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 経口補水塩(ORS)

 【ポイント】
 脱水の予防には、水分、糖分(ブドウ糖)、塩分(Na)の補給が必要。
 小腸では、Na(ナトリウム)は、Na-糖共輸送担体(SGLT1)により、ブドウ糖(グルコース)などと共に、細胞内に吸収される(Na+とブドウ糖の共輸送)。Naの吸収と共に、水も吸収される。従って、胃腸炎などの脱水の際に、水分を腸から吸収する為には、飲ませる液には、Na(ナトリウム)と、ブドウ糖(グルコース)が入っていた方が、効率が良い。従って、日本で伝統的に用いて来たように、胃腸炎の際には、重湯に少量の塩分(食塩)を混ぜて、飲ませる方法は、脱水の治療や予防に良い。味噌汁の上澄みNa濃度が約138mEq/Lも、Naと水分補給に良い。
 正常な血液浸透圧は、280mOsm/kgだが、下痢の際には、血液よりやや低い浸透圧(200〜250mOsm/kg)の飲み物の方が、胃腸からの吸収が良い。
 ORSは、下痢や嘔吐による軽度から中等度の脱水に際しては、発症4時間以内に50〜100ml/kgを飲ませ、発症4時間以降は下痢や嘔吐の都度に、体重10kg未満の児には60〜120ml/1回、体重10kg以上の児には120〜240ml/1回を飲ませる。ORSは、乳児は30〜50ml/kg/日、幼児は300〜600ml/日、学童〜成人は500〜1,000ml/日を目安に飲ませる(脱水状態に合わせて適宜増減する)。
 

 急性胃腸炎で下痢や嘔吐が起こると、水分や電解質(Na、K、Clなど)が失われ、脱水に陥る。
 外来での小児の脱水患者の治療には、水分や電解質(Naなど)を含む経口補水液(ORS)が用いられる。
 ORSには、水分、塩分(Naなど)、糖(ショ糖など)が含まれている。小腸では、水は、Naの能動輸送に伴ない輸送される。下痢に際しても、Naはブドウ糖(グルコース)と一緒に吸収されるので、ORSに糖(ショ糖など)が含まれていると、Naの吸収が効率良く行われる。ブドウ糖:Na比が、1:1の溶液は、吸収が良い。
 飲用(経口摂取)した水分は、大部分が小腸で吸収され、残りが大腸で吸収される。飲料の浸透圧は、等張液(体液と同じ285mOsm/Lの浸透圧)より、低張液(200〜250mOsm/kg)の方が、小腸からの吸収が良く、下痢の改善が早い。下痢に際して、高浸透圧の飲料を飲むと、下痢を悪化させるおそれがある(浸透圧性下痢)。

 1.ORS
 小児は、急性胃腸炎を起こすと、脱水に陥り易い。
 特に、2歳未満の乳幼児は、尿細管の濃縮力が未熟で、腎臓で尿を濃縮しにくいため、脱水に陥り易い。

 脱水の予防・治療のためには、Naなどの電解質を含む液を、補給することが大切。

 WHO(世界保健機関)の経口補水療法(Oral Rehydration Therapy:ORT)は、点滴を行えない開発国で、コレラなどの下痢による脱水症の改善のために開発された。
 最近は、先進国でも、小児の急性胃腸炎に、経口による補液が推奨されている。

 経口補水療法に用いられる、経口補水塩(Oral Rehydration Salt:ORS)の研究から、Naや水を効率良く消化管から吸収させるためには、血液よりも浸透圧が低い液の方が、望ましいことが判明した:正常な血液浸透圧は、280mOsm/kgだが、血液よりやや低い浸透圧(200〜250mOsm/kg)の飲み物の方が、胃腸からの吸収が良い。
 経口補水液(Oral Rehydration Solution)を、ORSと呼ぶ場合もある。

 小腸では、Na-糖共輸送担体(SGLT1:sodium-dependent glucose transporter 1)により、Naは、ブドウ糖(グルコース)と共に、細胞内に吸収される(Na+とブドウ糖の共輸送)。Naの腸からの吸収と共に、水も腸から吸収される。従って、経口補水塩には、ブドウ糖が含まれていた方が、Naと水の吸収が良くなる:ブドウ糖とNaは、1対1の比率が、もっとも吸収されやすい。
 小腸管腔の刷子縁側から小腸細胞内に輸送(吸収)されたブドウ糖は、毛細血管側(基底膜側)に存在するGLUT2(2型ブドウ糖輸送担体)によって、血中に輸送される。

 胃腸炎など際に、脱水の治療や予防として、水分を補給する為には、飲ませる液には、Na(ナトリウム)と、ブドウ糖(グルコース)が入っていた方が、効率良く、水分を腸から吸収させることが出来る。ブドウ糖(グルコース)以外に、ショ糖(スクロース=グルコース+フルクトース)を入れても、水分の吸収が良い。ただし、下痢に際して、二糖類分解酵素活性が低下しているおそれがある。
 重湯(rice powder〜rice water)も、水分の吸収が良い。rice powderは、糖質としてのglucose polymerや、グリシンを多く含む蛋白質を、含んでいる。ブドウ糖(グルコース)は、浸透圧作用がある(1.8g/dlのグルコースは、浸透圧を100mOsm/kg上昇させる)が、glucose polymerは、腸管内で時間をかけて、ブドウ糖(グルコース)に加水分解されるので、腸内の浸透圧が、急激に上昇せず、下痢を悪化させない。rice powderは、コレラによる急性下痢症に、使用され、著しい効果があったと言う。

 従って、日本で伝統的に用いて来たように、胃腸炎の際には、重湯に少量の塩分(食塩)を混ぜて、飲ませる方法は、脱水の治療や予防に良い。
 御粥と、味噌汁(人参の上澄み入り) も、小腸の機能を高めるグルタミン酸を含んでいて、急性胃腸炎の幼若小児に食べさせる食品として、好ましい。味噌汁は、普通に、カップ3杯の出汁に、大さじ1/4杯(約40g)の味噌を入れて作り、その上澄み(Na濃度が約138mEq/L:NaCl濃度が0.8%)を飲ませて、さらに、白湯や御茶などの塩分を含まない飲料を飲ませるのが、容易で、良いと思われる。なお、生理食塩水は、NaClを0.9%(154mEq/L)含んでいる。血清は、Naを140mEq/L(3.22g/L)程度、Clを140mEq/L(3.550g/L)程度、計約0.7%程度含んでいる。
 表1 ORSやスポーツドリンク等の成分の比較
 種類   Na
 (mEq/L)
  K
 (mEq/L)
  Cl
 (mEq/L)
 炭水化物
 (g/dl)
 市販ORS(注1  50  20  50  2.5
 スポーツドリンク(注2  9〜23  3〜5  5〜18  6〜10
 アミノ酸含有飲料(注3  21  5  16  4
 乳児用イオン飲料  25〜32  20  20〜30  4〜6
 ソリタ-T顆粒2号(注4  60  20  50  2.2
 ソリタ-T顆粒3号注4  35  20  30  3.42
 アクアサーナORS  32  20  25  4.0
 アクアライトORS  35  20  30  4.0
 アクアバランス  25  20  20  4.0
 WHO-ORS(1975:注5  90  20  80  2.0
 WHO-ORS(2002:注5  75  20  65  1.35
 AAP推奨処方(注6  40〜60  20  40〜60  2.0〜2.5
 ESPGHAN注7  60  20  60  1.6
 天然果汁  〜2  12〜46  〜1  9〜14
 野菜スープ  37〜55  7〜31  57  
 ミルク(和光堂レーベンス)   7.8  15.4   5.4  7.2
 母乳   5.5   7.3  12.5  7.5

