞細胞優位にして、アレルギー体質にするのかも知れない。

 3.Th1細胞とTh2細胞は、相互に抑制し合う
 Th1細胞は、IL-2を産生し、キラーT細胞NK細胞などを活性化させ、細胞性免疫を活性化させる。
 Th2細胞は、IL-4を産生し、CD40リガンド(CD40L、gp39)を介して、B細胞を活性化させ、I型アレルギーを引き起こすIgE抗体の産生を促進させ、液性免疫を活性化させる。
 Th1細胞は、IFN-γも産生するが、IFN-γは、Th2細胞のCD40リガンド(CD40L)発現を抑制し、IgE抗体産生を抑制する。
 また、Th2細胞の産生するIL-4や、IL-10は、Th1細胞の反応を抑制する。 


 IL-4やIL-10の産生が盛んな状況では、細胞性免疫が抑制され、リステリアや癩菌(らい菌:ハンセン病の原因細菌)の感染が、重症化する。

 4.抗原提示細胞のTLRsによる免疫応答の選択
 抗原提示細胞である、マクロファージ(Mφ)や樹状細胞表面には、Toll-like receptor (TLRs:トル様受容体)が存在する。Toll receptor(Toll受容体)は、ショウジョウバエに存在し、真菌の感染防御に関与する:Toll受容体は、ハエ(蝿)の遺伝子で、真菌の侵入を察知して、活性化シグナルを伝達し、感染防御反応を誘導する。

 抗原提示細胞に存在するTLRs(Toll-like receptor )は、細菌、真菌、ウイルス、寄生虫など、あらゆる病原体の構成成分(病原体に特異的な蛋白、毒素、DNA、RNAなど)を認識する。抗原提示細胞は、TLRsにより、病原体の構成成分を認識(感知)すると、細胞内シグナル伝達経路が活性化され、炎症性サイトカインや、インターフェロンが、産生される。

 抗原提示細胞(樹状細胞)表面のTLR1(TLR2と強調的に働く)が、細菌リポペプチドやペプチドグリカンを認識(感知)すると、抗原提示細胞内で、NF-Bを介して、活性化シグナルが伝達され、炎症性サイトカイン(IL-12や、IL-6や、TNF-α)を、産生させる。TLR1が刺激されると、抗原提示細胞から、IL-12が産生され、Th1細胞が増加し、細胞性免疫が誘導される。

 また、抗原提示細胞(樹状細胞)表面のTLR3、TLR7、TLR9が、ウイルス由来のdsRNA、ssRNA、CpGDNAを認識すると、抗原提示細胞内で、活性化シグナルが伝達され、I型インターフェロン(IFN-α、IFN-β)を、産生させる(TLR3は、IFN-βのみを産生させる)。TLR4は、細菌由来のリポポリサッカライド(LPS)や、ウイルスの蛋白(RSウイルスの融合蛋白)を認識し、IFN-βを産生させたり、炎症性サイトカインを産生させる。


 このように、抗原提示細胞(樹状細胞)は、表面のTLRsにより、生体に侵入したのが、病原体なのか(細菌なのか、ウイルスなのか)、毒素なのかなどを感知し、それに応じて、炎症性サイトカインを産生したり、インターフェロンを産生する。その結果、Th0細胞(ナイーブTh細胞)は、Th1細胞(細胞性免疫:病原体の菌体を貪食する)や、Th2細胞(液性免疫:病原体の毒素を中和する)に分化させられる。

 未熟樹状細胞(iDC)表面のTLRsが、細菌由来(大腸菌などの菌体成分)のLPS(リポ多糖)やCpGオリゴヌクレオチド(CpGDNA)、ウイルス由来の二重鎖RNA(dsRNA)を認識し、細胞内に取り込むと、未熟樹状細胞(iDC)は、IFN-γを産生するDC1へ分化し、DC1は、取り込んだペプチド抗原(LPSなど)を、MHCクラスII分子と共に、細胞表面に発現する。このDC1表面の複合体(ペプチド抗原+MHCクラスII分子)を、リンパ節のTh0細胞(ナイーブTh細胞)が、T細胞抗原受容体(TCR)で認識し、DC1より産生されるIFN-γにより刺激されると、Th1細胞へ分化し、IFN-γを産生すると言う。
 未熟樹状細胞(iDC)表面のTLRsが、寄生虫由来の抗原や、カビ由来の抗原を認識し、活性化されると、DC2へ分化する。DC2は、IL-4を産生し、Th0細胞(ナイーブTh細胞)が、Th2細胞へ分化すると言う。

