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 アトピー性皮膚炎

 【ポイント】
 アトピー性皮膚炎の患者の皮膚は、グルコシルセラミド(脂肪酸やブドウ糖等から構成される)の代謝異常により、健常者に比して、皮膚のセラミド含量が、低下している。
 アトピー性皮膚炎の患者では、グルコシルセラミドを分解する酵素(βグルコセレブロシダーゼ)の活性は正常なのに、グルコシルセラミドから、セラミドが生成されないで減少し、グルコシルスフィンゴシンや、炎症作用があるスフィンゴシルフォスフォリルコリンが増加する。
 グルコシルセラミドを構成する脂肪酸やブドウ糖の変性が、アトピー性皮膚炎の原因かも知れない。
 食養や漢方薬で於血を改善すると、アトピー性皮膚炎は治ることがある。その際、急速な皮膚の新生(基底細胞の増殖)に伴ない、古い皮膚が剥脱し、皮膚の赤味が増したり、漏出液(ジクジク)が増加することがある。
 アトピー性皮膚炎は、食品添加物(乳化剤など)が原因で、真皮の毛細血管の血行が低下し、皮膚のバリア機能が低下し、アレルギーを起こし易くなっているとも考えられる。


 1.セラミド代謝とアトピー性皮膚炎

 表皮細胞で産生されたセラミドなどの脂質は、角質最下層において細胞外に排出され、角質細胞間脂質となり、皮膚のバリア機能や水分保持機能(保湿機能)を担う。
 特に、セラミドは、角質細胞間脂質の約50%を占めていて、その代謝は、皮膚のバリア機能や保湿機能の維持に重要とされる。細胞間脂質は、セラミド(約50%)の他、コレステロールエステル(15%)、(遊離)コレステロール(5%)、脂肪酸(20%)から、構成されている。
 アトピー性皮膚炎の患者の皮膚は、健常者の皮膚に比して、皮疹部のみならず、無疹部(アトピー性皮膚炎を起こしていない部分の皮膚)でも、セラミド含量(角質重量当たりのセラミド量)は、有意に低下している。
  

 生体は、皮膚(バリア)表面に存在する常在菌には、免疫応答をしないが、生体は、皮膚(バリア)を越えて侵入する病原体や抗原には、免疫応答をする。アトピー性皮膚炎では、皮膚のセラミド含量が減少し、皮膚のバリア機能が低下する結果、抗原や病原体(黄色ブドウ球菌など)に対して、強い、アレルギー反応を形成してしまう。

 セラミドの生成には、まず、表皮細胞(有棘層や顆粒層)で、セリン(アミノ酸)とパルミトイル-CoA(活性脂肪酸)から、ケトスフィンガニンが生成され、その後、種々の酵素で代謝され、セラミドが生成される。生成されたセラミドは、グルコシルセラミド、又は、スフィンゴミエリンとして、表皮細胞から、細胞外に排出され、角質細胞間脂質となる。
 セラミドは、角質細胞間で、グルコシルセラミド、又は、スフィンゴミエリンから、再度、生成されたり、分解され、角質細胞間脂質のセラミド量は、一定に保たれる。

 セラミド(セレブロシド)の生成は、βグルコセレブロシダーゼ(β-グルコシダーゼ)による経路(グルコシルセラミドを、セラミドとグルコースとに分解する)と、スフィンゴミエリナーゼによる経路(スフィンゴミエリンを、セラミドとフォスフォリルコリンとに分解する)と、二つの経路により、行われる。

 皮膚のバリア機能に重要なセラミド1(アシルセラミド)の生成は、アシルグルコシルセラミドから、βグルコセレブロシダーゼによる経路で、行われる。
 セラミドの分解は、セラミドがセラミダーゼにより行われ、スフィンゴシンと遊離脂肪酸が、生じる。

 アトピー性皮膚炎の患者では、セラミド含量(角質重量当たりのセラミド量)は、有意に低下している。
 アトピー性皮膚炎の患者では、皮膚の角層(角質層)のβグルコセレブロシダーゼや、スフィンゴミエリナーゼや、セラミダーゼの活性は、正常である(健常者と差がない)。