 2.嘔吐と下痢による電解質の喪失
 嘔吐によって、胃液に含まれる、水分(体液)、電解質(Na+、K+、Cl-、及び、H+)が喪失する。
 胃液は、Na+よりCl-の方が、濃度が高い:胃液中には、Na+が60mEq/L、Cl-が85mEq/L、K+が10mEq/L、H+が85mEq/L、含まれている。

 下痢によって、水分(体液)、電解質(Na+、Cl-、及び、HCO3-)が喪失する(注8)。
 コレラによる下痢症では、便中のNaは、70〜90mEq/Lだが、軽症から中等症のウイルス性下痢症(ロタウイルス胃腸炎など)では、便中のNa濃度は、20〜60mEq/L。
 コレラによる下痢では、便中へのNa喪失が多いので、便中のNa濃度は、他の胃腸炎を起こす病原体による下痢の場合より高い(便中のNa濃度は、133mEq/L程度とする報告もある)。コレラでは、便中のK濃度は、他の胃腸炎を起こす病原体による下痢の場合より低いが、下痢便の量が多いので、便中へのK喪失は少なくはない。
 表2 下痢中の電解質平均濃度(参考文献の有阪氏の表2を改変し引用)
 病原体  Na  K  Cl
 胃腸炎   48   56   21
 日本住血吸虫   64   47   21
 アメーバ赤痢   53   28   33
 乳児下痢症   65   45   51
 エルトール・コレラ(成人)  133   17  103
 エルトール・コレラ(小児)  122   28  101

 下痢(水様便)による水分の喪失量(排泄量)は、軽症の場合20ml/kg/日、中等度の場合40ml/kg/日、重症の場合60ml/kg/日と言われる。

 3.その他
 ・急性胃腸炎の幼若小児に食べさせる食品としては、複合糖質(ライス、小麦粉、イモ、パン、シリアル)、ヨーグルト、野菜などが適切。
 御粥と、味噌汁(人参の上澄み入り) も、小腸の機能を高めるグルタミン酸を含んでいて、急性胃腸炎の幼若小児に食べさせる食品として、好ましい。味噌汁は、普通に、カップ3杯(600ml)の出汁に、大さじ1/4杯(約40g)の味噌を入れて作り、その上澄み(Na濃度が約138mEq/L)を飲ませて、さらに、白湯や御茶などの塩分を含まない飲料を飲ませるのが、容易で、良いと思われる。味噌には、炭水化物が、21.9g/100g程度含まれているので、味噌汁中には、少なくとも、約14.8g/Lの濃度で含まれている。この味噌汁中の炭水化物(糖質の80%以上がグルコース)は、腸で加水分解され、グルコースが生成され、Naと水の吸収を促進させると、考えられる。
 味噌汁は、普通に、カップ3杯(600ml)の出汁に大さじ1/4杯(約40g)の味噌を入れて作り、その上澄み(Na濃度が約138mEq/L)を飲ませて、さらに、3倍量の白湯や御茶などの塩分を含まない飲料を飲ませると、約35mEq/Lの経口補水液を飲んだことになる

 ・乳幼児が、急性胃腸炎の後、2週間、水様下痢が続き、元気で、体重減少がひどくないような場合、乳糖不耐症が、考えられる。
 治療は、ラクトレスと、乳糖がない和食離乳食(御飯、煮物、味噌汁汁など)を与えるのが良い:便性が良くなっても、和食離乳食を続けたまま、ラクトレスを、もう1缶くらい続けて飲ませ、普通のミルクに、ゆっくり戻す。

 ・下痢の回数が減って来ても、便が固まらない時には、ニンジンペーストを食べさせると改善することがある。
 ニンジンペーストの作り方は、人参を輪切り(皮付きのまま)にして、30分茹でて、その後、ミキサーにかけて(無ければビニール袋に入れて潰す)、ペーストにして、適当に味付け(塩や砂糖)をする。
 ニンジンペーストは、1日2回程度、小さじ8〜10杯程度、食べさせると、便が固まって来る(レトルトでも代用可)。

 ・急性胃腸炎で、飲ませる飲料として、人参スープ(ニンジンスープ:Moro)も、用いられて来た。
 人参スープは、500gの人参を、皮を剥いて、細かく切り、1Lの水に浸し、食塩3gを加えて、人参が指先で潰れるぐらい柔らかくなるまで(2時間程)煮込んだ後、人参を裏ごしして繊維を除き、減った水分を補って、総量を1Lにする
 人参スープを与えると、緑黄色で、水様散乱していた下痢便が、24〜72時間内に、やや赤味を帯びて黄色で、容積が多い有形便に、改善すると言う。
 人参スープには、パンテチン近縁物質、ペクチン、リグニン、電解質(K)が含まれていて、下痢の際に、便性を改善するのに有効と言われる。
 Mproの原法では、人参スープに、牛肉のスープを加えることになっている。
 人参スープは、100g=20カロリー。

 ・欧米では、アミノ酸(グルタミン、アラニン、グリシン)、オリゴ糖(注9)、可溶性の線維成分、核酸などを入れたORSも、臨床で使用されていると言う。
 小腸の絨毛突起(じゅう毛突起)には、栄養を吸収する際に、腸内の細菌が、体の中(血液中)に入り込まないように、生体中の免疫細胞の約半分が、集合している。点滴を長期間行い、経口摂取さないで絶食させると、絨毛の高さが短くなり、全身の免疫力も低下してしまう。経口摂取で投与されたグルタミンは、小腸上皮細胞や腸管付属リンパ節細胞に、エネルギーを供給して、急性胃腸炎からの回復を、促進すると考えられる(注10)。
 なお、グルタミンとアラニンを経口投与すると、アルコールの代謝(分解)が促進されるという。
 小腸の絨毛が長い人は、腸からの栄養素の吸収量が多く、肥満になり易いと言う。
 肥満マウスは、小腸の絨毛の本数は、対照マウスと同じだが、絨毛が長く、表面積が3割程広いと言う。
  大豆製品(豆腐、納豆、おからなど)に含まれる大豆サポニンは、肥満マウスに摂取させると、長くなっていた絨毛を、正常な長さに縮小させると言う。
 おからは、食物繊維や、レシチン(脂肪分解作用がある)も多く含んでいて、絨毛を正常な長さに縮小させたり、脂肪分解を促進させ、肥満を改善すると言う。 

 ・BT(Bacterial Translocation)と言って、腸内細菌などが、腸管壁から、腸間膜リンパ節や門脈などに、侵入することがある。
 3日間以上の絶食は、BTを生じることもあるので、BTの予防のためには、早期に、食事を再開し、腸管を動かした方が良いとする意見もある。
 なお、小腸で吸収されなかった食物線維は、大腸で腸内細菌叢によって、種々の有機酸(酪酸、酢酸、プロピオン酸)が、生成される。これらの有機酸は、大腸粘膜から吸収され、大腸粘膜の熱源として利用される。腸内細菌叢によって生成される乳酸は、門脈を経て肝臓に運ばれて、熱源として利用される。

