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 プロテインスコアとアミノ酸スコア

 和食では、米に含硫アミノ酸が多く含まれているので、米食と一緒に、大豆食品を摂取していれば、蛋白質(必須アミノ酸)は、欠乏しません。
 しかし、洋食では、小麦に含硫アミノ酸が十分含まれていないので、パン食と一緒に、大豆食品を摂取しているだけでは、蛋白質(必須アミノ酸)が、欠乏するおそれがあり、肉食などで、動物性蛋白質を補う必要があります。

 1.必須アミノ酸
 蛋白質(たんぱく質)を構成する約20種類のアミノ酸の内、成人では、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン(含硫アミノ酸)、フェニルアラニン、スレオニン(トレオニン)、トリプトファン、バリンの8種類のアミノ酸は、体内で合成出来ないので、食事から摂取する必要があり、必須アミノ酸と呼ばれています(注1)。
 なお、小児では、ヒスチジンを含めた9種類のアミノ酸が、必須アミノ酸です。
 必須アミノ酸は、ひとつでも欠乏すると、成長に異常を来たします。乳児は、ヒスチジンも、必須アミノ酸です。
 必須アミノ酸必要量は、表1のように、乳児の方が、成人より多いです。なお、含硫アミノ酸量は、メチオニン+シスチン量を、また、芳香族アミノ酸量は、フェニルアラニン+チロシン量を、示します。
 表1 ヒトの必須アミノ酸必要量mg/kg/日)
 アミノ酸  乳児  幼児
 (2歳)
 学童
 (10〜12歳)
 成人
 ヒスチジン His    28    ?    ?   (8〜12)
 イソロイシン Ile    70    31    30    10
 ロイシン Leu   161    73    45    14
 リジン Lys   103    64    60    12
 含硫アミノ酸 Met+Cys    58     27    27    13
 芳香族アミノ酸 Phe+Tyr   125    69    27    14
 スレオニン Thr    87    37    35     7
 トリプトファン Trp    17    12.5     4     3.5
 バリン Val    93    38    33    10
 必須アミノ酸合計   714   352    261    84

 2.プロテインスコア
 1955年に、国際連合食糧農業機関(FAO)タンパク質必要量委員会が、人体のアミノ酸必要量を基準とした比較蛋白質比較タンパク質)を設定しました。各種食品に含まれるアミノ酸配合量(食品蛋白質の窒素1gあたりの必須アミノ酸)を、比較蛋白質のアミノ酸配合量と比較し、比較蛋白質より、少ない比率しか含まれないアミノ酸を、制限アミノ酸と呼びます。最も、少ない比率で含くまれるアミノ酸を、第一制限アミノ酸と呼びます。第一制限アミノ酸の百分率を、プロテインスコアと呼びます。

 例えば、必須アミノ酸のイソロイシンは、比較蛋白質には、窒素1gあたり270mg含まれています。ある食品が、必須アミノ酸のイソロイシンを、216mgしか含んでいなければ、イソロイシンは、制限アミノ酸です(比率は、80です)。イソロイシンの比率が最も低ければ、第一制限アミノ酸となり、その食品のプロテインスコアは、80と計算されます。
 プロテインスコアが100に近い食品程、必須アミノ酸が欠乏なく含まれていることになります。