 アトピー性皮膚炎の患者では、スフィンゴミエリンを分解する酵素(スフィンゴミエリン水解酵素)の活性は、異常に高い:スフィンゴミエリン水解酵素の活性は、健常者に比して、皮疹部では27倍高く、また、無疹部でも7倍高い。なお、スフィンゴミエリン水解酵素の活性は、接触(性)皮膚炎患者では、高くないので、アトピー性皮膚炎の患者で、スフィンゴミエリン水解酵素の活性が高いことは、炎症が原因ではない。
 アトピー性皮膚炎の患者の皮膚では、健常者に比して、スフィンゴミエリン水解酵素である、スフィンゴミエリンデアシラーゼ(スフィンゴミエリンを、スフィンゴシルフォスフォリルコリンと遊離脂肪酸とに分解する)の酵素活性が、高い。スフィンゴミエリンデアシラーゼ(スフィンゴミエリンデアシレース)の活性が高くなり、スフィンゴミエリナーゼの活性と競合すると、スフィンゴミエリンから、スフィンゴミエリナーゼによりセラミドが生成されず、スフィンゴミエリンデアシラーゼによりスフィンゴシルフォスフォリルコリン(スフィンゴシルホスフォリルコリン)が生成される。
 スフィンゴシルフォスフォリルコリンは、炎症誘発因子
であり、培養ヒト表皮細胞に、プロスタグランジン(PG)を産生させたり、細胞接着因子を発現させる。スフィンゴシルフォスフォリルコリン(スフィンゴシルホスフォリルコリン)は、スフィンゴミエリンのアシル基(活性脂肪酸)が、外れた物質。スフィンゴシルフォスフォリルコリンは、水分含量が、少ない。
 しかし、皮膚のバリア機能に重要なセラミド1(アシルセラミド)の生成は、アシルグルコシルセラミドから、βグルコセレブロシダーゼによる経路で、行われ、スフィンゴミエリンから、生成されるのではない。

 そこで、グルコシルセラミドデアシラーゼ(グルコシルセラミドを、グルコシルスフィンゴシンと遊離脂肪酸とに分解する未知の酵素)の酵素活性を測定すると、アトピー性皮膚炎の患者の皮膚では、健常者に比して、皮疹部、無疹部共に、高い。また、アトピー性皮膚炎の患者の皮膚では、グルコシルセラミドデアシラーゼにより生成されるグルコシルスフィンゴシンが、健常者に比して、皮疹部、無疹部共に、増加している。
 このように、アトピー性皮膚炎の患者の皮膚では、グルコシルセラミドデアシラーゼの活性が高くなり、βグルコセレブロシダーゼの活性が競合し、アシルグルコシルセラミドからグルコシルセラミドデアシラーゼによりグルコシルスフィンゴシンが生成され、βグルコセレブロシダーゼによるアシルセラミドの生成が減少していると考えられている(注1)。

 2.アトピー性皮膚炎と漢方
 アトピー性皮膚炎では、漢方的には、体内で処理されない毒素(濁毒)が、皮膚に溜まった為の炎症反応と考えられる。その皮膚に溜まった毒素を、血行を良くしたりして、排毒させると、アトピー性皮膚炎は、改善する。治療に用いていた、ステロイド剤も皮膚に蓄積している。アトピー性皮膚炎が改善する際、症例によっては、ステロイド剤の臭いのするネバネバした液が、皮膚から排泄され、黄色い膿が噴き出すことがあると言う。ウォーキングなどの運動は、血流を増加させ、ステロイド剤の排泄を促進させる。
 ステロイド剤(軟膏)は、アトピー性皮膚炎の治療に用いられるが、使用を中止すると、数日後、リバウンドで、全身の皮膚が腫れ、爛れ、乾き、ひび割れし、傷口から黄色の液体(悪臭がする)が流出する。そして、黄色の液体の流出が止まると、全身の皮膚の皮が、ぼろぼろと剥離すると言う。
 ステロイド剤(軟膏)は、過酸化脂質として、組織に沈着し、好中球(顆粒球)を呼び込んで炎症を引き起こすと言う。
 ステロイド剤から(針治療で)脱却した人は、体調が良くなり、疲労感、倦怠感がなくなると言う。

 1).アトピー性皮膚炎と於血:皮膚を剥いて治す
 アトピー性皮膚炎の患者は、於血があり、食事療法(食養)や漢方薬で、於血を治療すると、真皮の毛細血管の血行が良くなり、表皮の基底細胞の増殖が盛んになり、アトピー性皮膚炎が治ると言う。

 「皮膚は内臓の鏡」と言われるように、皮膚は内蔵の状態を反映する。
 皮膚の表面の表皮は、真皮(表皮の下層)の上層側に存在する表皮の基底細胞(真皮の毛細血管から栄養や酸素を供給されている)が増殖することによって形成される。表皮の基底細胞が増殖を続けると、2週間後には、表層の増殖した細胞は死んで角質層を形成する(皮膚の最表層の角質は、4週間前に基底細胞から増殖した細胞成分によって構成される)。このように、皮膚の表皮(角質層も含む)は、基底細胞の増殖により、「ターンオーバー」を繰り返している。

 アトピー性皮膚炎の患者では、基底細胞層が破壊されており、セラミドが減少し、角質層も形成が悪く、バリアー機能が低下し、アレルギーを起こし易くなる。
 於血がある(あるいは食事由来の毒素により毛細血管の血管内皮細胞が障害される)と、真皮の毛細血管の血行が悪く、微小血栓などが形成され、微小循環障害が起こり、栄養や酸素が表皮の基底細胞層に送られなくなり、基底細胞層が消失し、アトピー性皮膚炎が起こる。