 ・従来は、下痢症では、消化・吸収機能が低下していて、食べさせても、嘔吐、腹痛などを来たすことがあるので、食事量を減らすか、一時、食事を中止させ、絶食時間を置く(飢餓にする)方が良いとされて来た。
 2000年に発表されたESPGHAN(European society of Pediatric Gastroenterology, Hepatology and Nutrition)の「急性胃腸炎のよい治療の9つの柱」によると、「急性胃腸炎では、食事の再開を早く行い、固形食を含む正常食とする」と書かれてある。これは、「絶食期間が短期でも、腸管粘膜を萎縮させ、回復が遅れる」と言う知見が背景にあって、出された勧告と思われる。しかし、この勧告は、軽症なウイルス性胃腸炎には、妥当と思われるが、下痢の回数が多い場合は、ORSなどの水分摂取のみにして、絶食させるのが妥当ではないかと思われる。

 ・CDC(米国疾病予防管理センター)の勧告(MMWR 52, No. RR-16, 2003)でも、小児急性胃腸炎(軽症)の治療には、ORSを用いること、食事を早期に再開すること、治療乳や希釈乳は不要であることなとが、推奨されている。
 希釈乳(1/2または1/4濃度)の摂取は、無作為比較試験の結果では、症状の長期化や、栄養状態の回復遅延の原因となると言われる。
 ミルクは、通常のミルクを引き続き与えることが推奨されている。乳糖を含まないミルクに変更する必要はない。脂肪は、腸管の運動を抑制する有益な作用を有するので、高脂肪食品の摂取を避ける必要はない(体験的には、特に、1歳以上の幼児下痢症患児では、乳製品や高脂肪食品を食べさせず、御粥など炭水化物を中心とする食事を与えた方が、回復が良いように思われる)。

 ・ORSは、軽度の脱水には、4時間以内に30〜40ml/kgを飲ませる。また、ORSは、中等度の脱水には、100ml/kgを飲ませる。

 ・母乳には、腸の粘膜を修理する作用があるので、母乳栄養児では、母乳を続ける(注11)。
 牛乳は、母乳より蛋白質濃度が、3倍程、濃いが、調整粉乳(ミルク)は、蛋白質濃度が、母乳程度に低い。
 下痢の際に、調整粉乳(ミルク)は、標準濃度(13%)より薄めて使用する必要はない。ただし、重症例では、一時的に、2〜3割程度、薄めて(希釈して)使用した方が、経過が良いこともある。

 ・コレラによる下痢症では、便中のNaは、70〜90mEq/Lだが、軽症から中等症のウイルス性下痢症(ロタウイルス胃腸炎など)では、便中のNa濃度は、20〜60mEq/L。

 ・Naの大部分(80%)は、主に、回腸〜大腸で、吸収される。
 小腸の刷子縁膜では、Naは、Na-糖共輸送担体SGLT1)により、ブドウ糖グルコース)などと共に、細胞内に吸収される(Na+とブドウ糖の共輸送)。Na(と水)の吸収は、ブドウ糖により増強し、同様に、ブドウ糖の吸収は、Na(と水)により増強される。
 また、小腸の回腸から、近位大腸(結腸)の腸管側ではNa+は、Na+/H+交換輸送体により、細胞内に吸収され、交換に、H+が腸管側に輸送され、また、Cl-が、Cl-/HCO3-交換輸送体により、細胞内に吸収され、交換に、HCO3-が腸管側に輸送される(Na+Cl-の共輸送)。
 コレラ毒素は、Na+Cl-の共輸送を阻害するが、Na+とブドウ糖の共輸送(SGLT1)は、阻害しないので、電解質にブドウ糖を加えたORSが、コレラの治療に用いられる。

 ・ブドウ糖濃度が、2〜2.5%だと、Naと水が、最大の高率で、吸収される。
 ブドウ糖2%は、111mmol/Lの濃度。
 1%のブドウ糖液(グルコース液)は、浸透圧が約55mOam/L。ORS等が、高濃度のグルコースを含んでいると、含まれる他の電解質の浸透圧も加わり、浸透圧下痢を来たすおそれがある。

 ・腸の粘膜上皮の基底膜側(basolateral membrane)では、Na+/K+-ATPase(Na pump)により、Na+が汲み出され、細胞内Na+が減少し、腸管内のNa+が細胞内に輸送される(取り込まれる)。
 Na+/K+-ATPaseの高率は、遠位の腸管の方が、高率が高い:Na+は、小腸では、Na+濃度が130mEq/L以上でないと吸収されないが、大腸では、Na+濃度が30mEq/Lでも吸収される。
 小腸では、Na+/K+-ATPase(Na pump)により吸収されるNa+は、小腸全体で吸収されるNa+の20%を占めるに過ぎない(SGLT1などにより吸収されるNa+の方が多い)。

 ・水の80%は、主に、空腸〜回腸で、吸収される。

 ・高張性脱水では、興奮して、見掛け上、元気に見えることがあるが、涙が出なかったり、口腔内が乾燥していることで、脱水があることを、知ることが出来る。 

 ・飲ませるORSは、15〜22度が良い。
 頻回に嘔吐していても、ORSを、1回に5〜10cc、2分毎に与えると、良いと言う。

 ・りんごは、食物線維のペクチンを含んでいる。
 リンゴは、
下痢の時にも、便秘の時にも、与えて良い。
 リンゴ(林檎)は、リンゴ酸を、多く含んでいる。リンゴ酸は、ブドウ糖(グルコース)の代謝で生成されるオキサロ酢酸と同様、TCA回路の代謝を促進し、脂肪の分解(β-酸化)を、促進すると考えられる。

 ・急性胃腸炎では、糖質を多量に与えると、発酵する。
 また、急性胃腸炎では、油脂類(脂質)は、少な目に与える。

 ・1日に胃腸管を通過する水分量は、飲食物から2.0L、唾液が1.5L、胃液が2.5L、膵液が0.7L、胆汁が0.5L、腸液が3.0L分泌され、腸管で10L再吸収され、残り0.2Lが、大便に排泄される。

 ・小腸の管腔内は、pH=5.8-6.8と、酸性環境で、Na=140mEq(mM)。なお、血管内は、pH=7.4、Na=140mEq(mM)、小腸上皮細胞内は、pH=7.2、Na=10-20mEq。
 
 ・1日、絶食させると、小腸のペプチド輸送体(PEPT1)の発現量が、増加する:特に、食事を与えた場合(Fed)、上部小腸のPEPT1の発現量が、少ないが、絶食させると、上部小腸のPEPT1の発現量が、増加する。なお、PEPT1は、βラクタム抗生物質や、ACE阻害剤の吸収に用いられる。PEPT1は、cis体のみを、吸収する。

 ・下痢は、ウイルスが原因の性胃腸炎では、一般に、わずかに酸臭がする水様便か、生臭い臭いのする水様便で、回数が多い。
 下痢は、細菌が原因の性胃腸炎では、一般に、腐敗臭のする泥状便で、粘液や血液が混入し、腹痛や頻回の便意など、腸管の炎症症状を伴なう。

 ・嘔吐や下痢に伴ない脱水が起こる。
 重症脱水症(重症下痢症)では、水分不足による循環障害や、電解質の乱れ(低Na血症など)による中枢神経障害により、中毒症状が現れる。
 脱水による中毒症状としては、皮膚の脱水徴候(ツルゴール低下、眼の落ち込みなど)、意識がうとうとしている、ぐったりしている、痙攣、不機嫌、手足が冷たい、チアノーゼなどが現れる。
 これらの中毒症状が見られる場合には、医療機関での診療が必要。

