Oisix(おいしっくす) DHCオンラインショップ【個人サイト様向け】 HP Directplus オンラインストア 富士通パソコンFMVの直販サイト富士通 WEB MART

 サリチル酸

 サリチル酸は、COX-2を阻害し、PGE2の産生を抑制し、解熱、鎮痛、腫脹軽減作用を示す。
 
 サリチル酸は、肝細胞のミトコンドリアPTPを開口させ、膜電位を低下させ、呼吸鎖でのATP生成を低下させて、TCA回路で生成されるNADH2+を、枯渇させてしまうおそれがある。その為、サリチル酸は、糖新生を、減少させる。
 PTPの開口(induction)は、Ca2+に依存する細胞外のCa2+濃度が高いと、サリチル酸の、毒性(ミトコンドリア障害作用)が、増強するTrost等)。

 1.アスピリンは、肝臓で、サリチル酸に変化する
 解熱剤のアスピリンは、内服して、腸管から吸収された後、肝臓でエステラーゼにより、急速に加水分解(脱アセチル化)され、サリチル酸(salicylate)になる。
 サリチル酸は、COX-1を阻害しないので、アスピリンのような、血小板凝集抑制作用を有しない
 サリチル酸は、COX-2を阻害し、プロスタグランジン合成を阻害し、抗炎症作用、抗細胞増殖作用、抗酸化作用を示す:アスピリン同様に、サリチル酸は、PGE2の産生を抑制し、痛み(疼痛)と腫脹を軽減させ、解熱させる

 サリチル酸(sodium salicylate)は、NF-kBの発現(注1)を抑制する
 IL−1βは、NF-Bの発現を介して、COX-2と、EP3受容体のmRNAの発現を、増加させる。
 サリチル酸は、NF-kBの発現を抑制することで、IL−1βによるCOX-2の発現を抑制する。同時に、サリチル酸は、PGE2の結合するEP3受容体の発現も、抑制する。

 サリチル酸は、皮膚の角質を軟化させる作用や、白癬菌(水虫の菌)に対する抗菌作用が、ある。
 サリチル酸は、ミトコンドリアを膨化させ、アポトーシスを誘導するという(注2)。

 アスピリンは、腸管で吸収された後、主として肝臓で、firdt pass効果により加水分解され、サリチル酸が生成される。
 生成されたサリチル酸は、腎臓より原型のまま排泄される(2〜30%と個人差有り)か、肝臓でグリシン抱合、グルクロン酸抱合、酸化反応(水酸化を受けゲンチジン酸になる)などにより代謝型となって(胆汁中へ)排泄される。遊離型サリチル酸(蛋白と結合していない)は、腎臓の糸球体での濾過、尿細管分泌、尿細管再吸収を受ける。遊離型サリチル酸は、アルカリ尿(尿pHがアルカリ側)では80%が原型で排泄(尿pHが8だと尿中未変化率は80%)だが、酸性尿では5〜10が原型で排泄されるに過ぎない(尿pHが4だと尿中未変化率は10%)。
 アスピリンの代謝で生成されるサリチル酸は、服用後1週間から10日後には、体内(肝臓など)から完全に排泄されると言う。
 サリチル酸の蛋白結合率は、血中濃度に依存し、低濃度域(<100μg/mL)では約90%だが、高濃度域(>400μg/mL)では約75%と言われる。その為、サリチル酸は、血中濃度が上昇するに伴い、サリチル酸代謝能は飽和に達し、排泄(全身クリアランス)は低下する。血中の半減期は、少量のアスピリン(300mg以下)を内服した場合約3時間だが、1gのアスピリンを服用した場合は5〜6時間、10gのアスピリンを服用した場合は20時間に延長する。

 2.植物に含まれるサリチル酸

 紀元前より、葉の裏の白いヤナギ(柳、楊:Salix alba)の樹皮の抽出エキスは、鎮痛・解熱のために、用いられていた。しかし、苦い為に、主に、外用薬として、用いられていた。
 1827年に、セイヨウナツユキソウ(Spiraea ulmaria)からサリシン(salicin)が単離された。サリシンを分解後、酸化させてサリチル酸(salicylic acid)が、合成された。サリチル酸には、苦味と、胃腸障害と言う問題点が、存在した為、1899年に、サリチル酸のエステル体として、アセチルサリチル酸(アスピリン)が、治療薬として、開発された。