 樹状細胞(DC)からのIL-12分泌(産生)は、IFN-γ、CD40L、細菌(黄色ブドウ球菌など)や細菌由来の物質(LPS、CpG)、寄生虫(トキソプラズマなど)によって促進される。
 樹状細胞(DC)からのIL-12分泌(産生)は、PGE2、サイトカイン(IL-10 、GM-CSF)、ケモカイン(MCP-1など)、補体(C5a)、CD47(thrombospondin receptor)、ステロイドホルモン(Corticosteroids)、ウイルス(麻疹ウイルス)などにより、抑制される。

 TLR4をLPSで刺激したり、TLR9をCpG DNA(細菌のDNA)で刺激すると、樹状細胞が成熟し、樹状細胞からIL-12(IL-12p70)が放出され、Th1細胞が優位に誘導される。しかし、ある状況下(IFN-α存在下)では、低量の吸入されたLPSは、Th2細胞を誘導し、アレルギー反応を引き起こす。TLR4にLPSが結合すると、TRIFやTRAMがリクルートされ、IFN-βが産生される。CpGは、Th1細胞が関与するIgG2aサブクラス抗体の産生を増加させる。Th1細胞が関与するIgG2aサブクラス抗体の産生には、内因性に産生されるI型インターフェロン(IFN-αやIFN-β)の存在が必須。Alum(aluminum hydroxide gel)は、Th2細胞が関与するIgG1サブクラス抗体の産生を増加させる(Enrico Proietti等)。
 TLR3、TLR4、TLR7、TLR9を介するIFN-α刺激により、樹状細胞からIL-12(IL-12p70)が放出され、Th1細胞が誘導される。
 TLR5、TLR9、あるいは、TLR3は、IL-12、あるいは、IFN-αの放出を介して、Th1細胞を誘導する。
 反対に、TLR2が刺激されると、樹状細胞からは少量のIL-12が産生され、Th2細胞が誘導される。TLR2が、V抗原(Yersinia enterocolitica V antigen)やホスファチジルセリン(phosphatidylserine from Schistosoma mansoni )により刺激されると、IL-10が放出され、Th2細胞が誘導される。Pam3Cys(細菌のリポペプチド)は、TLR2に結合し、Th2細胞を誘導する。
 抗ウイルス薬のImiquimodは、TLR7やTLR8を刺激し、IFN-αを産生させる。
 アムホテリシンB(amphotericin B:Streptomyces nodosusM4575株由来)は、TLR2に結合する為、副作用として発熱が見られる。

 樹状細胞(Dendritic cells:DC)は、血液中、リンパ組織中などに存在する。
 樹状細胞は、CD4陽性ヘルパーT細胞に、外来由来の抗原を提示する。
 樹状細胞には、ミエロイド系(骨髄系)樹状細胞のmyeloid DC (MDC)と、リンパ球系樹状細胞のplasmacytoid DC (PDC)の、二つの異なる集団(populations)が存在する。
 myeloid DC (MDC)は、表面マーカーは、CD11c+、CD123dim、HLA-DR+で、単球由来の樹状細胞と同じ。myeloid DC (MDC)は、単純ヘルペスウイルス(HSV)刺激によっては、IFN-αをあまり産生しない。
 plasmacytoid DC (PDC)は、表面マーカーは、CD11c-、CD123bright、HLA-DR+、BDCA-2+、BDCA-4+。plasmacytoid DC (PDC)は、IFN-αを大量に産生する。

 myeloid DC (MDC)は、pre-DC1細胞であり、末梢血単球由来樹状細胞を、M-CSF、IL-4、CD40-ligand(CD40L)刺激にて培養すると、IL-12が産生され、DC1細胞に成熟し、ナイーブT細胞をTh1細胞(IFN-γを産生する)に分化させる。
 lasmacytoid DC (PDC)は、pre-DC2細胞であり、IL-3にて培養すると、DC2細胞に成熟し、ナイーブT細胞をTh2細胞(IL-4を産生する)に分化させる。
 DC2細胞によって誘導されたTh2細胞が産生するIL-4は、DC2細胞を抑制するが、DC1細胞をは促進する。
 DC1細胞によって誘導されたTh1細胞が産生するIFN-γは、DC2細胞によって誘導されたTh2細胞が産生するIL-4(DC2細胞を抑制する)の作用を抑制(中和)する。

