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 食事とスタミナ
 
 炭水化物を中心とした食事(食餌)の方が、高蛋白食や、高脂肪食より、グリコーゲンが貯蔵され、スタミナがつく。白米食では、ビタミンB1が欠乏しやすい。
 高蛋白食は、肝臓や腎臓に負担を与える。高蛋白食を摂取し、蛋白質が、アミノ酸に分解されると、血液が酸性に傾き、中和する為に、カルシウムが骨(や歯)から動員され、カルシウムが尿から排泄されて、骨粗鬆症などを来たすと言われる。
 ミトコンドリアでエネルギー(ATP)を生成するには、御飯など炭水化物(糖質)を摂取する方が、効率が高い。蛋白や脂肪から、ATPを生成する場合、肝臓に負担がかかる。
 同じカロリーの食事を摂取しても、腸で消化・吸収したり、肝臓で代謝するのに必要なエネルギー量(食事代謝量)は、炭水化物の方が、蛋白質より、少ない。
 クエン酸や、リンゴ酸は、食酢、梅干、レモンなどに含まれていて、それぞれ、グリコーゲンの貯蔵を増加させたり、脂肪酸からのエネルギー(ATP)の生成を増加させて、スタミナを、増強する。
 食酢に含まれるクエン酸が、健康に良いと宣伝されているが、クエン酸よりも、食酢に含まれているリンゴ酸や酢酸が、健康に良い効果を示すのではないかと、考えられる。
 食酢に含まれるリンゴ酸は、TCA回路オキサロ酢酸を供給し、TCA回路の働きを高め、脂肪酸のβ酸化を促進させ、ダイエットに有用と考えられる。
 「クエン酸は、クエン酸回路(TCA回路)の働きを高めて、脂肪の分解を促進するので、ダイエットに有用だ」と言うようなことを言う人もいるが、クエン酸は、アセチル-CoAカルボキシラーゼを活性化し、脂肪酸合成を促進させるので、ダイエットには、逆効果の場合もあると考えられる。

 1.クエン酸は、グリコーゲン貯蔵を増加させる
 クエン酸(Citrate)は、筋肉の乳酸の蓄積を防ぎ、グリコーゲンの分解を抑制し、筋肉の疲労回復を、促進すると言われている。
 これは、
クエン酸が、ホスホフルクトキナーゼ(PFKの活性を抑制し(注1)、解糖を抑制するので、乳酸が蓄積しなかったり、グリコーゲンが分解されないと考えられる

 クエン酸の「クエン」は、シトロンを意味する中国語で、「枸櫞」と書く。
 スポーツの後に、炭水化物(糖質)と一緒に、クエン酸を摂取すると、肝臓や筋肉のグリコーゲン貯蔵が促進されると言われる(グリコーゲン・ローディング)。
 クエン酸やATPが十分存在する時は、これ以上、TCA回路(クエン酸回路)を経てATPを生産する必要がない(注2)ので、生体は、PFKの活性を抑制グリコーゲン分解を抑制すると考えられる。

 クエン酸は、アセチル-CoAカルボキシラーゼ(acetyl-CoA carboxylase)を活性化し、脂肪酸合成を促進させるので、脂肪酸貯蔵も促進される(注3)。
 食事で摂取したクエン酸が、TCA回路に入って、TCA回路の働きを高めるのではない。

 クエン酸は、梅干やレモンなどに含まれ、酸味のもとになっている。梅干やレモンには、リンゴ酸も含まれていて、脂肪酸からのエネルギー(ATP)生成を、促進する:「梅はその日の難逃れ」。
 クエン酸は、ビタミンB6の吸収を促進させる。
 