 日本でも、かつて、「柳箸やヤナギで作った楊枝を使うと歯がうずかない」と言う伝承があったように、ヤナギの樹皮や葉に、抗炎症作用があることが、知られていた。日本で現在販売されている楊枝は、材質は、白樺が多い。白樺は、サリチル酸や、キシリトールを含むと言う。
 ヤナギの葉や樹皮には、薬効成分であるサリシンが含まれている。サリシンは、体内で代謝され、サリチル酸(サリシル酸、スピール酸、水楊酸とも呼ばれた)になる。サリチル酸には、解熱鎮痛作用がある。
 ヤナギなどの植物は、病原体に犯されると、大量にサリチル酸を作り、揮発性のメチルエステルとして、発散する。合成サリチル酸は、胃腸障害が強く、苦味も強いので、アセチル化したアセチルサリチル酸(アスピリン)が開発された。
 サリチル酸は、イチゴ、柑橘類、ブドウなどの果物や、トマト、キュウリなの野菜にも含まれているので、アスピリン喘息を起す人は、これらの果物や野菜を、多量に摂取しないようにする必要がある。冬緑油(ツツジ科のガウルテリア属の植物から採る)は、サリチル酸メチルを主成分として、90%以上も含んでいる。ハーブとして用いられる、セイヨウナツユキソウ(花嫁草、メドスイート)も、サリチル酸が、含有されている。
 サリチル酸は、連作障害にも、関与するという。

 リュウノヒゲ(別名:ジャノヒゲ、フクダマ、タマノリュウ)は、葉や根に、乾物当たり約0.2%ものサリチル酸を含んでいて、雑草抑制に寄与する。
 リュウノヒゲの根は、「麦門冬」バクモントウ)として、咳止めや強壮に利用される。

 3.サリチル酸には、抗菌作用がある
 サリチル酸(サリチル酸メチル)は、病原菌に感染した植物で、感染した葉から感染した信号として産生され、他の葉に病原菌の存在を知らせ、酸性PR蛋白質(pathogenesis-related protein)と呼ばれる抗病菌タンパク質を誘導する。

 ジャスミンの木などの植物は、葉などが障害されると、MAPキナーゼホモログが、リン酸化により活性化され、ジャスモン酸(ジャスモン酸メチル)が産生され、塩基性PR蛋白質が、誘導され、他の葉に危険を知らせる。ジャスモン酸の構造は、動物の炎症物質である、プロスタグランジン(PG)やロイコトリエン(LT)などの構造と、相似している。
 サリチル酸とジャスモン酸は、拮抗的に作用する:サリチル酸やアセチルサリチル酸は、ジャスモン酸のような、シグナル伝達物質の合成を、阻害すると言う。
 サリチル酸やジャスモン酸は、植物が侵害を受けた時に、発せられる香りや匂い成分。

 サリチル酸は、黄色ブドウ球菌の毒性を弱める:毒素産生の抑制(α溶血素の分泌抑制)や、宿主組織への接着能力を抑制(フィブロネクチン結合を抑制)する(in vitro)。アスピリンは、体内で、サリチル酸に代謝されるので、抗菌効果も期待出来るが、殺菌作用はない。

 植物は、ウイルスに感染した細胞区域の周囲の細胞を、プログラム細胞死(Programmed cell death:PCD)により死滅させ、ウイルス感染の拡散を、防ぐ。
 PCDにより、細胞が死滅する機序には、アポトーシス(クロマチンが凝縮し、細胞核が断片化する)、ネクローシス(壊死:細胞内小器官や細胞膜が膨化する)、オートファジー(オートファゴソームと呼ばれる小胞が形成される、細胞核が萎縮するが、あまり断片化しない)が、知られている。