 3.アミノ酸スコア
 1973年、FAO/WHO合同特別専門委員会は、プロテインスコアを算定するための比較蛋白質のアミノ酸配合量を改訂して、アミノ酸パタンを発表しました。アミノ酸パタンは、必須アミノ酸の理想的な量で、アミノ酸パタンを基準にして、最も少ない比率しか含まれないアミノ酸(最も比率が少ないアミノ酸)を、制限アミノ酸と呼びます。制限アミノ酸の比率(制限アミノ酸が含まれる量÷制限アミノ酸のアミノ酸パタン量)を、アミノ酸スコア(アミノ酸価)と呼ばれます。 
 例えば、ある食品が、必須アミノ酸のイソロイシンを、200mgしか含んでいなければ、比率は、200÷250は、80です。食品の各アミノ酸に関して、比率(アミノ酸が含まれる量÷そのアミノ酸のアミノ酸パタン量)を計算し、イソロイシンの比率が、最も低いとすれば、イソロイシンが、制限アミノ酸で、その食品のアミノ酸スコアは、80となりまs。
 1985年には、FAO/WHO/UNUの合同で、年齢区分別のアミノ酸パタンが発表されています。
 表2 比較蛋白質とアミノ酸パタン
 アミノ酸
 (mg/窒素1g)
イソロイシン ロイシン リジン 含硫アミノ酸 芳香族アミノ酸 スレオニン トリプトファン バリン
 比較蛋白質(FAO)  270  306  270  270  360  180   90  270 
 アミノ酸パタン(1973年FAO/WHO一般用)  250  440  340  220  380  250   60  310
 アミノ酸パタン(1985年FAO/WHO・UNU2〜5才)  180  410  360  160  390  210   70  220

 4.御飯(米)と大豆食品を一緒に食べると、必須アミノ酸は欠乏しない
 植物性蛋白質のアミノ酸スコアは、低く、大豆は86、精白米は65(Lysine score)です。
 大豆は、必須アミノ酸のリジンは多く含むのですが、含硫アミノ酸が少なく、逆に、精白米は、大豆に多いリジンが少なく、大豆に少ない含硫アミノ酸は多いです(注2)。
 そこで、大豆(大豆食品)と精白米(御飯)を、一緒に食べると、両者の欠乏している必須アミノ酸を補うことが出来ます注3)。 
 日本人が、江戸時代以前に、肉や魚を食わなくても、筋肉が頑丈な肉体を築けたのは、米を大豆と一緒に食べると、必須アミノ酸は欠乏しないからだったと考えられます。
 なお、小麦粉(アミノ酸スコア44)は、精白米より、リジンの含量が少ないので、例えば、パンを大豆と一緒に食べていたのでは、必須アミノ酸が欠乏しやすいと考えられます。ですから、パン食の西欧食文化では、肉や卵を食べる必要があったと考えられます。
 2022年6月21日修正
 大豆のアミノ酸スコアは、1973年の基準では86でしたが、1985年には100に修正されて、豆腐、納豆、豆乳もアミノ酸スコアは100だそうです。
 大豆蛋白質の消化吸収率は、牛乳(カゼイン)や卵(卵白)の蛋白質と同様に、スコア1.0と良好で、牛肉の消化吸収率よりも優れているそうです。
 御米と大豆には、必須アミノ酸の補足効果があります。

 なお、ネズミに、牛肉の蛋白質と、大豆の蛋白質を摂取させた実験結果では、牛肉の蛋白質を摂取したネズミは、プールで泳がせると、瞬発力は優れていたが、持久力はなかったそうです(15分間しか泳げなかった)。
 他方、大豆の蛋白質を摂取したネズミは、45分間、泳ぎ続けることが可能だったそうです。

 昆虫は、蛋白質を多く含んでいます。イナゴのつくだ煮は、26.3g/可食部100g、はちの子缶詰は、16.2g/可食部100gもの蛋白質を含んでいます。
 昆虫の蛋白質を構成するアミノ酸は、リジンやスレオニンが多く、シスチンやメチオニンやトリプトファンが少ないです。
 リジンやスレオニンは、穀類(米、小麦、トウモロコシ等)には少ないので、穀類中心の生活をしていた時代には、昆虫食は、不足する必須アミノ酸の良い供給源でした。