食酢には、クエン酸の他に、リンゴ酸、コハク酸、酢酸などが含まれている
 果実酢には、酢酸(4%)、リンゴ酸、クエン酸、ポリフェノール、ミネラルなどが、含まれている。
 リンゴ酸は、細胞のミトコンドリア内で、TCA回路の代謝に必要な、オキサロ酢酸に変換され、脂肪酸の分解を促進し、エネルギー(ATP)の生成を、促進する。酢酸は、体内でクエン酸に変えられる(注4)。
食酢には、高血圧を抑制する効果が知られている注5)。食酢に含まれる、クエン酸や酢酸は、血小板凝集を抑制して、血栓を予防する効果があると言われている。また、赤血球の膜をしなやかにし、赤血球の変形能を改善し、血行を良くすると言われる。

 クエン酸は、カルシウムの吸収を促進して、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)を、予防すると言う。

 クエン酸を多く含む食品を摂ると、形成される尿路結石の数が、少なくなる。
 クエン酸は、尿をアルカリ化させ、尿中のカルシウムと結合し、尿路結石の形成を予防する。
 クエン酸の摂取は、1日、3g程度を目標とする:食品に含まれるクエン酸の量は、グレープフルーツジュース(コップ1杯)=2.6g、オレンジジュース(コップ1杯)=2.0g、ミカン(1個)=1.0g、スポーツドリンク(500ml)=0.2〜1.5g。


 2.高炭水化物食と高脂肪食
 
スタミナをつける為に、筋肉グリコーゲンの貯蔵を増やすには、糖質を多く摂る、高炭水化物食が良い。高脂肪・高蛋白質食は、却って、筋肉グリコーゲンが減少してしまう。従って、脂質や蛋白質を多く摂る食生活は、筋肉のスタミナを低下させてしまうと思われる

 表1 摂取する食事による筋肉グリコーゲン量の相違
  食事  筋肉グリコーゲン量
     (g/100g)
 自転車漕ぎ持続時間
         (分)
 高脂肪・高蛋白食       0.63         56.9
 混合食       1.75        113.6
 高炭水化物食       3.31        166.5

 ブドウ糖グルコース)や砂糖注6)を摂取すると、インスリンが分泌され、グリコーゲンの貯蔵が促進される。
 グリコーゲン貯蔵が増えると、体内のK(カリウム)の保持量も増加すると言う。

 ラットを用いて、疲労困憊になるまでランニングさせると、高炭水化物食群より、高脂肪食群の方が、長い時間、ランニング可能だった。これは、筋肉が、高炭水化物食群では、グリコーゲンをエネルギー源にしているのに対して、高脂肪食群では、脂肪酸をエネルギー源にしているためと考えられる。その為、高脂肪食群では、高炭水化物食群より、運動中に血液中に分泌される、アドレナリンやノルアドレナリンは、増加しており、健康上、好ましくないと思われる。
 なお、骨格筋には、遅筋と、速筋とがあり、遅筋は、脂肪酸(脂肪)を消費し、速筋は、グルコース(炭水化物)を消費すると言われる。

 また、食事回数が少ない方が、肝臓グリコーゲン貯蔵量は、大きくなる。

 表2 食事回数によるグリコーゲン量の相違
 食事回数       グリコーゲン量      
  mg/肝臓   g/100g肝臓
    自由     526         3.63
    3回     601         4.52
    2回     687         5.60
    1回     767         7.37
 食前(昼食前)に運動すると、摂取した炭水化物の体内貯蔵量は増加し、摂取した脂質や蛋白質の体内貯蔵量は、減少する。

 有酸素運動の際には、糖質(グルコース)や脂質(遊離脂肪酸)が、エネルギー源(燃料)として用いられる。
 通常の筋肉では、脂質(遊離脂肪酸)は、β-酸化系による脂肪酸分解により、分解されて、エネルギー源とならない。脂質(遊離脂肪酸)は、肝臓の肝細胞に於いて、最も強く、β-酸化系により分解される。

 摂取した食事(食餌)を、腸で消化・吸収したり、肝臓で代謝するのに、エネルギーを要する(食事代謝)。
 同じカロリーの食事(食餌)を摂取しても、腸で消化・吸収したり、肝臓で代謝するのに必要なエネルギー量(食事代謝量)は、炭水化物(そうめんなど)の方が、蛋白質(ステーキなど)より、少ない。
 水分摂取量が少なかったり、発汗が増加したりして、脱水になると、筋肉(骨格筋)の水分量が低下する。そうすると、筋肉での代謝(生活活動代謝)が低下する。

