消毒薬
滅菌(sterilization)とは、「細菌芽胞を含む全ての微生物を死滅させ、除去すること」。
消毒(disinfection)とは、「ヒトに病原性を有する大部分の微生物を死滅させるが、細菌芽胞は生存する状態」。
感染の予防は、手洗いの励行が、基本。
エタノール、ポビドンヨード、次亜塩素酸ナトリウムは、ウイルスを含めた、多くの微生物の消毒に有効(注1)。
エタノールは、採血の際などの皮膚表面の消毒、金属器具の消毒には、有用だが、創傷皮膚の消毒、粘膜の消毒には、使用禁忌。
ポビドンヨードは、創傷皮膚の消毒、粘膜の消毒には、有用だが、金属器具には、使用不可。
次亜塩素酸ナトリウム(ミルトンなど)は、一般細菌や酵母を、0..01%(100ppm)の濃度の溶液に、20秒〜10分漬せば、死滅出来るが、結核菌を死滅させるには、より高濃度の0.1%(1,000ppm)の溶液に、10分〜30分漬す必要がある。
次亜塩素酸ナトリウムは、蛋白質と接触すると、NaOCl→NaClとなるので、低残留性の消毒薬である。しかし、次亜塩素酸ナトリウムは、有機物の影響を受けやすいので、消毒物を、洗浄した後、消毒に使用した方が、有効。また、次亜塩素酸ナトリウムは、金属腐食性がある(特に、0.5%=5000ppm以上の濃度)。また、次亜塩素酸ナトリウムは、プラスチックやゴム製品を劣化させる。
消毒用アルコール(エタノール)綿で、皮膚を清拭すると、皮膚の表面の一般細菌は、10秒程で、死滅する。しかし、皮膚の深層の細菌(毛嚢内の細菌)は、消毒されない。採血などの医療行為は、皮膚消毒で死滅しない、毛嚢内の細菌を、血管に押し込む危険性が伴う。
表1:消毒薬の殺菌スペクトラル 水
準消毒薬 グ※1
ラ
ム
陽
性
菌
グ※2
ラ
ム
陰
性
菌
真菌 結
核
菌ウイルス 芽
胞酵
母
糸
状
菌H
B
V
H
I
V
エ
ン
ベ
ロ
ー
プ
有エ
ン
ベ
ロ
ー
プ
無高 グルタラール ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 中 次亜塩素酸ナトリウム ○ ○ ○ ○ ○※3 ○ ○ ○ ○ △※3 ポビドンヨード ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ △※4 エタノール ○ ○ ○ △※5 ○ ○ ○ ○ △※5 × 低 グルコン酸クロルヘキシジン ○※5 ○※6 ○ △ ○ − − △ × × 塩化ベンザルコニウム ○ ○※6 ○ △ × − − △ × × ○:有効 △:十分な効果が得られない場合がある ×:無効 −:効果を確認した報告がない。
一般細菌は、80℃10分間の熱水処理(熱水消毒)、100〜1,000ppmの次亜塩素酸ナトリウム、エタノールで、消毒出来る。
※1:黄色ブドウ球菌(MRSAなど)、連鎖球菌、腸球菌など。
※2:大腸菌(O157など)、緑膿菌など。
※3:1,000ppm以上の高濃度で有効。
※4:ポビドンヨードは、クロストリジウム属(破傷風など)など一部の芽胞にも、有効だが、バチルス属などの芽胞には、無効とされる
※5:長時間の接触が必要な場合がある。
※6:セラチア・マルセッセンス、シュードモナス属、パークホルデリア・セパシア、フラボバクテリウム属、アルカリゲネス属などが抵抗性を示す場合がある。
Y's Text-New Edition 消毒薬テキストのIV-1の表35から引用(吉田製薬株式会社より、転載許諾を頂いた)。
ウイルスは、80℃10分間の熱水処理、500〜5,000ppmの次亜塩素酸ナトリウム、エタノールで、消毒出来る。
1.エタノール
消毒用エタノール(70w/w%)は、一般細菌(グラム陽性菌、グラム陰性菌)、結核菌、真菌、一般ウイルス、HIV(AIDSウイルス)には有効だが、芽胞には、無効。
B型肝炎ウイルス(HBV)に関しては、チンパンジーでの実験で、80v/v%エタノールを用いて、11℃、2分間消毒すると、HBVが不活性化されたという報告がある。
エタノールの作用は、速効性で、短時間で効果を示す:一般細菌・酵母10秒〜1分間、糸状真菌2〜10分間、結核菌20分間、ウイルス1〜30分間(注1)。一部の糸状菌は、長時間の接触が、殺滅に必要。
表2:消毒薬と作用時間 微生物 消毒用エタノール ヨードホール 次亜塩素酸ナトリウム グルタラール 一般細菌・酵母 10秒〜1分 20秒〜2分 20秒〜10分(0.01〜0.1%) 20秒〜2分(0.5%) 糸状真菌 2〜10分 10〜30分 10〜30分(0.01〜0.1%) 10〜30分(2%) 結核菌 20分 2〜3時間 10〜30分(0.1〜2%) 30分〜1時間(2%) 細菌芽胞 (無効) 3時間 3時間(1%) 3時間(2%) ウイルス 1〜30分 5〜60分 1〜30分(0.02〜0.1%) 1〜30分(2%) B型肝炎ウイルス (効果あり) 10分(20℃) 20分〜1時間(0.1〜2%) 20分〜1時間(2%)