 myeloid DC (MDC)は、IL-12を産生するが、T型インターフェロン(IFN-α)をあまり産生しない。plasmacytoid DC (PDC)は、T型インターフェロン(IFN-α、IFN-β)を産生するがIL-12をほとんど産生しない。
 plasmacytoid DC (pre-DC2:Th2細胞を誘導する)は、CD40-ligand(CD40L)刺激により、T型インターフェロンに加え、myeloid DC (pre-DC1)と同様にIL-12を産生する(Th1細胞を誘導する)とも言われる。
 myeloid DC (pre-DC1)は、IL-10で処理すると、IL-12の産生が抑制され、Th2細胞を誘導する。
 PGE2や、ステロイドホルモンも、IL-10と同様に、(myeloid DCからの)IL-12の産生を抑制する。

 ヒトでは、新たに分離された(刺激を受けていない)myeloid DCは、TLR1、TLR2、TLR3、TLR5、TLR6、TLR8を発現している。他方、plasmacytoid DCは、TLR7、TLR9を発現している。マウスでは、両者(myeloid DCとplasmacytoid DC)共に、TLR1、TLR2、TLR4、TLR6、TLR8、TLR9を発現し、TLR3は、 myeloid DCのみが発現している。
 plasmacytoid DC(形質細胞様樹状細胞)は、T型インターフェロン(IFN-α)の産生能が高い。

 TLR7、TLR9を介しては、INF-αの産生が誘導される。plasmacytoid DC(形質細胞様樹状細胞)は、TLR7、TLR9を発現していて、IFN-αの産生能が高い。
 TLR3、TLR4を介しては、INF-βの産生が誘導される。
 TLR2を介しては(TLR2刺激では)、I型インターフェロン(IFN-αやIFN-β)の産生は、誘導されない。

 樹状細胞は、インターフェロン-α(IFN-α2a)の存在下、CD40Lによって刺激されると、IL-10(Th2細胞を誘導する)やIL-12(Th1細胞を誘導する)の産生が、増加する。
 樹状細胞は、インターフェロン-α(IFN-α2a)の存在下、LPS(lipopolysaccharide)によって刺激されると、主に、IL-10をのみ産生する。

 インターフェロンを産生する細胞(IPCs)は、CD4+CD11c-2型樹状細胞前駆細胞(pDC2s)である。

 IL-12は、p40とp35によって構成される(ヘテロダイマー)
 抗原提示細胞から抗原提示(抗原刺激)を受けたTh細胞が、細胞表面にCD40-ligand(CD40L:CD154)を発現し、抗原提示細胞表面のCD40を刺激する(CD40/CD40L共刺激経路)と、抗原提示細胞(樹状細胞など)が活性化され、IL-12p40を発現する。
 抗原提示細胞から抗原提示を受けたTh細胞が、T細胞抗原受容体(TCR)により、抗原提示細胞のMHCクラスII分子を刺激すると、抗原提示細胞がIL-12p35を発現する。
 IL-12p40とIL-12p35が、ヘテロダイマーを形成し、生物活性を有するIL-12が産生される。


 乳児期に、非衛生環境で樹状細胞がアレルゲンとエンドトキシンへ同時暴露されるとメモリーTh1細胞や抑制性T細胞が優位となり、樹状細胞がアレルゲンにのみ暴露されるとメモリーTh2細胞が優位になる。

 エンドトキシンの量は、吸入抗原に対するTh2細胞の分化誘導に、影響を及ぼす。
 成熟樹状細胞(IL-2産生能が低い)を、抗原と同時に、低量のエンドトキシンでTLR4を刺激すると、Th2細胞への分化が誘導される。他方、高量のエンドトキシンでTLR4を刺激すると、樹状細胞のIL-2産生能が増強され、Th1細胞への分化が誘導され易くなり、Th2細胞への分化が抑制される。

