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 ステロイドホルモン

 ステロイド剤(ステロイド性抗炎症薬)は、プロスタグランジン(PGE2)や、ロイコトリエン(LT)の生成を抑制し、ライソゾーム膜(リソゾーム膜)を安定化させ、白血球の遊走を抑制し、抗炎症作用を示す。
 コルチゾールは、肝細胞では、糖新生を促進させる。

 ステロイド剤や、ステロイド核を有するピルは、血小板凝集能を亢進させ、血栓を形成させ易くする恐れがある。

 1.副腎皮質ホルモン
 副腎皮質では、ステロイドホルモン(副腎皮質ホルモン)が合成される。

 副腎皮質ホルモンは、主たる作用から、糖質の代謝に関与する糖質コルチコイドと、電解質の代謝に関与する鉱質コルチコイドと、男性ホルモン作用がある副腎アンドロゲンの、3群に分類される。 

 a).糖質コルチコイド
 糖質コルチコイド(glucocorticoid:グルココルチコイド)は、肝臓での糖新生を促進させる(ストレスなどに際して、血糖値を維持する為、血糖値を上昇させる)。
 糖質コルチコイドは、副腎皮質の束状帯で、生成される。
 コルチゾール(coritisol:ハイドロコルチゾン)は、糖質コルチコイド作用が強いが、電解質コルチコイド作用も有している。生理量のコルチゾールは、(腎臓の尿細管でのNa+再吸収による)水分保持(血圧維持)に、必要。Addison病では、水分保持能力の欠如による脱水や、水負荷による水中毒を来たす。

 ステロイドホルモンは、甲状腺ホルモン同様に、核内に受容体が存在するが、糖質コルチコイドは、核内にでなく、細胞質内に、細胞質受容体が存在する。糖質コルチコイドの細胞質受容体は、糖質コルチコイドが結合すると、立体構造が変化して、熱ショック蛋白質(heat shock protein:HSP)が外れ、DNA結合部位(zinc finger)が、露出し、核内に移動し、ニ量体を形成し、糖質コルチコイド応答性エレメント(glucocorticoid responsive element:GRE)に結合する。そして、DNAのmRNAへの転写に影響を与え、酵素蛋白質(抗炎症蛋白のlipocortinなど)の合成を調節する。

 コルチゾール(ハイドロコルチゾン)は、1日、20mg程度、副腎から分泌され、早朝の血漿濃度は、12.0±4.24μg/dlと言われる。朝のコルチゾール値が5μg/dl以下の場合は、原発性及び続発性副腎皮質機能低下を疑う。
 尿中遊離コルチゾールの正常値は、通常10〜100μg/M2/日と言われる(尿中コルチゾールは、安定しているので、24時間蓄尿の場合、酸や防腐剤は不要)。尿中遊離コルチゾールが、10μg/日の場合、副腎皮質機能低下を疑う。 

 表1 副腎皮質ホルモンの分泌量と活性
 副腎皮質ホルモン   分泌量(mg/日)   糖質コルチコイド活性   電解質コルチコイド活性 
 コルチゾール    15〜20        1.0       1.0
 コルチコステロン     2〜5        0.3      15 
 アルドステロン  0.05〜0.15        0.3    3000  
 b).電解質コルチコイド
 電解質コルチコイド(mineralcorticoid:鉱質コルチコイド)は、腎臓の尿細管でのNa+再吸収を促進させる。
 電解質コルチコイドは、副腎皮質の球状帯で、生成される。
 アルドステロンは、強力な電解質コルチコイド作用を有している。

 c).副腎アンドロゲン
 副腎アンドロゲンは、男性化作用がある。
 副腎アンドロゲンは、副腎皮質の網状帯で、生成される。
 副腎アンドロゲンのデヒドロエピアンドロステロン(dehydroepiandrosterone:DHEA)や、アンドロステンジオン(androstenedion)は、そのままでは、活性が弱く、末梢組織で、テストステロンに変換され、男性ホルモン作用を発揮する。

 2.コルチゾールの作用
 副腎皮質ホルモンのコルチゾールは、糖質コルチコイド作用が強い。
 コルチゾールの糖質コルチコイド作用は、肝臓での糖代謝(糖新生)、筋肉での蛋白質代謝、脂肪組織での脂質代謝(中性脂肪の代謝)に影響を与え、結果的に、グルコースの血液中への供給を、増加させる。
 生体は、ストレス(飢餓、寒冷、外傷など)の際に、脳の下垂体のACTH分泌を介して、副腎皮質からのコルチゾール分泌を急増させ、エネルギー源となるグルコースの供給を、促進させる。しかし、コルチゾールが、血中へのグルコースの供給を増加させることは、糖尿病を悪化させる恐れがある。コルチゾールは、インスリンの、インスリン受容体との結合親和性を低下させ(インスリン受容体数は減少させない)、インスリンによるグルコース取り込み促進作用を、抑制する。
 コルチゾールには、抗炎症作用がある。
 概して、コルチゾールのような糖質コルチコイド(グルココルチコイド)は、肝組織には同化的に作用し、リンパ球や線維芽細胞のような間葉系細胞に対しては、異化的に作用する。