 3.酢酸
 酢酸は、食酢(米酢、粕酢)の主成分。黒酢の主成分も、酢酸。食酢には、糖類やアミノ酸も含まれている。
 
 酢酸(CH3COOH)は、細胞内で、アセチル-CoA合成酵素により、アセチル-CoAに変換される。アセチル-CoA合成酵素は、全ての細胞に存在するが、肝細胞のアセチル-CoA合成酵素は、Kmが約1mMと高いので、酢酸が低濃度の時には、肝臓では代謝されない(アセチル-CoAに変換されない)。さらに、アセチル-CoAは、オキサロ酢酸と結合し、TCA回路でクエン酸となり、代謝され、ATPが生成される。
 酢酸は、クエン酸同様に、 6-ホスホフルクトキナーゼ(PFK-1)を阻害する(解糖を抑制し、乳酸の蓄積を抑制し、グリコーゲンの分解を抑制する)。
 酢酸は、肝臓で、PFK-1の活性を促進させるフルクトース2,6-ビスリン酸の合成を抑制する。

 酢酸は、血管を拡張して、血行を良くする。酢酸により、血管が拡張して、血行が良くなり、筋肉中の乳酸の分解(血液中への放出)が、早まると言う。酢を飲むと、体が柔らかくなるというのは、酢に含まれている酢酸により、筋肉中の乳酸が除去され、筋肉の緊張(凝り)が、ほぐれる為だと言う。
 酢酸は、カルシウムを溶け易くする:炭酸カルシウムは溶け難いが、酢酸カルシウムは溶け易く、腸から吸収され易い。カルシウムは、(食)酢と一緒に摂取すると、酢酸カルシウムとなり、腸からの吸収が、良くなる。食酢に含まれる酢酸は、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)を、予防する。


 酢酸、クエン酸は、運動後に、グルコース(ブドウ糖)と一緒に飲用すると、血中の乳酸(疲労物質)の上昇を抑制し、疲労回復を早める(近年は、乳酸は筋肉の疲労物質でなく細胞外に蓄積したカリウムイオンK+が、筋肉疲労の鍵物質であると考えられるようになった)。ヒトでは、酢酸2g(盃約2杯分の食酢)、クエン酸約30g(レモン5〜6個分)で、疲労回復効果が得られる。

 肝臓では、飲酒後に、アルコールが代謝され、アセトアルデヒドを経て、酢酸が生成される。酢酸は、肝臓では、酸化され難く、血中に放出され、末梢組織のエネルギー源となる。
 肝臓で生成された酢酸は、筋肉(骨格筋)や、心臓や腎臓で、アセチル-CoAとなり、代謝(TCA回路で燃焼)されエネルギー源とる。また、酢酸は、血中濃度が数mmol/l以上になると、肝臓に再取り込みされ、脂肪酸合成などに、利用される。
 酢酸のエネルギー換算係数は、3.5kcal/gとされる。
 酢酸は、それ自体には、毒性はないが、酸性化合物なので、血中濃度が増加すると、ケトン体と同様、血液を酸性化させる(アシドーシス)。