 4.サリチル酸は、インスリン分泌を増加させる
 サリチル酸は、ブドウ糖の代謝に、影響する。
 それは、以下に述べる様に、アスピリンを服用すると、体内で、サリチル酸に変化するので、インスリンの抑制が、解除され、インスリンの分泌が増加して、場合によっては、低血糖を来たす。

 IL-1βや、PGE2は、ブドウ糖によるインスリン分泌を、抑制する。

 IL-1βは、NF-Bの発現を介して、COX-2や、EP3受容体のmRNAを発現させる。
 COX-2によって産生されたPGE2は、EP3受容体を介して、アデニル酸シクラーゼ(AC)を抑制し、cAMPを減少させ、ブドウ糖によるインスリン分泌を、抑制すると考えられる。

 サリチル酸は、IL-1βによる、NF-Bの発現を抑制し、COX-2や、EP3受容体のmRNAの発現を妨げて、PGE2によるインスリン分泌抑制作用を抑制するので、インスリン分泌が、増加する。

 アスピリンは、IL-1βによる、NF-Bの発現を抑制しない。
 

 このように、サリチル酸が、インスリン分泌に抑制的な作用を有するプロスタグランジン(PGE2)の産生を抑制するので、アスピリンを服用すると、インスリンの分泌が亢進し、低血糖などを来たすこともある。

 膵臓のβ細胞は、細胞内cAMP濃度が上昇すると、Ca2+が細胞内に流入して、インスリンの分泌が起こる。
 インスリンは、脂肪組織、肝臓で、ホスホジエステラーゼ(PDE)を活性化させ、cAMPを5'AMPに異化させ、cAMP濃度を減少させ、ホルモン感受性リパーゼ(HSL)の活性を抑制し、中性脂肪の分解を抑制する。
 従って、アスピリンを常用すると、サリチル酸により、インスリン分泌が亢進させられ、ホルモン感受性リパーゼ(HSL)による脂肪の分解が抑制され、肥満を来たすおそれも、考えられる(注3)。


 5.サリチル酸とライ症候群
 アスピリン投与と、ライ症候群の発症とには、密接な関連があることが、多くの疫学的研究が、示唆しているが、アスピリンより、アスピリンの代謝産物であるサリチル酸が、ライ症候群発症の、重要な因子であると、考えられている。

 アスピリンは、ミトコンドリアの形態に、変化を引き起こす
 サリチル酸や、NSAIDsインドメサタシン(indomethacin)は、ミトコンドリアの電子伝達系を、阻害する。
 サリチル酸は、肝細胞のミトコンドリアの膨化(注2)を引き起こし、酸化的リン酸化脱共役する。また、サリチル酸は、脂肪酸のβ-酸化尿素回路糖新生などの代謝を、阻害する。

 ラット灌流肝を用いた実験では、サリチル酸(3mM)は、肝臓で、乳酸、ピルビン酸、プロピオン酸、果糖からの糖新生を、減少させた(注4)。しかし、サリチル酸は、肝臓のATP濃度を、変化させなかった(注5)。
 これは、サリチル酸が、ミトコンドリア内外のNADH/NAD+比(注6)を低下させ、リンゴ酸脱水素酵素(MDH)によるオキサロ酢酸からリンゴ酸への変換に、影響を与え、糖新生を、減少させると、考えられている。
 この糖新生の減少は、ライ症候群で見られる低血糖の原因かも知れない。

 ラットの腎臓を摘出して、0.4mMのサリチル酸を投与する(灌流させる)と、ミトコンドリアが膨化(swelling)した。同濃度のアスピリンは、ミトコンドリアを軽度しか、膨化させなかった。

 アポトーシスを惹起するPTPの開口(induction)は、Ca2+に依存する。その理由は、Bernardiの実験結果から、PTPの開口は、膜電位(the proton electrochemical gradient:刄ハH+)により制御されていて、Ca2+Camの増加)が、ミトコンドリア内で、膜電位(刄ハH+)を変化させて、PTPの開口(induction)を引き起こすためと、考えられる。
 