エタノールは、刺激性があるので、創傷皮膚や、粘膜の消毒には、使用しない(使用禁忌)。エタノールは、眼科用には、使用しない。
採血や注射部位の消毒の消毒には、速効性と速乾性が求められるため、アルコール製剤を用いることが多い。エタノールを注射部位に十分量塗布し、乾燥してから、採血や注射をする。
エタノールは、揮発性が高いので、乾きが早く、使用しやすい。消毒用エタノールは、毒性が低く、飲用することも可能。
なお、エタノールには、引火性があるので、注意が必要。
エタノールは、プラスチックやゴム製品を劣化させる。
消毒部位に用いるアルコール綿球などは、あらかじめ万能壷などに調製されるが、アルコールは水よりも早く揮発するため、アルコール濃度が経時的に低下する。
血液、膿などが付着していると、含有されている蛋白質を凝固させ、内部までエタノールが浸透しないことがある。そのため、エタノールは、血液、膿などを、十分洗い落としてから使用する。
消毒用エタノールは、ノロウイルスには効き難い(塩素系の次亜塩素酸ナトリウムの方が良い)。
消毒用エタノール(70〜80%の濃度のアルコール)は、一般細菌をは15秒以内(20℃)で不活化し、アデノウイルスをは2分(80%の濃度)で不活化させる。
消毒用エタノール(アルコール)は、濃度が50%以下では、殺菌効果が消失する。
皮膚(特に、顔面、頚部、腋窩、陰部など)には、常存菌が存在する。
皮膚の常在菌としては、Staphilococcus epidermidis、Micrococcus、Propionibacterium(毛包管内に生息する嫌気性菌)が主な菌。皮膚の常在菌は、菌数が通常103〜104/1cm2だが、多い場合には106/1cm2程度存在する。
消毒用エタノールで皮膚を十分にアルコール消毒すると、一時的に無菌に近い状態になるが、毛包管や汗腺などに潜んでいる常在菌は殺菌されず、残存していた菌が皮膚に現れ、間もなく、元の状態に戻る。
2.ポビドンヨード
ポビドンヨード(povidone iodine:イソジン液など)は、ヨードホール・ヨード系の消毒薬。
ヨウ素分子は、微生物の細胞壁を素早く通過し、アミノ酸、及び、不飽和脂肪酸と複合体を形成し(不飽和脂肪酸のC=C結合に作用して、脂質を変性させる)、蛋白合成を障害し(重要な水素結合を阻害する)、細胞膜を変化させ、微生物を不活化する。
ポビドンヨードは、グラム陽性菌、グラム陰性菌、結核菌、真菌、ウイルス(HBV、HIVを含む)に、有効。HBVに対しては、ヨードホール(ポビドンヨード)は、20℃10分間で、不活化させる(有効ヨウ素80ppm=0.08%)。
ポビドンヨードは、クロストリジウム属(破傷風など)など一部の芽胞にも、有効だが、バチルス属などの芽胞には、無効とされる。
ポビドンヨードは、速効性で、生体への刺激が低く、比較的副作用が少ない消毒薬で、手術部位の皮膚や、創傷部位の皮膚の消毒にも、用いられている。ポビドンヨードは、粘膜消毒に、使用可能。しかし、ポビドンヨード(ヨードホール)は、金属器具には、使用不可。
ポビドンヨードは、10倍以上に希釈すると、細胞毒性が減弱する:術後の深い新鮮な傷には、10倍希釈で用いる。目や耳にも、希釈して使用する。
◎:有効、○:ほぼ有効、△:有効な場合もある、×:無効を示す。なお、日医雑誌 第132巻・第9号1384頁の表1を参考に作成した。グルタラールは、グルタルアルデヒド(グルタールアルデヒド)とも呼ばれる。第四級アンモニウム塩としては、塩化ベンザルコニウム液、塩化ベンゼトニウム液、クロルヘキシジンとしては、ヒビテン液などがある。
表3:消毒薬と有効微生物 区分 消毒薬 微生物 使用目的 備考 一
般
細
菌M
R
S
A真
菌結
核
菌芽
胞ウ
イ
ル
ス手
指
消
毒創
傷
皮
膚金
属
器
具高水準 グルタラール ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ × × ◎ 内視鏡の消毒 中水準 エタノール ◎ ◎ ○ ◎ × ○ ◎ × ◎ 速効性 ポビドンヨード ◎ ◎ ◎ △ ○ ○ ◎ ◎ × 粘膜にも使用可能 次亜塩素酸Na ◎ ◎ ◎ ○ ○ ◎ × × × 金属腐食性あり 低水準 第四級アンモニウム塩 ◎ ○ ○ × × × ◎ ◎ ◎ 経口毒性が高い クロルヘキシジン ◎ ○ ○ × × × ◎ ◎ ◎ 粘膜には使用禁忌
ポビドンヨードは、皮膚消毒に用いると、褐色の被膜を形成するが、ハイポアルコールを用いて、脱色することが出来る。ハイポアルコールは、チオ硫酸ナトリウム8w/v%、エタノール48vol%を含有するヨード清拭脱色剤。
ポビドンヨードは、0.1%程度の低濃度で、殺菌力が高いが、有機物で不活化され易いので、7.5〜10%の製剤が、良く使用される。
ポビドンヨードは、ヨウ素を、ポリビニルピロリドン(PVP:キャリア)に結合させた、水溶性の複合体。
ポビドンヨードは、1g中に、有効ヨウ素を100mg含む。