 酢酸は、消化管内の腸内細菌の発酵作用によっても生成され、体内に吸収され、血中に少量存在する。
 
 肝臓は、ケトン体と同様に、酢酸を生成し、血液中に放出する。
 絶食時などのように、β-酸化が亢進(筋肉ではATP生成が、行われ、肝臓では、糖新生が行われる)し、ケトン体が生成されるような状況では、ミトコンドリア内では、β-酸化により、遊離CoAが、アシル-CoAやアセチル-CoAになる。遊離CoAが不足すると、β-酸化の速度が低下してしまう(肝臓では、糖新生が遅滞してしまう)ので、アセチル-CoAヒドロラーゼ(ACH)により、アセチル-CoAが、遊離CoAと酢酸とに、加水分解される。
 このように、肝臓で、ケトン体が大量に生成されるような状況では、同時に、酢酸も生成される。
 酢酸は、脂肪酸のβ-酸化以外に、アルコール代謝でも、生成される。
 肝臓で生成された酢酸は、肝臓から、血液中を、末梢組織(骨格筋、心筋、腎臓)に輸送され、アセチル-CoA合成酵素により、アセチル-CoAに合成され、代謝燃料として、用いられる。
 酢酸は、ケトン体同様に、末梢組織で、アセチル-CoAとなり、TCA回路で代謝され、TCA回路で代謝され、二酸化炭素と水に分解される。

 酢酸自体には、アセトアルデヒドのような毒性はないが、ケトン体と同様に、血液を酸性化させる(アシドーシスにさせる)。

 4.大豆蛋白質
 ネズミに、牛肉の蛋白質と、大豆の蛋白質を摂取させた実験結果では、牛肉の蛋白質を摂取したネズミは、プールで泳がせると、瞬発力は優れていたが、持久力はなかった(15分間しか泳げなかった)。
 他方、大豆の蛋白質を摂取したネズミは、45分間、泳ぎ続けることが可能だったと言う。

 注16-ホスホフルクトキナーゼ(phosphofructokinase:PFK)は、解糖の律速酵素で、フルクトース 6-リン酸を、不可逆的に、フルクトース 1,6-ビスリン酸(フルクトース 1,6-ニリン酸)に変える。
 PFKは、アロステリック酵素で、PFKの活性を阻害する物質には、クエン酸以外に、ATP、H+、ホスホエノールピルビン酸、長鎖脂肪酸などがある
 PFKの活性を賦活する物質には、AMP、ADP、フルクトース6-リン酸、フルクトース2,6-ビスリン酸(最も強力)、フルクトース1,6-ビスリン酸、グルコース1,6ビスリン酸などがある。
 PFKは、インスリンにより、グルコキナーゼピルビン酸キナーゼピルビン酸デヒドロキナーゼ同様に、活性化される。
 金属酵素であるPFKは、Mg2+がないと、作用しない。


 PFKは、6-phosphofructokinase、6-phosphofructose 1-kinase、phosphofructokinase I (PFK-1)などとも呼ばれる(EC 2.7.1.11)。
 ATP + D-fructose 6-phosphate = ADP + D-fructose 1,6-bisphosphate

 注2:クエン酸は、ミトコンドリア内のTCA回路で、アセチル-CoAとオキサロ酢酸から、citrate synthaseにより生成される。クエン酸は、生体が、エネルギー(ATP)の産生を必要とする場合は、ミトコンドリア内で、TCA回路の代謝に使われ、エネルギー(ATP)の産生を必要としない場合は、ミトコンドリア外に輸送され、脂肪酸の生合成に使われる。クエン酸が、TCA回路で使われるのか、脂肪酸の生合成に使われるのかは、イソクエン酸デヒドロゲナーゼの活性により、調節される。