 樹状細胞のTLR2をペプチドグリカンで刺激すると、主に、IL-6、IL-10が産生されるが、IL-12の産生は少ない。
 樹状細胞のTLR3を二本鎖RNAで刺激すると、IL-6、IL-10の産生は少ないが、IL-12の産生は多い。
 樹状細胞をエンドトキシンで刺激すると、IL-6、IL-10、IL-12共に、産生される。

 5.NKT細胞
 NKT細胞は、IFN-γも、IL-4をも、産生する。
 IFN-γ、IL-4は、相反する作用を持つ:IFN-γは、Th1細胞を活性化させ、IL-4は、Th2細胞を活性化させる。

 ・NKT細胞は、抗原提示細胞(樹状細胞)のCD1d分子(MHCクラスIb分子)に結合した、スフィンゴ糖脂質(α-ガラクトシルセラミドα-GalCer)を、抗原受容体で認識すると、活性化され、IL-4とIFN-γを産生する。
 ・スフィンゴ糖脂質(α-ガラクトシルセラミド:α-GalCer)は、樹状細胞(抗原提示細胞)にIL-12を産生させる。抗原提示細胞から産生されたIL-12は、NKT細胞に作用し、IFN-γを産生させたり、Fasリガンドを介して、細胞障害活性を示させる。 
 ・NKT細胞は、α1,3-オリゴ糖により、細胞表面のCD161が刺激され活性化されると、IFN-γのみを産生する。
 ・NKT細胞は、抗原受容体を介して刺激されると、IL-4を産生する。
 ・NKT細胞は、スフィンゴ糖脂質の誘導体(OCHという合成糖脂質)により刺激されると、IL-4のみを産生するという。

 6.IL-18
 IL-18は、アレルギー性疾患の発症(IgE産生やアレルギー性炎症)に関与する。
 IL-18は、マクロファージ内で前駆体として産生され、グラム陰性菌の細胞壁のリポ多糖体(LPS)により活性化されたcaspase-1により切断され、活性型となり、分泌される。
 IL-18は、Th1細胞を、抗原で刺激し(抗原存在下に)、活性化させ、IFN-γを産生させる。また、IL-18は、(IL-2が共存すると、)Th2細胞を、活性化させ、Th2サイトカイン(IL-4、IL-5、IL-9、IL-13)を産生させる。
 IL-18は、マウスに投与すると、抗原刺激無しに、T細胞を活性化させ、T細胞のIL-4産生、CD40リガンド(CD40L)発現を増強させ、IgE産生を誘導する。
 IL-18は、IL-3と相乗的に、肥満細胞(マスト細胞)や、好塩基球に作用して、IL-4、IL-13、ヒスタミン産生を誘導する。
 感染症は、アレルギー性疾患の症状を、増悪させるが、病原体成分は、気道上皮細胞や、皮膚ケラチノサイトを刺激し、IL-18を産生させる。

 マウスのアトピー性皮膚炎モデルであるNC/Naマウス(NCマウス)は、無菌下で飼育すると、アトピー性皮膚炎を発症しないが、通常の環境下で飼育すると、ヒトのアトピー性皮膚炎と同様な皮膚炎を発症する。
 リンパ球は、スーパー抗原であるSEBや、グラム陰性エンドトキシンであるLPSで刺激されると、IFN-γを産生する。NCマウスのリンパ球は、スーパー抗原(SEB)や、グラム陰性エンドトキシン(LPS)で刺激した際のIFN-γ産生(Th1サイトカイン産生)が、低下している。NCマウスのリンパ球は、Vβ8T細胞受容体(抗原受容体のβ鎖)の遺伝子が欠損し、Vβ8+T細胞や、Vβ8+NKT細胞が、欠如している為、SEBによるIFN-γ産生が、低下する。また、NCマウスのリンパ球は、IFN-γ産生誘導因子であるIL-18の、マクロファージからの産生が低下している為、LPSによるIFN-γ産生が、低下する。
 NCマウスのリンパ球は、抗CD3抗体で刺激した際、IL-4産生(Th2サイトカイン産生)が増加している。
 このように、NCマウスは、常在菌の刺激によるIFN-γ産生(Th1サイトカイン産生)が、低下し、また、IL-4産生(Th2サイトカイン産生)が、増加している為、Th2細胞が優位に分化し、IgE抗体産生が増加し、アトピー性皮膚炎と同様な皮膚炎が発症すると、考えられている。
 NCマウスを、IFN-γ、IL-12、又は、IL-18で治療すると、血清IgEやIL-4が低下し、皮膚炎が改善する。
 