 食事療法(食養)や漢方薬で、於血が改善されると、基底細胞層が活発に細胞分裂し表皮が形成されるが、その際、表皮の上層には過去にステロイド剤を使用した皮膚には、健常なターンオーバーが出来なかった為に、古びた表皮細胞が詰まっていて、下層から基底細胞の活発な細胞分裂により作られた表皮細胞により押し上げられ、皮膚の表面から剥脱されることになる。
 その為、於血が改善されて、アトピー性皮膚炎が治癒する過程で、一時的に、皮膚が剥脱して、アトピー性皮膚炎が悪化したように見えることがある(好転反応)。
 好転反応による皮膚剥脱では、激しい痒みが伴なわないことが、通常のアトピー性皮膚炎の悪化と異なる点と言われる。

 基底細胞層の増殖(於血の改善)と、表皮の剥脱とが、バランス良く行われないと、ジクジクと漏出する体液が多くなったり、細菌感染を起こす危険がある。
 表皮の剥脱が盛んになり過ぎると、角質層が薄くなり過ぎて、重度の熱傷のように、皮膚が赤くなり、体液がジクジクと漏出し過ぎてしまう。
 駆於血薬の漢方薬としては、「桂枝茯苓丸」(ケイシブクリョウガン)や「治頭瘡一方」(ヂヅソウイッポウ)が良い。表皮の剥脱が盛んになり過ぎて、皮膚の赤味や漏出液(ジクジク)が多い場合には、転方させる目的で、「消風散」(ショウフウサン)に変更する。消風散(7.5g)は、セッコウ(3.0g)、ジオウ(3.0g)、トウキ(3.0g)、ゴボウシ(2.0g)、ソウジュツ(2.0g)、ボウフウ(2.0g)、モクツウ(2.0g)、チモ(1.5g)、カンゾウ( 1.0g)、クジン(1.0g)、ケイガイ(1.0g)、ゴマ(1.5g)、ゼンタイ(1.0g)の混合生薬の乾燥エキス(4.0g)を含んでいる。
 治療により、最初、皮膚が大きな破片として剥脱して行くが、次第に、小さな破片が剥脱し、白い粉を吹く様になり、垢として剥脱するようになると、完全な表皮が形成され、ツルツルでスベスベでシットリとした皮膚になる。

 アトピー性皮膚炎の漢方治療は、秋から翌年の4月頃までが、治る期間が短い。春から夏にかけては、治療効果が遅れる(アトピー性皮膚炎の症状が引っ込んでしまい、好転反応が起こらず、根本的に治らない)。
 アトピー性皮膚炎は、(真皮の血行が改善し、)一度、古い皮膚(表皮)が剥けないと、治らない。

 糖類・糖分(砂糖など)の摂取は、アトピー性皮膚炎を悪化させる(中性脂肪が増加したり、血液が酸性化し、於血が悪化する)。
 油脂の摂取は、アトピー性皮膚炎を差ほど悪化させない。

 ステロイド剤は、於血を悪化させる。

 皮膚の角質水分量は、夏季の方が冬季より多い。夏季でも足部は角質水分量が少なく、冬季でも頭部(顔面中〜上部)は角質水分量が多い。

 表皮の厚さは0.1〜0.2mm程度、真皮の厚さは0.3〜2.4mm程度。
 正常な皮膚の表皮では、基底細胞の分裂による新しい角質細胞の形成(供給)と、古い角質細胞の剥離(消失)とがバランス良く行われている。
 表皮は、脂質を多く含む(乾燥重量の10〜15%が脂質)。表皮の脂質の1割は、コレステロール。高脂血症の治療(スタチン系薬剤の内服など)を行うと、皮膚の角化に必要なコレステロールや脂質の代謝が阻害され、角化異常症を惹起することがある。

 アトピー性皮膚炎の患児は、冷え症(冷え性)が強く、常温の室内でも、肌着を脱ぐと、寒がる児がいる。

 アトピー性皮膚炎は、真皮の毛細血管の血行が低下し、バリアである表皮の機能が低下し、アレルギーを起こし易くなっていると考えられる。
 真皮の毛細血管の血行を低下させる原因として、食品添加物(乳化剤など)が考えられる。

 3.アトピー性皮膚炎とステロイド
 アトピー性皮膚炎には、ステロイド剤(軟膏)を、1日1〜2回、塗る。
 アトピー性皮膚炎で、ステロイド剤(軟膏)を使用すると、痒みや赤みが、3〜4日で改善する。
 アトピー性皮膚炎で、慢性の皮膚の炎症に為、皮膚が硬くなっている。
 アトピー性皮膚炎で、ステロイド剤(軟膏)を使用した場合は、皮膚を摘んで、硬い間(炎症が残っている間)は、ステロイド剤(軟膏)を中止すると、すぐ再燃(リバウンド)でが起こり、痒みや赤みが現れる。従って、皮膚を摘んで、柔らかくなるまで(10日〜2週間程度)は、ステロイド剤(軟膏)を、塗り続けてから中止すると、再燃が少ないと言う。