ポビドンヨードは、水溶液中で、平衡状態を保ち、水中の遊離ヨウ素濃度が減少するにつれて、徐々に遊離ヨウ素を放出する。
遊離ヨウ素が、殺菌作用を発揮する。殺菌力は、遊離ヨウ素濃度が高いほど強い。遊離ヨウ素濃度は、10%ポビドンヨード液(原液:有効ヨウ素濃度10,000ppm)中で、約1ppmであり、0.1%付近のポビドンヨード液中では、キャリアの保持力が最も弱くなるので、約25ppmと、最大濃度になる。遊離ヨウ素濃度は、0.01%ポビドンヨード液中では、8〜9ppmと低下し、0.001%ポビドンヨード液中では、約1ppmにまで、低下する。
ポビドンヨードは、熱傷部位、腟、口腔粘膜などでは、吸収されやすいので、長期間、又は、広範囲に使用すると、血中ヨウ素濃度が上昇し、甲状腺代謝異常などの副作用が現れる。妊婦や授乳中の婦人に、長期間、又は、広範囲に使用しない。
ポビドンヨードは、石けん類によって殺菌作用が弱まる。
ポビドンヨードは、電気的な絶縁性を有しているので、電気メスを使用する場合には、本剤が対極板と皮膚の間に入らないように注意する。
ポビドンヨードは、眼に入らないようにする。眼に入った場合には、水でよく洗い流す。
ポビドンヨード液(イソジン液:ポビドンヨードを100mg/1mL含有)は、細菌(Staphylococcus aureus ATCC 6538Pなど)に対しては60秒以内に、殺菌作用を現す。
ポビドンヨードの100倍希釈液は、ウイルス(単純ヘルペスウイルスなど)に対しては15秒以内に、殺ウイルス作用を現す(感染価を測定限度下に低下させる)。インフルエンザウイルスに対しては、100倍希釈液は15秒以内に、500倍希釈液は60秒以内に、単純ヘルペスウイルスに対しては、殺ウイルス作用を現す。100倍希釈液は、コクサッキーウイルスやエコーウイルスに対しては15秒以内に殺ウイルス作用を現すが、エンテロウイルスによっては30秒程、時間を要する。
日局ポビドンヨード(暗赤褐色の粉末)1gを水100mLに溶解(10mg/1mL)した液は、pHが1.5〜3.5となる。
3.次亜塩素酸ナトリウム
家庭用消毒剤のミルトン(Milton、注2)などは、次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)を成分とする。
次亜塩素酸ナトリウムは、時間さえかければすべての微生物を殺滅出来る(プリオンを除く)。
一般細菌、酵母は、0.01〜0.1%(100ppm〜1000ppm、注3)の次亜塩素酸ナトリウム液で、20秒〜10分間処理すれば、死滅する。
結核菌は、.0.1〜2%(1000〜20000ppm)の次亜塩素酸ナトリウム液で、10〜30分間処理すれば、死滅する。
枯草菌の芽胞は、0.01%(100ppm)の次亜塩素酸ナトリウム液で処理すれば、5分以内に、99.9%が、死滅する。
一般のウイルスは、0.02〜0.1%(200ppm〜1,000ppm)の次亜塩素酸ナトリウム液で、1〜30分、処理すれば、不活化される。
また、B型肝炎ウイルス(HBV)は、0.1〜2%(1,000ppm〜20,000ppm)の次亜塩素酸ナトリウム液で、20分〜1時間の処理が、必要。
次亜塩素酸ナトリウムは、粘膜・皮膚(250〜500ppm)、リネン(125ppm)、便器(125ppm)などの消毒に、有効である。例えば、リネンは、0.01〜0.02%(100ppm〜200ppm)の次亜塩素酸ナトリウム液へ、5分間浸漬すると良い。
次亜塩素酸ナトリウムは、創傷皮膚の消毒、金属器具の消毒、手指の消毒(注4)には、使用しない。
次亜塩素酸ナトリウムは、漂白作用があり、リネンでも、毛、絹、ナイロン、アセテート、ポリウレタン、及び、色・柄物などには、使用出来ない。
温水を用いると、次亜塩素酸ナトリウムは、効果が短時間で現れる(82度、2分以上)。
次亜塩素酸ナトリウム(液)は、冷所保存(15℃以下)が必要。
次亜塩素酸ナトリウムは、酸性の洗剤・洗浄剤と併用すると、大量の塩素ガスが発生するので、併用は、禁忌。
次亜塩素酸ナトリウムは、 蛋白質と接触すると、NaOCl→NaClとなるので、低残留性の消毒薬である。その為、次亜塩素酸ナトリウムは、床などにこぼれた血液の消毒にも、好ましい。しかし、次亜塩素酸ナトリウムは、有機物の影響を受けやすいので、消毒物を、洗浄した後、消毒に使用した方が、有効。また、次亜塩素酸ナトリウムは、金属腐食性があったり(特に、0.5%=5000ppm以上の濃度)、プラスチックやゴム製品を劣化させる。
食中毒の予防の為に、まな板の消毒を行う場合、70℃の御湯に漬けて置く方(1分間漬けて置く)が、菌が完全に、死滅する。次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤(1分間漬けて置く)、中性洗剤(20秒間洗浄)、水道水(20秒間洗浄)では、菌は、完全に無くならない:まな板に残った菌の数は、水道水による洗浄640個、中性洗剤による洗浄380、塩素系漂白剤150、70℃の御湯0。塩素系漂白剤は、まな板に汚れが残っていると、消毒効果(殺菌効果)が低下するので、塩素系漂白剤は、まな板を良く洗ってから、使用する。