 ・コルチゾールは、肝細胞では、糖新生を促進させる。コルチゾールは、末梢での糖利用を減少させる。その結果、肝臓のグリコーゲン貯蔵量が増加したり、肝臓から、グルコースが、血中に放出される。
 コルチゾールは、肝細胞では、グリコーゲン合成酵素(Glycogen synthase)、GPT(Pyruvate-Glutamate transaminase:ALT)、ピルビン酸カルボキシラーゼ(Pyruvare carboxylae:PC)、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(phosphoenolpyruvate carboxylae:PEPCK)、Fructose-1,6-bisphosphatase、Glucose-6-phosphatase、などの酵素蛋白の合成を、誘導する(酵素の活性が上昇する)。
 コルチゾールは、肝細胞以外にも、筋線維(筋繊維:筋肉の筋細胞)でも、グリコーゲンを蓄積させる。
 ・コルチゾールは、筋細胞では、蛋白質合成を抑制し、蛋白質分解を促進する。その結果、筋肉から、アミノ酸、主に、アラニン(Ala)が、血中へ放出される。アラニンは、肝臓で、グルコースに糖新生される(グルコース・アラニン回路)。
 コルチゾールは、生理量では、蛋白質同化作用を示し、筋力を、増加させる。
 in vitroの実験では、少量(10-8〜10-9M以下)の糖質コルチコイド(グルココルチコイド)は、蛋白合成(蛋白質合成)を促進し、大量(10-4〜10-5M)の糖質コルチコイドは、蛋白合成を抑制する(阻害する)。
 in vitroの実験では、少量(10-8〜10-9M以下)の糖質コルチコイド(グルココルチコイド)は、蛋白合成(蛋白質合成)を促進し、大量(10-4〜10-5M)の糖質コルチコイドは、蛋白合成を抑制する(阻害する)。
 ヒトにhydrocortisoneを100mg静脈注射すると、血中濃度は、最高約4×10-6Mに達する。また、hydrocortisoneを300mg静脈注射すると、60分後に、血中濃度は、約7×10-6Mに達する。
 hydrocortisoneは、10-5〜10-7Mの濃度において、有意にヒト好中球の遊走を、抑制する。

 ・コルチゾールは、脂肪組織(や肝臓)では、中性脂肪(トリグリセリド)合成を抑制する。
 コルチゾールは、脂肪組織では、インスリンの作用を抑制し、脂肪分解作用を、亢進させる(インスリンの作用の抑制により、グルコース取り込みが抑制され、グリセロール 3-リン酸アシル-CoAから、中性脂肪が合成されない)。インスリンは、脂肪組織のリポ蛋白リパーゼ(LPL)の活性を上昇させるので、コルチゾールにより、インスリンの作用(インスリン受容体との結合)が抑制されると、LPLにより分解されないカイロミクロンVLDLLDLが増加し、高脂血症(高中性脂肪血症、高コレステロール血症)を来たす。コルチゾールは、糖新生を促進させ、血糖値を上昇させ、インスリン分泌を促進させ、その結果、一部の脂肪組織では、脂肪動員(脂肪分解)を上廻って、脂質合成が、促進される。
 その結果、血中への脂肪酸やグルセロール放出が、増加する。グリセロールは、肝臓で、グルコースに糖新生される。 
 Cushing症候群では、血中の総コレステロール、中性脂肪、遊離脂肪酸が増加する。Cushing症候群では、コルチゾールにより、インスリン分泌が促進され、躯幹を中心に、脂肪沈着が、見られる。また、Cushing症候群では、脂肪沈着により、頬部には、満月様顔貌(moon face)が、頚部には、野牛のこぶ(buffalo hump)が、見られる。

 ・糖質コルチコイドのコルチゾールや、ステロイド剤(ステロイド性抗炎症薬)には、抗炎症作用がある。
 コルチゾールは、プロスタグランジン(PGE2)や、ロイコトリエン(LT)など、炎症に関与する化学伝達物質の産生を抑制する。その結果、血管透過性の亢進などが抑制され、炎症性浮腫が抑制され、抗炎症作用が、現れる。しかし、コルチゾールの抗炎症作用は、病原体に対する免疫応答を減弱させ、感染症を悪化させる側面もある。