 注3アセチル-CoAカルボキシラーゼ(acetyl-CoA carboxylase)は、脂肪酸合成の律速段階の1つである、アセチル-CoAからマロニル-CoAを合成する反応を触媒する酵素。
 アセチル-CoAカルボキシラーゼは、クエン酸で活性化され、アシル-CoAで抑制される。
 なお、クエン酸は、細胞内のミトコンドリア内(マトリックス)で、アゼチル-CoAとオキサロ酢酸から、citrate synthaseにより生成される。十分に栄養が摂取されている時には、クエン酸が多く生成され、脂肪酸の合成が促進される。
 クエン酸が蓄積すると、ミトコンドリア内から、ミトコンドリア内膜のトリカルボン酸輸送系(tricarboxylate carrier:クエン酸輸送系)を経て、細胞質ゾルに移行する。
 細胞質ゾルで、クエン酸は、ATP-クエン酸リアーゼ(ATP citarate lyase)により、アセチル-CoAとオキサロ酢酸に分解される。ATP citarate lyaseは、細胞質ゾルに存在し、脂肪酸を合成する肝臓で、活性が高い。
 クエン酸が分解されて生成されるアセチル-CoAは、細胞質ゾルで、マロニル-CoA経路により、脂肪酸に合成される。
 クエン酸が分解されて生成されるオキサロ酢酸は、細胞質ゾルで、リンゴ酸に変換される。リンゴ酸(malate)は、リンゴ酸酵素(malic enzyme)により、ピルビン酸(pyruvate)に変換され、その際に、NADPHが生成される。
 malate + NADP+ ⇔ pyruvate + CO2 + NADPH
 このNADPHは、マロニル-CoAからアシル-CoA(脂肪酸)を合成するのに使用される:クエン酸は、脂肪酸合成に必要なNADPHの約40%を供給する(残りの60%は、ホスホグルコン酸回路から供給される)。なお、リンゴ酸から変換されたピルビン酸は、ミトコンドリア内膜を通過して、ミトコンドリア内(マトリックス)に移行し、ピルビン酸カルボキシラーゼにより、オキサロ酢酸に変換される。
 なお、黒酢などの食酢に含まれるリンゴ酸は、ミトコンドリア内に輸送されると、オキサロ酢酸に変換され、TCA回路の代謝を促進させ、脂肪酸の分解を促進すると考えられる。黒酢には、アミノ酸も含まれている。 
 それから、クエン酸を飲むと、クエン酸回路の回転が良くなって、肥満が解消されるので、クエン酸は、ダイエットに良いように、宣伝している人も見かけるが、クエン酸は、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(イソクエン酸脱水素酵素)の活性が抑制された状況で、蓄積すると、むしろ、脂肪酸合成に利用され、肥満を悪化させるとも、考えられる。肥満の解消や、ダイエットには、リンゴ酸を含む食材(食酢など)を摂取して、ミトコンドリア内に、オキサロ酢酸を増加させ、TCA回路の回転を、順調にする方が、良いと考えられる。

 注4クエン酸:CH2COOH-C(OH)COOH-CH2COOH)
 酢酸:CH3COOH

 注5臨床実験の結果によると、1日大匙1杯(15ml:5倍に薄めて飲用)の酢を飲むと、飲み始めて2週間後ぐらいから、血圧が下がり始める、酢を飲むのを止めると、再び血圧が上がる。
 (食)酢に含まれる酢酸(TCA回路で代謝されエネルギー源になる)は、ATPを分解し、生じるアデノシンが、血管を拡張し、血圧を低下させると言う説がある
 リンゴ酢(15〜30ml)を飲むと、最高血圧も最低血圧も、低下する。
 食酢に、高血圧を抑制する(予防する)効果があるのは、食酢に含まれる酢酸により、血液がアルカリ性になり、利尿が起こるためと言う説もある。

 なお、(食)酢は、食物の胃内への停滞時間を長くし、グルコースの吸収を抑制し、血糖の上昇を抑制し、糖尿病を予防する効果も、期待出来ると言う。
 また、(食)酢を、1日15ml内服すると、食酢に含まれる酢酸の作用により、血中のコレステロール値が低下する。
 食酢に含まれる酢酸は、食品の細胞の酸性プロテアーゼを活性化させ、(細胞骨格の蛋白をアミノ酸に分解し、)食品(肉など)を柔らかくし、旨味(うまみ)を増加させる。食酢を飲んで、体が柔らかくなることは、ない。