 Trost等の、ラットの培養肝細胞を用いた実験結果では、0.3〜5mMのサリチル酸が、濃度に比例して(concentration-dependent)、細胞を死滅させた。3mMの濃度のサリチル酸を使用して、半数の細胞が死滅する(half-maximal cell killing)は、150分だった。細胞外(extracellular)のカルシウムイオン濃度(Ca2+濃度)が高いと、サリチル酸の、毒性(ミトコンドリア障害作用)が、増強したカルシウム拮抗作用のある薬剤(verapamil、diltiazem、chlorpromazine、nifedipine、nisoldipine)は、サリチル酸の毒性(ミトコンドリア障害作用)を、阻害ないし軽減させた。Ca2+濃度の高い緩衝液(buffer)中でも(培養しても)、カルシウム拮抗作用のある薬剤は、ミトコンドリア内の遊離カルシウムイオン(mitochondrial free Ca2+)の上昇を、阻害した。
 なお、nifedipine(ニフェジピン)には、活性酸素の産生を抑制する作用もある。

 サリチル酸は、乳酸の産生量を、約2倍、増加させる。これは、サリチル酸が、ミトコンドリアのをNADH2+減少させ(注2)、解糖が促進されるためと考えられる。

 6.サラゾピリンは、分解され、サリチル酸が生じる

 潰瘍性大腸炎(注8)の治療に用いられる、サラゾピリン(サラゾスルファピリジン:SASP)や、ペンタサ(メソラジン)は、COXリポキシゲナーゼの活性を抑制する。サラゾピリン(サラゾスルファピリジン:スルファサラジン、サルファサラジン)としては、潰瘍性大腸炎の治療用にサラゾピリン錠(ミドリ十字)が、慢性関節リウマチの治療用に、アザルフィジンEN錠(参天製薬株式会社)が、販売されている。

 経口投与されたサラゾスルファピリジンは、大腸で、腸内細菌によって還元され、スルファピリジン(SP)と、5-アミノサリチル酸(5-amino-salicylic acid:5-ASA)とに、分解される。
 メソラジンの成分は、5-アミノサリチル酸。スルファピリジンは、抗菌薬(サルファ剤)として作用し、5-アミノサリチル酸は、大腸から吸収されないで、主に腸管細胞に直接、抗炎症作用を示すと考えられる。

 サラゾピリン(サラゾスルファピリジン:SASP)は、5-ASA製剤(5-アミノサリチル酸製剤)に分類される。
 サラゾピリン(SASP)は、5-アミノサリチル酸(5-ASA:ゴアサ)とスルファピリジン(SP)との化合物(ジアゾ結合している)。
 内服したサラゾピリン(SASP)は、大腸内で腸内細菌により分解され(ジアゾ結合がはずれる)、5-アミノサリチル酸(5-ASA)とスルファピリジン(SP)とに分解される。
 メサラジン(商品名:ペンタサ)は、5-アミノサリチル酸(5-ASA)の徐放性剤で、小腸からも5-アミノサリチル酸(5-ASA)が吸収される。

 活動期の潰瘍性大腸炎の治療(緩解導入療法)には、サラゾピリン(SASP)なら、遠位大腸炎型に対しては3〜4g/日を、左側大腸炎型や全大腸炎型(軽症〜中等症)に対しては2〜6g/日を、内服させる。また、5-アミノサリチル酸(5-ASA)なら、遠位大腸炎型や左側大腸炎型や全大腸炎型(軽症〜中等症)に対しては2g/日以上を、内服させる。
 緩解期の潰瘍性大腸炎の治療(維持療法)には、サラゾピリン(SASP)なら、全大腸炎型に対しては2〜4g/日を内服させる。また、5-アミノサリチル酸(5-ASA)なら、全大腸炎型に対しては1.5g/日以上を内服させ、遠位大腸炎型や左側大腸炎型に対しては1g/日を毎日(連日)注腸するか、1g/日を2〜3回/週の頻度で注腸する。