 アトピー性皮膚炎では、体内に溜まっている毒素(濁毒)を排出しようとして、アレルギー反応(アレルギー性炎症反応)が起こると考える人もいる。ステロイド剤(軟膏)を、対症療法として、使用しアレルギー反応を抑制すると、生体は、“毒素”を出そうとして、更に、強い炎症反応を起こす場合もある。
 (水道水などに含まれる)塩素も、体表に吸着して、アトピー性皮膚炎の原因になると言う。

 アトピー性皮膚炎では、乾燥し、ひび割れした皮膚から、膿のような液体が出て、痒み痛みが酷くなる。
 アトピー性皮膚炎は、皮膚を掻き壊した時、透明の液体(浸出液)が出る時より、黄色の液体が出る時の方が、重症のようである。

 相手に対する怒りの感情を、相手から押さえ込まれる(抑制される)と、却って、相手に対して激しい怒りの感情が、沸いて来るように、炎症を、ステロイド剤のような抗炎症剤で押さえ込む(抑制する)と、却って、炎症を起こそうとする力が強まって、抗炎症剤を中止した時に、再燃(リバウンド)して、以前より激しい炎症が起こることがある。

 ステロイド剤は、於血を悪化させ、アトピー性皮膚炎を難治化させるおそれがある。

 4.アトピー性皮膚炎とcAMP-PDE
 cAMP-PDEは、cAMPを分解(代謝)する酵素(ホスホジエステラーゼ)。

 アトピー性皮膚炎の患者では、末梢白血球中のcAMP-PDE活性が、著明に亢進している。
 成人のアトピー性皮膚炎患者は、末梢血中の単核球のcAMP-PDE活性値は、42.1±22.0(pmol/min/108cells)である、正常人の値12.4±5.6や、乾癬などアトピー性皮膚炎以外の皮膚疾患患者の値13.4±9.5より、有意に高値を示した(注2)。

 肥満細胞や、好塩基球は、細胞内のcAMP濃度が減少すると、微弱な刺激によっても、ヒスタミン遊離が起こる(アトピー性皮膚炎の痒みが出現し、易刺激性が増強する)。
 cAMP濃度が減少すると、B細胞のIgE産生が促進する。
 アレルギー性の炎症により、PGE2の産生が亢進すると、EP2受容体を介して、cAMPの産生が、増加すると考えられる。

 PGE2は、抗原提示細胞に作用し、そのIL-12産生を抑制し、Th1細胞(へのTh0細胞の分化)を抑制する(down regulation)。抗原提示細胞(microgliaI)によるIL-12産生は、PGE2以外に、IL-10や、cAMP濃度を上昇させる因子(cAMP-elevating agents)によっても、抑制される。なお、PGE2は、IL-6の産生も抑制する(低下させる)が、PGE2は、(Th2細胞やマクロファージから産生される)IL-10の産生をは、増加させる(2倍程度)。
 PGE2は、Th1細胞に作用し、Th1細胞によるサイトカイン(IFN-γやIL-2など)の産生を抑制する(Th1細胞を、抗原提示細胞は、PGE2により、negative feedbackする)。なお、PGE2は、Th2細胞によるサイトカイン(IL-4)の産生をは抑制しない。従って、PGE2により、Th2細胞の機能が、優位になり、IgEなど、抗体産生が、促進される。
 PGE2は、Th0細胞(ナイーブTh細胞)に作用し、Th2細胞へ分化させ、IL-4、IL-5、IL-10、IL-13を産生させる。
 PGE2は、マクロファージなどからのLTB4の産生を抑制し、白血球(好中球:顆粒球)の遊走や、活性化を抑制する。

 5.アトピー性皮膚炎とリノール酸
 アトピー性皮膚炎の患者では、健康人に比して、リン脂質中のリノール酸(LA)が増加し、リノール酸の代謝産物であるγ-リノレン酸(GLA)やアラキドン酸(AA)が減少している。アトピー性皮膚炎の患者では、α-リノレン酸(ALA)は、増減していないが、α-リノレン酸の代謝産物であるエイコサペンタエン酸(EPA)は減少している(6-不飽和化酵素)の活性が低下している)。

 紅花油(リノール酸を多く含む)で2世代飼育したラットは、シソ油(α-リノレン酸を多く含む)で育てたラットより、白血球からのロイコトリエン(LT)類の遊離が亢進する。しかし、白血球からのヒスタミン遊離は、亢進しない。

