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 溶血性尿毒症症候群

 溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome:HUS)は、腎臓を主とする、血管内皮障害血管内皮細胞障害)で起きる。
 HUSは、血小板減少症溶血性貧血急性腎不全を、3主徴とする。

 腸管出血性大腸菌(EHEC)から産生されるベロ毒素注1)は、腎臓を始めとする毛細血管内皮細胞を障害し、HUSを合併する。
 HUSは、小児期では、腸管出血性大腸菌(EHEC)である、O157感染症に引き続き、発症することが多い。一般的に、O157感染症に伴うHUSは、下痢などの初発症状が発現してから、数日から2週間以内(多くは5〜7日後)に、発症することが多い。

 典型的HUSの約90%は、下痢に引き続いて発症し、その約90%は、ベロ毒素(注1)を産生する、O157のような腸管出血性大腸菌(enterohaemorrhagic E.coli:EHEC)や志賀赤痢菌が原因で起こる。
 
 腸管出血性大腸菌(EHEC)による腸炎(EHEC腸炎)では、産生されるベロ毒素により、大腸の腸管粘膜上皮細胞が破壊され、下痢が起こる。また、また、ベロ毒素は、腸管血管内皮細胞を障害し、腸管粘膜のびらんと腸管出血を起こし、出血性大腸炎を発症する。さらに、腎臓の糸球体血管内皮細胞が傷害され、微小血栓形成が起き、血栓性微小血管症のため、溶血性貧血、血小板減少、急性腎不全を3主徴とする、HUSが起こる。

 EHEC腸炎がHUSを合併する頻度は、1〜10%とされている。HUSの2〜5%が急性期に死亡して、HUSの5〜10%が慢性腎不全に移行する

 1.ベロ毒素の細胞障害作用
 ベロ毒素は、細胞表面のGb3(globotriosyl ceramide 3:注2)レセプターを介して結合し、細胞内に取り込まれて、蛋白合成を阻害して、細胞を死に至らせる:ベロ毒素は、RNA N-グリコシダーゼ活性により細胞の60Sリボゾームを不活化し、細胞の蛋白合成を阻害し、死滅させる。ベロ毒素が細胞に結合してから、細胞が死滅するまでに、数日を要する
 ベロ毒素は、腸管粘膜上皮細胞を障害し、下痢血便、腹痛、嘔吐、発熱などの症状を来たす。

 2.血小板減少症溶血性貧血の発症機序
 腸管出血性大腸菌から放出されるベロ毒素やLPSは、マクロファージ・単球や好中球を活性化させ、TNF-αなどのサイトカインや、好中球エラスターゼなどを放出させ、血管内皮細胞を障害する。
 血管内皮細胞が障害されると、血小板が活性化され、凝固系が活性化され、狭小化した微小血管内に血栓ができる。そのため、血小板が消費されて血小板が減少したり、赤血球が機械的に破壊されて溶血し、貧血が起こる。HUSによる溶血性貧血では、破砕状赤血球を伴う。

 3.急性腎不全の発症機序
 HUSでは、ベロ毒素により、特に、糸球体血管内皮細胞が障害される。その結果、糸球体内皮細胞が壊死により腫大し、糸球体基底膜(注3)から剥離し、糸球体毛細血管壁が肥厚、二重膜化し、血管内に血栓ができて、糸球体毛細血管内腔が閉塞し、メサンギウム領域が浮腫性変化を起こす。
 腎臓の小動脈、細動脈の血管内皮細胞も、障害を受けて腫大し、内皮下組織に浮腫性の変化が起こり、血管内腔が狭小化する。
 尿細管上皮細胞や間質も障害される。
 糸球体係蹄血管内腔にフィブリン血栓が多発すると、循環障害により、糸球体の壊死が起こる。
 動脈の血管内皮障害が強く起こると、糸球体は虚血により、不可逆的な障害を起こし得る。
 こうして、急性腎不全が、起こる。

 4.脳症の発症機序
 ベロ毒素レセプターであるGb3は、大脳、小脳、脊髄の細胞にも存在する。
 腎臓以外に、中枢神経系(大脳や小脳の血管内皮細胞)、肝臓、膵臓なども障害されることがある。
 中枢神経系の神経細胞や、血管内皮細胞の障害が、脳症の発症機序と思われる。
 HUSに合併する脳症は、ベロ毒素によって、神経線維自体が障害され、血管内皮細胞の障害による微小血栓形成以前に、起きると思われる。
 ウサギを用いた実験結果では、ベロ毒素は、投与数時間後から神経細胞障害を示し、投与数日後から小血管障害を示すという。

 5.HUSの臨床所見や、検査所見
 HUSを発症すると、顔色不良、乏尿、浮腫、意識障害などの症状が、見られる。
 尿検査では、尿蛋白、尿潜血が、見られる。
 血液検査では、白血球数増加、血小板数減少、赤血球数減少、ヘモグロビン値低下、ヘマトクリット値低下、破砕状赤血球の出現が、見られる。
 血液生化学検査では、血清BUN値、クレアチニン値、GOT値(AST値)、GPT値(ALT値)、LDH値、血清ビリルビン値、CRP値の上昇が、見られる。

 HUSでは、DICの時のように、血小板数、ATIII、α2プラスミンインヒビター(α2PI)などが低値になり、FDPが高値で、DICの診断基準を満たす症例もある(注4)。
 HUSの発症時期には、血液中のt-PAPAI-1vWFTM(thrombomodulin)は、高値を示す。