 7.細胞性免疫と液性免疫
 細胞性免疫では、Th1細胞が産生するIFN-γにより、マクロファージが活性化され、細胞内寄生菌が、殺菌される。また、Th1細胞が産生するIL-2により、キラーT細胞が活性化され、ウイルス感染細胞が、障害される。
 液性免疫では、Th2細胞が産生するIL-4、IL-5、IL-6、IL-13により、B細胞が分化・増殖し、抗体(免疫グロブリン)が、産生される。抗体は、病原体が産生する菌体外毒素を中和し、細胞外寄生菌をオプソニン化しマクロファージなどによる貪食を促進し、補体系を活性化し溶菌する。

 8.腸内細菌とTh1/Th2バランス
 新生児の免疫系は、Th2細胞が、優位に働いている。
 免疫系のTh1/Th2バランス(Th1細胞とTh2細胞の比率)は、消化管の腸内細菌叢によって、影響を受ける。無菌マウスでは、成長した後も、Th2細胞が、優位に働いている。
 離乳直後に、抗生物質を投与し、腸内細菌叢を除去する(変化させる)と、成長してからも、Th2細胞が、優位に働いている(アレルギー性疾患になり易い)。2歳までに抗生物質の投与を受けたり、百日咳ワクチン接種を受けたり、母親がアトピー性疾患の既往を有していると、アトピー性疾患を発症し易い。
 2歳の小児の糞便を検査した結果では、アレルギー罹患児ではStaphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌:好気性菌)が有意に多く、LactobacilliBifidobacteriaが少なかったと報告されている。

 9.RSウイルス感染とTh1/Th2バランス 
 RSウイルスRSV)は、感染すると、4〜6日の潜伏期間の後に、細気管支炎を発症する。
 RSウイルス感染症(細気管支炎など)では、喘鳴を発病する。

 RSウイルスは、脂質外膜を有していて、G(attachment)、F(fusion)、SH(small hydrophobic)の3種類の表面蛋白が存在する。
 G蛋白は、RSウイルスが宿主細胞表面へ接着するのに必要で、F蛋白は、RSウイルスが宿主細胞内へ侵入するのに必要。G蛋白は、Th2サイトカイン(IL-4、IL-5)を産生させ、好酸球を遊走させる(好酸球浸潤を起こす)が、F蛋白は、Th1サイトカイン(IFN-γ)を産生させ、単核球浸潤を起こす(キラーT細胞を活性化・誘導する)。
 RSウイルスに対するキラーT細胞(細胞障害性Tリンパ球)を、免疫抑制マウスに注入すると、少量の場合は気道病変を来たさずにRSウイルスの増殖が抑制されるが、多量の場合は出血性肺臓炎が起こる(Th1細胞により、RSウイルスに対するキラーT細胞が過剰に誘導されると、RSウイルス感染症が重症化するおそれがある)。
 1960年代に米国でホルマリン不活化RSVワクチンの接種が試みられたが、ホルマリン不活化RSVワクチンは、RSウイルス感染症の予防効果がない上、接種を受けた児がRSウイルスに自然感染すると、重症化することがある。
 ホルマリン不活化RSVワクチンを接種後に、RSウイルスに自然感染し死亡した乳児は、肺に好中球や好酸球が著明に浸潤していた(通常、RSウイルスによる細気管支炎では、肺に好酸球や好中球の浸潤は認められない)。ホルマリン不活化RSVワクチンは、G蛋白を介して、Th2細胞を誘導し(Th2反応を起こす)、好酸球や好中球の著明な浸潤を起こす(好酸球の浸潤は、Th2細胞によるTh2サイトカインの産生や、肥満細胞などからのロイコトリエンの産生を示唆する)。
 RSウイルスによる細気管支炎では、鼻咽腔液中に含まれるTh2サイトカイン(IL-4、IL-5、IL-13)は検出感度以下と言われる(細気管支炎の発症には、Th2細胞による抗体産生の関与は少ないと考えられる)。細気管支炎や反復性喘息の児では、鼻咽頭液中のIFN-γ/IL-4比は、上気道炎の児に比して、有意に高値を示す。従って、(RSウイルスによる)細気管支炎では、(Th2細胞が優位な気管支)喘息と異なり、Th1細胞が優位に誘導されていると考えられる(RSウイルスによる細気管支炎では、Th1細胞により、キラーT細胞が誘導され、喘鳴を来たす)。