 食用油には、変性により、トランス型脂肪酸(トランス脂肪酸)が含まれている。
 トランス型脂肪酸は、皮膚のバリアー機能に関与する、セラミドの合成を障害し、アトピー性皮膚炎の原因になるおそれがある。
 ナタネ油やダイズ油などの植物油に含まれる不飽和脂肪酸の二重結合は、精製植物油を精製する工程などに際して、熱処理などの影響により、一部が、シス体から、トランス体へと、異性化してしまう。
 精製植物油の内、ゴマ油は、不飽和脂肪酸のリノール酸を多く含んでいるが、精製後にも、異性化されたトランス体(トランス異性体)は、ほとんど存在しない。ゴマ油は、セサミノールの作用により、酸化されにくい。
 表1 精製植物油中のトランス異性体含量参考文献の松枝弘一氏の表3.11を改変し引用)
 不飽和脂肪酸  ゴマ油  ナタネ油  ダイズ油  コーン油  コメ油  落花生油
 リノール酸   0   2.27   1.38   2.29   3.23   2.50
 リノレン酸   0  21.97  21.97   0  29.14  23.95

 6.タクロリムス軟膏
 タクロリムス軟膏(医薬品名:プロトピック軟膏)は、アトピー性皮膚炎にのみ、保険適用がある。
 タクロリムス軟膏は、ステロイド剤に比し、分子量が大きいので、皮膚から吸収されにくい。
 タクロリムス軟膏は、吸収率が良い、顔や首のアトピー性皮膚炎に、治療効果が高い。
 タクロリムス軟膏は、副作用として、ピリピリとした、皮膚刺激感が生じる。皮膚刺激感は、熱感(灼熱感、ほてり感等)、疼痛(ヒリヒリ感、しみる等)、そう痒感(痒み)などとして、知覚される。
 タクロリムス軟膏(タクロリムス水和物)は、アトピー性皮膚炎に類似したラット皮膚炎に対して、皮膚局所炎症反応、真皮での炎症性細胞の増加を、抑制する。
 タクロリムス軟膏は、遅延型アレルギー反応(IV型アレルギー反応)を、強く抑制する。
 タクロリムス軟膏は、即時型アレルギー反応(I型アレルギー反応)を、抑制しない(即時型アレルギー反応には、無効)。
 タクロリムス軟膏は、ヘルパーT細胞によるサイトカイン(IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IFN-γ、GM-CSF等)の産生を、ステロイドと同等、若しくは、より強く抑制する。
 タクロリムス軟膏は、ヒト肥満細胞からのヒスタミン遊離(抗IgE抗体刺激による)を、ステロイドより強く抑制する。
 タクロリムス軟膏は、好酸球の脱顆粒を抑制する:タクロリムス軟膏は、ヒト好酸球からの塩基性蛋白(ECP)の遊離(カルシウムイオノフォア刺激による)を、ステロイドより強く抑制する。
 タクロリムス軟膏は、妊婦、又は、妊娠している可能性のある婦人には使用出来ない(禁忌:動物実験で、催奇形作用、胎児毒性が認めらている)。
 タクロリムス軟膏は、母乳中へ移行する可能性があるので、使用中は、授乳は、避ける。
 タクロリムス軟膏は、1日1〜2回、適量を、アトピー性皮膚炎の患部に、塗布する。
 全身に皮疹を認める紅皮症の患者は、経皮吸収が高いので、タクロリムス軟膏を、広範囲に使用すると、血中濃度が上昇するおそれがある。

 タクロリムス軟膏(免疫抑制剤軟膏)を使用すると、基底細胞による表皮のターンオーバー機能が破壊されてしまい、食養や漢方薬で治療しても、表皮の新生が困難になり、アトピー性皮膚炎が難治化すると言う。

 7.アトピー性皮膚炎と腸
 ラクツロース(ラクチュロース)は分子量が大きいので、内服しても、小腸で、殆ど吸収されず、大腸に達して、腸内細菌(ビフィズス菌、乳酸菌)により分解され、グルコース、乳酸、ピルビン酸、酢酸等に、代謝される。ラクツロースとその代謝産物は、投与後24時間迄に糞便中に24%が排泄され、また、投与後72時間迄に、呼気中に49%、尿中に4%が排泄される。内服したラクツロースの内、腸内細菌で代謝されなかった未変化体のまま、消化管吸収で吸収されるのは、0.6%に過ぎない。また、吸収された未変化体のラクツロースは、体内(肝臓)では、代謝されず、尿中に排泄される(ラクツロースが、腸内細菌により代謝され生成されるグルコース等は、体内で更に代謝され、主に、呼気中から排泄される)。
 内服したラクツロースが、下部消化管(大腸)で、腸内細菌(ビフィズス菌、乳酸菌)によって、分解され、有機酸(乳酸・酢酸)が、産生される。この有機酸は、腸管内pHを酸性化させ、アンモニア産生菌の発育を抑制し、腸管内アンモニアの吸収を抑制する(下痢も起こる)。
 従って、ラクツロースの内服は、高アンモニア血症を、改善する。