 ステロイド剤NSAIDsは、COXを阻害し、プロスタグランジン合成(PGE2合成)を抑制し、抗炎症作用などを現す。
 ステロイド剤は、COXの合成を阻害して(COX-2遺伝子の発現を阻害するが、COX-1遺伝子の発現をは阻害しない)、抗炎症作用、鎮痛作用などを現す。
 血小板でのトロンボキサンA2TXA2)の合成は、主にC0X-1によるので、COX-1遺伝子の発現を阻害しないステロイド剤は、出血傾向(抗凝固作用)の副作用を来たさず、むしろ、血小板凝集能を亢進させ、血栓を形成させ易くする。
 ステロイド剤は、リポコルチン(lipocortin)を誘導して、ホスホリパーゼA2PLA2)の活性も阻害し、アラキドン酸の遊離を抑制し、プロスタグランジン(PGE2)や、ロイコトリエン(LT)の生成を、抑制する。なお、プロスタグランジン(PGE2)の生成を抑制するNSAIDsアスピリンは、5-リポキシゲナーゼの活性は阻害しないので、ロイコトリエン(LT)の生成をは、抑制しない。
 ステロイド剤やNSAIDsは、PGE2抗炎症作用(細胞膜安定化作用)を阻害してしまうが、ステロイド剤は、ロイコトリエン(LT)の炎症作用(白血球遊走や活性化)を抑制することなどにより、抗炎症作用(細胞膜安定化作用)を現すと考えられる。
 ステロイド剤(副腎皮質ホルモン)は、適切な条件下では、リソゾーム膜安定化作用がある。ステロイド剤(副腎皮質ホルモン)の他に、アスピリン、フェニルブタゾン、インドメタシン、フルフェナム酸にも、リソゾーム膜安定化作用がある。
 感染症に際して、副腎皮質から分泌されるコルチゾール(ステロイドホルモン)や、単球(マクロファージ)から産生されるPGE2は、細胞膜を安定化させ(細胞を炎症から保護し)、抗炎症作用を示す(外国から攻められた戦争に際して、国は、自国民を保護する為に防空頭巾を配るように、生体は、感染症に際して、自分の細胞の膜を安定化させ、保護しようとして、抗炎症作用のある、コルチゾールや、PGE2を、増加させる)。
 ステロイド剤は、マクロファージから、IL-1などのサイトカインが、産生されるのを、抑制する。ステロイド剤は、白血球(好中球や単球)が、炎症部位へ遊走することを、抑制する。ステロイド剤は、血液中のリンパ球数を減少させ、リンパ組織を萎縮させる。
 ステロイド剤(コハク酸プレドニゾロンナトリウム)は、recombinant IL-2(1U/ml)を用いて、長期培養中のT細胞(Tリンパ球)に添加すると、生細胞数と、標的細胞障害活性が、減少する:ステロイド剤が、10-8〜10-9Mの濃度では、生細胞数は有意に減少しない(Tリンパ球の増殖を、有意に抑制しない)。しかし、標的細胞障害活性は、10-8〜10-9Mの濃度でも、抑制される(10-9Mが、生理的な組織中濃度と言われる)。
 ステロイド剤は、免疫抑制剤としても、使用される。
 ステロイド剤は、神経細胞膜に作用して、膜の興奮性を減じ、鎮痛作用を来たす。
 コルチゾールは、ライソソーム膜(リソゾーム膜)を安定化させ、プロテアーゼの放出を防止する作用もある。 
 ステロイド(剤)は、細胞膜の蛋白の立体構造や、脂質二重層の脂肪酸側鎖の配列、蛋白−脂質間の相互作用を変化させ、細胞膜のイオンチャネル(ion channel)を抑制し、細胞膜安定化作用(細胞膜安定化効果)を示す。

 マウスを12時間拘束ストレスに曝した実験結果では、ステロイド剤(ハイドロコルチゾン)を投与(されていた)マウスの方が、正常マウスより、IFN-γ、TNF-α、IL-6の産生が、多い(ステロイド剤により、免疫抑制作用があるPGE2の産生が、抑制される為:ステロイド剤を中断すると、増加しているサイトカインに、リンパ球が反応して、リバウンドが起こる)。