 シナジス(Synagis:Palivizumab:パリビズマブ)は、抗RSウイルスヒト化モノクローナル抗体(マウス抗RSウイルスモノクローナル抗体の相補性決定部位+ヒトIgG1定常部及び可変部フレーム配列)。
 シナジスは、RSウイルスのF蛋白(抗原部位A領域)に対する特異的ヒト化モノクローナル抗体。シナジスは、F蛋白(RSウイルスが宿主細胞に接着・侵入する際に重要な役割を果たす)に結合して、ウイルスの感染性を中和し、ウイルスの複製及び増殖を抑制する。
 シナジスは、適応がある新生児、乳児、幼児(24カ月齢以下の先天性心疾患患児など)に対して、RSウイルスの感染流行初期に、重篤な下気道疾患の発症抑制を目的として、体重当り15mg(15mg/kg)を、月1回、筋肉注射する(注射量が1mLを越える場合には、分割投与する)。
 シナジスは、RSウイルスに特異的に作用するので、予防接種(ワクチン接種)による免疫応答を妨げないと考えられている(シナジス投与を受けた児は、三種混合予防接種や、BCG予防接種などを受けても構わない)。

 RSウイルスによる細気管支炎の患児(2歳未満)に、デキサメサゾン(DEX)を単回0.4mg/kg皮下注射すると、抗炎症作用により下気道症状の増悪が抑制され、入院率が低下すると言う。

 10.サルコイドーシスのL型アクネ菌病因説とTh1細胞
 サルイコドーシス(sarcoidosis)は、全身性臓器(肺、リンパ節、皮膚、腸、肝臓、脾臓、心臓、骨格筋、腎臓、脳神経など)に、乾酪壊死がない類上皮細胞肉芽腫を形成する疾患。
 サルコイドーシスの病因に関して、古くから、欧米諸国では、結核菌が疑われて来たが、サルコイドーシスの病変部位から結核菌は培養されない。
 日本では、故本間日臣教授等の難病研究班によって、1970年代に、病変部位からアクネ菌(Propionibacterium acnes)が嫌気培養にて分離された。
 1999年に、サルコイドーシスの病変部のリンパ節には、例外なく、アクネのDNAや、皮膚常在菌であるP. granulosumのDNAが存在することが解明され、サルコイドーシスの病因がアクネ菌である可能性が高まった。
 サルコイドーシスの病変部のリンパ節(組織懸濁液)をマウスに免疫し、アクネ菌に特異的に反応する二つのモノクローナル抗体が作成された。PAB抗体は、アクネ菌のリポタイコ酸(細胞膜結合性の糖脂質抗原)を認識する。TIG抗体は、アクネ菌のトリガーファクター(リポソーム結合性のシャベロン蛋白)を認識する。
 9割以上のサルコイドーシスの症例では、肉芽腫(の細胞)に、PAB抗体で陽性を示す(染色される)小型円形小体が認められる。サルコイドーシスでは、大型紡錘形小体(HW小体)が存在するのが特徴だが、PAB抗体が、(大型紡錘形)小体の外周を取り巻くように、陽性を示す。また、小体内部は、TIG抗体が、陽性(ドット状)を示す。このことから、大型紡錘形小体(HW小体)は、L型アクネ菌(細胞壁構造を欠失し細胞内に潜伏感染しているアクネ菌)であることが判明した。
 L型アクネ菌が、細胞内増殖をすると、Th1細胞型免疫反応が起こり、感染型アクネ菌(円形小型のL型アクネ菌で、リンパ液や血液を介して全身に拡散する)の拡散を防止する為、肉芽腫が形成される(サルコイドーシスの患者は、免疫不全があって、細胞内に潜伏感染したL型アクネ菌を排除出来ない)。
 抗生剤のミノマイシン(MINO)をアクネ菌の除菌目的で投与すると、サルコイドーシの患者の約半数に、効果が認められている。ミノマイシン以外に、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、クリンダマイシン、バクタ(ST合剤)を投与しても、多数の治療成功例が報告されている。