 7.サリチル酸血中濃度

 アスピリンは、体内では、肝臓で、サリチル酸になる。
 アスピリンの投与量が適切であるか、サリチル酸の血中濃度で、判断する。治療に有効な血中濃度の範囲は、解熱鎮痛が目的の場合は、10mg/dl、関節リウマチ注7)などの治療には、15〜30mg/dl、リウマチ熱では、25〜40mg/dlとされる。定常状態に到達するには、5〜7日間、要する。血中濃度が15〜30mg/dl(150〜300μg/ml)で、耳鳴り、難聴、頭痛、眩暈(めまい)が見られ、血中濃度が25〜40mg/dlで、中枢性過呼吸、嘔気、嘔吐などが見られるが、投薬中止する程、重篤な副作用ではない。血中濃度50mg/dl以上は、中毒域であり、呼吸性アルカローシスやテタニーを呈し、60mg/dlでは代謝性アシドーシスを来たし、70mg/dlでは体温上昇や昏睡を来たし、80mg/dlでは心血管虚脱を来たし、90m/dlでは腎・呼吸機能不全を来たす。
 炎症時の治療で、最大投与量(massive doses)のアスピリンを使用すると、血中濃度の最高値は2mMに達するが、組織中濃度は、12mMまで達する。

 サリチル酸は、ほとんどが、血清アルブミンと結合している(治療域のサリチル酸濃度では、80〜95%が、血清アルブミンと結合している)。炎症などで、血清アルブミン濃度が低下すると、薬理学的効果と相関がある、遊離サリチル酸濃度が増大してしまう。従って、低アルブミン血症が存在する場合は、サリチル酸の血中濃度は、低く設定する必要がある。

 注1NF-kB(nuclear factor-B)は、NF-kB/IkB complexesから、分離して、発現される。
 COX-2や、PGE2のEP受容体の遺伝子(promotor regions)は、NF-kBに、共通した結合部位を有している。

 注2:サリチル酸は、ミトコンドリアで、PTP(permeability transition pore)という穴構造を開いてしまうので、その結果、プロトンを含めた低分子量の物質が、ミトコンドリア外(細胞質ゾル)から、ミトコンドリア内(マトリックス)に流入して、その為、ミトコンドリアは、膨化(膨張化)してしまい、TCA回路が作動しなくなり、NADH2+の生成が減少し、電子伝達酸化的リン酸化によるATP生成が障害され、また、肝臓では、脂肪酸のβ-酸化が進行せず、中性脂肪が、蓄積すると、考えられる。
 ミトコンドリアには、PTP(permeability transition pore)と呼ばれる穴構造が、内膜と外膜との接触部位(the contact sites)に、存在する。PTPは、複合体Iに関連しているようだ。
 PTPが開いた状態では、低分子量の物質(分子量1500まで)が、ミトコンドリア内(マトリックス)と、細胞質ゾルの間を、自由に通過する。
 PTPが開くと、ミトコンドリア膜の電位(the mitochondrial membrane potential)が、放電(discharge)され、酸化還元電位が変化して、アポトーシスを誘導する(pro-apoptogenic)と、考えられる。しかし、完全にエネルギーが放電されると(a complete deenergization)、細胞は、アポトーシスでなく、壊死(necrosis)に陥る。従って、ミトコンドリアで、プロトンを脱共役する物質(mitochondrial protonophoric uncouplers)は、アポトーシスを誘導しない。しかし、PTPが開くと、PTPの穴を、プロトン(水素イオン)が通過して、膜電位(the mitochondrial transmembrane potential:Delta Psi )が、低下する。
 NSAIDs脱共役作用(uncoupling effec)の、少なくとも一部は、PTPの誘導(induction)の為と、考えられ得る。サリチル酸(salicylic acid)や、アスピリンは、ミトコンドリアに副作用がある。Mg2+や、シクロスポリンA(Cyclosporin A:CysA)は、PTPの阻害剤(inhibitor)であり、ミトコンドリアを、防御する。
 PTPは、porin(voltage-dependent anion channel :VDAC)、adenine nucleotide translocase(adenine nucleotide translocator:ANT)、cyclophilin Dで構成される複合体。cyclophilin D(CpD)は、PTPの、ミトコンドリア内膜側の部分に、存在する。シクロスポリンAは、このcyclophilin Dに結合し、cyclophilin Dを、内膜から除去し、PTPの開口(opening)を阻害することが、示唆されている。
 サリチル酸(salicylates)が、PTPを開口させ、ミトコンドリアの膜電位を喪失させるのには、Ca2+ が、必要のようだ。しかし、他方で、サリチル酸は、(ミトコンドリア内に)蓄積されたCa2+を、(PTPの開口により)放出させる。これらのサリチル酸の効果は、シクロスポリンAで、阻害される。PTP(の穴)を誘導する作用は、サリチル酸の方が、アスピリン(acetylsalicylic acid)より、強い。
 ミトコンドリアが障害され、膨化すると、TCA回路が作動しなくなり、脂肪酸のβ-酸化も、障害されると考えられる。脂肪酸のβ-酸化が減少すると、脂肪組織から放出されている遊離脂肪酸が処理されず、肝臓に、中性脂肪が蓄積する。
 ただし、サリチル酸やアセチルサリチル酸(アスピリン)が、ミトコンドリアの呼吸鎖に脱共役作用を示すのは、submillimolar and low millimolar rangeの濃度で、見られる。
 注3アセトアミノフェン(タイレノール)も、低血糖を来たす。
 これは、アセトアミノフェンの肝毒性(hepatotoxic effect)という説もあるが、サリチル酸(salicylates)同様に、 プロスタグランジン(PGE2)の産生を抑制し、インスリンの分泌を、亢進させるためとも、考えられる。
 従って、解熱鎮痛剤(痛み止め)として用いられている、アセトアミノフェン(タイレノール)も、常用すると、肥満を来たすおそれが、考えられる。