 5.プロテインスコアとアミノ酸スコアの比較
 表3に、プロテインスコアとアミノ酸スコア(1973年FAO/WHO一般用パタン)を比較しました。
 ( )内は、第一制限アミノ酸です。SAAは、含硫アミノ酸を意味します。 
 動物性蛋白質のプロテインスコアは、高く、鶏卵は、100です(注4)。
 牛乳は、アミノ酸スコアは、100ですが、プロテインスコアは、85です(注5)。
 貝類のアミノ酸スコアは、シジミ(しじみ貝)は、95です(アサリは、81です)。
 表3 プロテインスコアとアミノ酸スコアの比較
 食品  プロテインスコア  アミノ酸スコア
 鶏卵(全卵生)  100  100
 牛乳(生乳)   85(SAA)  100
 アジ(生)   78(Trp)  100
 サケ(生)   78(Trp)  100
 アサリ   66(Trp)   81(Val)
 ロース脂身なし   84(Trp)  100
 鶏むね肉   84(Trp)  100
 鶏肝臓   93(SAA)  100
 木綿豆腐   67(SAA)   82(SAA)
 ほうれん草   41(SAA)   50(SAA)
 トマト   51(Trp)   48(Leu)
 精白米   81(Lys)   65(Lys)
 小麦粉   56(Lys)   44(Lys)

 6.植物性蛋白質だけを摂取していて、長生き出来るか?

 ベジタリアンの寿命が、長いとは言えないようです。
 貝原益軒の「養生訓」には、肉だけでなく、魚を食べる人も、寿命が短くなるように、書かれてあります。しかし、これは、平均寿命が40歳に満たない時代の話しです。
 チンパンジーは、普段は、草食ですが、集団で、他の種類の猿を襲って殺し、肉食をするそうです。
 肉や卵など、プロテインスコアが高い、動物性蛋白質を摂取することは、免疫力を高め、感染症に打ち勝つのに、必要と考えられます。
 江戸時代にも、徳川家康は、庶民には肉食を禁じながら、自らは、「薬食い」と称して、牛肉の味噌漬けを食べていたそうです。
 ですから、植物性蛋白質だけを摂取するベジタリアンは、蛋白質が欠乏するおそれがあります。
 戦後、日本で、青鼻を垂らす子供さんが少なくなったのは、動物性蛋白質の摂取量が増えて、白血球や補体などの免疫力が強くなり、慢性的な蓄膿症になりにくくなった為とも、考えられます。
 他方で、動物性蛋白質(肉類、魚、鶏卵、牛乳など)を大量に摂取すると、腸内で、アンモニア、硫化水素、インドール、メタンガス、ヒスタミン、ニトロソアミンなどの毒性物質(毒素)や、活性酸素が生成されます。これらの毒性物質や、活性酸素は、肝臓や腎臓に負担をかけたり、老化を早めたり、発癌を促進したりすると言われます。
 また、蛋白質を大量に摂取すると、アミノ酸の分解で生じる窒素を、肝臓尿素回路で処理したり、腎臓から排泄する為に、肝臓や腎臓に負担がかかります。動物性蛋白質(肉、魚など)を多く摂取すると、尿中のリン酸塩、硫酸塩が増加し、尿細管での酸塩基平衡調節に負担が掛かり、尿が酸性化します(カルシウム再吸収が抑制され、尿中カルシウムが増加し、尿路結石のリスクも高まります)。
 さらに、高蛋白食を摂取し、蛋白質が、アミノ酸に分解されると、血液が酸性に傾き、中和する為に、カルシウムが骨(や歯)から動員され、カルシウムが尿から排泄されて、骨粗鬆症などを来たすと言われます。
 加齢と共に(70歳を過ぎると)、腎機能が低下し、腎臓からのリン(P)の排泄が低下し、血液中のリンが増加し、骨からカルシウム(Ca)が動員され、骨粗鬆症になり易いとも言われます(注6)。

 植物は、カルニチンの生成に必要な2種類のアミノ酸(リジンとメチオニン)の含量が少ないので、ベジタリアンの人は、血漿カルニチン濃度や、尿中カルニチン排出量が、低下することがあります。ベジタリアンの人は、完全な菜食でなく、不足しがちな、含硫アミノ酸(メチオニン)を摂取する為に、卵(鶏卵)なども、補った方が、良いでしょう。
 カルニチン(アシルカルニチン)が欠乏すると、慢性疲労症候群と言う病気になるとも、言われます(注7)。