 ・飲んだ水分は、主に、小腸で吸収される。ヒトでは、一部水分やNa(ナトリウム)は、大腸でも吸収される。
 
 ・ORSは、浸透圧が200〜270mOsm/Lである方が、水分吸収効率が良い。
 Na濃度が薄い(Naを殆ど含まない)水道水や清涼飲料水は、水分吸収率が悪い。
 ヒトの血液Na濃度(約140mOsm/L)より濃い生理食塩水も、水分吸収率が悪い。
 小腸での水分吸収には、Naと共輸送されるブドウ糖(グルコース)も含まれている方が、水分吸収率が良い。WHOは、1.35%のORSの糖分濃度を推奨しているが、2〜4%の糖分濃度が、水分吸収率には、適切と考えられている。
 ORSに加え、亜鉛(Zn)を補充すると、下痢の回復が良い言う報告がある(バングラディシュ)。
 
 ・ORSは、下痢に際しては、30〜50ml/kg程度、飲用させる。
 ORSは、下痢1回につき、体重10kg未満の小児は100ml、体重10kg以上の小児は150mlを目安に、補給する。
 水様便1回につき、10ml/kgの水分(ORS)を補給し、嘔吐1回につき、2ml/kgの水分を補給する。

 ・成人の腸管内では、1日当り、約10Lの水分が入って、(再)吸収される。
 腸管内に入る水分は、飲食によって摂取される水分が2L、消化管から分泌される水分(唾液、胃液、膵液、胆汁、腸液など)が約8Lと言われる。
 表3 消化液の量と電解質濃度(参考文献の宮田剛氏の表2を引用)
 消化管  分泌/排泄量
 (L/日)
 電解質濃度(mEq/L)  pH
 Na+  K+  Cl  HCO3
 唾液  1.0  20〜80  10〜20  20〜40  20〜60  7.0〜8.0
 胃液  1.0〜2.0  20〜100  5〜10  120〜160  −  1.0〜7.0
 胆汁  1.0  150〜250  5〜10  40〜80  20〜40  7.0〜8.0 
 膵液  1.0〜2.0  120  5〜10  10〜60  80〜120  7.0〜8.0 
 小腸液  1.0〜2.0  80〜150  2〜8  60〜125  20〜40  7.0〜8.0
 正常便  0.1〜0.2  30  75  15  20  6.0〜7.5
 下痢便  0.5〜17  20〜160  10〜40  30〜120  30〜50  

 ・水分の80%は小腸で吸収され、Na(ナトリウム)の大部分は大腸で吸収される。
 Naとブドウ糖とが共輸送される:小腸の小腸管腔側(小腸刷子縁膜側)では、Naは、Na-糖共輸送担体(SGLT1)により、グルコース(ブドウ糖)と共に細胞内へ吸収される。その為、ORSには、Naとブドウ糖の分子数が1対1の比率に含まれている方が、Naや水の吸収率が良くなる。
 Na+とCl-とが共輸送される:回腸から結腸(大腸)では、Naは、Na+/H+交換輸送体により細胞内に吸収され(交換にH+が腸管側に輸送される)、また、Cl-Cl-/HCO3-交換輸送体により細胞内に吸収される(交換にHCO3-が腸管側に輸送される)。

 ・点滴(経静脈輸液)により水分を補給する際には、心不全、腎不全、浮腫など来たす恐れ(医原性リスク)がある。
 経口補水療法(ORT)により腸管から水分を補給する際には、飲ませた水分(ORS)が多すぎても、吸収され過ぎる恐れはまずないと言われる。
 10ml/kg/時も下痢で水分等を喪失する場合(体重10kgの幼児だと6時間で600mlを喪失する)には、ORSなどによる経口補水療法(ORT)の改善効果は期待出来ないないので、点滴(経静脈輸液)で加療する。

 ・脱水の重症度の判定には、毛細血管再充満時間(capillary refilling time:親指の爪を爪床が蒼白になる程度に圧迫し、圧迫を解除した際に、爪床がピンク色に戻るまでの時間を測定する)を測定すると良い。
 毛細血管再充満時間が、1.5秒以内であれば軽症脱水(体重の3%未満の脱水)、1.5〜3秒であれば中等度脱水(体重の3〜9%の脱水:50〜100ml/kgのwater deficit)、3秒以上であれば重症脱水(乳幼児の場合)と推測される。
 乳幼児が脱水に陥り易いのは、腎臓の尿濃縮力が低く、老廃物に排泄に、多量の尿を必要とするためと言われる。

 ・MMWR(Morbidity and Mortality Weekly Report)に掲載された米国小児科学会の推奨案(2003年)では、小児の下痢(急性胃腸炎)の治療に際して、「食事は止めず」、「ミルクは薄めずに与える」ことになっている。
 しかし、下痢に際しては、水分補給(グルタミン酸を含む味噌汁の上澄みなど)や、消化の良い炭水化物(重湯、御粥など)を与えた方が、腸や、肝臓や、腎臓への負担が少ないと思われる。

 ・ラットを用いた実験結果(各種溶液を0.5ml/minで灌流)では、小腸(十二指腸〜回腸の間)での水分吸収効率は、スポーツドリンク(Na21mEq/L、浸透圧2970mOsm/L)は50μL/min、生理食塩水(Na154mEq/L、浸透圧310mOsm/L)は100μL/min、アクアライトORS(Na35mEq/L、浸透圧200mOsm/L)は250μL/minであった。
 Na(ナトリウム)は、生理食塩水(生食)が最も(小腸での)吸収効率が高い。
 K(カリウム)は、20mEq/L程度の濃度の方が、0〜5mEq/Lの濃度よりも、吸収効率が高い。
 なお、水分、Na、Kは、小腸のみならず、大腸でも吸収される。

 ・ORSは、症状(嘔吐や下痢)が現われてから3〜4時間以内に、少量(50〜100ml)を与え始める。
 ORSは、総量で50〜100ml/kg(中等度脱水のwater deficit)を与える。

 ・ORSは、軽度〜中等度の脱水の際には、発症3〜4時間以内に50〜100ml/kgを飲ませ、発症4時間以降は下痢や嘔吐の都度に、体重10kg未満の児は60〜120mlを、体重10kg以上の児は120〜240ml飲ませる。
 表4 ORSを飲ませる目安
 脱水の程度  発症3〜4時間以内  発症4時間以降
 補水療法  喪失水分の補充
 脱水なし  行わない  ORSを下痢や嘔吐の都度、
体重10kg未満の児には60〜120ml、
体重10kg以上の児には120〜140mlを飲ませる
 軽度〜
 中等度脱水
 ORSを60〜120ml/kg飲ませる
 重度脱水  乳酸リンゲル液などを20ml/kg点滴静注  上記と同様。ORSを飲用出来ない場合は、経鼻胃チューブから注入するか、20mEq/Lの塩化カリウムを含む5%ブドウ糖・1/4生食を点滴

 ・通常、便からの水分喪失量は5ml/kg/日だが、激しい下痢に際しては200ml/kg/日の水分を喪失してしまう(体重10kgの幼児では下痢によって2L=2kgの水分を体外に喪失してしまう)。