次亜塩素酸ナトリウムは、ノロウイルスの消毒には、塩素濃度で0.05〜0.1%(500〜1,000ppm)に希釈して用いる(ミルトン液なら、20〜10倍希釈で用いる)。
便や吐物が付着したタオルや衣服は、希釈した液に、30分間、浸して、消毒する。
a).遊離有効塩素
塩素系漂白剤の主成分である、次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)は、加水分解によって、次亜塩素酸(HOCl)になる。
次亜塩素酸(HOCl)が、次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)の、有効成分。
NaOCl+H2O⇔HOCl+Na++OH-
次亜塩素酸(HOCl)は、酸化力が強く、漂白、殺菌作用が強い。
有効塩素(残留塩素)には、遊離有効塩素と、結合有効塩素とがある。
次亜塩素酸(HOCl)と、次亜塩素酸イオン(OCl-)は、遊離有効塩素だが、殺菌作用(滅菌効果)は、次亜塩素酸(HOCl)の方が、大きい。
水中の遊離有効塩素である次亜塩素酸(HOCl)は、pH5〜6付近で最も濃度が高く、水のpHが低いと、塩素ガス(Cl2)になり、水のpHが高いと、次亜塩素酸イオン(OCl-)が増加する。
そのため、遊離有効塩素の存在比は、水のpHが5程度の時に、最も高い:次亜塩素酸(HOCl)は、溶解した水が、pH5程度の時に、最も多く存在する。従って、次亜塩素酸ナトリウムは、溶解した水が、pH5程度の時、最も、殺菌作用(滅菌効果)が、強い。
次亜塩素酸ナトリウムは、プールの消毒にも、使用される。
プールの水質基準は、塩素濃度0.4〜1.0ppmとされている。
プール熱(咽頭結膜熱)の原因であるアデノウイルスは、塩素濃度0.4ppmだと、30秒で不活化されるという。
遊泳プールのpHの管理は、5.8〜8.6となっているが、pHが7.5より高いと、極端に滅菌効果が低下するので、プールの水は、pH7付近が良いと言う。
プール水は、ウィルス(アデノウィルス)の消毒目的には、遊離残留塩素(遊離有効塩素)を、0.4mg/L以上にすると、60秒で、ウイルスを不活化出来る。しかし、0.2mg/Lだと、殆ど不活化出来ない(残存率が変化しない)。プール水は、細菌(サルモネラ菌、チフス菌、赤痢菌、肺炎球菌、黄色ブドウ球菌など)の消毒目的には、遊離残留塩素(遊離有効塩素)を、0.1mg/L以上にすると、15〜30秒で、細菌を不活化出来る。大腸菌の消毒目的には、遊離残留塩素を、0.15〜0.25mg/Lにすると、不活化出来る。なお、プールで泳いだ後、水道水で、洗眼を行うのは、プール内で、塩素濃度が高いプール水によって眼に付着した塩素を洗い流す為に、行われて来た。しかし、水道水を用いて、洗眼を行うと、水道水は、涙液より浸透圧が低い為、角膜上皮障害を起こすことがあると言われる。プールで泳いだ後、アデノウイルスによる咽頭結膜炎(プール熱)の予防の為に、水道水を用いて、洗眼を行うことは、却って、逆効果とも言われる。市販の洗眼液には、防腐剤(塩化ベンザルコニウムなど)や界面活性剤が含まれていて、涙液層を保持するムチン層を洗い流してしまい、ドライアイを進行させるおそれがあると言う。眼の保護の為には、プールで泳いだ後は、防腐剤を含まない、涙液に近い組成の点眼液を使用するのが、良い。また、水泳中にゴーグルを着用し、眼が直接水に触れないようにすると良い。
上水(家庭の水道水)は、残留塩素は、0.1mg/Lなので、アデノウイルスなどは、不活化されにくいと考えられる。
経口生ポリオワクチンを接種(経口投与)した後には、ワクチンウイルスが、腸管内で増殖し、便と共に、排泄される。
便と共に布オムツに付着したウイルスを消毒する為には、次亜塩素酸ナトリウム(漂白剤)に約1〜2時間浸けておくか、煮沸消毒を約15分間行う(80℃10分間の熱水消毒も良い)。
ポリオウイルスは、エンベロープを有していないので、消毒用アルコール(エタノール)は、1分間以上、きちんと浸さないと、ポリオウイルスを不活化(死滅)出来ない。消毒用アルコール(エタノール)や、速乾性擦式手指消毒剤(ウエルパス:丸石製薬)は、噴霧しただけではムラが生じるので、十分なポリオウイルスを不活化(消毒)に有効と言えない(日本ポリオ研究所)。
ポリオウイルスの消毒には、次亜塩素酸ナトリウム(ミルトン、ピューラックスなど)が有効(低濃度で可)。
ポリオウイルスは、高温、塩素、紫外線、ホルマリンなどにより、短時間に感染力を失うと言う。
b).塩素系漂白剤と、酸性の洗剤は、混ぜると塩素ガスが発生するので危険
次亜塩素酸(HOCl)は、塩酸と混じると、塩素ガス(Cl2)を発生する。
HOCl+HCl⇔H2O+Cl2↑
塩酸は、トイレ洗浄剤などに、使用されている。