 7.脳は、体に必要なアミノ酸を、感知する
 マウスの実験では、脳が、体内に欠乏しているアミノ酸を感知して、その欠乏しているアミノ酸を多く含むエサを、自然と多く摂るそうです。
 人間も、断食などをすると、自分に必要としている栄養素を含む食品が、自然と解るようになると言う人もいます。

 8.血中アミノ酸
 血中アミノ酸(血漿中アミノ酸濃度)は、栄養状態や疾患などで変動します。
 表3 血漿中アミノ酸濃度の変動(参考文献の富谷智明氏の表2等を改変し引用)
 疾患名  血漿中アミノ酸濃度
 上昇  低下
 肝疾患  Phe、Tyr、Trp、Met、Ser、Gly  Val、Leu、Ile(BCAA
 腎疾患  Arg、Asp、Cit(非必須アミノ酸)  Val、Leu、Ile、Thr、His、Tyr
 心疾患(Cardiac cachexia)  Phe、Tyr、Met  Val、Leu、Ile、His、Pro、Asn
 高インスリン血症(インスリノーマ)  Ala  Val、Leu、Ile、Tyr、Phe、Met
 低インスリン血症(糖尿病)  Val、Leu、Ile、Phe、Tyr  Ala、Gly、Thr、Ser
 低蛋白栄養状態(Kwashiorkor)  Ala  Val、Leu、Ile、Thr、Tyr、Met、Lys
 重症感染症(敗血症)  Phe、Tyr  Val、Leu、Ile
 アミノ酸製剤投与  各種アミノ酸  
 バルプロ酸ナトリウム投与  Gly、Gln  Glu、Asp、Met、Ile
 メープルシロップ尿症  Val、Ile、Leu  

 血中アミノ酸は、食後でも、特に、高蛋白食を摂取した後には、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、チロシン(Tyr)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、バリン(Val)などが増加すると言われます。
 結核の療養には、動物性蛋白質(肉類、牛乳、卵など)の摂取が勧められた時代がありました。しかし、動物性蛋白質の摂取や、砂糖(白砂糖)の摂取は、血液を酸性化させてしまいます。結核菌は、酸性の血液中で増殖が盛んになる性質があるので、動物性蛋白質の摂取や、砂糖(白砂糖)の摂取は、結核の療養に好ましくないと考えられます。
 ヨガなどの養生法では、結核(の予防と治療)には、肉類が多い食事より、新鮮な野菜や果物が多い食事を摂る方が良いと言われます
 蛋白(肉類など)を多く摂ると、身体諸器官が酸性化し、病気に対する抵抗力が低下します。
 動物性蛋白質(肉、魚など)を多く摂取すると、尿中のリン酸塩、硫酸塩が増加し、尿が酸性化し、クエン酸が減少し、尿路結石が、増加します。
 動物性蛋白質には、メチオニン(Met)やシステイン(Cys)などの含硫アミノ酸が多く含まれています。その為、動物性蛋白質を多食すると、腎臓の尿細管で、カルシウム再吸収が抑制され、尿中カルシウムが増加します。また、動物性蛋白質を多食すると、代謝性アシドーシスに傾き、尿中クエン酸排泄量が減少します。
 動物性蛋白と脂肪の摂取(肉類などの摂取)は、尿中カルシウムを増加させ、尿中クエン酸(尿中クエン酸排泄量)を低下させます。
 砂糖を摂取すると、乳酸などが血中に増加し、尿中からのカルシウム排泄が増加します:砂糖(refined carbohydrate)を過剰に摂取すると、酸塩基平衡を維持する目的で、過剰な酸を腎臓から排泄する為に、尿中カルシウム排泄量が、増加します。デキストロース(又は、ブドウ糖)は、抗酸菌のエネルギー源になります
 塩類(食塩)の接種が多いと、結核、偏頭痛、癌などの疾患に罹り易くなると言われます。
 結核の治療には、栄養があると言われる動物性食品(肉、卵、バター、チーズなど)の摂取を控え、植物性食品(玄米、野菜、野草、薬草など)を摂取した方が良いようです。動物性食品でも、小魚、白身の魚、川魚、鯉などの少量摂取は良いと言われます。
 結核菌は、酸性の血液中で増殖が盛んになります。結核菌は、アルカリ性の血液中では生きられないので、結核の治療には、呼吸法も大切と考えられます。
 動物性食品を多く摂り、血液が酸性になり、汚れていると、結核菌などの細菌が、増殖し易くなると言われます(感染症の予防・治療には、血液を浄化する食物を摂取することが大切)。