 ラクツロース(ラクチュロース)を、アトピー性皮膚炎の患児に内服させると、健康児よりも多く、尿から排泄される(腸から吸収される)。
 アトピー性皮膚炎では、腸の粘膜から、非特異的に、抗原(アレルゲン)などが、吸収され易くなっていると考えられる。

 なお、蛋白質は、ペプチドや、アミノ酸に分解され、それぞれ、ペプチド輸送体や、アミノ酸輸送体により、吸収される。
 腸管からの吸収は、ペプチド、アミノ酸、蛋白の順に速い。

 8.その他
 ・卵等の食物アレルギー(FA)のあるアトピー性皮膚炎の小児では、末梢血中の単核球を、抗原(卵白アルブミン:Ova)で刺激すると、TNF-αの産生や、TARCの産生や、MCDの産生が、増加するが、IL-18の産生は、増加しない。
 卵にのみ食物アレルギーがある(卵でのみ感作された)アトピー性皮膚炎の小児では、末梢血中の単核球を、抗原(Ova)+n-酪酸Naで刺激すると、TNF-αの産生が見られる。
 卵等の食物アレルギーがある(卵の他にも多種食物抗原で感作された)アトピー性皮膚炎の小児では、末梢血中の単核球を、抗原(Ova)+n-酪酸Naで刺激すると、TNF-αの産生は抑制されないが、TARCの産生が、抑制される。

 ・食品添加物類のMSG(monosodium glutamate:調味料)、安息香酸ナトリウム(保存量)、タートラジン(保存料着色量)は、好塩基球からのロイコトリエン(LTC4、D4、E4)の遊離を促進させ、アトピー性皮膚炎やアナフィラキシーショック発症に関与している。

 ・秋・冬に生まれた乳児は、春に生まれた乳児に比して、アトピー性皮膚炎を発症し易い。
 月別に調べると、乳児アトピー性皮膚炎は、11月生まれの乳児に最も多く、4月生まれの乳児に最も少ない:乳児アトピー性皮膚炎は、11月生まれの乳児数は、4月生まれの乳児数の7倍以上、多い。

 ・モルモット(ハートレイ系4週齢)に、高カロリー・高炭水化物食(通常の飼料を自由に摂取させる)、低カロリー・低炭水化物食(60%のカロリー摂取)、高脂肪食・高カロリー・高炭水化物食(ベニバナ油を添加した飼料を自由に摂取させる)を与えて、それぞれの群に関して、コンニャク舞粉誘発による喘息発作の強度を検討すると、発作は、高脂肪食・高カロリー・高炭水化物食を与えられた群が、最も強く起こった(高脂肪食は、喘息発作の程度を、増悪させるおそれがある)。低カロリー・低炭水化物食を与えられた群は、高カロリー・高炭水化物食を与えられた群より、発作からの回復が遅かった(低カロリー・低炭水化物食は、喘息発作の程度を、軽減させる)。
 モルモットに、通常飼料食(通常のモルモット飼料ラボGスタンダード)、高カロリー・高動物性脂肪食(通常の飼料に10%のラードを添加)、高カロリー・高植物性脂肪食(通常の飼料に10%のベニバナ油を添加)を、自由に与えると、体重は、高カロリー・高動物性脂肪食>通常飼料食>高カロリー・高植物性脂肪食の順に、増加した。飼料のカロリー摂取量を、60%に減少させた群では、体重は、低カロリー・植物性脂肪食>低カロリー・動物性脂肪食>低通常飼料食の順に、増加した。コンニャク舞粉誘発による喘息発作は、高カロリー食を摂取した群の方が、低カロリー食を摂取した群より、強かった。摂取する食餌の総カロリーによって、発作の強度が異なるが、食餌成分の相違(動物性脂肪や植物性脂肪の添加)による発作の強度の相違は、認められなかった。

 ・マルチプルカルボキシラーゼ欠損症(MCD)では、合併する皮膚炎として、アトピー性皮膚炎様の皮疹が見られることがある。
 ヒトは、ピルビン酸カルボキシラーゼ(PC)、アセチル-CoAカルボキシラーゼ(ACC)、プロピオニル-CoAカルボキシラーゼ(PCC)、メチルクロトニル-CoAカルボキシラーゼ(MCC)の4種類のカルボキシラーゼが存在する。
 マルチプルカルボキシラーゼ欠損症(MCD)は、ホロカルボキシラーゼ合成酵素(HLCS)か、ビオチニダーゼの活性の低下が原因で、起こる。マルチプルカルボキシラーゼ欠損症(MCD)では、この4種類のカルボキシラーゼ活性が、全て、低下する。マルチプルカルボキシラーゼ欠損症(MCD)は、先天性ビオチン代謝異常症。
 ホロカルボキシラーゼ合成酵素(HLCS)は、カルボキシラーゼのアポ蛋白へ、ビオチン(補酵素)を取り込む反応を、触媒する。
 マルチプルカルボキシラーゼ欠損症(MCD)は、ホロカルボキシラーゼ合成酵素(HLCS)の活性の低下が原因の場合は、新生児期から乳児期早期に、代謝性アシドーシス、特徴的な有機酸尿、皮膚炎などを呈する。