 ・オリゴ糖は、新生児の大腸に、乳酸菌やビフィズス菌などの腸内細菌を増加させる。
 オリゴ糖の摂取量が多いと、急性下痢症に罹り難くなる。

 ・水や電解質(Na)は、正常な腸粘膜では、絨毛では吸収され、陰窩では分泌されている。
 ロタウイルス胃腸炎などでは、絨毛がウイルス感染により障害を受け、絨毛の機能が低下し、陰窩の作用が優位になり、下痢になる。ウイルスが産生するenterotoxinが、陰窩に作用し、腸管内への水や電解質(Cl)の分泌が亢進する。ロタウイルス胃腸炎などでは、腸管上皮細胞において、ナトリウム(Na)やブドウ糖(グルコース)は、吸収される。
 BART食(バナナ、すりおろしリンゴ、米、トースト)は、経口補水塩と同様に、下痢の回復期から摂食させることが可能。しかし、3歳未満の小児(腸管の免疫寛容が未熟)は、胃腸炎による腸管粘膜の障害が回復するまでの3日間は、アレルギーの原因となる食品や、高脂肪食は、控える。

 ・経口補水塩(ORS)には、ブドウ糖が添加される。
 ブドウ糖の代わりに蔗糖(ショ糖)を用いると、浸透圧が血清より低く調整され、甘味が増加する。
 ブドウ糖と蔗糖の浸透圧が同じ経口補水塩(ORS)を比較した動物実験の結果では、蔗糖を用いた経口補水塩(ORS)の方が、腸管からの電解質(Na、K、Cl)の吸収が良い。

 4.おまけ
 ・ORSは、Na濃度、浸透圧、pHなどを考慮した組成が望まれる。
 自宅で、簡便にORSを作製するとしたら、水1Lに、食塩2gと砂糖20〜40gとを加えると、Na濃度が、34mEq/LのORS(ソリタ-T顆粒3号と同等のNa濃度)が、作製出来る(重症の脱水の治療には、適切でないが、日本で多いウイルス性胃腸炎の脱水の維持療法には、十分なNa濃度を有する)。
 自宅で、簡便にORSを作製するとしたら、水1Lに、食塩3.5gと、炭酸水素ナトリウム2.5g(クエン酸ナトリウム2.9g)、塩化カリウム1.5g、ブドウ糖20gを加える。あるいは、水1Lに、食塩を小さじ1杯、砂糖を小さじ8杯を加える。
 表5 計量スプーンの重量と食塩含量(g)
 種類   小さじ(5cc)  大さじ(15cc)
 重量  食塩含量  重量  食塩含量
 淡色辛みそ  6  0.7  18   2.2
 しょうゆ  6  0.9  18   2.7
 食塩  5  5  15  15
 ・植物では、樹液pHは、体内のカリウム値(K値)と比例する。
 ピーマンは、健康な時には、樹液のpHは、5.6〜5.7。ピーマンは、結実によりカリウム(K)が消費され減少すると、樹液のpHが低下する。ピーマンは、樹液のpHが、5.5〜5.4に低下すると、ウドンコ病が多発する。ピーマンは、栄養生長しながら、生殖生長する。
 植物は、毛細根の先端からしか、カリウム(K)やリン酸を吸収出来ない。植物は、窒素は、根のどの部分からも吸収出来る(窒素が入って来る)。
 植物は、根(毛細根)が障害されると、土中のカリウム(K)やリン酸を吸収出来なくなり、カリウム(K)不足になり、樹液のpHが低下する。
 植物の樹液のpHは、生殖生長の際には、高く、栄養生長の際には、低い。樹液のpHは、果実が肥大しきってから登熟するスイカでは、pH6.5程度まで上昇するが、肥大しながら着色するサクランボは、pH5.5程度までしか上昇しない。
 スイカやメロンは、カリウム(K)を肥料として与えると、樹液のpHが上昇し、「秋が来た」と錯覚し、生殖生長が促進させ、実が熟する(果実糖度が高まる)。イオン強化カルシウムも、樹液のpHが上昇し、収穫最終期の果実糖度が高まるが、トマトやピーマンのように、継続的に収穫する作物には、向かない。
 カリウム(K)には、果実を肥大させ糖度を高めたり、水や養分の運搬を促進させたり(木部組織の浸透圧が高まり、水の吸収が促進させられる)、気孔の開閉をスムーズにしたり、細胞壁を厚くし病気に強くする(セルロースやリグニンなど細胞壁物質の合成を促進させる)と言う。
 ただし、カリウム(K)を、畑に過剰に施すと、土地のpHが高くなり、作物の根が傷み、却って、カリウム(K)の吸収が悪くなる。土地のカリウム(K)が過剰だと、作物の根が傷み、土地中のカリウム(K)を吸収出来なくなり、土地にカリウム(K)が蓄積する(作物の根が傷んだ為に、カリウム欠乏症状が現れた場合、カリウムを施肥すると、土地のカリウムが過剰になり、却って、作物の根を傷めてしまうおそれがある)。
 苗は、水を控えて育てた方が、細い根が発達する:作物の苗を育てる際(育苗)には、低温で、肥料も水も控えて、じっくり細根を発達させると、カリウム(K)の吸収が良い苗に育と言う。
 同様に、人間の場合も、腹八分に食べて育てた方が、腸の吸収が良くなるようだ。

 植物の場合、樹液のpHが低い酸性体質では、樹液中に硝酸態窒素が多く、また、樹液のpHが高いアルカリ体質では、樹液中のカリウム(K)が多い。
 樹液のpHは、根傷みしたり、病気が出始めると、5.4以下に低下する。
 樹液のpHは、篩管(養分に地上部に輸送する)中の樹液では、7.8〜8.0と高く、導管では、5.0〜5.5と低い。樹液pH診断では、篩管と導管の両方を潰した時の樹液のpHを測定している。

 土地の石灰(カルシウム)が不足すると、作物(トマト)の葉が、上向きに反ってしまう。
 土地のカリウム(K)が不足すると、作物(トマト)の葉が、下向きに反ってしまい、また、葉の縁が黄色になったり、花芽(つぼみ)が落ちてしまうことがある。
 土地のリン酸が不足すると、作物の葉は、葉脈に沿って、うろこ状に盛り上がる。土地が、リン酸不足から苦土欠に進行すると、作物の葉は、退色して、網目が、明確に見えるようになる。

 注1「オーエスワンOS-1)」と言う経口補水イオン飲料が、大塚製薬株式会社から、厚生労働省認可・個別評価型の病者用食品として認可され、販売されている。
 「オーエスワンOS-1)」の液体タイプは、Na50mEq/L(115mg)、K20mEq/L(78mg)、Cl50mEq/L、マグネシウム2.4mg、リン6.2mg、浸透圧275mOsm/L、pH3.9、エネルギー10kcal、炭水化物(糖分)2.5g/dL(ブドウ糖1.8%)、タンパク質0g、脂質0g。
 「オーエスワン(OS-1)」は、厚生労働省から個別評価型・病者用食品として認可されている。

 「オーエスワンOS-1)」(大塚製薬株式会社)は、厚生労働省から個別評価型・病者用食品として認可されている。
 「オーエスワンOS-1)」は、調剤薬局や、病院内の売店などで、購入が可能。
 「オーエスワン(OS-1)」は、100ml当たり、エネルギー10kcal、タンパク質0g、脂質0g、炭水化物2.5g、ブドウ糖1.8g、カリウム78mg(2mEq)、ナトリウム115mg(5mEq50mEq/L)、塩素177mg(5mEq)、マグネシウム2.4mg、リン6.2mgを含んでいる。

 「オーエスワン(OS-1)」の1日当り内服目安量は、乳児は体重1kg当り30〜50ml/日、幼児は300〜600ml/日、学童〜成人(高齢者を含む)は500〜1,000ml/日(脱水状態に合わせて適宜増減する)。