 劇症肝炎の急性期には、血中アミノ酸(総アミノ酸濃度)が増加することがあります。

 バルプロ酸ナトリウム(VPA)を投与し、副作用により、高アンモニア血症と共に、血中(血漿中)のGlyとGlnが増加し、GluとAspとMetとIleが減少することがあります。

 検体を取り扱う際に、血液が凝固すると、赤血球内からアミノ酸が放出され、血中アミノ酸が高値を示すことがあります。

 9.アミノ酸の作用
 (脳卒中ラットの実験結果では、)普通食を与えた場合(コントロール群)の脳卒中発症率は87%ですが、アミノ酸のタウリンを与えた群の脳卒中発症率は35%、メチオニンを与えた群の脳卒中発症率は29%と、低下します。タウリンやメチオニンは、交感神経を制御しストレス反応を抑制し、血圧を降下させると言われます。
 アミノ酸のリジンは、長期的な投与では血圧を降下させ、脳卒中発症率を低下させます。リジンは、血管の性状を変化させると言われます。
 グリシン、ロイシン、アラニンは、脳卒中発症率を変化させません。
 ヒスチジンは、脳卒中発症率を低下させます。
 アルギニンは、脳卒中発症率を著しく低下させます(300日後にも生存率が低下しない)。アルギニンを投与すると、血管内皮細胞が正常に機能している年齢では、アルギニンからNO(一酸化窒素)が産生され、NOの血管拡張作用により脳卒中発症率が低下するが、老化し高血圧により血管内皮細胞が正常に機能しなくなると(400日前後の頃)、急激に生存率が低下すると考えられています。
 表4 食品可食部100g当たりのアミノ酸組成(mg/100g edible protein)
 食品名  蛋白質
 (g)
 分岐鎖アミノ酸(BCAA  芳香族アミノ酸(AAA  含硫アミノ酸(SAA)
 Lys

 Trp

 Arg

Ala

Asp

 Glu
 Ile  Leu  Val  合計  Phe  Tyr  合計  Met  Cys  合計
 大豆(乾)  35.3  1800  2900  1800  6500  2000  1300  3300   560   610  1200  2400   490  2800  1600  4400  6600
 納豆  16.5   760  1300   830  2890   870   680  1600   260   290   550  1100   240   940   680  1800  3200
 豚肉(ロース)  20.3   990  1700  1100  3790   820   700  1500   590   230   820  1800   250  1300  1200  2000  3200
 鶏肉(もも)  18.0   880  1500   920  3300   740   620  1400   530   220   750  1600   210  1200  1100  1800  2900
 秋刀魚(生)  20.6   950  1600  1100  3650   830   690  1500   660   230   890  1800   230  1200  1200  2000  2800
 蜆(生)   6.8   300   460   360  1120   280   220   500   180   97   280   490   90   390   540   610   830
 米(精白米)   6.8   290   570   430  1290   370   280   650   170   160   330   250   99   550   390   650  1300
 食パン   8.4   340   660   400  1400   460   240   700   150   210   360   220   96   290   270   390  3100
 Ile=イソロイシン、Leu=ロイシン、Val=バリン、Phe=フェニルアラニン、Tyr=チロシン、Met=メチオニン、Cys=シスチン、Lys=リジン、Trp=トリプトファン、Arg=アルギニン、Ala=アラニン、Asp=アスパラギン酸、Glu=グルタミン酸。 