 6.その他
 ・血管内皮細胞、メサンギウム細胞、血小板から遊離される、PAF(platelet-activatig factor)は、HUSの急性期に、血清中、尿中で増加している。
 HUS患者では、血管内皮細胞から放出される6keto-PGFPGI2の尿中代謝産物)、が減少している。

 ・HUS患者では、エンドセリン(endothelin:ET)が、腎血管内皮細胞、メサンギウムなどから分泌され、腎血管抵抗を増加させたり、PAFを遊離させて血小板や白血球を活性化させるという。

 ・HUS急性期と回復期で、血液中の抗酸化ビタミンである、α-トコフェノール=ビタミンE、β-カロテン、レチノールの値は、有意な変化がない。

 ・ベロ毒素は、血管内皮細胞のPGI2生合成を阻害し、血小板凝集が過剰に起こり、HUSを起こすと言う。

 ・遺伝性にプロスタサイクリン放出刺激因子(PGI2 stimulating factor:PSF)が欠乏すると、HUSを発症しやすい。この場合、下痢、血便などの消化器症状は伴わない。

 注1ベロ毒素(Vero toxin:VT)は、別名、志賀毒素(Shiga toxin:ST、又は、Stx)、志賀様毒素(Shiga-like toxin :SLT) とも、呼ばれる。
 赤痢菌は、志賀毒素(ST)を作る。
 EHECが産生するベロ毒素(Vero Toxin)には、VT1、VT2の2種類が存在する。VT1は、志賀毒素(ST)と、全く同一の分子構造をしており、VT2は、STと、約55%相同している。

 注2Gb3は、グロボトリオシルセラミド(globotriosylceramide)と呼ばれる糖脂質Gb3は、別名、グロボトリオシルセラミド(globotriaosylceramaide)、セラミドトリヘキソシド(ceramide trihexoside:CTH)、トリヘキソシルセラミド(trihexosylceramide)とも呼ばれる。
 Gb3は、Fabry病で、心筋、大動脈壁、腎臓、脾臓などに蓄積する。
 Gb3レセプター(GB3受容体)は、赤血球膜表面に存在するPk型と同一で、CD77としても知られている。Gb3レセプターは、赤血球膜以外には、リンパ組織のgerminal center、血管内皮、腎上皮にも存在する。ベロ毒素は、腸管内から血中に流入した後、毛細血管内皮細胞上のGb3レセプターに結合し、蛋白合成を阻害し、血管内皮細胞を障害する。
 糖脂質とベロ毒素の結合親和性
 糖脂質  化学構造  結合親和性
 VT1  VT2  VT2vp
 GC  Gal-Cer  −  −  −
 LC  Galβ1-4Glc-Cer  −  −  −
 DGDG  Galα1-4Glc-Cer  −  −  −
 Gb3  Galα1-4Glcβ1-4Glc-Cer  +  +  +
 Gb4  GalNAcβ1-3Galα1-4Galβ1-4Glc-Cer  −  −  +
 注3:糸球体毛細血管壁は、毛細血管内皮細胞、糸球体基底膜、糸球体上皮細胞(足突起)の三層構造をしている。
 毛細血管内皮細胞は、直径70〜100nmの窓を有していて、血清蛋白を通過させない為の、バリア機能を果たさない。
 糸球体基底膜は、血清蛋白が、原尿中に、漏出しない為の、バリアとしての機能を果たしている。糸球体基底膜の骨格は、IV型コラーゲンから形成されている。IV型コラーゲンの網目構造は、5〜7nmの穴があり、老廃物は外(原尿中)に出すが、血清蛋白は通過(濾過)させない。アルポート症候群では、IV型コラーゲンのα鎖分子を構成する遺伝子に異常があり、蛋白尿が見られる。グッドパスチャー症候群では、血清中に、IV型コラーゲンに対する自己抗体が、存在する。糸球体基底膜の表面(毛細血管内皮細胞側)は、陰性に荷電た分子が存在していて、陰性に荷電しているアルブミンなどは、通過させない、チャージバリア機能がある。微小変化型ネフローゼ症候群(小児に多いネフローゼ症候群)では、糸球体基底膜の陰性荷電が低下して、アルブミンなどが通過して、蛋白尿が発症すると、考えられている。
 糸球体上皮細胞も、蛋白通過を防止する、スリット膜と呼ばれる、バリア機能を有している。スリット膜は、電子顕微鏡で観察すると、糸球体上皮細胞の足突起の間の、25〜60nmの幅の隙間に、電子密度の高電子密度の高い、線状の物質構造として、観察出来る。スリット膜は、アルブミンなどの血清蛋白の透過を防ぐ、バリア機能を果たしている。スリット膜に対する抗体は、著明な蛋白尿を発症させる。スリット膜は、ネフリン(nephrin)、ポドシン(podocin)などの分子から構成されている。ネフリン(扉)は、スリット膜のフィルター構造を形成し、ポドシン(蝶番)は、糸球体上皮細胞の細胞質側(細胞膜側)に存在している。微小変化型ネフローゼ症候群では蛋白尿発現時、ネフリンとポドシンの発現が、著明に低下している。膜性腎症、糖尿病性腎症の蛋白尿発症時にも、ネフリンとポドシンの発現が低下している。ACE阻害剤や、アンギオテンシン(アンジオテンシン)レセプター阻害剤は、スリット膜のネフリン分子の低下を抑制して、蛋白尿を抑制すると言う報告がある。

 注4:HUSでは血小板血栓が主体で、DICではフィブリン血栓が主体とする解説もあるが、主として腎臓に微小血栓が出来るのが、HUSの特徴と思われる。

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