 ・ヒスタミンまたはヒスタミン類似物質を含む食品や、ヒスタミン遊離作用がある食品(サバ、エビ、カニ、イカ、タコ、トマト、ホウレンソウ、イチゴ、チーズ、チョコレート、豚肉、穀物など)は、痒みを誘発するおそれがある。
 香辛料、熱い料理(鍋物、麺類など)は、体を暖めて、痒みが増強することがある。

 ・生の野菜(葉や根の部分)や玄米を摂取する生菜食療法は、開始当初は、胃腸が生野菜や生玄米を十分に消化出来ない為、腸管内で異常発酵が起こり、アトピー性皮膚炎などアレルギー症状を一時的に悪化させることがある。

 ・犬やハムスターのアトピー性皮膚炎では、脱毛が見られる。

 ・爪もみ療法(特に、親指の爪もみ)が、アトピー性皮膚炎の治療に有効と言う人もいる。

 ・アトピー性皮膚炎の患者は、発汗時に痒みが強くなる。
 は、好塩基球からのヒスタミン遊離を促進させる。コリン性蕁麻疹では、真皮中で汗腺(汗管)から汗が漏出し、肥満細胞を刺激し、ヒスタミンが遊離されると考えられている。
 体内に吸収された金属は、汗中に排出される。体内の金属は、多くは尿中から排出されるが、一部は、汗や乳汁中から排出される。金属アレルギーがあると、大量に金属を摂取すると、汗中への金属排出が増加し、皮膚炎が増悪すると言う。
 チョコレートは、食物でも金属アレルギーを起こす金属を、多種・多量に含有している。チョコレートを食事制限することのみで、金属アレルギーが軽快することがある。

 ・重症のアトピー性皮膚炎の乳幼児は、糞便中のビフィズス菌やバクテロイデスが、著明に減少している。
 重症のアトピー性皮膚炎の乳幼児は、新生児の腸内細菌叢と同様に、好気性菌が優勢で、嫌気性菌(ビフィズス菌など)が検出出来ない症例が存在する。

 ・アトピー性皮膚炎の子供さんは、膿痂疹、カポジ水痘様発疹伝染性軟属腫(水イボ)などの皮膚疾患を合併し易い。
伝染性軟属腫(水イボ)は、中央部に臍のような凹みがある
以前の伝染性軟属腫は、大きくなることがあり、放置しても自然に治らなかった
腕に出来た伝染性軟属腫

 注1:βグルコセレブロシダーゼが先天的に欠損して、低下して、グルコシルセラミド(グルコセレプロシド)が蓄積するゴーシェ病(Gaucher disease)では、皮膚に色素沈着が見られる。ゴーシェ病では、セラミドの形成が低下して、皮膚のバリア機能や水分保持機能が低下している。ゴーシェ病でも、約30%のセラミドが存在している(70%のセラミドは、グルコシルセラミドからβグルコセレブロシダーゼにより生成され、30%のセラミドは、スフィンゴミエリンからスフィンゴミエリナーゼにより生成されると推察されている)。しかし、ゴーシェ病で、特に、アトピー性皮膚炎症状を呈するという記載はない。
 アトピー性皮膚炎の患者は、βグルコセレブロシダーゼの活性が、グルコシルセラミドデアシラーゼの活性と競合し、βグルコセレブロシダーゼによるアシルセラミドの生成が減少し、アトピー性皮膚炎を発症すると言う説では、ゴーシェ病の患者で、βグルコセレブロシダーゼの活性が欠損し、セラミド含量が低下しているのに、アトピー性皮膚炎症状を呈さないことを、説明困難に、思われる。また、グルコシルセラミドデアシラーゼで生成されると言う、グルコシルスフィンゴシンには、神経毒性はあっても、皮膚炎を起こすのかも、疑問に思われる。
 アシルセラミドの減少によるバリアー機能の低下より、むしろ、スフィンゴミエリンデアシラーゼ(スフィンゴミエリナーゼと競合する)の活性が高くなり、産生されるスフィンゴシルフォスフォリルコリンが、炎症を誘発し、プロスタグランジン(PG)の産生などを介して、アトピー性皮膚炎の独特の皮膚炎を起こすのかも知れない
 アトピー性皮膚炎は、βグルコセレブロシダーゼによる経路が障害され、アシルセラミド産生が減少することが発症の原因でなく、スフィンゴミエリナーゼによる経路が障害され、炎症を誘発するスフィンゴシルフォスフォリルコリンが生成されることの方が、発症に関与しているのかも知れない。
 また、アトピー性皮膚炎では、何故、βグルコセレブロシダーゼの活性が正常なのに、アシルセラミドが減少して、グルコシルスフィンゴシンが増加するのかも、疑問に思われる。酵素(βグルコセレブロシダーゼ)に異常がないとしたら、基質であるグルコシルセラミドを構成する脂肪酸やブドウ糖が、変性している可能性はも考えられるのではないだろうか?アシルセラミドを構成する脂肪酸の性状などに関する研究を期待したい:食事で摂取するリノール酸などの必須脂肪酸が変性していると、O-アシルセラミドのアシル部位(脂肪酸部位)が、リノール酸エステルから、オレイン酸エステルに、変化し、セラミドの皮膚バリアー機能も、減少してしまうことも考えられる