 アクアライトORS(2005年10日発売)は、Na35mEq/L、K20mEq/L、Cl30mEq/L、糖分4.0g/dL(ショ糖が腸管でブドウ糖と果糖に分解されるとブドウ糖濃度は100mmol/Lになる)、浸透圧200mOsm/L、カロリー(エネルギー)160kcal/L、pH5.5(OS-1のpH3.9より高い:表6参照)。アクアライトORSは、乳幼児向け(生後3 ヶ月頃から)のORSで、リンゴ果汁が含まれていて(クエン酸ナトリウムも含有)、リンゴ風味に味付けされている。アクアライトORSは、調剤薬局、医院で販売されている。アクアライトORSは、近年は、ドラッグストア、イオン(ベビー売り場)でも販売されているが、スーパーでは販売されていない。
 pHが5.4以下の飲料は、歯のエナメル質が脱灰して虫歯にさせ易いおそれがあるが、アクアライトORSは、pH5.5(5.4以上)で、乳幼児用イオン飲料として、虫歯予防を配慮した組成になっている。イオン飲料は、pHが3.6〜4.6の製品があり、だらだら飲みすると、虫歯の原因になる。乳幼児用イオン飲料は、飲用すると、1日目にはエナメル質中層に及ぶ脱灰が起こり、3日目には象牙質にまで脱灰が進行する。
 アクアライトORSは、りんご味(林檎味)に風味されていて、125ml/瓶(紙製の瓶)入っている。アクアライトORSは、薬局で販売されている。アクアライトORSは、生後3箇月ぐらいから、使用可能。
 なお、従来発売されていたアクアライト(1985年発売)は、Na30mEq/L、K20mEq/L、Cl25mEq/L、糖分5.0g/dL、浸透圧260mOsm/L、カロリー(エネルギー)240kcal/L(アクアライト粉末を50mlの湯ざましに溶解した場合12kcal/50ml
 アクアライトORSは、下痢を伴う胃腸炎の治療に有用だが、アクアライトは、Na濃度が低目で浸透圧が高目なので、発汗時の水分/塩分補給に用いた方が良い。
 アクアライトORSは、3ヶ月過ぎぐらいから、飲用可能。
 「元気っち! アクアライトりんご」(125ml)には、ナトリウムが30mEq/L(Na=69mg/100ml)、カリウムが20mEq/L(K=78mg/100ml)と、アクアライトORSとほぼ同じ量が含まれている(アクアライトORSは、ナトリウム=35mEq/L)。糖質(炭水化物)=5.4g/dLが含まれ、アクアライトORS(4.0g/dL)より多い(浸透圧は高い可能性がある)。
 「ベビーのじかん アクアライトりんご」は、500ml/1本:原材料・成分は、糖類(砂糖、ぶどう糖)、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸、香料、塩化カリウム。「ベビーのじかん アクアライトりんご」は、100mL当たり、エネルギー=22kcaL、たんぱく質=0g、脂質=0g、炭水化物=5.4g、ナトリウム=69mg、カリウム=78mg。「ベビーのじかん アクアライトりんご」(500ml)は、成分は、「元気っち! アクアライトりんご」(125ml)と同じ。「元気っち! アクアライトりんご」(125ml)や「ベビーのじかん アクアライトりんご」(500ml)は、pHが4.2と酸性側なので、歯には、アクアライトORSの方が良い。浸透圧は、260mOsm/Lなので、アクアライトORSの方が腸管からの吸収が良い。「元気っち! アクアライトりんご」(125ml)や「ベビーのじかん アクアライトりんご」(500ml)は、香料でリンゴ味になっているが、リンゴ果汁は含まない。
 「アクアライトORS」は、薬局やドラッグストアでないと売っていないが 「元気っち! アクアライトりんご」(125ml)や「ベビーのじかん アクアライトりんご」(500ml)は、スーパーでも売っていると言う。

 「アクアライトORS」は、炭水化物として、砂糖やリンゴ果汁が、4.0g/dL含まれている。「元気っち! アクアライトりんご」(125ml)や「ベビーのじかん アクアライトりんご」(500ml)は、炭水化物として、砂糖やブドウ糖が、5.4g/dL含まれている。

 アクアサーナORS(森永乳業)は、Na32mEq/L、K20mEq/L、Cl25mEq/L、糖分4.0g/dLアクアサーナは、Na25mEq/L、K20mEq/L、Cl20mEq/L、糖分4.1g/dL、浸透圧285mOsm/L:2001年4月に終売)
 ポカリスエットは、Na21mEq/L、K5mEq/L、Cl16.7mEq/L、糖分6.7g/dL、浸透圧323mOsm/L、pH3.9。
 100%天然果汁は、Na〜2mEq/L、K12〜46mEq/L、Cl〜1mEq/L、糖分9〜14g/dL、浸透圧600〜700mOsm/L。

 注2:例えば、「ポカリスエット」は、Na21、K5、Cl16.5、糖分5.0、浸透圧370mOsm/L(Na21mEq/L、K5mEq/L、Cl18mEq/L、糖分6.7g/dL、浸透圧323mOsm/L)。
 スポーツドリンクは、Na濃度が低く(Na濃度は、は約20mEq/Lだが、下痢や吐物は約50mEq/L)、ウイルス性胃腸炎の電解質の補充には問題がないが、高濃度の電解質を喪失する細菌性胃腸炎の脱水の治療(電解質の補充)に用いるのは、好ましくないとされる。Na濃度が低い(30mEq/L以下)のスポーツドリンクは、乳幼の下痢の治療に用いると、低Na血症を引き起こし、水中毒(痙攣など)を引き起こすおそれがある。
 汗腺細胞から管腔内に分泌された汗は、最初は、血漿と同じ浸透圧を有している(等張)が、管腔内で、Na+(ナトリウムイオン)が能動的に再吸収され、Cl-も受動的に再吸収され、次第に、低張になり、皮膚表面から、排泄される。普段、汗をかかない人や、体力が低下していて「玉の汗」が出る人は、発汗により、Na+を喪失しやすい。スポーツの前後には、Na濃度がやや低めのスポーツドリンクでも、良いのかも知れないが、体調が悪かったり、体力が低下している人が、大量に発汗すると、汗腺で、Na+が十分に再吸収されず、Na+が、体外に喪失してしまう。汗中のNa+濃度は、発汗量が少ない時には薄いが、発汗量が多い時には、40mEq/L以上にまで、濃くなる。
 実際に、マラソンランナーは、レース後に、高頻度で低Na血症に陥っていると言われる。特に、夏場の炎天下にスポーツを行う際には、十分な水分と、同時に、十分な塩分(NaCl)を補給しないと、熱射病など熱中症に陥る恐れがある。
 また、スポーツドリンクは、糖分が多く含まれるため、浸透圧が280mOsm/kg程度と、高い:体液よりやや低い浸透圧(200〜250mOsm/kg)の飲み物の方が、胃腸からの吸収が良い。 
 ちなみに、1%のグルコース液(ブドウ糖液)は、約55mOsm/Lの浸透圧を有している。そして、5%ブドウ糖水の浸透圧は、277mOsm/Lで、pH5程度の酸性になる。