 3.副腎皮質ホルモンの合成
 ステロイドホルモンは、化学構造式で、ステロイド核を有している。
 ステロイド核は、コレステロールから合成される。
 副腎皮質細胞は、表面のLDL受容体により、LDLを、細胞内に取り込み、脂肪滴として、コレステロールエステルを、貯蔵している。
 下垂体ACTHは、コレステロールエステル加水分解酵素(CEH)を活性化し、脂肪滴中のコレステロールエステルを、遊離コレステロールに変換させる。
 遊離コレステロールは、ミトコンドリアに輸送され、ミトコンドリア内膜で、プレグネロンに変換される。
 プレグネロンは、滑面小胞体に輸送され、17α-ヒドロキシプレグネロンを経て、11-デオキシコルチゾールに変換される。
 11-デオキシコルチゾールは、再び、ミトコンドリアに輸送され、コルチゾールに変換される。

 コルチゾールは、主に、肝臓で代謝され、グルクロン酸が結合(グルクロン酸抱合)したりした後、大部分は、17-OHCSとして、尿中より、排泄される。

 4.ストレスと副腎皮質
 コルチゾールの1日分泌量は、約20mgだが、最大のストレス下では、200〜300mg分泌される。

 ストレスが続くと、生体では、ストレスに抵抗する為に、副腎皮質が肥大し、副腎皮質ホルモンの分泌が、増加する。
 しかし、適応困難なストレス(過大なストレスや、長期間のストレス)は、生体を、疲弊させて、副腎皮質ホルモンの分泌を、減少させてしまう。

 慢性疲労症候群では、血清コルチゾールや、DHEA-S(デヒドロエピアンドロステロンサルフェート)など、副腎皮質から産生されるホルモンが減少し、思考力や集中力が低下する。

 5.ステロイド剤
 天然のコルチゾール(ハイドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン)は、糖質コルチコイドとして、強い抗炎症作用を有するが、同時に、電解質コルチコイド活性を有している為、多量に投与すると、体内にナトリウム(Na+)貯留させてしまう。
 コルチゾール(cortisol)の電解質コルチコイド活性を減少させた、合成の糖質コルチコイドが開発され、副腎皮質ステロイドホルモン(ステロイド剤)として、アレルギー疾患などの治療に、使用されるようになった。
 表2 ステロイド剤の作用の比較
 化合物   抗炎症作用   糖質コルチコイド活性   電解質コルチコイド活性   血中半減期  1日投与量  1錠中含有量
 コルチゾール      1       1        1  1.4〜3時間   80〜150mg  10mg
 プレドニゾロン       4       3.7        0.8  120分前後  20〜40mg  5mg
 メチルプレドニゾロン       5        5.4       <0.5   2.1時間  16〜32mg  2mg
 デキサメサゾン     30     154       <0.5  約200分  2〜4mg  0.5mg

 プレドニゾロン(prednisolone)は、コルチゾール(cortisol:hydrocortisone)の1位を二重結合にしたΔ1-cortisol。
 プレドニゾロンは、コルチゾールに比して、4倍の抗炎症作用(肉芽腫抑制作用)を有するが、電解質コルチコイド活性(ナトリウム貯留作用)も、コルチゾールに比して、0.8倍程度有する。プレドニゾロンは、コルチゾールに比して、3.6倍の糖質コルチコイド活性(糖質代謝作用:肝グリコーゲン蓄積作用)を有する。

 デキサメサゾン(dexamethasone:9α-fluoro-16α-methyl-prednisolone)は、プレドニゾロンの9α位にフッ素を、16β位にメチル基を導入した化合物で、コルチゾールやプレドニゾロンより、抗炎症作用が強いが、電解質コルチコイド活性(ナトリウム貯留作用:電解質作用)は、弱い(全く無い訳ではない)。
 デキサメサゾンは、食欲増加、体重増加、皮膚線条などの副作用が強く、便へのカルシウム(Ca)排泄も、亢進する。
 表3 ステロイド剤の特徴水島裕氏編集の「今日の治療薬」の表2と吉田正氏の表1を改変し引用)
 ステロイド化合物  半減期(時間)  糖質コルチコイド活性  電解質コルチ
 コイド活性
 1日投与量
  (mg)
 1錠中含有量
  (mg)
 血中半減期  生物学的  力価  対応量(mg)
 ヒドロコルチゾン  1.2   8〜12   1  20   1  10〜120  10
 コルチゾン  1.2   8〜12   0.7  25〜30   0.7  12.5〜150  25
 プレドニゾロン  2.5  18〜36   4.0   5   0.8   5〜60  1、5
 メチルプレドニゾロン  2.8  18〜36   5.0   4   0   4〜48  2,4
 トリアムシノロン  −  18〜36   5.0    4   0   4〜48  4
 パラメタゾン  −  36〜54  10   2   0   1〜24  2(非販売)
 デキサメタゾン  3.5  36〜54  25〜30   0.75   0   0.5〜8  0.5
 ベタメタゾン  3.3  36〜54  25〜35   0.75   0   0.5〜8  0.5