 注1:必須アミノ酸の内、イソロイシン、ロイシン、バリンの3種類のアミノ酸は、BCAAと総称されます。

 注2リジンは、比較蛋白質(FAO)の基準は、270(mg/窒素1g)、アミノ酸パタンの基準では、340(mg/窒素1g)含まれている必要があります。含硫アミノ酸(メチオニン+シスチン)は、比較蛋白質(FAO)の基準は、270(mg/窒素1g)、アミノ酸パタンの基準では、220(mg/窒素1g)含まれている必要があります。
 精白米も、小麦粉も、含硫アミノ酸の含量は、アミノ酸パタンの基準を満たしています。しかし、リジンの含量は、両者ともに、アミノ酸パタンの基準を満たしておらず、精白米(御飯)より、小麦粉(食パン)の方が、リジンの含量が、少ないです。
 大豆は、リジンの含量は、アミノ酸パタンの基準を満たしていますが、含硫アミノ酸の含量は、アミノ酸パタンの基準を満たしておりません。しかし、含硫アミノ酸(メチオニン+シスチン)は、多く摂取すると、尿中の硫酸塩が増加し、酸塩基平衡を維持する為に、腎臓に負担がかかると考えられます。従って、含硫アミノ酸の含量の少ない大豆は、腎臓には優しい食品と、考えられます。
 野菜や果物は、リジンの含量も、含硫アミノ酸の含量も、アミノ酸パタンの基準を満たしておりません。
 従って、ベジタリアンの人が、パン食と野菜を中心とした食事を続けた場合、リジンや、含硫アミノ酸が、欠乏するおそれがあります。
 リジンや、含硫アミノ酸のメチオニンは、カルニチンの生成に必要なアミノ酸です。
 単純ヘルペスウイルス(HSV)や、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)は、(培地の)リジンが多いと繁殖が抑制され、アルギニンが多いと繁殖が促進されると言われます。
 表5−1 リジンやメチオニンの含量
 食品可食部の全窒素1g当たりのアミノ酸組成(mg)。字は、アミノ酸パタンの基準を満たさない食品。
 食品名  リジン  含硫アミノ酸  アミノ酸スコア  アルギニン  グルタミン酸
 メチオニン  シスチン  合計
 精白米  220  150  140  290   65  480  1,100
 小麦粉(強力粉)  130  100  150  250   38  210  2,200
 大豆(全粒、乾)  390   90   90  190   86  460  1,100
 糸引納豆  390   90  100  190   84  320  1,100
 ぶた(ロース)  570  180   72  250  100  400   970
 鶏卵(全卵、生)  450   210  160  370  100  400   800
 さけ(生)  550  190   66  260  100  360   840
 牛乳  520  170   57  230  100  210  1,200
 アサリ(生)  400  140   83  220   81  400   850
 ほうれんそう(葉)  230   55   58  110   50  280   570
 りんご  260   88  120  210   58  140   610
 表5−2 リジンやメチオニンの含量
 食品可食部100g当たりのアミノ酸組成(mg/可食部100g)。蛋白質は、g/可食部100g。
字は、アミノ酸パタンの基準を満たさない食品。
 食品名  蛋白質  リジン  含硫アミノ酸  アミノ酸スコア  アルギニン  グルタミン酸
 メチオニン  シスチン  合計
 米精白米   6.8   250   170   160   330    65   550   1,300
 食パン市販   8.4   220   150   210   360    44   290   3,100
 大豆(国産全粒乾)   35.3  2,400   560   610  1,200    86  2,800   6,600
 糸引納豆   16.5  1,100   260   290   550    84   940   3,200
 豚脂身ロース   2.8   140    41   35    76    68   180    290
 鶏卵全卵生   12.3   890    400   320   720   100   780   1,600
 さけ生   20.7  1,800   640   220   860   100  1,200   2,800
 牛乳生乳   2.9   240    75    26   100   100    93    560
 あさり生   8.3   530   180   110   290    81   530   1,100
 ほうれんそう生   3.3   120    29    26    55    50   150    300
 りんご生果   0.2    8     3    4    7    58    4     20