 浸透圧は、ソリタT顆粒2号が205mOsm/L、ソリタT顆粒3号が167mOsm/L、OS-1が270(271)mOsm/L、アクアサーナORSが285mOsm/L、アクアライトが290mOsm/L、アクエリアスが307mOsm/L、ポカリスエットが370mOsm/L、オレンジジュースが549mOsm/L、チキンスープが450mOsm/L、ミルクが286mOsm/L。
 カロリーは、ソリタT顆粒3号が92kcal、アクアライトが200kcal、ポカリスエットが240kcal、アクエリアスが244kcal。
 表6 ORSやスポーツドリンク等の成分の比較瀧田誠司氏の表1や森哲夫氏の資料等を参考に作成)
 種類  品名   Na
 (mEq/L)
  K
 (mEq/L)
  Cl
 (mEq/L)
 炭水化物
 (g/dl)
 エネルギー
 (kcal/L)
 浸透圧
 mOsm/L
 pH 
 経口補水塩  ソリタ-T顆粒3号  35  20  30   3.42  130  199  5 
 アクアライトORS  35  20  30   4.0  160  200  5.5
 OS-1  50  20  50   2.5  100  270  3.9
 WHO-ORS(2002年)  75  20  65   1.35    245   
 WHO-ORS(1975年)  90  20  80   2.0    311  
 スポーツ飲料  アクアライト  30  20  25   5.0    290  
 アクアライトりんご  30  20  25   5.4  220  260  4.2
 アクアサーナ  25  20  20   4.1    285  
 アクエリアス  14.8   2.0   0   4.7  190 (307)   
 ポカリスエット  21   5  16.5   6.7  270  323  3.9
 炭酸飲料  コカコーラ   1.6  −  −   11.2    650   2.6 
 果汁  アップルジュース   0.4  44  45  12    730  
 オレンジジュース   1   3.3    10.5     549   
 100%天然果汁  <2  12〜46  <1  9〜14     600〜700  3.5〜4.0
 ベビー用野菜スープ  (市販品)  30〜70   7〜31  20〜80      160〜360  
 お茶  番茶   0   5   0   0      
 ミルク  和光堂レーベンス   7.8  15.4   5.4   7.2    286  
 母乳       5.5   7.3  12.6   7.5       

 市販の野菜ジュース(野菜一日これ一本:280g)には、Na98mg、K820mg、Ca92mg、ショ糖5.6g、蛋白質2.4g、エネルギー80kcalが含まれている。
 分子量は、Na=22.990、K=39.098、Cl=35.453、Ca=40.08。

 各種飲料のpHは、アクアライトORSが5.5、乳幼児用イオン飲料が3.8〜4.2、スポーツドリンクが3.5〜3.7、果汁飲料が3.5〜4.0、乳酸菌飲料が3.6〜3.7、コーラが2.6と言われる。

 ORSの組成には、クエン酸(Citrate3-)を含むことが多い。
 クエン酸(Citrate3-)や、重炭酸(bicarbonate)は、腸からのNaと水の吸収を促進する
 クエン酸(Citrate3-)は、重炭酸(bicarbonate)の前駆体になる。
 WHO-ORSでも、重炭酸(bicarbonate component)に変わり、クエン酸(Citrate3-)に置き換えられた。

 注3大塚製薬株式会社の「アミノバリュー(Amino-Value)」の値。1本のボトル500ml当たり、BCAA2,000mg(バリン500mg、ロイシン1000mg、イソロイシン500mg)と、アルギニン500mgを含有している。

 注4:1包3gを、水100mlに溶解した時の、電解質と糖分の組成。ソリタ-T顆粒は、医薬品の製剤なので、医療機関で処方される。これらの製剤は、白色で甘味と酸味を有し、特有の芳香がある(「ソリタ-T顆粒2号」は、梅干し様の芳香があり、「ソリタ-T顆粒3号(ソリタ−T配合顆粒3号)」は、サイダー様の芳香(甘味と酸味)なので、カルピスなどを少し入れると、飲みやすくなる

 2003年から、ソリタ-T顆粒2号、ソリタ-T顆粒3号ともに、1包4.0g中に、クエン酸ナトリウム(C6H5Na3O7・2H2)を、196mg含有している。

 ソリタT顆粒3号(ソリタ−T顆粒3号)の組成(成分)は、1包(4.0g)中、塩化ナトリウム(58mg)、塩化カリウム(149mg)、無水リン酸二水素ナトリウム(60mg)、クエン酸ナトリウム(196mg)、炭酸マグネシウム(14mg)。
 ソリタT顆粒3号には、添加物として、1包(4.0g)中に、白糖(適量)、クエン酸(100mg)等が含まれている。
 ソリタT顆粒3号は、1包(4.0g:約13kcal)を水100mLに溶解した時の溶解液の電解質濃度は、Na+35mEq/L、K+20mEq/L、Mg2+3mEq/L、Cl-30mEq/L、PO45(mmol/L、Citrate3-34mEq/L(内、添加物のクエン酸100mgにより14mEq/L生じる)で、ソリタT顆粒3号の浸透圧は、167mOsm/L。
 ソリタT顆粒3号は、1包(4.0g)を、100mLの水、又は、微温湯で、攪拌しながら溶解する。通常、小児には、1回20〜100mLを、1日8〜10回(2〜3時間毎)、飲ませる。なお、年齢、症状により適宜増減する。
 ソリタT顆粒3号1包(4.0g)を水100mLに溶解した液のカロリーは、約13kcal。

 注5:WHO-ORS(1975)は、Na濃度が90mEq/Lと高値であり、浸透圧が311mOsm/kgと、iso-osmolar ORS(ブドウ糖11mmol/L)。これは、WHO-ORS(1975)が、下痢便中のNa+濃度が高濃度で 下痢便からNa+を多く喪失するコレラの治療を想定して、組成が作られた為だった。WHO-ORS(1975)を、先進国のようなウイルス性や細菌性の胃腸炎での下痢(下痢便中のNa+濃度がより低い:表2参照)の治療に用いると、高Na血症になるおそれがある。WHO-ORS(1975)は、最初の補充輸液(初期輸液)に適しているが、維持輸液には、水や母乳を併用することが推奨された。
 WHO-ORS(2002)は、Na濃度が75mEq/L、浸透圧が245mOsm/kgに、下げられた。WHO-ORS(2002)では、Na+も、グルコースも、75に調整されている:WHO-ORS(2002)では、Na+が75mEq/L、グルコース(ブドウ糖)が75mmol/Lに、調整されている。WHOの推奨値は、Na75mEq/L、K20mEq/L、Cl65mEq/L、糖分1.35g/dL、浸透圧245mOsm/L。

 グルコース濃度(ブドウ糖濃度)は、WHOは111mmol/L以下、ESPGHANは74,〜111mmol/Lの濃度を推奨している。
 アクアライトORSは、ショ糖(砂糖)が腸管でブドウ糖と果糖とに分解されて、ブドウ糖濃度が約100mmol/Lになるように調整されている。
 通常の乳児の胃腸炎(下痢)では、小腸のスクラーゼ(sucrase)活性は低下し難いと言われる。
 ORSには、分子量が多いショ糖(砂糖:分子量342.30)を使用した方が、ブドウ糖(分子量180.16)を用いるより、浸透圧を低く調整出来る。ショ糖(砂糖)は、ブドウ糖の約2倍、甘味度がある。