 6.ステロイド剤は血小板凝集能を亢進させる
 ステロイド剤や、ステロイド核を有するピルは、血小板凝集能を亢進させ、血栓を形成させ易くする恐れがある。
 ステロイド剤(hydrocortisone sodium phosphate)は、500ng/ml〜500μg/mlの範囲の濃度では、濃度が高い程、血小板凝集能(コラーゲン、ADPによる凝集)を亢進させる。しかし、ステロイド剤は、5mg/ml以上の高濃度では、却って、血小板凝集能は、低下させる。
 ステロイド剤の血小板凝集亢進作用は、アスピリンによって、阻止される傾向にある。

 腎炎の治療でステロイド剤を投与された患者は、血小板凝集能が亢進し、APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)が短縮し、血液凝固因子の第II因子、第V因子、第X因子、第XII因子が増加する。
 ラットの実験で、ステロイド剤(デキサメサゾン)を1日1回、5日間内服させると、投与した用量に応じて(用量依存性に)、血小板凝集能が亢進し、血漿中PAI-1が増加するが、t-PAは変化が認められない。

 ステロイド剤は、於血を悪化させる。
 ステロイド剤は、アトピー性皮膚炎を難治化させるおそれがある。

 7.急性副腎不全(副腎クリーゼ)
 正常人では、副腎から、1日約20mgのコルチゾール(糖質コルチコイド)が、分泌される。
 感染、心筋梗塞や脳梗塞などの発作、外傷、手術などのストレスに際して、生体内のコルチゾール必要量が増加し、副腎からは、最大、約300mgのコルチゾールが、分泌される。

 コルチゾール(糖質コルチコイド)が不足すると、急性副腎不全(副腎クリーゼ)に陥る。
 急性副腎不全(副腎クリーゼ)の症状としては、悪心、嘔吐、激しい腹痛、低血圧状態が現れる。
 急性副腎不全(副腎クリーゼ)の検査所見としては、低ナトリウム血症、高カリウム血症、低血糖、好酸球増加などが認められる。
 急性副腎不全(副腎クリーゼ)の救急処置としては、血中コルチゾール測定用の採血(血清保存)を行った後、検査結果を待たずに、まず、速やかに、十分量のハイドロコーチゾン100mgを、静脈内注射する。また、十分量の補液を行う:生理食塩水に5%の濃度でブドウ糖を溶解させる。輸液には、カリウム(K)を含んでいる補液は、使用しない。

 アジソン病(Addison's disease)では、ハイドロコーチゾン(コートリル)を20mg/日程度、補充する治療を行う。
 しかし、アジソン病の患者が、感染等のストレスに曝されると、コルチゾール(糖質コルチコイド)の必要量が高まり、コルチゾールが不足して、急性副腎不全に陥るおそれがある。
 また、プレドニンなどのステロイド薬を、長期間、内服していた患者が、急に、内服を中止した場合も、急性副腎不全に陥るおそれがある。 

 8.ステロイド剤と高血圧
 ステロイド剤(糖質コルチコイド)は、高用量を治療に用いると、高血圧の副作用を来たすおそれがある。
 ステロイド剤を投与されている患者が、高血圧の副作用が現れた場合の血圧管理には、降圧薬としては、利尿薬、Ca拮抗薬、ARBなどを用いる。

 9.その他
 ・1型11β-HSD(11β-hydroxysteroid dehydrogenase 1)は、細胞内で糖質コルチコイド(グルココルチコイド)を活性化させる変換酵素。
 1型11β-HSD(11β-HSD1)は、皮下脂肪より、内臓脂肪に多く発現していて(酵素活性が高い)、体脂肪量やインスリン抵抗性指標と相関が強い。
 脂肪細胞の11β-HSD1遺伝子発現は、チアゾリジン誘導体(経口糖尿病治療薬)のようなPPARγアゴニスト(ペルオキシゾーム増殖薬活性化受容体作動薬)によって、著明に抑制される。
 2型11β-HSD(11β-HSD2)は、1型11β-HSD(11β-HSD1)と反対に、細胞内の活性化型グルココルチコイド(コルチゾール)を不活化させる。2型11β-HSD(11β-HSD2)は、主に、水・電解質代謝に関与する腎臓(尿細管上皮)、大腸、汗腺、胎盤などに、多く発現している。

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