 注3:大豆(だいず、全粒、乾)は、スレオニンの含量は、230mg/g nitrogen(mg/窒素1g)なので、アミノ酸パタンを基準とするアミノ酸スコアでは、基準値(250mg/窒素1g)を満たしませんが、比較蛋白質を基準とするプロテインスコアでは、基準値(180mg/窒素1g)を満たしています。
 表6 大豆と精白米に含まれる必須アミノ酸量
 アミノ酸
 (mg/窒素1g)
イソロイシン ロイシン リジン 含硫アミノ酸 芳香族アミノ酸 スレオニン トリプトファン バリン
 比較蛋白質(FAO)  270  306  270  270  360  180  90  270 
 アミノ酸パタン(2〜5歳)  250  440  340  220  380  250  60  310
 大豆(だいず、全粒、乾)  290  470  390  190  540  230  79  300
 精白米  250  500  220  290  580  210  87  380

 注4:現代人には、鶏卵は、卵アレルギーの人でなければ、最も、安価な、蛋白摂取源だと思われます。
 鶏卵でも、卵白は、アルカリ食品(尿アルカリ化食品)です。コレステロール値が気になる人は、卵黄は捨てて、卵白を摂取するのも良いでしょう。
 鶏卵は、含硫アミノ酸の含有量が、肉類(豚肉)、魚類(アジ)、乳製品(牛乳)より多いので、動物性食品(動物性蛋白質)の中では、血液を酸性化させ易い食品かも知れません(含有される含硫アミノ酸のアミノ酸化は、鶏卵168、豚肉114、アジ118、牛乳106、精白米132、小麦粉118、大豆86、ほうれん草50)。

 ただし、女性を対象とした疫学的研究結果によると、鶏卵を毎日1個(1日1個)摂取する人に比して、鶏卵を毎日は摂取しない人の方が、総死亡率が低いくなります。特に、鶏卵を週に1〜2個摂取する人は、総死亡率が低いそうです(総死亡相対危険度は、0.78)。また、女性は、鶏卵の摂取量が多い人程、血中の総コレステロール値が高くなります(男性では、鶏卵の摂取量と、血中の総コレステロール値との間に、関連は認められていません)。

 注5:牛乳のプロテインスコアは、74とする報告もあります。いずれにせよ、牛乳だけでは、欠乏する必須アミノ酸があります。
 牛乳や、バターは、含まれている界面活性剤の作用をする物質により、乳化している(脂肪分と水分が均一に混じっているエマルジョン)ので、クローン病や、多発性硬化症などの自己免疫疾患の人には、良くない食品かと思われます。
 クローン病潰瘍性大腸炎は、牛乳や乳製品の摂取を禁止し、自然の穀物(精製度が少ない穀物)、野菜、果物を摂取させると、改善したり、治癒すると言われます。
 クローン病の患者は、サイトカインのIL-23受容体の遺伝子変異が少なく、非クローン病の健常者はIL-23受容体の遺伝子変異が多いと言われます。IL-23は慢性炎症を調節し細菌感染から防御します。IL-23受容体は、白血球(リンパ球やマクロファージ)に存在しています。