 注6:AAP(American Academy of Pediatrics)は、脱水症の初期にWHO-ORSを使用し、維持液としては、より、Na濃度(浸透圧)の低いhypotonic ORSのAAP推奨処方を使用するように、勧告している。浸透圧が低い方が、腸管からの吸収が良いとされる。
 AAP(American Academy of Pediatrics)では、脱水の補液(rehydration:初期輸液)には、Na濃度が75〜90mEq/LのORSを用いることを推奨してる。また、AAPでは、脱水の予防(prevention of dehydration)や、水分状態の維持(maintenance of hydration status:維持輸液)には、Na濃度が40〜60mEq/LのORSを用いることを推奨している。
 Na濃度が60mEq/L以上のORSを維持輸液に用いる場合、Na濃度の低い液体(母乳、水等)をも併用しないと、Naの負荷量が多くなり過ぎる(sodium overload)ことがある。
 米国のORS製剤のPedialyteは、Na濃度が45mEq/L、また、Ricelyteは、Na濃度が50mEq/L(日本のアクアサーナORSは、Na濃度が32mEq/L)。
 点滴治療による補液では、嘔吐や下痢による脱水の程度が強い(水やNaを喪失している)初期の時期に、初期輸液には、Na濃度が90mEq/Lと高いソリタ-T1号を用い、脱水が軽減し、利尿などがついた後の時期に、維持輸液には、Na濃度が35mEq/Lとより低いソリタ-T3号を用いる。
 そのように、ORS(経口補水塩)も、脱水の程度や病期により、Na濃度の異なる製剤を使い分けて、脱水の程度が強い初期の時期の初期輸液(初期治療)には、Na濃度が高い(75〜90mEq/L)ORSを用い、維持輸液(特に、軽症のウイルス性胃腸炎の治療)には、Na濃度が低いORSを用いる良い。
 
 注7:ESPGHAN-ORSの浸透圧は、240mOsm/kg。

 注8:回腸の小腸液は、Na+121mEq/L、K+4.3mEq/L、Cl-89mEq/L、HCO3-31mEq/L。小腸液は、pH7.8〜8.0で、1日、平均、3,000ml分泌される。
 大腸液は、Na+31mEq/LK+75mEq/L、Cl-11mEq/L、HCO3-40mEq/L。
 なお、便には、Na+<10mEq/L、K+<10mEq/L、Cl-<15mEq/L、HCO3-<15mEq/L、含まれている。

 成人では、6,500ml/日の水分(経口摂取物、唾液、胃液、膵液、胆汁、上部腸管分泌液)が腸上皮細胞によって処理される。
 6,500mlの水分は、遠位回腸では1,500mlに減少し、さらに、結腸(大腸)から大便として排出される際には250ml/日未満にまで吸収される。
 下痢性疾患では、小腸での水分排出量が増加する。

 注9オリゴ糖は、小糖のことで、単糖が2ケから10ケ程度、結合している。
 ショ糖(蔗糖:スクロース)は、砂糖の成分であり、グルコースブドウ糖)とフルクトース(果糖)が結合したニ糖類。
 フラクトオリゴ糖は、ショ糖に、フルクトースが数個結合した物で、タマネギ、ゴボウ、バナナ、アスパラガスなどに含まれている。
 フラクトオリゴ糖は、最近は、砂糖を原料に、コウジカビの酵素を用いて、効率良く、生産されている:フルクトース(果糖)が、ショ糖に1分子結合したのがケトース、2分子結合したものがニストース。
 フラクトオリゴ糖は、小腸では消化されず、大腸で腸内細菌、特に、ビフィズス菌により分解され、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの短鎖脂肪酸に変換され、大腸菌などの悪玉菌の増殖を抑制したり、便秘の改善などの整腸作用を現す。

 注10グルタミンは、小腸粘膜グルタミナーゼ反応により、グルタミン酸アンモニア(NH4+)とに、分解される(この時に生成されるアンモニアは、腸管内で産生されるアンモンニア量の約1/2を占めると言う)。
 グルタミン酸は、小腸から吸収され、GDHにより脱アミノ化され、αーケトグルタル酸と、アンモニアが生成され、この際、NADH2+が生成され、呼吸鎖で、ATPが生成される。また、αーケトグルタル酸は、TCA回路で代謝され、NADH2+が、生成される。
 このようにして、グルタミンやグルタミン酸は、代謝燃料として、小腸上皮細胞や腸管付属リンパ節細胞に、エネルギーを供給して、急性胃腸炎からの回復を、促進すると考えられる。

 注11母乳には、免疫グロブリン(特に、IgAクラス)、リゾチーム、補体、ラクトフェリン、Bifidus菌成長因子など、感染防御因子が含まれている。母乳中の分泌型IgAは、酸や、蛋白質分解酵素の影響を受け難く、局所免疫として、細菌やウイルスによる腸管内侵襲から、新生児の腸管を防御する。
 母乳栄養児の方が、人工栄養児より、感染症に、罹患しにくい。
 母乳は、胃腸感染症(サルモネラ菌、コレラ菌)の発症を予防する。ロタウイルス感染も、母乳栄養児の方が、感染率が低い。
 人乳(母乳)に比して、牛乳は、蛋白質、ミネラルが、多い。
 人乳に含まれる蛋白質には、アルブミン、カゼインが、ほぼ等量含まれている。牛乳は、カゼインを多く含んでいる。カゼインは、胃酸により、大きな、硬い、凝固(カード)を作り易い。
 人乳に含まれる脂質には、必須脂肪酸リノール酸が、多く含まれている。牛乳のリノール酸含有量は、少ない。
 人乳に含まれる糖質は、乳糖の形で含まれているが、人乳の方が、牛乳の倍、乳糖を含んでいる。
 人乳に含まれるミネラルは、牛乳の3分の1の濃度で、腎臓への負担が少ない。牛乳は、人乳に比して、カルシウムを4倍、リンを6倍、高濃度に含んでいる。牛乳中の高濃度のカルシウムやリンは、鉄と不溶性の複合物を形成し、鉄の吸収を、阻害する。鉄の吸収率は、人乳(母乳)が50%なのに対して、牛乳は3〜10%と、低い。離乳期に、母乳や調整粉乳(ミルク)の代わりに、牛乳を与えると、鉄欠乏性貧血のリスクが高まる。
 表7 母乳と牛乳との成分の比較(可食部100g当たり)
 栄養成分  母乳    普通牛乳  調整粉乳
 エネルギー(kcal)    63    69    66
 蛋白質(g)     1.1     3.3     1.5
 脂質(g)     3.49     3.7     3.5
 糖質(g)     6.87     4.8     7.1
 ミネラル(g)     0.2     0.72     0.25
 カルシウム(mg)    27    110    48
 リン(mg)    14    93    29
 ナトリウム(mg)    15    40    18
 カリウム(mg)    48   150    65
 マグネシウム(mg)     3    10     5.2イ)
 鉄(mg)     0.04     0.02     0.85イ)
 ビタミンB1(mg)     0.01     0.04     0.05イ)
 ビタミンC(mg)     5     1     6.89イ)

 イ)五訂食品成分表2005の262頁の調製粉乳の数値に、0.13を乗じて算出した。

 なお、母乳中の蛋白質は、初乳に比し、泌乳期の経過と共に、減少する(分娩300日後には、初乳の約55%に、減少する)。母乳中のミネラル(灰分)も、初乳の約70%に、減少する。他方、母乳中の乳糖は、泌乳期の経過と共に、増加し、分娩300日後には、初乳の約120%に、増加する。母乳中の脂質は、分娩20日後頃に、初乳の約120%にまで、増加するが、その後、減少し、分娩300日後には、初乳と、同程度になる。
 水溶性ビタミンB1は、初乳から、泌乳期の経過と共に、増加する。ビタミンB2、パントテン酸、ビタミンB12、ビタミンCは、泌乳期の経過と共に、減少する。葉酸、ナイアシンは、初乳に比して、泌乳期の経過で、分娩30日後頃まで増加し、その後、減少するが、分娩300日後でも、初乳より濃度は高い。

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