 注6砂糖の成分は、ショ糖(蔗糖:スクロース:sucrose)。ショ糖は、ブドウ糖(グルコース:glucose)と、果糖フルクトース:fructose)からなる、ニ糖類で、水に溶けやすい。白砂糖で、ブドウ糖(グルコース)を摂り過ぎると、ピルビン酸をアセチル-CoAに変換して脂肪酸を生成する為、血液中のビタミンB1が低下するが、黒砂糖には、ビタミンB1が含まれている。
 ショ糖(スクロース)、ブドウ糖グルコース)、果糖フルクトース)、グリコーゲン(glycogen)の関係を下図に示す。
 なお、ブドウ糖(グルコース)が、α-1,4結合で直鎖を形成すると、デンプンの成分であるアミロースが、α-1,6結合で分枝鎖を形成すると、デンプンの成分であるアミロペクチンが、合成される。
 植物では、葉緑体で、昼間、光合成で、カルビン・ベンソン回路で、二酸化炭素を固定し、DHAP(ジヒドロキシアセトンリン酸)、フルクトース-6-リン酸を経て、ADP-グルコースが合成され、化学的に安定な、不溶性のデンプン(同化デンプ)として、貯蔵される(無機リン酸が必要)。葉緑体で合成されるDHAPが、葉緑体包膜を経て、細胞質に輸送され、細胞質で、ショ糖が、合成される。ショ糖は、篩菅を経て、植物の他の器官(種子、塊魂、塊茎、果実)に輸送(転流)され、デンプン(貯蔵デンプン)として、貯蔵される。ショ糖(スクロース)は、ジャガイモの根で、短日条件では、ジベレリン(植物を、縦軸方向に、成長させる)の生成を抑制し、ジャスモン酸メチル(ツベロン酸メチル:ジャスミンの花の匂い物質)の生成を促進させ、球状のイモ(塊茎)を形成させる。
 動物では、ブドウ糖(グルコース)は、グリコーゲンとして、肝臓や筋肉に、貯蔵される。
 砂糖(白糖、白砂糖)を摂り過ぎると、(血液が、酸性になり、)白血球(好中球や単球やリンパ球)の機能が低下するとされる:砂糖(白糖)を、食べ過ぎると、結核などの感染症に罹り易くなる黒砂糖は、アルカリ食品(尿アルカリ化食品)とされる。
 アルカリ食品尿アルカリ化食品)とは、カルシウム、カリウム、マグネシウムを多く含む食品。大豆、海藻、野菜(ほうれん草、里芋、人参、ジャガイモ)、果物(バナナ、ミカン、干しぶどう)、きのこ、海草類(ワカメ、昆布)、卵白、など。
 反対に、硫黄、塩素、リンを多く含む食品は、酸性食品。肉類、魚、卵黄、穀類(玄米、白米、ソバ)、野菜(アスパラガス、クワイ)、豆類(落花生、ソラマメ、えんどう豆)、酒類(清酒、ビール、酒粕)など。ただし、肉類など蛋白質を多く含む食品は、代謝で生じるアンモニアが、尿中に排泄されると、水素イオンを中和するので、尿をアルカリ化する。
 アルカリ食品、酸性食品という区別は、現代の西洋医学では、ほとんど、重視されない。その理由は、健康人では、何を食べても、血液のpHは、変動しないからである。しかし、血液のpHを維持するために、特に、腎臓には、負担がかかるので、病人には、食養として、食べた食餌により、腎臓から排泄する酸が増加しないように、配慮することは、重視されるべきと思われる。
 ただ、上記に述べた、アルカリ食品、酸性食品の区別は、その食品を燃やして、その灰を、水に溶かした際のpHで決めている。しかし、燃やす際に、体内を酸性化させる二酸化炭素や、アルカリ化させるアンモニア(アミノ酸のアミノ基から生成される)は、空気中に、焼失してしまう。
 肉類、魚などは、酸性食品に分類されるが、含まれる蛋白質からは、体内で、アンモニアが生成され、尿をアルカリ化する。実際、卵白は、アルカリ食品として、分類されている。
 今後は、食品として食べた際に、本当に、腎臓から排泄する酸を増加するか、しないか、検討が必要だと思われる。

 参考文献
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 ・川嶋昭司、能宗久美子:食べもののメリット・デメリット事典 農文協(1988年).
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