 注4:サリチル酸(3mM)により、グリセロール(グリセリン)からの糖新生は、減少しない。なお、サリチル酸が、解熱鎮痛が目的の場合に、有効な血中濃度は、10mg/dlとされるので、3mMと言うサリチル酸濃度は、実際の臨床治療の血中濃度より、やや高めの濃度と思われる。しかし、炎症時の治療で、最大投与量(massive doses)のアスピリンを使用すると、アスピリンの血中濃度の最高値は2mMに達するが、アスピリン組織中濃度は、12mMまで達するとされる。その際(最大投与量のアスピリンを使用した場合)、サリチル酸の血中濃度の最高値は2mMに達し、サリチル酸の組織中濃度は、4mM以上に達すると言う。従って、アスピリンを使用した際には、組織中のサリチル酸濃度は、3mMより、むしろ高くなることも有り得ると考えられる。
 グリセロールからの糖新生では、ミトコンドリア外で、グリセロールから合成される(ATPが必要)Glycerol-3-Pが、Dihydroxyacetone-Pとなる段階で、NAD+は、NADH2+となる。このことは、グリセロールからの糖新生は、サリチル酸による、ミトコンドリア内のNADH2+減少の影響を受けないことを、説明し得ると考えられる。
 なお、果糖(Fructose)からの、糖新生には、ATPが必要だが、NADH+、NAD+は、必要でない。 

 注5:実験では、3mMのサリチル酸を、30分間投与したが、サリチル酸投与後15分間は、肝ATP濃度は、減少しなかった。しかし、サリチル酸投与15分以降は、肝ATP濃度が、減少していた。従って、サリチル酸は、3mMの低濃度でも、作用時間が長いと、脱共役剤として作用するおそれがある。また、10mMのサリチル酸は、肝ATP濃度を、直ちに、約80%減少させた。