なお、食酢に含まれる酢酸やクエン酸も、次亜塩素酸(HOCl)と混じると、塩素ガスを発生すると言う。○:使用可能、△:注意して使用、×:使用不可を示す。なお、日医雑誌第132巻・第9号1384頁の表1と、日医雑誌第132巻・第12号339頁の表2を参考に作成した。
表4:消毒薬の使用目的 区分 消毒薬 使用目的 備考 手
指
消
毒粘
膜創
傷
皮
膚排
泄
物
に
よ
る
汚
染
物環
境
金
属
器
具非
金
属
器
具高水準 グルタラール × × × △ × ○ ○ 内視鏡の消毒 中水準 エタノール ○ × × × ○ ○ ○ 速効性 ポビドンヨード ○ ○ ○ × × × × 粘膜にも使用可能 次亜塩素酸Na × × × ○ ○ × ○ 金属腐食性あり 低水準 第四級アンモニウム塩 ○ ○ ○ △ ○ ○ ○ 経口毒性が高い クロルヘキシジン ○ × ○ × ○ ○ ○ 粘膜には使用禁忌
4.塩化ベンザルコニウム
逆性石けん(陽イオン界面活性剤)としては、塩化ベンザルコニウム(オスバンなど)が、用いられている。
非生体向けの消毒薬であり、主に家具、床など環境消毒に用いる。
塩化ベンザルコニウムは、多くのグラム陽性菌、グラム陰性菌には、有効。真菌でも、酵母には、有効だが、糸状菌には、十分な効果が得られない場合がある。そして、芽胞、結核菌、多くのウイルスには、無効。また、塩化ベンザルコニウムは、B型肝炎ウイルス(HBV)、AIDSウイルス(HIV)など、ウイルスには無効。
実用濃度では、皮膚粘膜に対する刺激性が少なく、臭気もほとんどないとされる。粘膜などの生体消毒に使用される場合もある。
希釈した逆性石けん液は、放置すると、微生物に汚染されやすい。
O157感染症の手指消毒としては、まず、普通の石けん(石鹸)を用いて、十分に手洗いし、石けんを、十分に洗い流した後、0.3%(3000ppm)の塩化ベンザルコニウム液に、30秒以上浸す。粘膜・皮膚消毒としては、0.01〜0.025%の濃度で、用いる。室内消毒としては、0.05〜0..2%で、室内に噴霧する。リネン類は、0.1%(1000ppm)で、10分間、漬す。日医雑誌第132巻・第12号340〜345頁の表1を参考に作成した。
表5:消毒薬一覧 分類 一般名 商品名 使用濃度 消毒対象 備考 アルデヒド系 グルタラール ステリハイド 2〜3.5% 内視鏡、ウイルス汚染の医療器材 十分な水洗が必要 塩素系 次亜塩素酸ナトリウム ミルトン、ピュリファンP 100ppm 哺乳瓶 洗浄後、1時間浸漬 200ppm 食器 洗浄後、5分桿以上浸漬 まな板 清拭 リネン 洗浄後、5分以上浸漬し、水洗 1,000ppm ウイルス汚染したリネン・器材 洗浄後、30分以上浸漬 10,000ppm ウイルス汚染した床上 薬を染み込ませたガーゼなどで拭き取る ヨウ素系 ポビドンヨード イソジン、ネオヨジン 原液(10%) 手術部位の皮膚・粘膜、 腹腔や胸腔に用いない 創傷部位 体表面積20%以上や、腎障害のある熱傷患者い用いない イソジンガーグル(注5) 15〜30倍に希釈して含嗽 咽頭炎・扁桃炎、口内炎 甲状腺疾患のある患者は、14日以上使用しない アルコール系 消毒用エタノール 消毒用エタノール 原液 手指、注射部位の皮膚、 粘膜や損傷皮膚には使用しない 注射剤のアンプル 引火性に注意 洋式トイレの便座 乾きが早い 第四級アンモニウム塩 塩化ベンザルコニウム オスバン、逆性石けん 0.01% 感染皮膚面 適用濃度に注意(0.1%液は眼に、1%液は粘膜に、5%液は皮膚に、毒性を示す)
経口毒性が強いので、誤飲に注意0.01〜0.025% 手術部位の粘膜、創傷部位 0.01〜0.05% 結膜嚢 0.02〜0.05% 膣 0.1% 手指 0.1〜0.2% 医療器材、環境 色素系 アクリノール(リバノール) アクリノール、リバオール 0.05〜0.1%(含嗽) 口腔領域の化膿局所 副作用で、潰瘍、壊疽を来すことがある 0.05〜0.2% 化膿局所
5.熱水消毒
熱水消毒は、80℃の熱水中に、10分間、入れる。
80℃10分間の熱水消毒により、芽胞を除いて、ほとんどの病原体(栄養型細菌、結核菌、真菌、ウイルス)を、感染不可能な水準に、死滅または不活性化することができる(注6)。
熱水消毒は、リネンなどの消毒に用いられる。芽胞は、100度15分の煮沸や、100度60分の蒸気でも、死滅しない。
日本では、リネンの熱水消毒は、80度、10分を勧めている。
英国での、熱水消毒の条件は、下表(表6)の如く。
表6:熱水消毒の温度と作用時間 温度 作用時間 65℃ 10分 71℃ 3分 80℃ 1分 90℃ 12秒 6.高圧蒸気法
高圧蒸気滅菌装置(オートクレーブ)を用いた、加熱滅菌法では、滅菌条件は、飽和水蒸気の温度と、作用時間を、考慮する。
表7:加熱滅菌法 圧力 温度 作用時間 kgf/cm2 bar ℃ 分 1.73 1.7 115.2 30 2.14 2.1 121.8 15 2.45 2.4 126.1 10 3.06 3.0 133.5 5〜10 3.16 3.1 134.7 3