 サルコイドーシスの類上皮細胞肉芽腫は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)を多く含んでいる。
 活動性サルコイドーシス患者の80%以上は、ACE高値を示す。
 副腎皮質ステロイド剤で治療を開始すると、比較的早期に、ACE値が低下することがある。

 11.亜鉛と免疫機能
 亜鉛は、生体内の約300以上の酵素の活性に関与していて、生命維持に必須な微量元素と言われる。
 亜鉛は、主に十二指腸や空腸から吸収される。
 樹状細胞は、TLRを介してLPSにより刺激されると、細胞内亜鉛濃度が低下し、活性化され(細胞表面のMHCクラスII分子の発現が増加する)、CD4+T細胞(ヘルパーT細胞)が誘導される。

 細胞内亜鉛濃度は、2種類の亜鉛トランスポーターファミリーによって調節されている。
 即ち、亜鉛トランスポーターファミリーには、亜鉛を細胞内に取り込むZIPファミリー(importer)と、亜鉛を細胞外にかき出すZntファミリー(exporter)とが、存在する。

 LPSにより樹状細胞表面のTLR4を刺激し、樹状細胞を活性化させると、TRIF(MHCクラスII分子を含む小胞の細胞内移動に関与する)を介して、ZIPファミリー(亜鉛を細胞内に取り込む亜鉛トランスポーターファミリー)の発現が減少し、細胞内亜鉛濃度が著明に低下する。
 亜鉛インポーターZip6/Liv1は、LPS刺激(樹状細胞のTLR4が刺激される)により、TRIFを介して発現が減少する(樹状細胞は、細胞内亜鉛濃度が減少し、細胞表面のMHCクラスII分子の発現が増加し、抗原特異的なCD4+T細胞の誘導が促進される)。
 亜鉛インポーターZip6/Liv1を強制発現させた樹状細胞(細胞内亜鉛濃度が上昇する)は、LPS刺激によるMHCクラスII分子発現の増強が抑制されていて、抗原特異的なCD4+T細胞(ヘルパーT細胞)が誘導(刺激)されない。

 12.その他
 ・細菌が侵入すると、細菌に含まれる脂質(脂肪)によって、腸管内のTLRsが活性化される。
 腸管内のTLRsは、食事中の脂質(脂肪)の量が多いと、細菌に含まれる脂質と「勘違い」し活性化されてしまう。

 注1:IL-3は、Th1細胞からも、Th2細胞からも、産生される。

 注2:マクロファージなどの細胞(stromal cells and tissue-infiltrating mononuclear cells)から産生されたPGE2は、細胞内cyclic AMP (cAMP)を増加させ、Th1細胞による、IFN-γやIL-2の産生を抑制する。PGE2は、Th2細胞による、IL-4産生を抑制しない。従って、PGE2は、マクロファージから産生されるPGE2は、Th0細胞(ナイーブTh細胞)を、Th2細胞(T helper 2 cell)細胞に分化させる。