 注2:アトピー性皮膚炎の患者が、末梢血中の単核球のcAMP-PDE活性が高値なのは、アレルギー性の炎症により、PGE2の産生が亢進し、EP2受容体を介して、cAMPの産生が、増加している為と、思われる。
 なお、cAMP-PDEの阻害剤であるテオフィリンは、アトピー性皮膚炎の治療に、有効でない。

 注3ビオチニダーゼ(biotinidase)は、血清中や、多くの組織に存在する。
 食品に含まれる結合型ビオチンは、小腸で、消化酵素(digestive enzymes)やビオチニダーゼの作用により、遊離型ビオチンとなり、小腸(空腸)で体内で吸収される。
 マルチプルカルボキシラーゼ欠損症(MCD:multiple carboxylase deficeincy)やビオチニダーゼ欠損症では、酸性血症(acidemia)を来たす。

 1).ホロカルボキシラーゼ合成酵素欠損症(HLCS欠損症)
 マルチプルカルボキシラーゼ欠損症(MCD)でも、新生児時期に発症するのは、ホロカルボキシラーゼ合成酵素欠損症(HLCS欠損症:holocarboxylase synthase deficiency)。
 ホロカルボキシラーゼ合成酵素欠損症(HLCS欠損症)は、常染色体性劣性遺伝で発症する疾患で、新生児時期(生後2〜3週以内)に、呼吸困難(多呼吸、無呼吸、努力性呼吸)、筋の低緊張、痙攣、意識障害などの症状で、発症する。
 ホロカルボキシラーゼ合成酵素欠損症では、全身の皮膚発赤(皮膚の皮の剥離などを伴なう)などの皮膚症状も現れる。
 ホロカルボキシラーゼ合成酵素欠損症では、代謝性アシドーシス、ケトーシスが見られ、乳酸、プロピオン酸など(lactic acid, propionic acid, 3-methlcrotonic acid, 3-methlcrotonylglycine, 3-hydroxyisovalelic acid)が、体液中に増加する。
 高アンモニア血症が見られることもある。
 ホロカルボキシラーゼ合成酵素欠損症(HLCS欠損症)では、4種類のカルボキシラーゼ(ピルビン酸カルボキシラーゼ、アセチル-CoAカルボキシラーゼ、プロピオニル-CoAカルボキシラーゼ、メチルクロトニル-CoAカルボキシラーゼ)の活性が低下する。その結果、ホロカルボキシラーゼ合成酵素欠損症(HLCS欠損症)では、糖新生、アミノ酸代謝、脂肪酸合成に障害が生じ、マルチプルカルボキシラーゼ欠損症と呼ばれる病態を呈する。
 治療は、ビオチン(10 mg/24 hr)を投与する。ビオチン投与は、著明な効果を現す。

 2).ビオチニダーゼ欠損症
 ビオチニダーゼ欠損症(biotinidase deficiency)では、ビオチンが欠乏する。
 ビオチニダーゼ欠損症は、常染色体性劣性遺伝で発症する。米国では、1/60,000の頻度で見られる。
 ビオチニダーゼ欠損症は、ホロカルボキシラーゼ合成酵素欠損症(HLCS欠損症)と異なり、生後数カ月後〜数年後に、発症する(母親や食事から遊離型ビオチンが供給される為)。
 ビオチニダーゼ欠損症では、アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis)、脂漏性皮膚炎(seborrhemic dermatitis)、禿髪(脱毛:alopecia)、失調(ataxia)、ミオクローヌス発作(myoclonic seizure)、筋の低緊張、発達遅滞(developmental delay)が見られる。
 ビオチニダーゼ欠損症では、ホロカルボキシラーゼ合成酵素欠損症と同様に、代謝性アシドーシス、ケトーシスが見られ、乳酸、プロピオン酸など(lactic acid, propionic acid, 3-methlcrotonic acid, 3-methlcrotonylglycine, 3-hydroxyisovalelic acid)が、体液中に増加する。
 ビオチニダーゼは、血清中や、多くの組織に存在する。ビオチニダーゼ欠損症の診断には、血清中のビオチニダーゼ活性を測定する。
 治療は、ビオチン(10 mg/24 hr)を投与する。ビオチニダーゼ欠損症の小児は、ビオチン投与により、症状が、劇的に改善する。ビオチニダーゼ活性が、10%以下の患者に対しても、ビオチン投与は、有効。

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