7.皮膚消毒をしても、採血などの医療行為によって、敗血症を起たす危険性がある
皮膚を、エタノールなどで消毒しても、毛嚢内の細菌(常在菌)は、消毒されないので、点滴のルート確保や、採血などを目的に、皮膚を、注射針で穿刺すると、皮膚片と共に、毛嚢内の細菌を、血管内に押し込むおそれがある。
実際、私は、血液培養の際に、皮膚の表面を消毒後、血管を穿刺して、採血をして、血液培養をしたところ、敗血症でないのに、血液培養で、MRSAが検出された経験がある。
免疫力が低下していない患者さんでは、注射針の穿刺に供ない、血管内に、極少量の細菌が、押し込まれても、体内(血中)で、殺菌されるので、敗血症を発症しない。
しかし、手術後など(全身麻酔をすると、免疫力が低下する)免疫力が低下した状態では、注射針の穿刺に供ない、血管内に、押し込まれた、極少量の細菌(MRSAなど)が、体内(血中)で、増殖し、敗血症を発症する危険性が、考えられる(注7)。
8.速乾性擦式手指消毒剤
消毒剤にエタノールを加えて、乾燥を速めた速乾性擦式消毒剤(速乾性擦り込み式手指消毒剤)は、医療従事者の手指消毒に、用いられている。
速乾性擦式消毒剤のウエルパス手指消毒液0.2%(ウェルパス:丸石製薬株式会社)には、100mL中、塩化ベンザルコニウム0.2g(0.2W/V%)と、添加物として香料、エタノールなどが、含有されている。 ウエルパスは、手指消毒に、頻用しても、手荒れを来たすことが少ない。ウエルパスは、1回約3mLを手掌にとり、乾燥するまで摩擦する。
MRSAの水平伝播を防止する為には、処置前後の手洗いが、最も、有効と言われる。手指衛生の観点からは、速乾性擦式消毒剤(ウエルパスなど)を併用する。ディスポ手袋着用も、使い方によっては、有効と言われるが、患者を処置して、MRSAなどで汚染したディスポ手袋を、使用し続けて、他の患者に伝播(伝染)させるおそれが考えられる。ディスポ手袋は、医療従事者の自己防衛には、有効だが、患者毎に、使い捨てないと、の患者に伝播(伝染)させるおそれがある。
9.結核菌の消毒
結核菌(Mycobacterium tuberculosis)は、温熱に弱いので、60℃1時間、80℃5分、100℃1分以内で、死滅する。
結核菌は、直射日光に当てると、数時間で死滅するが、喀痰中の結核菌は、死滅するまでに24時間必要。
結核菌の消毒には、エタノール(20分)、グルタラール(グルタールアルデヒド:2%で30分〜1時間)、ヨードホール(ポビドンヨード:2〜3時間)、イソプロパノール、界面活性剤、クレゾール石鹸液、ホルマリンが有効。
次亜塩素酸ナトリウムは、0.1〜2%(1,000ppm〜20,000ppm:ミルトンだと、約10倍以下に希釈〜原液)の濃度で10〜30分消毒する必要がある。
結核菌の消毒には、グルコン酸クロルヘキシジン(ヒビテン)、逆性石ケン(塩化ベンザルコニウム)は、無効。
結核菌の消毒には、セミクリティカル器具(粘膜や健常でない皮膚に接触する器具:気管内挿管チューブ等)は、グルタラール処理(2〜3.5%、前洗浄後20分以上)を行う。
結核菌の消毒には、ノンクリティカル器具(健常な皮膚と接触するが、粘膜や健常でない皮膚に接触しない器具:リネン等)は、熱水処理(80℃10分)、アルコール処理(消毒用エタノール20分)、クレゾール石鹸液処理(0.5〜1%)、次亜塩素酸ナトリウム処理(1,000ppm以上の濃度で10〜30分)と行う。
結核菌は、線毛上皮細胞や肺胞マクロファージに付着し侵入した後、百日咳菌やサルモネラ菌と同様に、ファゴゾームとリソゾームとの融合を阻止し、細胞内に寄生する(細胞内寄生菌)。 結核菌は、細胞内寄生菌であり、細胞内に侵入すると、サルモネラ菌、レジオネラ菌、百日咳菌と同様に、細胞のファゴゾームとリソゾームの融合を阻止し、ファゴゾーム内で生存し、増殖する。
結核菌に対する免疫応答(結核菌抗原に対するIL-2産生)は、ビタミンA(の投与)により増強する。細胞内寄生性細菌(結核菌、サルモネラ菌、リステリア菌など)による感染症では、主に、Th1細胞が誘導され、Th1細胞から産生されるIFN-αにより食細胞(マクロファージ)が活性化され、また、Th1細胞から産生されるIL-2によりCD8陽性キラーT細胞が活性化され、殺菌等が行われる。
ゴマに含まれるセサミンには、結核菌の生育阻害作用がある(結核菌生育阻害作用)。