 注6骨粗鬆症では、骨芽細胞による骨形成より、破骨細胞による骨破壊が亢進していると言われます。
 破骨細胞は、古い骨を破壊し、その分解産物を、破骨細胞内の小胞に取り込みます。その際、VGLUTと呼ばれる輸送体(蛋白質)が働いて、破骨細胞自身が合成・貯蔵していたグルタミン酸も、小胞に濃縮させて行きます。そして、破骨細胞は、骨を形成する骨芽細胞からの信号を受けると、小胞内に貯蔵していた骨分解物とグルタミン酸とを、細胞外に放出します。破骨細胞内から放出されたグルタミン酸は、破骨細胞表面のmGlu(グルタミン酸受容体)に結合し、破骨細胞による骨破壊やグルタミン酸放出(と分解物輸送)を、抑制します。
 VGLUT(グルタミン酸を小胞内に輸送する輸送体)が遺伝子操作で機能しなくなったマウスでは、骨密度が低下し、骨粗鬆症のような骨になります。
 (VGLUTの機能低下などにより、グルタミン酸が小胞内に蓄積せず、)破骨細胞からグルタミン酸が放出されないと、破骨細胞による骨破壊などが抑制されず、骨粗鬆症になると、考えられています。
 このように、破骨細胞から放出されるグルタミン酸は、破骨細胞に作用し、骨破壊(骨吸収)を抑制します。
 なお、グルタミン酸は、脳神経細胞内では、興奮性神経伝達物質として機能します。
 
 注7慢性疲労症候群(CFS)は、風邪などを契機に、激しい倦怠感や、脱力感を、半年以上、持続ないし繰り返す病気で、病因は、確定されていません。
 ACR(アシルカルニチン)は、グルタミン酸、アスパラギン酸、GABA(γアミノ酪酸)などの神経伝達物質の合成に利用されます。慢性疲労症候群では、ACR(アシルカルニチン)の脳内(前頭葉の前帯状回と、前頭前野)への取り込みが低下していると言われます。
 血清コルチゾールや、DHEA-S(デヒドロエピアンドロステロンサルフェート)など、副腎皮質から産生されるホルモンが減少し、思考力や集中力が低下すると言われます。
 慢性疲労症候群では、NK細胞活性が低下し、潜伏感染していたウイルスが、再活性化すると言われます。また、IFN-α(インターフェロンアルファ)は、2-5AS(2',5'-オリゴアデニル酸合成酵素)を誘導し、誘導された2-5A(2',5'-オリゴアデニル酸)により、RNaseを活性化させ、ウイルスRNAを分解して、ウイルス増殖を抑制しますが、慢性疲労症候群では、2-5ASが上昇しています。

 参考文献
 ・香川芳子:五訂食品成分表2005(女子栄養大学出版部、2005年).
 ・香川綾:四訂食品成分表1992(女子栄養大学出版部、1992年).
 ・川嶋昭司、能宗久美子:食べもののメリット・デメリット事典 農文協(1988年).
 ・中村保幸:卵摂取とコレステロール、日本醫事新報、No.4279、2006年4月29日号、93-94頁.
 ・新谷弘実:胃腸は語る−胃相腸相からみた健康・長寿法、弘文堂(平成10年初版、平成12年11刷).
 ・クローン病に関連する遺伝子を同定、Medical Tribune、Vol.40 No.4、2007年1月25日号、1頁.
 ・富谷智明:血中アミノ酸、最新 臨床検査のABC、日本医師会雑誌 第135巻・特別号(2)、生涯教育シリーズ−70、平成18(2006)年10月.S172-S173頁.
 ・アルフレット・ブラオホレ/福岡孝行訳:自然にかなった健康法、ベースボール・マガジン社、1967年初版発行(1972年第4版).
 ・家森幸男:たんぱく質、アミノ酸と高血圧・循環器疾患、Health&Meat'91 「健康なからだづくりに食肉の栄養を」−食肉と健康に関する最新のレポート−、「食肉と健康に関するフォーラム」委員会、66-72頁(財団法人 日本食肉消費綜合センター).
 ・川合忠、橋本信也編集:臨床検査のABC、日本医師会雑誌、臨時増刊、第112巻第6号、平成6年.
 ・大豆のアミノ酸スコアは100なの?納豆・豆腐・豆乳は?【管理栄養士監修】、https://athtrition.com/170326/.

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