 注6NADH/NAD+は、NADH2+NAD+の濃度比([NADH] / [NAD+] ratio)。
 TCA回路の代謝を調節する重要な因子は、TCA回路の基質のアセチル-CoAとオキサロ酢酸、それと、生成されたNADH2+
 オキサロ酢酸は、リンゴ酸とは、次式の平衡関係にある。
 K=[オキサロ酢酸][NADH]/[リンゴ酸][NAD+
 なお、K=6.2×10-6。従って、[NADH] / [NAD+]=[リンゴ酸]/[オキサロ酢酸]×6.2×10-6
 典型的には、NADH/NAD+比([NADH] / [NAD+] ratio)は、ミトコンドリア内(マトリックス)では0.1、細胞質(cytoplasm)では0.002。
 ミトコンドリア内では、NADH/NAD+比が0.1なので、オキサロ酢酸濃度がかなり低くない限り、ミトコンドリア内では、オキサロ酢酸は、リンゴ酸に還元される。細胞質では、NADH/NAD+比が0.002なので、細胞質では、リンゴ酸は、オキサロ酢酸に酸化される。このように、ミトコンドリア内にオキサロ酢酸が蓄積すると、細胞質に輸送される。
 TCA回路では、リンゴ酸濃度は5mM以上だが、オキサロ酢酸の濃度は0.1mM以下と、低い。

 筋肉では、運動時などは、ATP生成量(ATP消費量)の増加に伴い、ミトコンドリア内のNADH2+が消費されて減少し(NAD+が増加する)、その結果、オキサロ酢酸が増加して(リンゴ酸が、MDHにより、オキサロ酢酸に変換される)、クエン酸シンターゼが促進され、クエン酸の生成速度が高まり、TCA回路の代謝が促進される。また、運動時などには、ミトコンドリア内のNADH2+がすると、細胞質ゾルで、解糖によって生成されたNADH2+(還元等量)が、リンゴ酸-アスパラギン酸シャトルにより、ミトコンドリア内に輸送される。また、運動時などには、脂肪酸がβ-酸化され、NADH2+FADH2が生成される。このようにして、運動時などには、ミトコンドリア内でNADH2+が消費されても、NADH/NAD+比が、低下しないように維持される。

 肝臓では、食事摂取時などATP消費量が多い時には、リンゴ酸-アスパラギン酸シャトルにより、呼吸鎖でのATP生成に必要なNADH2+を、ミトコンドリ外(細胞質ゾル)から、ミトコンドリア内(マトリックス)に、輸送する。
 肝臓では、絶食時など糖新生が行われる際には、リンゴ酸輸送系(リンゴ酸-α-ケトグルタル酸輸送体)により、糖新生に必要なNADH2+を、ミトコンドリ内(マトリックス)から、ミトコンドリア外(細胞質ゾル)に、輸送する。

 サリチル酸により、ミトコンドリア内膜での酸化的リン酸化が、脱共役されると、ミトコンドリア内のNADH2+が減少して、糖新生に必要な細胞質ゾルのNADH2+も減少してしまうものと、考えられる。

 細胞質のNADPH/NADP+比([NADPH] / [NADP+] )は、50〜100と、NADPH2+が多く存在する。

 注7関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)は、自己免疫疾患だが、心臓と小腸の病気だと言う鍼灸の先生がいる。
 関節リウマチは、心臓(血行の悪さ)と、小腸(腸から吸収されるペプチド抗原や脂質)が、発症に関連にしていると思われる。
 関節リウマチの治療には、断食療法(スマシ汁断食)が、有効だと言う:スマシ汁断食では、3合(540ml)の水に、コンブ(昆布)10gと乾燥シイタケ10gを入れて沸騰させ、ダシ(出汁)が出たら、コンブと乾燥シイタケを取り除き、ショー油30gと黒砂糖30g(又は、蜂蜜30g)を入れる。これを1食分とし、昼と夕の2回、飲用する(朝食は、食べない)。この他に、生水と柿茶を、1日1〜2L飲む。
 興味深いことに、断食中、宿便が排泄される前には、関節痛が強くなり、宿便が排泄された後には、関節痛が軽快すると言う(排便と、関節リウマチの痛みとに、関連があるのは、排便時に、消化管からPGE2が産生され、血液中を流れて、関節炎部分に到達し、発痛を増強される為かも知れない)。
 宿便中にも、腸内細菌が存在する。以下に述べるように、腸内細菌が有する抗原に対して、ヘルパーT細胞が活性化・増殖し、免疫応答する(抗体を産生したりする)と、交差免疫で、関節の滑膜に存在する、腸内細菌が有する抗原と相同性のある蛋白やプロテオグリカンなどが、障害され、関節リウマチを発症するとも、考えられる。なお、遺伝的素因(MHCクラスII分子が、HLA-DR41で免疫的に高応答の人)を有する人が、関節リウマチを発症し易い。
 いずれにせよ、関節リウマチは、断食などで、腸内細菌を改善し、血行を良くすることが、大切のようである。