液体培地を用いる結核菌培養(検出)方法のMGIT(Mycobacteria Growth Indicator Tube:ミジット)法では、発育促進剤として、OADCを用いるが、OADCには、オレイン酸、アルブミン、カタラーゼ、デキストロースが含まれている。OADC補助液には、OADC中のオレイン酸は、抗酸菌(結核菌)に取り込まれ代謝に重要な役割を果たす。アルブミンは、抗酸菌に対して毒性がある遊離脂肪酸に結合し、抗酸菌を保護し、検出を促進する。カタラーゼは、培地中に存在する(抗酸菌が好気性代謝で産生する)毒性のある過酸化物(活性酸素である過酸化水素)を破壊(分解)する。デキストロース(又は、ブドウ糖)は、抗酸菌のエネルギー源になる。Middlebrook 7H10寒天培地のOADC補助液には、オレイン酸、アルブミン、カタラーゼ、ブドウ糖、塩化ナトリウム、グリセロールを含むものもある。塩化ナトリウムは、培地の浸透圧を維持する。グリセロールは、抗酸菌の発育を促進する。小川培地は、含まれる糖分(ブドウ糖)が少ない。
脂肪酸(オレイン酸、ステアリン酸など)は、結核菌、淋菌に対しては、増殖阻害的に作用するとする成書もある。
結核菌は、発育(増殖)の至適pHが、酸性側にある(乳酸桿菌、酵母、カビと同様)。
結核菌は、10〜13時間で、分裂増殖する(大腸菌やブドウ球菌は、20〜40分で分裂増殖する)。結核菌(tubercule bacilli)のdoubling timeは、12時間か、それ以上。
結核菌は、多数の単純な炭水化物(many simple carbon compounds)を酸化し、エネルギーを産生する。
高濃度の二酸化炭素は、結核菌の増殖を促進する(肺炎球菌の増殖と同様)。
(培地中の)脂肪酸の毒性は、動物の血清やアルブミン(を添加すること)によって、中和される。脂肪酸は、結核菌の増殖を促進する。
80度10分間の熱水消毒により、結核菌を含めた殆どの病原体(栄養型細菌、真菌、ウイルス:芽胞を除く)を、感染不可能な水準に、死滅または不活性化することが可能。
結核菌は、細長い桿菌(0.2〜0.5×1〜4μm)で、グラム陽性で、カタラーゼ陽性で、芽胞を形成せず、鞭毛を有しない。
結核菌は、好気性菌であり、酸素がないと発育しない。発育の至適pHは、6.8〜7.0。発育の至適温度は、ヒト型とウシ型は37℃だが、トリ型は40℃、冷血動物型は25℃。
結核菌は、普通寒天やブイヨンには発育せず、血清、卵、グリセリン、アミノ酸、塩類などを添加した培地には発育する。
タンポポ(蒲公英)は、黄色ブドウ球菌(耐性菌株)、溶血性連鎖球菌、肺炎球菌、脳膜炎菌、ジフテリア菌、緑膿菌、プロテウス菌、赤痢菌、チフス菌に対して、殺菌作用を示す成分を含んでいる。
タンポポ(蒲公英)は、結核菌の増殖を抑制する成分を含んでいる。
タンポポ(蒲公英)は、根は金平(きんぴら)にして食べ、葉は佃煮(つくだ煮)にして食べると良い。病気は、治すんだと力んでは駄目。
結核(の予防と治療)には、肉類が多い食事より、新鮮な野菜や果物が多い食事を摂る方が良い。
蛋白(肉類など)を多く摂ると、身体諸器官が酸性化し、病気に対する抵抗力が低下する。
動物性蛋白質(肉、魚など)を多く摂取すると、尿中のリン酸塩、硫酸塩が増加し、尿が酸性化し、クエン酸が減少し、尿路結石が、増加する。
動物性蛋白質には、メチオニンやシステインなどの含硫アミノ酸が多く含まれている。その為、動物性蛋白質を多食すると、腎臓の尿細管で、カルシウム再吸収が抑制され、尿中カルシウムが増加する(尿路結石のリスクが高まる)。また、動物性蛋白質を多食すると、代謝性アシドーシスに傾き、尿中クエン酸排泄量が減少する。
動物性蛋白と脂肪の摂取(肉類などの摂取)は、尿中カルシウムを増加させ、尿中クエン酸(尿中クエン酸排泄量)を低下させる。
砂糖(白砂糖)を摂取すると、乳酸などが血中に増加し、尿中からのカルシウム排泄が増加する:砂糖(refined carbohydrate)を過剰に摂取すると、酸塩基平衡を維持する目的で、過剰な酸を腎臓から排泄する為に、尿中カルシウム排泄量が、増加する。
塩類(食塩)の接種が多いと、結核、偏頭痛、癌などの疾患に罹り易くなると言う。
結核菌は、酸性の血液中で増殖が盛んになる。結核菌は、アルカリ性の血液中では生きられない(結核の治療には、呼吸法も大切)。
動物性食品を多く摂り、血液が酸性になり、汚れていると、結核菌などの細菌が、増殖し易くなると言われる(感染症の予防・治療には、血液を浄化する食物を摂取することが大切)。
結核の治療には、栄養があると言われる動物性食品(肉、卵、バター、チーズなど)の摂取を控え、植物性食品(玄米、野菜、野草、薬草など)を摂取した方が良い。動物性食品でも、小魚、白身の魚、川魚、鯉などの少量摂取は良い。肉の代わりに、ゴマ、大豆、黒豆、小豆などを摂取すると良い。玄米スープと古い梅干(クエン酸やアミグダリンが含まれる)も良い。玄米に含まれるイノシトールは、肝臓の機能を高めて、老廃物を体外に排泄してくれる。玄米に含まれるガンマ−オリザノールは、神経の働きを強め、自律神経を調整してくれる。
結核菌は、窒素源としてアスパラギン(酸性アミノ酸のアスパラギン酸のアミドで高度親水性のアミノ酸)を良く利用し、また、炭素源としてグリセロール(グリセリン)を良く利用する(結核菌は、肉食をして、蛋白の消化により血中にアスパラギンが増加し、また、中性脂肪の分解により血中にグリセロールが増加すると、増殖し易くなる?)。