 @抗原提示細胞(APC)は、T細胞とのCD40/CD154(CD40L)共刺激(CD40-CD154 interaction)と、IFN-γにより、IL-12を産生する。
 A抗原提示細胞が産生したIL-12は、Th0細胞(ナイーブTh細胞)を、Th1細胞へ分化させる。
 B抗原提示細胞が産生したIL-12は、T細胞(Th1細胞)や、NK細胞から、IFN-γを産生させる。Th1細胞が産生したIFN-γは、抗原提示細胞からIL-12を産生させる(positive feedback)。
 CTh1細胞が産生したIFN-γは、Th2細胞の活性化を抑制する。
 DTh1細胞は、Th2細胞より多く、抗原提示細胞よりPGE2を産生させる:Th細胞によるPGE2産生は、Th1細胞のTCRが、抗原提示細胞のMHCクラスII分子+抗原ペプチドを認識することが必要だが、CD40/CD154共刺激や、IFN-γは、必要でない(Th2細胞も、抗原提示細胞から、PGE2を産生させるが、Th1細胞より少ない)。
 EPGE2は、抗原提示細胞に作用し、そのIL-12産生を抑制し、Th1細胞(へのTh0細胞の分化)を抑制する(down regulation)。抗原提示細胞(microgliaI)によるIL-12産生は、PGE2以外に、IL-10や、cAMP濃度を上昇させる因子(cAMP-elevating agents)によっても、抑制される。なお、PGE2は、IL-6の産生も抑制する(低下させる)が、PGE2は、(Th2細胞やマクロファージから産生される)IL-10の産生をは、増加させる(2倍程度)。PGE2は、CD3抗体(mmobilized anti-CD3)により刺激された、CD4+ T cell clonesからの. IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-5、IL-10の産生をは、抑制する。
 FPGE2は、Th1細胞に作用し、Th1細胞によるサイトカイン(IFN-γやIL-2など)の産生を抑制する(Th1細胞を、抗原提示細胞は、PGE2により、negative feedbackする)。なお、PGE2は、Th2細胞によるサイトカイン(IL-4)の産生をは抑制しない。従って、PGE2により、Th2細胞の機能が、優位になる。
 GPGE2は、Th0細胞(ナイーブTh細胞)に作用し、Th2細胞へ分化させ、IL-4、IL-5、IL-10、IL-13を産生させる。なお、PGE2は、抗原提示細胞からのIL-12産生に依存せず(independant of IL-12 secretion)、in the basal state(抗原刺激されていない状態)では、Th0細胞(ナイーブTh細胞)に作用し、Th1細胞へ分化させる:樹状細胞(DC cells)とT細胞(CD4+ CD45RA+ T cells)を、PGE2(10-7M)を添加して、混合培養すると、培養14日の培養上清中には、多量のIFN-γが放出されているが、PGE2を添加しない場合より、IFN-γ量が少ない。また、培養上清中のIL-4量は、少ない。樹状細胞とT細胞の比率(DC/T cell ratio)が低い(300:1)と、Th0細胞(native T cells)から、Th1細胞も、Th2細胞もが、誘導される。
 このように、抗原提示細胞が産生する、IL-12とPGE2のバランス(抗原提示細胞が、IL-12を産生するか、それとも、PGE2を産生するか)が、Th1細胞と、Th2細胞のどちらが優位になるのか、決定している。

 PGE2には、発痛させる(疼痛を起す)、血管透過性を亢進させ、腫脹浮腫などを来たす、発熱させる、など、炎症促進作用がある。
 しかし、マクロファージ(単球)から産生されるPGE2、免疫系に対しては、免疫反応を抑制する免疫抑制性物質(immunosuppressant)として、炎症抑制作用を示すことが多い。
 マクロファージから産生されるPGE2やPGE1は、(in vitroで、)T細胞の抗原に対する増殖反応、キラーT細胞の誘導・活性、T細胞のIL-2産生、B細胞の増殖・抗体産生、NK細胞活性、マクロファージの粘着性・伸展を抑制する。このようなPGE2の免疫抑制作用(炎症抑制作用:抗炎症作用)は、リンパ球などのPGE2受容体(EP2受容体)を介して、アデニル酸シクラーゼ(AC)を活性化させ、cAMPを増加させることで、現れる。なお、PGE2やPGE1は、マクロファージの貪食能をは、増強する。
 マクロファージは、アラキドン酸から、PGE2、PGE1、PGF、6-keto-PGF(PGI2の安定な代謝産物)、ロイコトリエン(LT)、トロンボキサン(TXB2) などを産生する。
 プロスタグランジン(PG)は、マクロファージ(単球)のみならず、T細胞やB細胞や、その他、ほとんどあらゆる細胞から産生される。
 
 PGE2は、マクロファージなどからのLTB4の産生を抑制し、白血球(好中球:顆粒球)の遊走や、活性化を抑制し、リンパ球(Th2細胞)優位の免疫応答を誘導すると考えられる。
 PGE2が産生されると、化膿性の炎症(黄色の膿が出る好中球優位の炎症)より、カタル性の炎症(漿液性の分泌物が出るリンパ球優位の炎症)が、誘導されると、考えられる。

 PGE2の産生が過剰に行われると、Th1細胞による細胞性免疫が低下し、発熱期間が長引き(熱が長く続く)、抗体産生が過剰になる(アレルギー体質になる、病気の回復期に、抗体価の上昇が著しい)。リノール酸やアラキドン酸を多く摂取していると、そのような、PGE2を過剰に産生する体質(Th2細胞が優位の体質)になり、風邪の症状や発熱が長引いたり、アレルギー性疾患になりやすくなると、考えられる


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