 注8潰瘍性大腸炎は、若年層(20〜34歳)に初発することが多いが、全年齢層に発症が見られる。
 潰瘍性大腸炎は、下血、腹痛、下痢などの症状が現れる。
 潰瘍性大腸炎は、過敏性腸症候群と同様に、ストレスで症状が悪化する。
 潰瘍性大腸炎の症状は、夜中(夜間)から朝にかけて現れることが多いのが特徴(夜中はステロイドホルモンの分泌量が低下する)。過敏性腸症候群の症状は、日中の活動時間に現れることが多い。

 潰瘍性大腸炎やクローン病は、牛乳や乳製品の摂取を禁止し、自然の穀物(精製度が少ない穀物)、野菜、果物を摂取させると、改善したり、治癒すると言う。
カラギーナン)。
 カラゲニン(カラギーナン)は、海藻(紅藻)から抽出された天然の食品添加物だが、潰瘍性大腸炎の発症への関与が疑われている。カラゲニン(カラギーナン)は、腸管粘膜の免疫細胞(マクロファージ)に貪食され、酵素(リゾソーム)を放出させ、腸管組織に炎症や障害を引き起こすと言う。カラゲニン(カラギーナン)は、ゼリー、プリン、乳製品、アイスクリーム、ヨーグルト、水産ねり製品、プロセスチーズなどに含まれている。

 参考文献
 ・須藤茂行.ライ症候群の病態解明に関する研究 −第1編 ラット灌流肝のエネルギー代謝に対するサリチル酸の影響.日児誌 1998; 102:1057-1065.
 ・Adam Szewczyk and Lech Wojtczak: Mitochondria as a Pharmacological Target. PHARMACOLOGICAL REVIEWS. Vol. 54, Issue 1, 101-127, March 2002.
 ・Egil Fosslien: Mitochondrial Medichine - Molecular Pathology of Defective Oxidative Phosphorylation. Annals of Clinical & Laboratory Science 31:25-67 (2001).
 ・Bernardi P (1992) Modulation of the mitochondrial cyclosporin A-sensitive permeability transition pore by the proton electrochemical gradient. Evidence that the pore can be opened by membrane depolarization. J Biol Chem  267: 8834-8839.
 ・Trost LC, Lemasters JJ.: Role of the mitochondrial permeability transition in salicylate toxicity to cultured rat hepatocytes: implications for the pathogenesis of Reye's syndrome. Toxicol Appl Pharmacol. 1997 Dec;147(2):431-41.
 ・リウマチ入門 第10版[日本語版] 日本リウマチ学会編集(萬有製薬株式会社発行、1996年).
 ・大岡真彦:リウマチという語の使われ方の変遷 日本醫事新報 No.4199(2004年10月16日)、98-99頁.
 ・甲田光雄:小食が健康の原点 たま出版 1998年.
 ・今井正、他:標準薬理学 第6版 (医学書院、2001年).
 ・辻川知之:クローン病の薬物療法、大塚薬報、2006年10月号(No.619)、47-52頁.
 ・日比紀文、上野文昭:エビデンスとコンセンサスを統合した潰瘍性大腸炎の診療ガイドライン、難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班プロジェクト研究グループ、2006年1月初版.
 ・藤井義晴:リュウノヒゲ・ヒガンバナ・コンフリー 身近な草の抑草のしくみ、現代農業、農山漁村文化協会、2007(平成19)年5月号、182-183頁.
 ・江本哲朗:潰瘍性大腸炎を拾い上げる 患者急増、診断のコツはトイレの時間、Nikke Medical 2007.11、36-37頁.

 |トップページ脂質と血栓の関係ミニ医学知識生化学の知識医学の話題小児科疾患生命の不思議リンク集

SEO [PR] カードローン比較  空気洗浄 冷え対策 動画 無料レンタルサーバー SEO