結核菌は、菌体を構成する蛋白にグリシンを多く含んでいる(グリシンの繰 り返し構造が多い)。結核菌は、脂質代謝に関与する遺伝子を多く有している(ミコール酸が多い)。
アルギニンを、A群溶連菌(Str. pyogenes)は分解するが、肺炎球菌は分解しない。肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)は、グルコースをは分解するが、アルギニンをは分解しない。
ヨガの本によると、非常に性欲(肉欲)が強いと、結核に罹り易くなると言う。性腺が興奮し過ぎると、内分泌腺(ホルモン系)と同様に、肺のリンパ節が刺激され、肺が過度に過敏になってカタルの原因となり、肺の抵抗力が減弱すると言う。肺結核になると、腺系統が刺激され活動的になるので、人間は、さらに性的に興奮するようになると言う。
注1:消毒用エタノールは、エンベロープのないウイルスを不活性化するためには、長時間の接触が必要。
注2:家庭用消毒剤のミルトン(Milton)は、次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)を成分とする。
ミルトン(Milton)には、液体タイプと、タブレットタイプとが、存在する。
液体タイプのミルトン液は、次亜塩素酸ナトリウムを、1.1 w/v%(11,000ppm)含む。
哺乳びん、乳首の消毒には、まず、付着したミルクなどを、ブラシと食器用洗剤で洗い、水で、良くすすぐ。それから、液体タイプのミルトン液を、約80倍に薄めた溶液(約0.01%=100ppmの濃度)に、1時間以上浸す(次回に使用するまで、漬しておく)。使用時には、溶液から取り出して、溶液を良く振り切ってから、あるいは、熱湯か水道水ですすいでから、使用する。
器具の消毒には、約10倍(約0.1%=1,000ppm)〜50倍に薄めた溶液に、15分以上浸す。
次亜塩素酸ナトリウムは、金属腐食性があるので、金属製の容器の消毒には、ミルトンは、使用しないこと。また、ミルトンは、メラミン食器等の消毒にも、使用しない。
ミルトンを誤って飲んだ時には、水、生卵、ミルク等を飲み、希釈する。
眼に入った時には、こすらずに、すぐに、水、又は、ぬるま湯で、十分に洗い流す。
ミルトンは、消毒作用と共に、漂白作用がある。ミルトンを衣類の消毒に用いると、衣類が変色、脱色する。
衣料用の次亜塩素酸ナトリウムを含む消毒薬には、ピューラックス(医薬品の殺菌消毒剤:株式会社オーヤラックス)、ハイター(塩素系漂白剤:花王株式会社)などもある。
注3:1%=10,000ppm。
注4:次亜塩素酸ナトリウムは、0.01%(100ppm)程度の薄い濃度で、手指や皮膚の消毒に用いられることもあるが、ごく限られた場合のみ、10秒程度、短時間、暴露するのが、良いと考えられる。
注5:イソジンガーグル(明治製菓株式会社)は、嗽に使用される。イソジンガーグルは、使用量や使用期間によっては、ヨウ素によって、歯が着色する。
インフルエンザウイルスは、鼻腔からも侵入し、約20分程度で、細胞内に取り込まれるので、嗽の予防効果は、限られる。
注6:煮沸法では、沸騰水の中で、15分以上煮沸する。
注7:日本では、2006年(平成18年)5月に、輸血用の血小板製剤に、黄色ブドウ球菌が混入していて、輸血を受けた患者(70歳の血液疾患を有する男性)が、敗血症により、死亡した。日赤(日本赤十字社)は、献血に際して、採血用の針を穿刺した際に、皮膚の毛穴などに潜んでいた黄色ブドウ球菌が、偶然、(輸血製剤用に採取した血液中に)入り込み、患者に輸血するまでの期間に、(輸血用の血小板製剤内で)増殖した可能性が高いと、見ている。詳細は、読売新聞2006年7月26日(水曜日)34面の記事を参照のこと。
参考文献
・Y's Text 消毒薬テキスト:http://www.yoshida-pharm.com/text/(吉田製薬株式会社様より、転載許諾済み)
・一般診療における消毒・滅菌:日本医師会雑誌 第131巻・第9号(2004年).
・感染症の診断・治療ガイドライン2004:日医雑誌第132巻・第12号(2004年).
・神谷晃、尾家重治:消毒薬の選び方と使用上の留意点、薬業時報社(平成8年、第5刷発行).
・日本小児科学会新生児委員会:NICU内のMRSA保菌についての見解と提言 日本小児科学会雑誌 第109巻・第11号、1398-1399、2005年.
・輸血に黄色ブドウ球菌混入 70代男性死亡、読売新聞2006年7月26日(水曜日)、34面.
・川合伸:質疑応答 注射前のアルコール消毒、日本医事新報、No.4323(2007年3月3日)、110-111頁.
・S.エスディヤン/エリザベス・ハイヒ(Sevarajan Yesudian+Elisabeth Haich)著/吉村夏比古訳:ヨガの心身強健法、株式会社白揚社発行(1961年3月20日第1版第1刷発行、1974年6月25日第1版第2刷発行).